学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆   作:夕凪の桜

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やっと綾斗くんが出てくる………


初めての接触

ユリスに今日から綾斗とのトレーニングの相手をしてもらいたいと言われたので、『冒頭の十二人』の専用トレーニングルームで待つことにした。序列1位のトレーニングルームは他と違い、広く、また設備も充実している。

まあ、灰は自分の家の地下のトレーニング場を使うことの方が多い。

あそこは灰が改良を加えており、灰がある程度暴れても壊れることはなく、また星辰量の反応が外に漏れることも無い。

 

 

時刻は午後3時45分。ユリスとの待ち合わせ時間から15分が過ぎていた。

星導館学園の授業が終わるのは午後3時。そのため待ち合わせは午後3時半となっていた。

特に準備することの無い灰は3時10分にはトレーニングエリアに着いていた。ユリス達も20分には来るだろうと予想していたが、当ては外れたようだ。

 

「時間に厳しいユリスなら20分には来ると思ったんだけど、来ないってことは天霧あたりが何かやらかしたんだろうな」

 

何の連絡もなしにユリスが遅れるはずはなく、必ず何か理由があるはずだ。

 

「まあ、今日は綺凛との訓練は無いし、気長に待ってるか」

 

あとでユリスから綾斗の面白情報でも聞いてみるのも悪くなさそうだと、一人悪い笑みを浮かべている灰であった。

 

 

 

 

 

それから5分ほどして急に来訪者を告げるメッセージが来る。

 

『すまない灰!遅れた』

 

肩で息をしているユリスであった。近くに綾斗の姿もあるのでどっからか引っ張ってきたのだろう。

 

 

灰が扉を開けるとすぐにユリスは綾斗を近くにあるベンチに寝かせる。

すると急に魔法陣が綾斗を縛り付けるかのように展開する。溢れ出ていた綾斗の星辰量が急激に減少する。

 

(これは……封印系統の魔術師か魔女の力。しかもかなり強力な力で封印されている……これほどのことができる星脈世代なんて聞いたことが無いぞ)

 

警備隊の幹部権限で閲覧できる情報には一通り目を通している灰であるが、そのような力を持つ実力者などアスタリスクにはいないはずだ。

 

 

 

ユリスが一通り綾斗の応急処置が出来たので声をかける。

 

「ユリス、どういうことか説明してもらえるか?」

「私にも詳しいことはわからん。だが、綾斗曰くお姉さんの禁獄の力らしい」

 

ユリスも詳しいことは分かっていないようだったが、灰にはそれで十分であった。

封印系統の能力者は灰は知らないが、唯一の禁獄の能力をもつ人であるのなら灰は知っていた。

 

(禁獄の能力の所持者で天霧の性を持つ魔女、天霧遥。幹部権限でしか閲覧出来ない情報の一番下にあった機密事項。彼女は何かを知っているのかな……)

 

幹部権限で見れる情報は莫大であり、それ全てに目を通しているものは幹部十人で三人ほどだろう。必要な情報は検索をすれば簡単に出てくるのでわざわざ目を通すのはよっぽどの物好きだろう。

 

「その反応何か知っているな。頼む、綾斗に教えてやってほしい。あいつは姉を探しにここに来たらしいんだ。だから……!」

「すまないが、こればっかりは教えられない。僕がこの情報を知っているのは星猟警備隊の幹部権限で閲覧できたんだ。たとえユリスであっても幹部権限領域の情報である以上は無理だ」

 

幹部権限領域の情報はアスタリスクの暗部の情報の詰め合わせであるため、簡単に外部に漏らしてはならない。それが幹部としての絶対の規律だ。

 

「そうか……いや、当たり前か。すまない、急ぎすぎたみたいだ」

 

ユリスは本当は是が非でも聞き出したいのであろうが、灰の意思を曲げることは出来ないことがわかっているのだろう。

 

「その代わり、今日はちゃんと訓練に付き合ってやるさ」

 

灰なりのユリスに対する罪滅ぼしであった。 灰だって言えるものなら言いたいのだ。隠し事は性に合わない。

 

 

「綾斗が起きるまで、付き合ってもらうとするか」

 

 

 

 

 

 

それから30分ほどユリスとの訓練は続いた。ユリスの星辰量が尽きかけたので一旦止めることになった。

 

 

 

 

「相変わらず勝てるビジョンが全く思い浮かばないな、ほんと」

 

地面に座りこむユリスは力なくそう言った。

 

「流石にまだまだ負けられないさ。だが、前よりは大分良くなってるよ。自分の能力を良く理解しているね」

「一歩も動いていないお前に言われても些か説得力に欠けてるぞ」

 

実際灰は一歩も動かず勝利している。飛んでくる魔法は全て灰の魔法で撃墜され、設置型の魔法も灰は叩き斬るため目くらまし程度にしか役に立たない。

ユリスは無敵の壁を相手にしているように思っていた。

 

 

「私よりも魔法を速く、多く展開しているのにどうやって勝てばいいのだ。星辰量の総量も圧倒的に負けているのに」

「ユリスには一撃必殺の様な物が無いからそうなるんだよ。どんなに時間をかけて構築したっていい、相手を必ず葬る技を身につけるのが先決だな。そればかりに頼るのは流石に無理があるが、切り札としては有効なはずだよ」

 

鋼一郎にも言ったが、一つの技に頼りすぎるのは自ら成長するのを拒んでいるのと同じことだ。

だが、その技を持つことには成長の妨げにはならない。切り札というのは使いすぎればただの技に成り下がる。

 

「まあ、それに関してはまた今度だな。彼が起きた様だし」

 

綾斗は自由の利かない体をなんとか起こす。おそらく禁獄の力の影響だろう。

 

「目が覚めた様だね。天霧」

「君はたしか、同じクラスの……」

 

綾斗に灰は初めて声を掛ける。そのため綾斗が灰の名前を知らなくても仕方が無い。

 

「僕は鳴神灰。灰でいいよ」

「ああ、よろしく。俺は天霧綾斗。俺も綾斗でいいよ」

「よろしくな、綾斗」

 

これが同じクラスなのに三ヶ月間なぜか話さなかった二人の初めての会話となった。

 

(それにしてもアスタリスクに関しての知識が無いのは本当みたいたね……)

 

灰の知名度は今ではシルヴィアと同じぐらい高い。それでも知らないということは余程無知なのだろう。

 

「それで、綾斗。ユリスから大体の事情は聞いたけど、なんで決闘なんてしたのさ。しかも、よりにもよって彼女と」

「彼女、強かったけど一体誰なんだい?」

 

ユリスの胃袋が引いを上げているのは気のせいだろう。

灰はユリスの胃袋に手を合わせる。

 

「はぁー、お前せめて自分の学園の『冒頭の十二人』ぐらい覚えておけ!」

「まあまあ、ユリス。そう怒るなって。胃袋が小さくなるぞ」

 

ユリスを止めないと色々と大変なことになると思ったのでさすがに止める。

あと、胃袋にもね。胃袋に罪は無い。

 

「彼女は刀藤綺凛。うちの序列2位だよ。二つ名は『疾風刃雷』たった三ヶ月だけど、刀一本でその座を守ってきた期待の中1ってところかな」

 

まあ、ざっくりと綾斗に説明する。詳細はまあ自分で調べろってことだな。

 

「へー、序列2位か……道理であんなに強いんだね。でも、そしたら、もっと強い序列1位の人がいるんでしょ?」

 

綾斗がその言葉を言った時、ユリスの胃袋がなくなったのを灰は感じ取った。

 

「おまえ、まさかそこまで知らないのか!!」

「い、いや、クローディアからちょっとぐらいは。昨シーズン史上2人目のグランドスラムを達成した人ってことぐらいは聞いたよ」

 

綾斗はこれ以上ユリスを怒らせない様になんとか言い訳をする。

だがね、綾斗よ。もうユリスの胃袋はストレスで亡くなってしまったのだよ。

 

「はぁ、もう怒りを通り越して呆れだな」

 

肩をガックリと落とし落ち込むユリス。

端末を操作しながらユリスは軽い説明をしてくれた。

 

「うちの序列1位はさっきお前が言った通り、史上2人目のグランドスラムを達成した。今まで公式戦で負けなしのアスタリスク最強の星脈世代。それがこのわるだくみが成功した様な顔をしている男だ!」

 

ネット上に上がっている灰の情報を綾斗に見せるユリス。

ユリスの手が肩にあるのだが、それが地味に痛い。

 

だが、それよりも耳が痛かった。

何せ綾斗が叫ぶから……




学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みいただきありがとうございます。夕凪です。


気付いたら二十話を超え、お気に入りも90を超え、UAも8000を超え、当初では考えられないようなものとなっております。
5月中は毎日投稿できそうで一安心です。
学校が再開された場合、どうなるかはまだわからないので、決まり次第自分の投稿ペースもどうするか報告させてもらいます。

これからもよろしくお願いします。
感想、評価、誤字指摘などお気軽によろしくお願いします。

それとはまた明日。
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