学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆   作:夕凪の桜

21 / 34
1日30時間希望します


刀藤鋼一郎

オーフェリアに癒してもらい、なんとか鋼一郎との対談に行くだけの精神を回復した。

多分いつも以上に甘えてしまった…………いつもは甘えられる側だから、たまにはね?

 

逃げるつもりはないが、どうしても逃げたいという気持ちが強くなってしまう。

向こうから話したいと言っていたので話題を持っていく必要がないのが唯一の救いと言えよう。

 

時間を着実に過ぎていき、放課後となり綺凛から連絡が来た部屋に向かう。

外に綺凛が待っていたので、部屋に入る。綺凛は部屋に入ってこないで外で待っているようだ。

 

(綺凛が居たら話しづらい事を話すということか………)

 

綺凛が居ないということはどんな事を聞かれるか想像がつかなかった。

綺凛というセーフティーがなくなった以上、灰はある意味覚悟を決めなくてはいけなかった。

 

「来たか」

 

部屋の真ん中にある椅子に腰掛けて腕を組んで待っていたので、おそらく彼が刀藤鋼一郎氏だろう。

銀河の幹部の座を狙っているらしい……

 

「まあ、座れ」

 

さすがに灰もずっと立ち話をするのは嫌なので座らせてもらう。

 

「単刀直入に聞こう。三年後の王竜星武祭で綺凛は優勝できるか?」

 

本当にストレートに聞いてきたことで、少し驚く。もちろん、こういうことは想定はしていた。彼が聞いてくるとする事などある程度はもともと絞れていた。

 

「そうですね、三年後このまま僕が鍛えたとしても、優勝は無理でしょう」

 

そう、いくら綺凛の成長がはやいと言っても、王竜星武祭は本当に修羅の道だ。

鋼一郎氏は無言で理由を説明しろと言ってくる。

 

「彼女の成長スピードは本当にすごいと思っています。入学数週間で序列2位となったのはさすがと言えます。しかし、王竜星武祭にはシルヴィア、オーフェリアと最強の魔女が出場するでしょう。僕には三年であの二人を超えることは不可能だと思っています」

 

たしかに、綺凛はすごい。その成長ぶりは凄まじく、師匠である灰も誇らしい。

 

「それに、彼女には実戦経験が不足しています。星武祭での戦いは模擬戦では経験できないようなものばかりです。あの二人は歴戦の猛者、経験不足などすぐに見抜かれますよ」

 

別に二人に情報を流す気は無い。そもそも二人はそんなこと望まない。

 

「自分で言うのもなんですが、僕の抜刀術は誰も防ぐことのできない最強の剣です。彼女も三年後には半分以上使えることになるでしょう」

 

『鳴神流五連抜刀奥義』ならまだしも普通の抜刀術なら教えることもできるので、綺凛なら習得するだろう。

だが、灰の使う抜刀術はただの鳴神流抜刀術では無い。

 

「しかし………僕の抜刀術は超高精度な星辰量操作技術が必要となる体術を使用しているからこそ、防御不能にして不可視の剣となるのです。魔女ではない彼女がそれを使おうとしたら足が負荷に耐えられず砕け散ります」

 

鳴神流では技を完璧に習得してようやく二流、その技を自分にあった形に改造出来て一流なのだ。

灰の使う体術、つまり七天大聖の体術は細胞一つ一つに適切な星辰量を注ぎ込むことで成立する。そんな事が出来るのは魔女や魔術師として星辰量操作技術を日々鍛えていない限り不可能だ。

 

「それに、その技に頼らなければ勝てないなどという不安定なものであるなら、王竜星武祭は優勝などできません」

 

たしかに、綺凛が鳴神流抜刀術を習得して、研鑽した場合、それはかなり脅威になるが、事前の予備モーションが大きいあの技を作り出せる為にだけ技を磨くのは絶対に違うからだ。

 

「彼女は遅かれ早かれ剣士として大成するでしょう。しかし、それを王竜星武祭優勝のためだけに歪めるのであれば僕は彼女の師匠役を降りますよ。あなたにもわかるでしょう。たとえ剣士ではなくても、刀藤家の人間なら」

 

彼女が剣士として大成するにはかなりの時間がかかる。それだけ彼女の才能は凄まじいのだ。

 

「やはり、お前もそう思うか。分かった。しかし、私は私なりのやり方で綺凛を王竜星武祭で優勝させる」

「中学一年ならば、まずは共に高め合う仲間を見つけさせてあげてください。まずはそこからです」

 

今の灰と綺凛の関係は絶対的な上下関係にある。

彼女に必要なのは師匠以外に好敵手と呼べるような存在がなければ一定以上には成長できない。

 

「つまり、お前は鳳凰星武祭、もしくは獅鷲星武祭の方がいいと言うのか?」

 

タッグ戦の鳳凰星武祭、チーム戦の獅鷲星武祭。たしかに、ここに出場するなら仲間は良き好敵手となるだろう。

 

「そうですね、彼女のためを思うならそちらの方がいいかも知れませんね」

「アスタリスク最強の星脈世代の貴重な意見として、頭に残しておこう」

 

話はそれで終わり、鋼一郎は部屋を出て行こうとする。

 

 

「あなたが思っている以上にアスタリスクは甘くは無いですよ」

 

灰は出て行く鋼一郎の背中に声をかけた。

 

「私はお前以上の曲者などいないと思っている」

 

そして、今度こそ部屋から出て行った。

 

 

「僕以上に曲者な人などたくさんいますよ」

 

その声は鋼一郎には届かない。

たしかに灰はアスタリスクでは曲者に含まれるかも知れない。星導館という学校の中で序列1位という座を守り抜くのは強いだけでは不可能だ。色々な策で灰を貶めようとする人間がたくさんいる。だが、それを見破れるからこそ、今も無敗伝説は続いている。

 

灰よりも曲者といえば、クローディアなど、各校の生徒会長がいい例だ。

 

 

(絶対、今日の夜フィーアに膝枕してもらって頭を撫でてもらおう)

 

静かに決意していた。

 

 

 

 

 

 

 

鋼一郎との対談は思った以上に神経を使った。彼を刺激しないように注意しながら、綺凛から手を引くようにしむけようとした為である。

その疲れからか少し対談した部屋で休んでから出てきた為、もう夕暮れ時で、空が赤く染まっていた。

 

 

 

「「はあー」」

 

????

誰かと溜息が重なる。ふと辺りを見渡してみると茂みの向こうにユリスが歩いていた。

 

「どうしたんだ?ユリス」

「うん?灰か……」

 

なんだろう。ユリスが灰を見たときに心なしかもう一回溜息をついた気がする……

 

「ちょっと、いろいろありすぎて胃が痛いだけだ………」

 

 

詳しく聞いてみると綾斗の幼馴染らしい沙々宮がトレーニングルームの壁を破壊して、いつも以上に胃が痛くなったらしい。

胃痛の原因は主に綾斗のアスタリスクに対する無知さらしい。

 

 

「それは災難だったな。そういえば、コレあげるよ」

 

灰はポケットから薬の入った瓶をユリスに投げ渡す。

 

「これは?」

「僕が特別に調合した胃薬。効果は他の胃薬より良いことを保証するよ」

 

灰は今日の対談で絶対に精神的に疲れ胃が痛くなると思い、昨日の夜に胃薬を調合したのだ。七天大聖からもらった秘伝のレシピの為効き目は抜群だ。使う必要も無くなったのでユリスにあげる。

 

 

 

「それは、ありがたい。ちょうど今使っている胃薬が効かなくなってきたのでな」

 

それはかなり重症だ。よっぽどユリスの胃袋は悲鳴をあげているらしい。

 

 

「それで、調子はどう?天霧とのトレーニング」

「まあまあといったところだな。だいぶ基礎もできてきたところだ。そろそろお前にも相手を頼むかも知れない」

 

どうやらユリス達の訓練は順調で鳳凰星武祭に向けて着々と準備が整ってきているらしい。

あとは灰に実戦と経験談からの助言を貰うだけらしい。

 

 

「順調そうなら良かった。だが、ユリス。お前自身の体調管理はしっかりしろよ?」

「まあ、そろそろ胃が痛くなることは無いはずだ」

 

ユリスの胃袋はあと少しの辛抱らしい。

その会話で二人は別れ、各々の帰る場所へと行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰は家に帰ったらオーフェリアに膝枕と頭を撫でてもらい、疲れを癒したとのこと。

 

 

 

 




学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださりありがとうございます。夕凪です。

緊急事態宣言が解除されそうで、学校が始まってしまいます……
現実逃避していたい……

とまあ、こんに事ばっか言っててもしょうがないので小説書いて誤魔化します。

それでは次回。
感想、評価、誤字指摘などお気軽にお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。