学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆 作:夕凪の桜
鳳凰星武祭に向けた訓練の最終日、つまり鳳凰星武祭の前々日に行った訓練の後に行われた恒例の反省会は灰の辛辣な言葉が発せられるかと思われたが、そんな事はなく、ユリスに対して少し言ったぐらいで他は概ね褒め言葉であった。なぜかと言うと鳳凰星武祭目前で精神的ダメージを与えるわけにはいかないという、灰の気遣いであった。
そのまま解散の流れになるのだが、灰は綾斗と話したいことがあるので引き止める。
「綾斗、少し話したいことがあるからいいか?」
「うん、いいよ」
別に断る理由もないのでー綾斗はすんなり了承する。
「それは私達は帰って休むとするか」
「お疲れ様でしたです!」
「ん、おつー」
女子三人は灰が綾斗を引き止めたことを特に気にすることなく出て行ってトレーニングルームは二人きりとなる。
「それで灰。話って?」
「うーん、二つあるけど、とりあえず『黒炉の魔剣』持ってる?」
灰が綾斗を引き止めたのは伝えたいことが一つ、もう一つは伝えるか悩んでいた。
「あるけど、なんでだい?」
腰のホルダーから『黒炉の魔剣』の発動体を取り出して聞き返してくる。
いきなりそんなことを聞かれたら、誰でも同じ反応をするだろう。
「少し貸してもらえないか?」
「それは別にいいけど」
綾斗はより灰の行動が理解できなかった。
魔術師である灰は基本的に純星煌式武装との相性が悪く、使うことはできない。
そのため、少し躊躇いながらも発動体を灰に渡す。
「ごめん、急にこんなことを言って。ただ、確かめたいことがあってね……」
発動体を受け取った灰は躊躇いもなく星辰量を込めて起動する。
「ちょ、ちょっと!いくらなんでも灰は……」
魔術師なんだから起動は無理だよと言おうとしたが、口からその言葉が出てくることはなかった。
なぜなら『黒炉の魔剣』は拒絶することなく、灰の手の中にあった。
もちろん、灰が綾斗の星辰量の波長に合わせたわけではない。
ただ、武人としての灰の高みを瞬時に理解した『黒炉の魔剣』が大人しくなっただけである。
こいつになら、触れられても文句はないと。
「ほんと、気難しい性格をしているね、こいつは」
『黒炉の魔剣』から発せられる感情のようものを灰は薄々と感じ取っていた。
「さすがに武器として使うことは許してくれないみたいだけど、ただ持つだけなら許してくれるみたい」
「だとしても、どうやって………」
その疑問は当然のことだろう。
魔術師である灰がなぜ気難しい性格の『黒炉の魔剣』を起動することができたのか、それはあることが原因である。
「『黒炉の魔剣』が僕のことを武人として認めてくれたのもあるけど、何よりも僕はね、純星煌式武装の開発をしたことがあるんだ。それが理由かはわからないけど、純星煌式武装を起動するぐらいなら出来るんだ」
純星煌式武装を開発したことのある人間なら誰でも触れるわけではない。ウルム=マナダイトとの親和性は高くなるが、それは自作したものにのみ適用される。ただ、灰の場合もともと魔術師としては珍しくウルム=マナダイトとの親和性は高く、純星煌式武装を開発したことでより親和性が高まった故に『黒炉の魔剣』を扱うことが出来るのだ。
「まあ、詳しいことはよくわからないけどね」
灰はさすがに詳しくは教えない。『
それはさておき、なぜ灰が綾斗を呼び止めたのかというと、『黒炉の魔剣』において気になることがあったからだ。
「綾斗、こいつをしっかりと扱えている自信はあるか?」
なぜ、こんなことを聞くかというと鳳凰星武祭で優勝するには『黒炉の魔剣』の力をもっと引き出す必要があるからだ。
「ううん、どちらかというと振り回されてる感じかな」
「まあ、今じゃただのよく切れる剣だもんな」
灰がそんなこと言うと『黒炉の魔剣』が心外だと言わんばかりに高熱を発する。
「あっつ!!わかった、わかったって!別にお前が弱いってわけじゃないから!!」
ふんす!っとそんな擬音が聞こえてきそうな感じで『黒炉の魔剣』は高熱を出すのをやめた。
「はぁー、めんどくさ………」
そんなことを言ったら再び『黒炉の魔剣』が起こるかと思いきや、そんなことはなく静かであった。
「触れなば熔け、刺さば大地は坩堝と化さん。こいつの能力はそれに見合っている。たとえば、こういう風にね………!」
『黒炉の魔剣』に少しだけ星辰量を込めてトレーニングルームの床に突き刺すと灰や綾斗のいる方向とは逆の方向に向かって床が赤熱化して溶けていった。
「とまあ、こんな感じで軽くでも、十分過ぎるぐらいの威力は持っているはずだ………って、こら!余計に星辰量を吸おうとするなこのクソ魔剣!!」
なんと表現すればいいかわからないが、『黒炉の魔剣』が遊んでいるように見える。
事実遊んでいるのだろう。吸っても吸ってもいくらでも星辰量が湧いてくる灰は遊ぶのにはちょうどいい。
自らの力で浮遊した『黒炉の魔剣』は綾斗の前に戻ってきた。自分の主の元に帰ったのだろう。
「まあ、今のを見ればわかると思うけど、こいつらには意志のようなものがあるとか言われてるが、意志がちゃんとあるんだ。だから、今みたいにじゃれつくこともある。うまく対話できればね」
「なんで、灰はそんなに扱いが上手いのさ?」
その疑問は当然であろう。誰もが真っ先に考えつくことだ。
「こいつらの望む扱いをしてやれば、こいつらは嬉しがって反応してくれるのさ。それをうまく読取らなきゃ、使い手としては未熟だぜ、綾斗」
「僕にはまだまだ、出来そうにもない話だよ……」
「いいんだよ、戦いの中で見つけることの方が多いんだから。僕からの用事はこれで終わりだけど、綾斗は何か聞きたいことはあるか?」
自分の都合で残ってもらったのだ、何かあればそれを聞くのが筋であろう。
「うーん、特にないかな。むしろ勉強になったぐらいだし、助かったよ、灰」
「なに、僕は四人が鳳凰星武祭で勝ち残れるように助言してるだけさ。それに、綾斗も気づいてるだろ?」
なにを、とは灰は絶対に言うことはないだろう。灰はこういう場合、大体は背中を向けて何処かへ行ってしまう。現に今もトレーニングエリアから出て行こうとしている。
「そんじゃ、綾斗。鳳凰星武祭勝ち残れよ」
それだけ言い残して灰は立ち去っていった。
「さあ、面白くなってきたじゃないか。楽しませてくれ、綾斗、ユリス、沙々宮、綺凛」
後日談、灰はクローディアにトレーニングエリアの床を溶かしてしまったことを説教されたとか。
学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださりありがとうございます。
生活リズミが変なことになっている夕凪です。
前回まで三話にわたって書いた最終調整の部分なのですが、個人的に出来が悪いので、誠に勝手ながら消させてもらいました。今は2日に一回投稿で精一杯なので、他の部分を編集する余裕がなくて。そのため、後日しっかりと書き直してあげる予定です。
綾斗の扱いが本当に難しい…………
そのため、冒頭部分が消しても支障がないようにしてあるので少し違和感があるかもしれません。
皆さんは最後に灰が言ったことの意味、なんとなくわかりましたか??
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それでは!!