学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆   作:夕凪の桜

20 / 34
寒いですね………


過去を胸に

綺凛から明日叔父が話したいということを伝えられて少し、ほんの少しだけ憂鬱になりながら帰っていた。

 

灰は別に綺凛の叔父である刀藤鋼一郎が嫌いではない。好きでもないが………

遠目に見た限り、出世欲が強いような目つきをしており、綺凛のことを利用しているように思えたのだ。灰は統合企業財体の内部事情に関して興味すら湧かないが、綺凛は灰の弟子であり、それを利用するのであれば少しは気になる。

 

「はあーー」

 

柄にもなく大きなため息をついてしまう。統合企業財体に関係している人間は何かと口が達者で灰が苦手とするところだ。おそらく鋼一郎氏も同じであろう。

 

「そんなにため息をついてどうしたの?」

 

突然背後から声をかけられる。こんな場所で灰に話しかける人物は限られている。

シルヴィアは、3日前にアジアツアーに出発したためアスタリスクにはいない。

つまり、ここで会うとすれば一人しかいない。

 

「明日面倒くさい人に会うことになって憂鬱……」

「ふーん?貴方ならそういう人が相手でも大丈夫だとは思うのだけど」

 

その人物、まあ、オーフェリアなのだが、横に並んで手を繋いでくる。もちろん、恋人繋ぎだ。ちなみに、灰はこうして家に帰るときは気配を消しながら歩いている。そうでもしないとまともに歩けないから。

 

「まあ、どうにかはするけど……それよりもフィーアは夜ご飯のための買い物帰り?」

 

考えたくないのでとりあえず話題を変える。明日のことは明日どうにかする。いわゆる現実逃避だ。

灰と手を繋いでいる手と反対側の手にスーパーの袋があったので、それを代わりに持ってあげる。

 

「ええ、今日の夜ご飯と明日の朝ご飯の買い物ね。いつもは通販だけど、たまには自分で買い物するのも良いものよ」

 

いくら変装していると言ってもいつバレるかわからないので、通販で頼むことが多い。とくに学校がある日は買い物の時間がそこまでないので、よほど早く帰らない限りは買い物はしない。休日は3人で買い物に行くことが多い。とくに新学期になってから灰は女装出来るようになったので、周りを気にせず買い物ができる。

何かと女子二人と歩いていると周りによく絡まれる。それに、変装しても美人であることに変わりはない二人はよく目立つ。

 

 

何かと有名人である灰は最初は追い掛け回されるのに慣れなかったが、今はすっかり慣れてしまい、気配を消して歩くことにも苦痛は感じなくなった。

そのまま家に家に帰り、オーフェリアの作ってくれたご飯を食べて、寝る。ここにシルヴィアがいる時が一番幸せであるが、自分が惚れた女性がやりたいことを生き生きとやっているのが、一番輝くと思っている灰はそこまでは求めない。

 

現にオーフェリアは灰の家で料理している時は一番可愛く見える。

 

 

シルヴィアとオーフェリアの関係は物凄く良好で、心配する必要などなかった。

 

 

 

 

 

(この幸せを守るためなら、僕は何でもしよう。それが唯一復讐に身を堕とした僕にできることだから)

 

 

灰が幼い頃に起こった惨劇は灰を復讐というものに支配されるには充分だった。

 

 

 

これはまだ灰が小学三年生だった頃。

 

鳴神家の道場で稽古をつけて貰っていた灰の家は道場から1キロ以上離れていた。

灰は小学三年生にして鳴神家の剣術は『免許皆伝』となっていた。そのスピードは周りをいともたやすく置いていった。

 

そして、事件が起こったあの日、灰は稽古に熱が入りすぎて夜まで道場におり、師範である灰の叔父に家まで送ってもらうこととなった。

家に帰ってみると家の灯りは点いておらず、おかしいと思った叔父は家の中に入り部屋を一つ一つ見ていくと二階のリビングで惨殺された灰の両親を見つける。その光景を見て叔父は固まってしまい、灰がその光景を見てしまうのを防ぐことはできなかった。

 

慌てて止めるも間に合わず自分の両親が惨殺された光景を見てしまい灰は倒れてしまう。

 

後々叔父から聞いたところによると警察は通り魔の仕業だと言っていたらしい。が、叔父は二つの統合企業財体の名前を出した。

その時、灰は誓った。この世の中を支配して玉座に踏ん反り返っている者に復讐すると!

その復讐心はどんどん燃え上がっていった。

 

 

もちろん、叔父は止めた。

 

 

だが、幼い灰の中に秘められた狂気とも言える復讐心を感じ取った叔父は止めることができず、鳴神家の宝刀を灰に授けた。そして、こう言った。日本には隠された霊峰があり、そこに七天大聖と呼ばれる七人の仙人たちが住んでいるため、彼らに弟子入りしろとのこと。

 

鳴神流の開祖は七天大聖の弟子であり、鳴神家の当主には代々その場所が受け継がれていった。

灰は霊峰で七天大聖に弟子入りして、一年の修行の末、革命を起こすための力を習得した。

 

 

かの二本の剣は灰自身が作ったものではなく、彼らがいつの日か起こるであろう大災厄の対抗手段として七人全員の力を集結して作り出したものである。

それ故とても強力であり、最後まで灰に渡すかどうか悩んだとのこと。

 

 

二本の剣を手に入れた灰はついに復讐を始める。

灰は片っ端から『バベラトス』と『リヒシュタン』の施設を襲い、そこにいる戦闘員、並びに研究員など皆殺しにしていった。もちろん、施設によっては民間人がいるため、民間人は殺さないように細心の注意を払っていた。

 

初めはただの犯罪者集団かと思われていたが、次第に逃げ延びた民間人の証言が集まり出し、ある一人の星脈世代によってこの事件が引き起こされていることがわかった。

 

吹き荒れる星辰量のため顔は確認できなかったが、水色の髪に水色の剣を携えていることは一致しており、そのことから灰は『凍氷の皇帝』と呼ばれるようになった。

 

 

約三ヶ月以上に及ぶ戦いの末灰は『バベラトス』と『リヒシュタン』の総本部を壊滅させることが出来た。

疲れ果てた灰は霊峰に戻り、七天大聖の元へ戻る。その時の灰は人間らしさはなく、まるで機械のようだったと言っていた。

 

重すぎる運命を背負っている灰に七天大聖はある首飾りを授けてアスタリスクに送り出す。その為の教育を約二年間に及ぶ灰は受けた。

なおかつ、七天大聖は霊峰の地下に眠っている数多くの強力なウルム=マナダイトを灰に渡し、また純星煌式武装の作り方を教えた。

いつの日か必要になる時が来ると言われたが、よくわからないまま、灰は受け取った。

 

 

この事をそのままシルヴィアとオーフェリアには話しており、その時二人は涙を流し、灰の過去に悲しみを覚えた。

話したのが夜であったためその日はすぐに寝たが、その次の日、ほとんどの時間二人に抱き着かれている状態だったのはいい思い出だ。

もちろん、二人の過去も知っている。

 

 

自分の幸せを守るため、そして、二度とこのような悲劇が起こらないように統合企業財体の動向を牽制する。

それが今の灰がやることだ。

 

 

現に『凍氷革命』が起こって以来、統合企業財体の動きは消極的になっていた。

 

 

 

 

 




学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださりありがとうございます。夕凪です。

本当は鋼一郎氏との対話を入れようとしたのですが、入らなかったので灰の過去の話で終わりになります………


銀綺覚醒部分はあと5、6話で終わらせて早めに鳳凰星武祭には入りたい所ではあります。


最後に、感想、評価、誤字、指摘、お気軽によろしくお願いします。

それでは、また明日。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。