学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆   作:夕凪の桜

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五月が終わる…………


本気

処刑刀と灰の攻防は徐々にだが灰に傾いていった。なぜなら、最初は部分でしか七天大聖の体術を使えなかったが徐々にだが体が慣れてくると、よりスムーズに使うことができるため、今ではほぼ全身に使っていた。

いくら呼吸するかのように使えるとはいえ、普段使わないものを瞬時に最高の状態に持っていくことはできない。

特に、脳を活性化させる『蒼界』は最も難しい。腕を強化する『翠界』、脚を強化する『朱界』、肺などの内臓部位を強化する『白界』の三つはまだ難易度は低い。

『蒼界』、『翠界』、『朱界』、『白界』の4つを同時に発動させる、四界で灰は本領を発揮する。ここに『瞬閃』を同時に加えることは未だ灰はできない。全く違う星辰量の操作技術を必要とするためである。

 

だが、四界と呼ばれるこれを使ったが故に処刑刀は対応が出来なくなってきたのだ

 

灰に魔剣を大きく弾かれ、がら空きとなった胴を一閃する。しかし、もともとカウンターを予想していた処刑刀は弾かれる勢いを利用してバックステップを踏み、大きく距離を取っていた。そのため、灰は大きな隙を作ってしまい、ずっと静観していたフードの女が攻撃する隙を作ってしまった。黒いハルバートによるスイングは急いで刀を引き戻した灰を吹き飛ばした。

 

だが、この女の介入は処刑刀にも予想外だったらしい。

 

「彼の相手は私一人でやる。君の助けは必要ない」

「ふん、肩で息をしているお前に対し、あいつは余裕な表情だぞ?まだ強気でいるつもりか」

「悔しいが、そのようだな」

 

二対一にこれからは移行するらしい。

 

「すまないね、これは正当な戦いではないからね。悪く思わないでくれ」

「そっちがその気であるのなら、僕もそれ相応の対応をさせてもらいますよ」

 

この二人は見誤っていたのだ。今までの灰が全力であると。処刑刀の少し上の実力であると思ってしまったのだ。

灰は七天大聖の四界を解き、『瞬閃』を使う。殺戮のための剣技を使用した灰は殺意の顕現させる。

四界はどちらかというと一対一向きである。全てを活性化させているとはいえ、その中でも星辰量の大小をつけなければ体がパンクする。

 

それに対して初速で限りなく最高スピードに達するこの剣技は、相手に認識されることなく相手を斬り伏せる。

四界を使用した時は溜めや淀みが生じてしまい、どうしても初速が遅くなり、加速を生んでしまう。それではどうしても相手によっては認識されてしまう。それすら許さないのが、この瞬閃である。認識されないが故に一対一よりも多数を相手するときにこれは有効である。

 

 

「我は認識阻害に力を割いている以上お前のサポート程度しか出来ん」

「それで充分だ」

「気をつけろ、奴の放つ殺気が変化している」

 

 

フードの女はやはり、認識阻害を使っていたらしい。阻害系統には忌避も含まれる。

だが、認識阻害に力を割くのはやめないらしい。灰はそもそも相手の事など眼中になかったが、そんなことは知る由もない。

 

灰は自分から解き放たれている殺気を制御する。莫大な殺気が暴れていると灰自身のものであっても邪魔になるのだ。

だが、殺気をコントロールすることは普通はできない。殺気というものは自然と発せられるものであるからだ。

 

 

「お前………何人殺したことがある……?」

 

フードの女はそんなことを聞いてきた。何の脈略もなく、だ。

 

「お前のその殺気、人を一人や二人殺した程度では出せるはずもない、濃密な死の気配がする。本当に学生か?……」

 

殺気というものは死を吸収し、より濃密となり相手を恐怖で支配する。灰の殺気は女が今までに感じたことのないほど濃密であったのだ。

 

「どうでしょうね。一人も殺してないかもしれないし、あるいは大量殺人鬼かもしれませんね」

 

わざわざ答えるはずもなく、はぐらかす。それに、こうやって話すのも飽きてきたのでそろそろ終わらせることにする。

 

「せいぜい生き延びてくださいね」

 

その言葉と同時に灰は『瞬閃』を発動する。

一瞬で処刑刀の目の前に現れ、先ほどと同じ鳩尾に左の拳をめり込ませる。先ほどよりもより高密度の雷は一瞬で処刑刀の全身を駆け巡り、身体を麻痺させる。魔剣を中段と下段の間に構えているため、『雲雫』では簡単には有効打が決められない。そのため左手を使うことにした。

 

処刑刀は声すらあげれずに、全身を激痛に支配された。

それでもなお膝をつかないのはこの男のプライドだろう。

 

「ちっ………!」

 

一瞬で移動した灰の姿を見失った女が、処刑刀に攻撃する時に姿を認識したため、黒いハルバートを灰に向かって振り下ろす。

だが、そのようなことは灰は読んでおり、すでに『瞬閃』を使われた後であった。地面を深くえぐったハルバートをすぐに自分を守るために引き戻し、警戒するもどうやら灰は処刑刀を狙っていることに気づく。しかし、気づいたところで何もできない。

 

その圧倒的な速度に、この二人はついていけないのだ。

 

「くっ、なんなんだ!こいつのデタラメな速度は!」

 

灰色と金色のの閃光が二人の周囲を縦横無尽に行き交っている。周りから不規則に降り注ぐ雷、死角から突然襲いかかってくる音速を超えた斬撃、ギリギリ反応ができるが故に余計に神経をすり減らしていた。

二人は灰の先ほどの攻撃の後に背中合わせで死角を値切る限りなくしていた。だからこそ、今までの灰の攻撃を凌げていた。そうでなければ、灰の攻撃をしのげるはずがないのだ。

 

「はあ、はあ、君を侮りすぎたようだね。やはり、君は我々の最大の敵だね」

 

所々から血を流し、肩で息をしている二人は灰が生み出した数百の雷の槍に頭上を包囲されており、もはや逃げることは出来ない。灰が『瞬閃』を使って一、二分で二人は簡単に追い詰められた。

 

「なら、そろそろ全力で逃げに転じようかね」

「できると思っているのか?」

 

灰は二人を逃すつもりもなく、警備隊の本部に連行する予定である。

 

「それは、やってみないとわからないさ!!」

 

すると女から黒い霧のようなものが高速で灰に向かってくる。灰だけではなく、少し上に展開していた数百の雷の槍にも襲いかかってきた。

突然のことで対処が遅れる灰。まさか自分だけではなく頭上の雷にも同時に襲いかかってくるとは思わなかったので一瞬動揺してしまい、対処が遅れてしまい、逃げるには十分な隙を与えてしまった。

 

霧が晴れるとそこに二人の姿はなく、荒々しい戦闘の後だけが残っていた。

所々に飛び散った血痕は太陽によってより赤くなっていた。

 

 

「隊長に聞かなきゃいけないことが増えたな……」




学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださりありがとうございます。
夕凪です。

ここのシーンは思いつきで書いたのですが、出来がそんなに良くないですね……
次で第二章は終わらせます。ちょうど学校再開のタイミングですね。

学校の対応が決まり、2日に一回のペースでは投稿できると思います。
これからも宜しくお願いします。
それでは!
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