学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆 作:夕凪の桜
興味はあるんですよね………
処刑刀から発せられる圧倒的なオーラ。各校の序列1位(もちろん、灰は除く。レベルが違いすぎるからだ。)レベルの圧力を感じた。
「一つ最初に聞きたい。もし僕が貴方の対話に応じた場合の対価、それはちゃんとわかっていますよね」
朝、フードの女が言った事が本当であるならば、この男が自分の聞きたい事を聞いたら、灰のある程度の望みを叶えるという破格の条件であった。もし、これが守られないのであれば、灰は今すぐにでも尻尾を巻いて逃げるつもりだ。
「ああ、彼女から聞いているよ。それで構わないよ」
「それだけ守ってくれるのであれば構わない」
相手がまだ守るかはわからないが、それでも尻尾を巻いて逃げるほどではないのは確からしい。
「率直に聞こう。オーフェリア嬢から手を引いて、我々の元へ返したまえ」
この言葉を聞いて灰は殺気を解放しなかった自分を心の中で褒めていた。
オーフェリアを物のように扱うこの男に怒りを覚えるのは、当たり前と言えた。
(僕たちの関係を知った上での挑発、面白い事をやってくれるじゃないか)
「そんな事を聞いて何になるんですか?はいそうですかと言うわけないでしょう」
おかしいのだ、わざわざ朝接触してきてまでにしては聞く内容が杜撰すぎるのだ。
「やはり、そう答えるか。彼女を変えたという君の意思、変えられるわけがないか……………いいだろう。次に行く前に君の聞きたい事を聞いてあげよう」
一つ目の質問に対しての返答について深くは追求せず、自分の質問は終わり、次は灰の聞きたい事に答えるらしい。
朝に急に言われてから、そこまで時間もなく、ちゃんとした聞きたい事など考えられなかった。
だが、さっきの質問で一つだけ思い付いたのだ。
「処刑刀。貴方は僕の敵か?それとも味方か?もしくは中立か?」
この問いの答えはほぼ決まったようなものであるが、一応聞く。
「敵か、味方か、中立か、なるほどね。君がおとなしくオーフェリア嬢を渡してくれたのであれば味方だったかもしれないが、渡してくれないのであれば、敵だ」
処刑刀は灰の予想した通りの回答をした。
そして、腰のホルダーから発動体を取り出す。
「なるほど、最初から僕と戦うつもりだったんですね」
処刑刀、使用する武器は4色の魔剣の一振り、『赤露の魔剣』
それを起動し片手で軽々と扱う戦闘スタイル。だが、本当の戦闘スタイルは両手持ちである。
大きさ故に、両手の方が安定する。
「もちろんだとも。あのオーフェリア嬢の気持ちを変えた君の答えなど、決まっているからね。さあ、武器を構えたまえ」
灰は鞘から『雲雫』引き抜き、自然体で構える。油断などできない、いつにも増して真剣な表情をしていた。
おそらくだが、処刑刀は『雲雫』がウルム=マナダイトで構成されている事を知っているはずだ。言動からして間違いないだろう。
「ふっ、私を楽しませてくれたまえ。鳴神灰君!!」
先ほどまでの両者の距離は15メートル。それを処刑刀は一歩で詰めて灰に斬りかかる。
突き、なぎ払い、切り下げ、突き上げ、切り上げ、フェイントを混ぜてからの袈裟斬り、その全てが鋭く、卓越した技術がある事を示していた。
(体格でも負けているし、それに『赤露の魔剣』をうまい具合に支配してる。流石だな………)
それでも灰は負けない。灰の最高速度の8割、これが処刑刀と灰の速度であった。両者一進一退と言うのはこれを示すかのように戦闘は苛烈であった。
灰が上手く刀の上で魔剣を滑らせて、カウンターを取る!
その速度は常人では絶対に反応できない領域の速度であったのに、処刑刀はギリギリといえども反応して見せた。
「素晴らしい。まさかここまで追い詰められるとは思ってもなかったよ。手を抜くのはやめだ。本気で行かせてもらうよ」
両手で赤露の魔剣をしっかりと持ち、威圧感も先程までとちがい、確実に増大している。
「なら、僕も一段階上げさせてもらいますか」
灰は刀を両手では握らない。鳴神流では両手が基本なのだが、抜刀術が得意な灰は片手の方が自分に合っているため、片手で持っている。しかし、処刑刀が魔剣を両手で振る以上、先ほどよりも重く鋭くなっているに違いない。
そのため灰は七天大聖の体術を使う。
星辰量の操作を少しでも間違えれば細胞が死滅する諸刃の剣であるが、灰にその万が一はない。
その程度のミスをしないために、灰は七天大聖の体術を体に定着させ、呼吸と同じように出来るようになった。
処刑刀は上から魔剣を振り下ろす。先ほどよりも早く、そして重い。それを灰は片手で持っている『雲雫』で受け止めた。
そこから鍔迫り合いに移行する。ただの力のぶつかり合いではなく、両者の駆け引きがここで行われている。相手の力の入れ具合、呼吸と様々なものを同時に把握する必要がある。
この時灰は力負けした振りをして、体勢を崩したかのように見えたが、灰自身によって隠されていた左手には超高密度の雷が纏われており、気づいた時には処刑刀の鳩尾に深く食い込んでいた。
「くはっっ……………」
処刑刀はたまらず苦悶の声を上げる。雷を纏った拳は内臓にダメージを与えることに成功した。
だが、致命傷には至らない。それにそのダメージも一時的なものになる。
「君の剣技に隠されてしまっているが、君は魔術師であったね。こんな初歩的なミスをするとはなんとも情けない」
その剣技に目が行きがちであるが、本人は魔術師が本領だと言っている。もちろん、それが事実かなんて誰もわからない。灰の剣技が支配する間合いを誰も破れなかったからだ。唯一破れたのはオーフェリアだけである。
左腕に雷を纏い、処刑刀を待ち構える。
超高密度の雷は磁場を歪め、灰を中心に引力が微弱ながらに発生していた。
これが刀雷の魔術王といわれる灰の戦闘スタイルだ。
「さあ、死闘の開始だ」
灰は先ほど一段階上げると言ったが、どうやらそのようなことを言っている場合ではなく、二段階引き上げることになったのは処刑刀には気づかれていない。
七天大聖の体術は適材適所の部位の身体能力をあげるため、処刑刀は灰が魔法を使ったことに気を取られ、本来発生するはずもない鍔迫り合いのことを完全に忘れてしまっていた。
学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださりありがとうございます。腹痛の夕凪です。
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