ある少年を徹底的にディする体制をとっているので、ご了承を。
理由? もうそれしかないから。
バウスタジアムで無事にジムリーダーであるルリナに勝利し、みずバッジを入手したアスベルは、3つ目のジムバッジのために再び旅立っていた。
「この鉱山を越えればエンジンシティで、途中でカブさんに会えるかもしれない。 ホップはそう言っていたな」
その矢先、アスベルはホップと再会して軽くバトルをした。 一対一のそのバトルは今回はアスベルの勝利となり、ホップは悔しがりながらもアスベルがしっかりと強くなれていることに安堵していた。 そのときにホップは、次に自分達が挑む相手であるジムリーダー・カブについての情報を教えてくれたのだ。
「ついで感覚ではあるが、オレ達も第2鉱山で修行して強くなろう。 それに……」
ジムリーダーが修行の場としてそこを選んだのだから、自分達もそこで修行をすればそれなりには強くなれるはず。 少しだけそう思っていた。
「先ほどハプニングでゲットしてしまった、この子も強くしなければ………」
この道中にあった池に何故かいた、あるみずポケモンの出現に驚いたアスベルは、驚きのあまりに空のボールをそのポケモンに投げてしまった。 その結果、アスベルはそのみずポケモンを仲間にすることになったのである。
「な、タマンタ」
ボール越しに、そのポケモンの名前を口にした。 次のジムバトルの相手がほのおポケモンであることから、このタマンタは活躍できるかもしれない。 だから、今のうちに鍛えておけばいいとアスベルは思っていた。
「ここが……第2鉱山か」
そう考えている間に、第2鉱山に到着した。 この鉱山を越えていけばエンジンシティへ向かえるし、同時にジムリーダーと、ホップにも会えるだろう。 そう思ったアスベルは鉱山にはいる。
「……あなた……ですか」
「!?」
鉱山にはいってすぐに、声をかけられたのでアスベルは警戒してそちらを向く。 するとそこには、以前に会いバトルをしたトレーナー・ジムチャレンジャーのビートがいた。
「キミは…ビート、だったか。 こんなところでなにを?」
「あなたには理解できないようなことですよ」
「ふぅん……」
説明をしてくれないのであれば興味はない、とアスベルはおもい適当な返事をした。 それをききビートは彼は自分に無関心だと悟ったらしく、少し苛立った様子で彼に話しかけ続ける。
「……………ところで………レベルの低い勝負をすると、ポケモンが可哀想だよね?」
「ん?」
「ですので、弱いトレーナーの相手をする暇などないのです……ですが、同時に弱い相手をつぶしてあげるのも、優しさですよね」
「……それは、違うと思うぞ」
「なに?」
アスベルはビートの言葉を否定して、その上で語る。
「キミがどれほどの実力や自信があろうとも………キミに人の強い弱いを決める権利や器があるとは思えない」
「………なんですって?」
「………だが……逆にオレも、他人の力を見極める境地に達してはいない」
そう言ってアスベルは、ボールを構える。
「だから、ここでキミと勝負をしようと思う。 その境地に近づくためにも………」
「弱いことを承知で挑むとは愚かですね………委員長に選ばれた僕が、負けるはずがないんですよ!」
「ああ……オレも、負ける気はない」
そういって2人はボールを構え、そこからポケモンを出す。 お互いに一対一で勝負をしようと言って。
「今回はこのポケモンで参りますよ……ポニータ!」
「ではいこう、バチンキー!」
ビートが出したのは、ガラルの環境に合わせた能力を持つ、ガラルの姿のポニータ。 たいするアスベルが繰り出したのは、バチンキーだった。
先手をとって動いたのはビートのポニータであり、サイコカッターを放ってバチンキーを攻撃してきた。 それをバチンキーは回避し、ポニータに接近してダブルアタックを食らわせる。
「少しは成長したんですね、まぁほんの少しですけれど……」
「………」
ビートはそう言ってアスベルを挑発するが、アスベルは動じずにバチンキーに今度ははっぱカッターを指示してポニータを攻撃する。 攻撃をねんりきで弾き飛ばしたポニータは、再びサイコカッターでバチンキーを攻撃する。
「バチンキー!」
「再び、サイコカッター!」
サイコカッターを重ねて放ってくるポニータ。 だがアスベルは冷静に、バチンキーに指示を出した。
「そこだ、バチンキー! はっぱカッター!」
バチンキーはサイコカッターをはっぱカッターで打ち消して、そのままポニータにつっこんでいった。
「……!?」
「決めろ、ダブルアタック!」
そして、ダブルアタックをたたき込み、ポニータを戦闘不能にした。 この勝負は、アスベルの勝ちに終わる。
「今回もオレの勝ちだな」
「あなたが、まぁまぁ頑張るものだから………勝たせてあげようかなと思っただけですよ………!」
そういってビートは、ポニータをボールに戻した。 そんなビートをアスベルはじっと見ており、その視線に気付いたビートはなんですか、と彼に問いかける。
「それ………言ってて虚しくならないか?」
アスベルが口にしたのは、ビートの言い分に対しての感想だった。 それを聞いたビートは頭の血管が切れそうな衝動に駆られつつ、反応したら相手の言い分を認めることになると自分に言い聞かせ、言葉を返す。
「………まぁ…………少しだけ言葉を訂正しますよ。 弱いというより、ちょっと弱いですね」
「……そうか……」
「ですがジムチャレンジに勝ち上がることはないでしょうね」
「悪いが………それを決める権限はキミにはない、オレ自身だ」
それに、とアスベルは言葉を続ける。 まだビートとバトルをしていて思ったことがあるように。
「勝ち負けは素直に認められるようにならないと、後々恥ずかしくなるだけだと思うぞ?」
「………あなたはさっきから、一言よけいすぎますっ!!」
「事実を口にしていっただけだが……」
「……………」
無表情でそう言うアスベルに対し、ビートはこれ以上の会話は無駄だと判断し、彼の前から立ち去ることを決めた。
「…………さて、次はどこでねがいぼしを集めましょうかね………」
そう、つぶやきながら。 それを偶然にも耳に入れたアスベルは、いぶかしげにビートの立ち去っていった方向を見つめた。
「………ねがいぼし………?」
そういえば、ビートは第1炭坑でもねがいぼしを集めているようだった。 単純にダイマックスをさせたりダイマックスバンドを作るのであれば、一個あれば十分なはずだし、彼は確かにダイマックスバンドも持っていたのも確認している。 なのに、何故そこまでしてねがいぼしを集めようとしているのか。 彼のたくらみが、アスベルには理解できなかった。
「大丈夫、かな……」
そんなものに執拗に関わって大丈夫なのだろうか、とアスベルは、自分のねがいぼしが使われたダイマックスバンドを握りしめた。
ビートとの交戦を経験しながらも、アスベルは第2鉱山を進む。 道中では何度も、通りすがりのトレーナーとポケモンバトルをしながら。
「へいへいへいへい!」
「うわ……お前達は、エール団!?」
その矢先、アスベルの前にエール団が現れてアスベルに突っかかってきた。
「ちょっといいかな? キミってジムチャレンジに参加してーるよな?」
「それがどうした?」
「いやぁ~、すごいですよね。 是非お手合わせ、してくださいよ」
勝負を挑んでくる気だ、とアスベルは瞬時に悟りボールの入ったポケットに手をおく。 そのときだった。
「よー、アスベル!」
「ホップ!?」
どこからともなくホップが姿を見せて、アスベルと合流してきた。 そして、エール団の方を向いた。
「あれ、ファンに囲まれてるのか!? まるでアニキみたいだぞ!」
「それは違うだろ」
「ちょっとちょっと! お話中になんですか!?」
エール団に問われたホップにはにやりと笑って、彼らに告げる。
「おれはホップ! 未来のチャンピオンだぞ!」
「ナイス・ジョークです! 笑えない以外はおもしろいね!」
「そうか? じゃあ勝負しようぜ! トレーナーならそれで笑顔になれる! ……というわけでアスベル、一緒に戦うぞ!」
「ああ」
「チャンピオン推薦トレーナーの力、見せてやるぞ!」
「そこなのか」
わけのわからないやりとりだ。 そう思いながらもアスベルはホップとの共闘を受け入れた。
「仕方ないなー。 ジムチャレンジの厳しさを教えてあげーるかな!」
「なんかメンドーになってしまったな………勝負を捨てる気などないが…!」
エール団の2人が繰り出したのは、フォクスライとガラルの姿のマッスグマ。
「いけ、ジメレオン!」
「頼む、バチンキー!」
対するアスベルとホップは、それぞれジメレオンとバチンキーを繰り出した。 まずはアスベルが素早いバチンキーの動きを利用して、相手に向かってはっぱカッターを放ち、2匹に同時にダメージを与える。 フォクスライが反撃でバークアウト、マッスグマがミサイルばりを放ってきても、ジメレオンは耐えてみずのはどうで反撃し、相手を混乱に陥れた。
「ジメレオン、そこからはたく攻撃!」
「バチンキーはえだづきだ!」
相手が混乱している今がチャンス、そう読んだホップ達は攻撃をたたき込む。 そのダメージで相手の混乱は解除されるが、体力を削られたことは変わらない。 フォクスライとマッスグマは、同時に攻撃を仕掛けようとしていた。
「ホップ!」
「OK! ジメレオン、みずのはどう!」
相手の攻撃がくると気づいた瞬間、アスベルはホップに声をかける。 するとホップはそれにたいし頷いて見せ、ジメレオンに技を指示することで、相手の攻撃を妨げる。
「アスベル!」
「ああ! バチンキー、決めろ……はっぱカッター!」
そして、アスベルが相手にとどめをさすために、バチンキーにはっぱカッターを指示した。 そのはっぱカッターが相手のフォクスライとマッスグマを、同時に戦闘不能に追い込む。
「よし!」
「やったな、アスベル!」
「ああ!」
そう声を掛け合って、アスベルとホップはハイタッチをした。
「チャンピオンがアニキ………ダメアニキじゃないのがわかりました………」
「エール団は負けたら……さっさときえーるのです……!」
自分たちの敗北を悟ったエール団は、言葉通りにさっさと立ち去っていってしまった。
「なんなんだ、あいつらはホントに………」
「さぁ? それにしてもアスベル強くなったな、それでこそおれのライバルだぞ!」
「ホップも同じだろ? オレのライバルとして問題なく強さを手にしている」
「へへ、さんきゅ!」
先程の勝負で互いに感じたことを、そのまま話すアスベルとホップ。 エール団が立ち去り一件落着となったところで、この第2鉱山を訪れた本来の目的を思い出し、その話題に入る。
「……にしても、カブさんってどこにいるんだろうな?」
「さらに奥にいってみないか?」
「そうだな」
そう声を掛け合った2人は、さらに奥へと進んでいった。
もう少しで、エンジンシティ側の出口にたどり着くだろうと思われるポイントにつこうとしていた、そのときだった。
「アスベル、あそこ!」
「ん……誰かいるな………!」
2人の目の前にいたのは、エール団数名と、一人の男性。 少し白髪の入った髪に、それなりの年齢であろう男性だった。
「カブさんだ……!」
ホップの言葉で、あの男性がカブであることを再認識したアスベル。 彼の目の前にはエール団のポケモンであろう、数匹のあくポケモンだった。 それにたいしカブの側には一匹のキュウコン。
「………!!」
「き、キュウコン一匹で……!?」
カブは目の前で、エール団の数匹のポケモンを一気に相手にし、キュウコン一匹ですべて倒した。 加勢した方がいいのでは、と一瞬思っていたホップとアスベルだったが、その心配は杞憂であったと瞬時に悟る。
「エール団の諸君、特訓におつきあいありがとう! だが、働くトロッゴンの邪魔は許されないことです!」
「邪魔だなんてとんでもない………トロッゴンへのエールです」
「でも、ポケモン達がやられちゃって………もうバトルできないので、きえーるのです………」
そうエール団は口にすると、そこを立ち去っていってしまった。 立ち去っていくエール団に、カブは改めて忠告をする。
「応援はいいけど、邪魔はダメだからね!」
「さっすがはほのおのジムリーダーのカブさん! かっこいーぞっ!」
「!」
その直後のこと、ホップはカブに声をかける。 カブもすぐにその声に気づき、自分に近づいてきた2人の少年の顔を見て、ダンデ推薦のトレーナーであると気付く。
「きみ達はダンデくんが推薦したトレーナーである、アスベルくんにホップくんだね!」
「はじめまして。 ここで貴方がよくトレーニングをしていると聞いて、来ました」
「ああ。 ギリギリまでね。 この第二鉱山はいわタイプやみずタイプが多いから、ほのおのポケモンを鍛えるのにうってつけなんだよ」
「あえて、不利な場所を選んで?」
「そう。 それもすべて、君達のようなジムチャレンジャーと最高の勝負をするためだよ!」
その言葉から、カブはホップとアスベルの挑戦を快く引き受けてくれることが伝わってきた。
「……だが、じきに日が暮れるだろう。 このまままっすぐ進めばエンジンシティに到着するから、今日のところはホテルへまっすぐ向かい、そこで休みなさい」
「「はいっ!」」
「明日は燃えるよ!」
そう言ってカブは、エール団から守りきったトロッゴンを無事に送り届けるまで同行することとし、そこから走り去っていった。 残されたアスベルとホップは、あの一瞬だけみたカブのキュウコンの力を見て感想を口にした。 エール団に圧勝して見せた、あの力を。
「さっきのキュウコン、すごく強かったな」
「ああ」
そこでホップは、ダンデから聞いたことのある話を思い出していた。
「アニキが言ってたぞ……カブさんに勝てなくてジムチャレンジを諦めるトレーナーが多い……って」
「そうなのか」
彼はこのジムチャレンジにおける、ある種の登竜門のようなものらしい。 おまけに、ジムリーダーとしてはかなりのベテランで、ダンデのジムチャレンジャー時代からジムリーダーの地位に立っていたそうだ。
「うーっしゃあ!」
「!?」
「よーし、おれも燃えてきた! カブさんを越えるのも、おれの伝説の1ページだぞっ! というわけでおれはいくぜ、じゃあな!」
「ホップ!」
ホップはいの一番に走り去っていき、アスベルはハァとため息をついた。
「手の掛かるヤツだな……ほんとに………なんだかジムチャレンジをはじめてからのホップ、オレも手に負えない気がする………」
「キキッ?」
「ああ。 あのままでいてほしいような、少し落ち着いてほしいような………複雑な気持ちだな…………」
そんなホップの姿を見て、アスベルは苦笑しつつそう呟いていたそのとき。 アスベルはどこからか視線を感じて、ゾクリと背筋をふるわせた。
「………ん?」
周囲を見渡すが、野生のポケモンは所々にいても人の気配はない。
「今、なにかの視線を感じた気がしたが………気のせいか?」
そういいつつ、アスベルは第2鉱山を抜けていったのであった。
次回は、アスベルの秘密について触れる予定です。