学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆 作:夕凪の桜
直さないと………
中庭の周りに存在する茂みから発射された矢は群衆の間をすり抜ける前に灰が腰から『雲雫』を抜き放ち両断される。
群衆の間からユリスと紫の髪をした少年。彼が噂の転入生か。二人が灰のことを見て違う表情をしていた。ユリスは灰を見て目で襲撃者を捕まえろと言ってくる。そして、少年はユリスを押し倒しながら自分以外にも襲撃者の存在に気づいた人間がいる事に驚いている表情だ。
しかし、転校生くん。君は勇気があるね、あのユリスを押し倒そうとするなんて。
お二人の事はまあ、誰かがどうにかしてくれるだろう。
おそらく騒ぎを聞いたクローディアあたりが。
「さて、僕は襲撃者さんのところに行こうかな。手加減なんてしなくて良いんだもんね」
灰は朝の警備隊の仕事で少なからずストレスが溜まっていて襲撃者は絶好の標的とされたのだ。
「さてと、おかしな星辰量をもつ襲撃者さんは誰なのかね」
灰の登場に驚いていた襲撃者だが、すぐに踵を返し逃げようとする。
おかしな星辰量。灰は『凍氷の皇帝』の力を使ったあと、何故か人それぞれの魔力の波長を読み取ることができたのだ。無論しっかりと集中しないとそれぐらいのオンオフは灰なら簡単にやってのける。
慣れ親しんだ、それこそシルヴィアとオーフェリアの星辰量の波長は直ぐにわかる。
だが、この時感じた星辰量は体内から発生するのではなく、あらかじめ込められた星辰量に感じたのだ。そう、この襲撃は魔術師か魔女の能力によって遠隔に行われていると、灰はその時直ぐに分かった。
「人形か、面白い……」
茂みの中へと消えていった襲撃者を追いかけるが、正門にはまっすぐいかず、何回も入り組んだ校舎の間をすり抜けるため流石の灰も見失ってしまう。
「ちっ、これ以上追うのは流石に無理か……ユリスに小言を言われそうだ」
人形を見失ってしまったのは痛手だが、これで相手も灰のことを敵と認識し襲ってくるか、逆に警戒し襲ってこないかの二択のどちらかを取るだろう。中途半端なことはしないはずだ。
だが、灰にとって襲撃よりもユリスの小言の方が怖いのだ。
教室に入り自分の席と椅子を引きどかっと座る。目を閉じ天井を見る。まためんどくさい事に巻き込まれた自信があるからだ。
「はぁー、僕に平穏は訪れないのか………」
星武祭の出場権を使いきり、ある程度静かに暮らせると思ったがどうやらそれは不可能らしい。
「序列1位なのに何を腑抜けたことを言っているのだ。お前は」
後ろから声をかけられる。どうやら後ろの席の人が来たらしい。
「だって、しょうがないじゃん。朝から中庭で花火大会やってるから見てたら変な奴いるしー、流石に放置しておくわけにもいかないじやん」
クローディアから事前に次の鳳凰星武祭に出場し活躍すると思われていた選手が何者かに襲撃されていたのを聞いていたのだ。
ユリスも前々から鳳凰星武祭に出ることは聞いており、襲撃される可能性があると思っていたが、まさか今日、決闘をするなんて予想してなかったからだ。野外で決闘なんてしたら襲撃の良い的だ。油断していたのは灰も否めない。
「た、確かに朝のは助かった。それは礼を言う」
「お姫様も素直じゃないねー、素直にありがとうって言えば良いのに」
すると隣の矢吹が茶化してくる。こいつは本当に………………
「う、うるさい!!お前は黙ってろ!矢吹!!」
まあ、当然ユリスは怒る。まあ、これがいつもの光景だからユリスも本気で怒っているわけではないのはわかる。
はぁー、ため息をつき、ユリスは灰の方を見て本題に入る。
「それで、襲撃者はどうしたんだ」
朝の襲撃者、それがユリスが一番聞きたかったことだろう。
「どうしたもこうしたも、逃げられたからこうしてるの!」
星猟警備隊に所属してから色々な物事を解決していたため、襲撃者も捕まえられると思っており、逃げられたことはかなり精神的に来たのだ。
「お前でも逃すとなると捕まえるのは厳しいか………」
「ただの植え込みしかないところだったら捕まえられたけど、あいつ、校舎の間をすり抜けていくから加速が出来なかったんだよ!あーもーやだ、寝る」
ぐでーと机に突っ伏す。もちろん寝る訳ではなく、ただ机に机に伏せてるだけだ。
「はあ、ユリス。これからは屋外で決闘なんてするなよ?」
とりあえず言いたいことは言わせてもらう。
「当たり前だ。今日のような事は流石に私も懲りた」
どうやら流石のユリスも襲撃されたことに危機感を抱いたらしい。
「まあ、何かあったら言ってくれ。力にはなれると思うから」
学園内で星猟警備隊の幹部としての権力は使えないが、それでも鳴神灰個人としての力だけでも十分すぎるぐらいだ。大体の事はそれだけで事足りる。再開発エリアや歓楽街のガサ入れする時ぐらいしか星猟警備隊の権力を使わざるおえない。そもそもそんな事になる事なんてないに等しい。
「頼もしい限りだ。ただ、たいていの事は自分で解決出来ると自負している。だが、灰。お前の力が必要になるときは素直に借りるとしよう。お前の事は信頼してる」
ユリスは人と馴れ合う事を嫌うが、灰の事は信頼しているようだ。
「信頼されてるようで何より。なんか無駄に疲れたから授業まで寝るからユリス起こしてー」
朝の仕事は簡単であったが数が多すぎて流石の灰も疲れたらしい。
後ろからユリスの溜息が聞こえたような気がするか気にしない。視界の端に噂の転校生君が来たように見えたが、今は寝る事を優先する。
転校生君は割とギリギリできたようで八津崎先生が直ぐに来てしまい、灰は夢の世界に入る事すらできずにユリスに起こされた。
灰の学校の成績は平均よりも上であるが最上位ではない。上の中ぐらいだ。序列1位で成績もそこそこ優秀なら何も問題はない。
まあ、アーネストに関しては成績も最上位であり、本当にどうかしてると思っている。
授業が終わり、クラスのほとんどが転校生君の周りに集まり今朝の決闘について聞きたがっていた。
「矢吹、そう言えば今朝の決闘の理由、結局何だったんだ?」
転校生君………いや、八津崎先生が天霧綾斗って言ってたな。綾斗とユリスの決闘の理由について聞いてなかった事を思い出し、離れたところにいる矢吹に声をかけた。
「うんぁ?今朝のか?何でも天霧がお姫様の着替え覗いたらしいんだ」
ひゅー、彼は初日からすごい事ばっかするもんだね。着替えを覗いたり、押し倒したりと、誰もやらないような事ばっかやるもんだ。
「そりゃ、ユリスも怒るわけだ。だからあんなイレギュラーな形で決闘する事になるのか」
あの決闘がどうやって終わったか知らないが、まあ、取り敢えずはいいだろう。
「まあ、天霧もお前さんが追いかけていった襲撃者の事には気づいていたっぽいし、割と直ぐに序列入りするかもな」
星導館は昨シーズン灰以外に目立った成績を残したものはおらず、層の薄さが露呈してしまった。
「たしかに、ありえるかもな」
そこで話を切り、再び自分の席に戻る。次の教師は色々とめんどくさいから早めに着席していい子にしているのだ。
(序列入りか………あの遠距離からの攻撃を見破る事が出来るのはそれこそ序列上位者、『冒頭の十二人』クラスの力が無いと不可能だろう。特待転入生らしいけど、面白いじゃ無いか………)
アスタリスクに巻き起る新たな風を彼は巻き起こしてくれる。そんな気がしたのだ。
後ろで何やら矢吹と綾斗が灰について話しているが気にしないで次の準備に取り掛かる。
綾斗が灰と話す事になるのはまだ少し先の話である。
学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださり有難うございます。夕凪の桜です。
連日投稿2日目、何とか余力があるところです。若干頭痛がしていて長引く予感がしたのでちょっと早めに投稿させていただきます。早めに寝て明日に影響しないようにしないといけませんので。
ですが、本編に入れてウキウキが止まらなくて執筆活動もどんどん進んでおり、結構速いペースで書いてて文章が意味わかんなくなってたりしてそうなので、明日しっかり修正させてもらいます。
ゴールデンウイークが終わり、若干気の緩みが発生しているらしいですが、皆様はどうでしょうか?
最近は近所の子供達が(自分もまだ大人とは言えないですけど)外の道路で遊んでて、元気がいいなーって思ってます。自分は は外行くのがめんどくさくなってそろそろやばいです。
さて、自分は最近抱き枕を買ったんですが、抱き枕カバーにシルヴィアかオーフェリアの物がなくて悲しくなってます。皆様は知ってたりしませんか??
アクセス数が2300、お気に入り登録が40を超えて自分も嬉しい限りです。
皆様のご期待に応えられるような文章を書きたいなと思っているので、これからもお読みいただけたら幸いです。
書きあがり次第、人物紹介も投稿できたらなと思っております。
最後に誤字や、ここはこう変えて欲しいなどありましたらお気軽にお願いします。
感想も匿名でも書けるようにしてあるので気楽に書いてもらえればと。
感想やご指摘は皆様が自分の作品をしっかりと読んでくれていると思えて励みになります。
もしよければ評価もしていってもらえたら幸いです。
感想、評価はこの後書きの下にありますので何卒よろしくお願いします。
それでは次の話で。