学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆   作:夕凪の桜

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雨だと気持ちが沈む…………

最近雨多くないですか?
いやーまあ、そのおかげで苦手な背景描写も思いついたんですけどね………


刀雷の魔術王

路地裏へと逃げていくサイラスをのんびりと追い詰めていく。その足音は静かだが再開発エリアの路地裏になぜか反響していた。そう、まるで死神の足音のように『カツン、カツン』と響くそれはサイラスを追い詰めていった。

 

「あ、あ、、あ、」

 

顔は自らの涙で醜く汚れ、高所から落ちたことにより制服がボロボロになっているサイラスは行き止まりに追い詰められ、意味不明な言葉をただただ言っていた。

 

「会長から殺すなって言われてるから殺さないけど、とりあえず捕縛させてもらうよ」

 

その時サイラスは灰が目の前から消えるところまでは理解していたが、次の瞬間には自分の四肢に力が入らず崩れ落ちた。

彼の後ろには刀を納刀しようとしている灰がいただけだ。

 

言葉を言い切ると同時に瞬間的に加速して…………いや、加速などしなかった。一瞬でトップスピードに達したため加速という概念すらなくなる。それこそ灰がかつて統合企業財体と戦った時に会得した防御不能の殺戮の剣、敵に認識されずに敵を斬る技術。名前は付けていないが敢えてつけるとしたら『閃瞬』。

 

それによって、刀が通った軌跡、青みががった銀色の線となり両手両脚の腱を正確に断ち切った。

ここからさらに追い討ちをかけるならサイラスは本当に絶命するため灰は手を出さない。殺してしまっては意味はないからだ。ユリスを傷つけたことで、本当はこのまま殺したいが、自らを自制する。怒りに震える右手が再び刀を握ろうとするのを頑張って抑えつける。

 

灰は後で来るクローディアに回収を任せてビルの屋上にいると思われるユリスのところに行く。

そうでもしないと殺してしまいそうだからだ。

 

「災難だったなユリス」

「灰か………」

 

ユリスは屋上で綾斗に膝枕をしているが指摘したらユリスが暴れて綾斗が起きてしまいそうなのでそれに関しては放置する。

 

「ごめん。もう少し早く襲撃されるって分かってれば……」

 

今日も気落ちしていなければ、いつもの灰であったらこの襲撃も簡単に予想できたはずだ。警備隊として三ヶ月間幾つもの難事件で養った感覚は今回のことぐらい簡単に予想できたはずだ。

 

「気にするな。人間誰しも間違えることはある。それに私は怪我はしたが、鳳凰星武祭にも問題なく出れる。それで良いではないか」

 

ユリスからの優しい言葉に灰はやっと肩の重圧が降りた。自分は護られるだけではないということを灰に伝えてくるユリス。全てを自分で守らなくても彼女たちは自衛できるのだと。

その言葉に何かこみ上げるものがあるが、ユリスの前では小っ恥ずかしく顔を背ける。

 

朝は雨であったが今日綺麗な夕焼けとなり廃墟のビル群を赤く染め上げていた。

 

「ユリス、彼と出るんだね」

 

さっきユリスは星武祭に問題なく出れるといった。つまり、パートナーが必要な鳳凰星武祭に出ようとしているユリスにパートナーが出来たということだ。その条件に当てはまるのは綾斗以外いないからだ。

 

「ああ、こいつとなら、私の夢も叶えられそうだ」

 

ユリスの夢、それが何かは知らないが、友達の願いというものは応援したくなるものだ。

 

「昨シーズン鳳凰星武祭制覇者として微力ながら手伝わせてもらいますよ。お姫様」

 

茶化すように言うが、二人の親しい間柄を示している。ここまでユリスと仲が良い人物はこれから先も片手ほどしかいないだろう…………

 

「ふっ、何が昨シーズンの鳳凰星武祭制覇者だ。昨シーズン全ての星武祭を圧倒的力でねじ伏せて史上二人目のグランドスラムを達成したお前に手伝って貰えて何が微力だ」

 

灰は先ほど微力といったが、灰が微力しか手伝えない訳がないのだ。アスタリスク最強は伊達じゃない。

 

「ま、僕が参加するのは二人である程度訓練した後だな。せめて基礎は作っておいてくれ。基礎がなきゃどうにもならん」

 

ユリスも灰に1から基礎を教えてもらうのは気がひけるのだ。

 

「そうだな、綾斗に関してはアスタリスクの戦い方に慣れなくてはいけないから、三ヶ月。三ヶ月で基礎を固める。そしたらお願いしよう」

 

三ヶ月。ユリスなら無茶して二ヶ月と言いそうであったが、しっかりと三ヶ月と言ってくれて一安心した。

 

「うん、合格。ここで二ヶ月とか言ったらどうしようかと思ったよ」

 

ここで二ヶ月と言わないと言うことはそれだけユリスが心に余裕があるということだろう。

 

「じゃあね、ユリス。僕はもう帰るよ。遅くならないようにしなよ。歓楽街ならまだしも再開発エリアは僕の名前を聞いてもあんまり逃げ出さないからね」

「………?」

 

ユリスは知らない。灰が歓楽街にいるマフィアを全て半壊させ、今ではその全てのマフィアは灰の半ば言いなりであることを。マフィアを取り潰さないのは歓楽街を機能停止にさせると何が起こるかわからないからだ。一部の不良が暴れ出しさらに面倒ごとになる。

 

ユリスが灰の言った事を理解していないことを分かりつつも、そのままビルの屋上から飛び降り消えていった。

 

 

 

 

先ほどサイラスがいたところに行くと血だまりだけが残っており本人は消えていた。四肢の腱が断ち切られている以上、逃げることは不可能。おそらく銀河の諜報機関『影星』が回収したのだろう。

灰は近くにいる人物に声をかける。この人ならすべて知っているだろうから。

 

「会長、サイラスはどうなりますか?」

 

ビルにもたれかかるようにして灰の事を持っていたのはクローディア。いつも通り優しい表情をしているがその裏にたくさんの策略が巡らされているのを灰は知っている。

 

「そうですね……『影星』に任せているのでどうなるかは分かりませんが、おそらく二度と日の目を見ることは………」

 

まあ、当然だろう。他校と内通していた以上、普通の学生生活は送れないだろう。

 

「それにしてもお見事です。両手両足の腱のみを斬り出血量を最小限にする。さすがは我が校の不敗の序列一位『刀雷の魔術王』ですね」

 

『刀雷の魔術王』………?灰の二つ名は魔術師として異例の『刀雷』だったはず。アスタリスクの学生は二つ名を持つ場合、魔術師なら魔術師という名が含まれるはず。しかし、灰はもともと魔術師としての力を使わないため、その名が含まれなかった。しかし今度はどうだろう。魔術王。異例の極みだ。最強の魔女、オーフェリアやヘルガ、その二人ですら魔女という名は含まれている。

 

「僕の新しい二つ名ですね?」

「はい、かの『孤毒の魔女』すら力でねじ伏せた圧倒的な力。右手に握られた刀はすべてを斬り伏せ、左手に宿りし雷は全てを打ち砕く、その様な戦い方をするあなたにとって魔術王という名は相応しいと私は思いますよ」

 

特別すぎてやめて欲しいと思ったが、せっかくの好意を無下にするわけにもいかないと思い受け入れる。

だが、雷を使うことなどほとんどない灰にとってその名は少し変な感じがした。

 

「その名に恥じぬ様に頑張るとしますよ。会長」

 

ここに戻ってきた目的はサイラスの確認。それが終わった以上もうここにいる理由はない。クローディアから新しい二つ名を受け取ったということで少し長居をしてしまったか、早く二人の待つ家に帰りたいのが本心だ。怒りを制御するのは疲れる……

 

「あ、そうだ会長。僕のことは下の名前で呼び捨てで良いですよ。同学年ですし、同じ生徒会なんですからね。それでは僕はこれで」

 

クローディアとすれ違い様に呼び捨てで良い事を告げる。灰は堅苦しいのが嫌いなのだ。そして、常套手段、返答を待たずに立ち去る。それが灰の突然二つ名を知らされて驚かされたささやかな仕返しだった。

 

 

 

去り際の灰の髪の毛が風になびき、夕焼けによって赤く染まる灰色の髪の毛は血の様に赤く染まり、クローディアの心を僅かに曇らせた。

灰の手際があまりにも良すぎて不気味に思えたのかもしれない。そうまるで何人も殺してきている様な、死というものに慣れているのではと思ってしまうのだ。

 

クローディアは自分の中でそんな訳ないと整理をして自分もその場から立ち去った。

 

 

 

 

 




学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださりありがとうございます。夕凪です。

これでやっと一巻を終えることができました。ちょうどアニメの四話目ですね!
なのに、灰と綾斗の絡みが一切ないという。出すタイミングをなくしたとは言えない………

ま、まあ、2巻部分ではちゃんと登場するので!!



最後に誤字、感想、評価などありましたらよろしくお願いします。
批判でも構いません。自分に足りないところを客観的に見るのは難しく、ダメなところがあれば教えてもらえれば……
メッセージでも構いません。


それでは次回!!!!
次はゆったりパートです。
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