学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆 作:夕凪の桜
結局灰は綾斗とは話さないまま新学期初日を終えた。
放課後は星猟警備隊の本部に立ち寄り、今朝の報告をする。時間がなかったので一緒に居た人達に報告を任せていたが、一応自分でも報告しておこうと思ったのだ。報告と言っても灰の場合鎮圧出来ました、ではなく治療院送りを出しませんでしたという報告になる。灰とヘルガに関しては鎮圧するのは当たり前というのが今の警備隊の共通認識だ。事実、この二人に鎮圧出来ない暴動など『翡翠の黄昏』ほど大規模なもので無い限り鎮圧可能だ。灰は今回のような仕事は初めてだったので手加減の具合を間違えないかが不安がられたのだ。
結局治療院送りがゼロだったのでヘルガも特に何も言わず、問題はなかったらしい。
警備隊の本部から家へとのんびりと帰る。
「そう言えばシルヴィも今日は入学式の挨拶があるからアスタリスクに居るんだっけか、家には帰ってくるのかな………」
昨日までツアーがあり、明日からまた別のツアーが始まるため今日は家で過ごせるかもしれないが、時間が無けれな明日のツアー予定地に先に行く事になる。詳細は当日までわからないらしい。まあ、ペトラさんあたりがどうにかしてくれるだろう。
「………だーれだ♪」
後ろから抱きつかれ、手で目隠しをされる。ただ、身長差があるのか背伸びしているため背中に少女であることを証明する確かな胸の膨らみを感じる。
そんなことをする人物は二人しかいないが声的にもうわかっていた。
「うーん、シルヴィかな」
わざと迷った風に答える。
すると少女、シルヴィアは頬を膨らませながら器用に自らの胸の谷間に灰の左腕を挟み込むようにして腕を絡める。
クインヴェールの自分の寮に一回寄って変装してから家まで来るので、身バレすることも無い。
「そこは迷わないで答えてほしかったなー」
胸の柔らかい感触が制服越しに伝わってくるがここで反応するとシルヴィアにからかわれるのはわかっているのでスルーする。
「もちろんシルヴィって、すぐ分かったけど、せっかく聞かれたんならちょっと遊んでみようかなって」
流石にシルヴィアに後ろから抱きつかれたら灰はすぐにわかる。
「そういうことなら、許してあげちゃう」
そう言うと久しぶりに灰に会えたことで寂しかったことを示すように路上なのに灰の腕に頬ずりをする。 頬ずりをしているためゆっくりと手を絡めながら歩く。この二人の間で作られる世界に他の周囲にいる人たちはわざわざ近づこうとはしない。そのためある程度個人的なことも話しやすい。
シルヴィアはツアーが終わり、家で過ごせる時の初日は物凄い甘えてきて、猫のようにくっついてきて、これがまたいつも以上に凄い可愛いのだ。
「それにしても、星猟警備隊の幹部服もだいぶ着慣れてきたね。最初は着るだけで緊張してきたのに」
「なんか、ここまでくると逆に緊張しなくなるよ。
「今日は家に居られる?」
灰が一番聞きたかった事を尋ねる。夜ご飯を家で食べたとしても夜中にまた次のツアーに出発することがたまにあるからだ。
「うん、ペトラさんが今回はゆっくり休んで来いって。だから数日間は一緒に居られるよ」
なるほど、シルヴィアの機嫌がいつもより良い理由が分かった。
「本当は今日の朝に連絡しようかと思ったんだけど、忙しくて時間がなかったの」
シルヴィアは家でご飯を食べる時は事前に連絡してくれる。シルヴィアが居ない時はオーフェリアがご飯を作ってくれるため事前に連絡しておかないとオーフェリアが困るからだ。
「あ、でも、ちゃんとフィーアちゃんにはお昼ぐらいに連絡してあるから安心して」
ちゃんとオーフェリアには連絡してあるらしい。多分灰達の家庭事情を知っているペトラさんが気を利かせてくれたのだろう。あの人はこういう気遣いをさり気なくしてくれるので灰としても大いに助かっている。
「久しぶりにフィーアちゃんの料理を食べられるから楽しみだな〜」
料理を教えればどんどん上達していくオーフェリアの手料理はシルヴィアのお気に入りだ。今では三人の中で一番料理が上手い可能性まである。
「フィーアはどんどん料理のレパートリーも増えていってるらしいし、どんどん僕が料理する必要がなくなりそうだよ」
これに関しては灰にとって嬉しいことだ。料理をするのが嫌いでは無いが、好きな人の手料理の方が何倍も美味しいからだ。
「いいのいいの。好きな人に手料理を振る舞えるのは女としてこの上ない幸せなんだから」
そう言うと頬ずりに満足したのか、頬ずりを止めて腕を絡めるだけにする。
その後家に着くまでの間、今回のツアーはどうだったとか、ペトラさんが厳しすぎるとかの話を聞いた。灰も今日あったことを話す。主に綾斗の事だが、それでも灰がここまで興味を示すという事は面白い人物なのだとシルヴィアも思った。
時間にして15分ぐらいして家に着き、鍵を開けて家の中に入ると鍵が開いた音が聞こえたのかオーフェリアが一階に降りてくる。
「おかえり。灰、シルヴィ」
この家はクインヴェール、レヴォルフ、星導館からの距離がほぼ同じなので、三人が学校行った日はほぼ同じ時間に帰ってくるが、今日は灰は星猟警備隊の本部に行き、シルヴィアはツアー帰りなので遅く、オーフェリアが一番早く家に着いたのだ。
靴を脱ぐとシルヴィアはオーフェリアに抱き付いた。
シルヴィアはとにかく帰ってきた日はスキンシップが激しくなる。その対象は灰だけではなくオーフェリアにもだ。
「フィーアちゃーーーーん!!!寂しかったよーーー!!!」
二人の身長はほぼ同じなので抱きついた時にほぼ決まって頬ずりをするシルヴィアはオーフェリアの頬に頬ずりを出来る。
スリスリと頬ずりをされるオーフェリアの顔はどこか嬉しそうにしている。久しぶりに会えて、オーフェリアも嬉しいのだろう。
「ねえ、シルヴィ、今からご飯作るところなんだけど、もし良かったら一緒に作らない?」
未だに抱きついている状態のシルヴィアにそう問いかける。灰からはシルヴィアの顔は見えないが、反応からして喜んでいるのだろう。
そのまま二人は揃って階段を上っていった。
仲のいい二人を見て自分が幸せ者であることを感じる。
階段の下にある部屋、灰の星猟警備隊の制服や星導館の制服が置かれている。荒事が多い星猟警備隊の服が八割を占めており、私服は三階にまとめて置いてある。
一階にある風呂を沸かしてから星猟警備隊の服を脱ぎ、朝着ていた服に着替える。
それから3階に上がる。二階はシルヴィアとオーフェリアが料理をしているためいい匂いが充満していた。
3階に上がり、ウルム=マナダイトなどが保管されている部屋に入る。
真ん中の台座には二本の純星煌式武装ありその後ろの壁に一本の大きな鎌がかけられている。
この鎌は鳳凰星武祭、獅鷲星武祭を一緒に勝ち抜いた戦友が使用していたものだ。だが、王竜星武祭を前に六花を去った。序列2位まで登り詰め唐突に消えたため一時期大騒ぎになった。
『俺にはこのアスタリスクを護るための力が足りない。俺はいつか必ず戻ってくる。それまでどうかこいつを預かっていて欲しい』
最後にそう言い残し本当に消えてしまったため、灰も今どこにいるかはわからない。だが、戻ってくると言った以上いつかまた会えることを信じて灰は待ち続けるのだ。
「お前の求める護るための力が見つかることを祈っているよ」
だが、灰は別れる前に戦友が口にした言葉を思い出し、より一層不安になる。
『灰、『凍氷の皇帝』はなぜ、革命を起こしたと思う?』
とっさのことに何も反応できなかった灰であるが、戦友はこう続けた。
『あの人は護るために戦ったと、思っている。俺はそこに答えがあると思っているんだ』
灰の返答を待たずして立ち去る戦友の姿を灰はただ見送るしかなかったのだ。
学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださりありがとうございます。夕凪の桜です
コーヒーを用意してくださいと言ったものの、最後は伏線を張るためにほとんどコーヒーの意味がないという………
次は激甘で行ける、はずです。
今回と次の話は完全に自己満足的な部分があるので、可愛いシルヴィアとオーフェリアを読んで想像してもらえればと思います。
恋愛描写が下手くそなのは自分でも反省してます。なにせそういったものを経験したことがないもので………
毎日投稿3日目、だいぶ書くのにも慣れてきて楽しい限りです。
ただ、毎日投稿してたりすると文章をしっかりチェックする時間がないので、この後、確認作業をしようと思います。
コロナウィルス感染者が減っているらしいのですが(若干ニュースの情報を信じられないので)これだと学校が再開されて投稿するのが厳しくなる可能性があります。6月から学校が始まる予定なので、それまではのんびりとですが投稿して行きたいつもりです。出来れば鳳凰星武祭終わるまで。
最後に、誤字やご指摘があれば遠慮なくお願いします。
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それではまた次の話で。