彼女にも結構苦戦したなぁ。
今、アスベルはラテラルスタジアムに挑んでいた。 ラテラルスタジアムは、ジムリーダーふくめ、かくとうタイプの使い手が集まっている。 このジムミッションは回転する器に乗ってそれを操作しながら奥へ進んでいき、その先で待っているジムトレーナーと戦うというもの。
「タマンタ、みずのはどう!」
アスベルはそのジムトレーナー相手に果敢に立ち向かっていく。 先ほども、相手が繰り出してきたゴーリキーにたいしタマンタで果敢に立ち向かい、勝利をしたところである。
「よし、このルートが最後のはずだ……!」
まるで自分に言い聞かせるかのようにアスベルはそうつぶやき、最後の器に乗りまわりながら先へ進んでいく。 この動作を彼はここにくるまでに、4回ほど繰り返したのだ。 この先の部屋にあるボタンを押せば、このジムミッションはクリアとなる。
「よしよし、これでクリアだ……!」
そしてまた、そう自分に言い聞かせるようにしてクリアを示すボタンを力強く押した。 そうしてジムミッションはクリアすることができ、アスベルはジムリーダーへの挑戦権を手に入れることができた。
「…………はぁ………」
だが、準備室に入った直後、アスベルは座り込んで顔をうつむかせた。 その顔は青く、右目もどこか曇っている。 そんなアスベルの容態に気付いたリーグスタッフが、彼に声をかけてきた。
「チャレンジャー、顔色が優れないようですが……いかがなさいました?」
「……少し、酔ったな……」
「えぇ!? 大丈夫ですか?」
アスベルはこういう乗り物に、かなり弱いようだ。 事前にはなしてくれれば別の処置を行っていたのに、とリーグスタッフは思いながらも彼の安否を気にする。
「だ、大丈夫です! 酔い止めの薬を………たった今飲んだところなので………!」
「……そ、そうですか……」
アスベルの返事に対しリーグスタッフは苦笑しつつ、準備ができたのであればバトルフィールドに出てくれと伝えた。 アスベルはあらかじめ持っていた乗り物酔いを止める薬を飲み、控え室でしばらく休憩をした後、立ち上がる。
「…………ふぅー………」
そして、一呼吸をおいたあとで自分は大丈夫だと告げて、スタジアムのバトルフィールドに向かった。 自分と同じタイミングで反対側から、ジムリーダーであるサイトウが姿を現す。
「ようこそ。 改めて、ジムリーダーのサイトウともうします」
「挑戦者・アスベルです」
相手のサイトウは礼儀正しく礼をして、アスベルに名乗る。 アスベルもそれに併せて名乗ると、サイトウは引き続き語る。
「先も口にしたとおり、貴方のことはいとこであるマリオンから伺っています。 旅に出てからトレーナーとして……頭角を現していると………」
「…………」
「私も、直に貴方達の力を確かめましょう。 そして、貴方達の心がどんな攻撃にも騒がないのかも……!」
そして互いに位置に着き、サイトウは表情を引き締めボールを構える。 2人の準備が整ったところで、審判が試合開始の合図をその場に響かせる。
「では、いざ尋常に!」
「勝負!」
サイトウもアスベルもそう言うと、バトルフィールドめがけてモンスターボールを投げた。
「カポエラー、出陣!」
「頼む、アーマーガア!」
サイトウが一番手として繰り出したのは、かくとうタイプのカポエラー。 たいするアスベルは、最近進化を遂げたばかりの、アーマーガア。
「さぁ今回もラテラルスタジアムにてジムバトルが行われます! この勝負が、今年のジムチャレンジにおいてのラテラルスタジアム最初の試合となります! 最初チャレンジャーは、隻眼の公子アスベル! ジムリーダーはガラル空手の申し子・サイトウだー!」
「オレそんな呼ばれ方をされていたのか!?」
「……のようです」
大きく響きわたる実況に対し、アスベルはツッコミを入れた。
「アーマーガア、ドリルくちばし!」
「カポエラー、こうそくスピン!」
ドリルくちばしとこうそくスピンが衝突した。 双方は鎬を削りあうかのように威力が増していったが、やがて双方ともに弾け飛んだ。
「まだです、トリプルキック!!」
「はがねのつばさでむかえうて!」
カポエラーは再び頭を軸にし回転しながらアーマーガアに突っ込んでいき、3連続のキックを繰り出してくる。 それにたいしアーマーガアははがねのつばさで対抗していく。 再び激しい技の衝突が繰り広げられたが、手数の多いトリプルキックのほうが押し勝ち、アーマーガアは地面にたたきつけられる。
「アーマーガア!」
「そこで、いわくだき!」
さらにサイトウはカポエラーにいわくだきを指示し、アーマーガアにさらにダメージを与ようとする。 その一撃が急所に当たり、アーマーガアは大きなダメージを受ける。
「大丈夫か!?」
「グァ……!」
「カポエラー、さらにトリプルキック!」
さらにカポエラーはトリプルキックをしかけてきた。 それにたいしアスベルは、アーマーガアにある指示を出す。
「クッ……ここは一旦ひくぞ、とんぼがえりだ!」
「グアゥ!」
それに従ってアーマーガアは相手のカポエラーを攻撃しつつ、アスベルの手の中にあるモンスターボールに自ら帰って行った。 これが、とんぼがえりという技の効果である。
「なるほど、英断ですね」
「次はキミだ……頼むバチンキー!」
アーマーガアと入れ替わりとしてアスベルが出したのは、バチンキーだった。 相手の次のポケモンをみたサイトウは試合続行ですと言って、カポエラーにさらにこうそくスピンを指示してバチンキーを攻撃しようとする。
「ダブルアタックだバチンキー!」
そのこうそくスピンにバチンキーは、ダブルアタックで対抗する。 こうそくスピンをしていたカポエラーは、そのダブルアタックを前に弾き飛ばされながらも、回転を止めず体制を立て直し、今度はトリプルキックでバチンキーを攻撃してくる。
「ギキッ!」
「持ちこたえろ! そこからえだづきを繰り出すんだ!」
アスベルの声に答えて、バチンキーはカポエラーの攻撃を受け止めつつ、2本のえだでえだづきを繰り出した。 それが急所に当たったらしく、えだづきを食らったカポエラーは突き飛ばされそのまま戦闘不能となる。
「カポエラー!」
「おおっと、ジムリーダーのポケモンがおとされたぁ!」
「うぉぉぉ!」
倒れたカポエラーにお疲れさまですといいながら、サイトウはカポエラーをボールに戻した。 そして、次のポケモンを繰り出す。
「次は貴方が出陣です、ネギガナイト!」
そういってサイトウが次に繰り出したのは、白い羽や大きなくちばし、りりしい顔つき。 そしてネギで出来た剣と盾を持ったポケモン……ネギガナイトだった。
「バチンキー、まだいけるか?」
「キキキッ」
「よし、続けるぞ……まずははっぱカッターだ!」
そういってアスベルはバチンキーにはっぱカッターを指示し、バチンキーは技を繰り出しネギガナイトを攻撃する。 だがネギガナイトはそれを手に持っているネギを振り回すことですべて打ち落とした。
「なっ……」
「かたきうち!」
そして繰り出されたのは、自分の味方が戦闘不能になっている場合に威力の上がる技、かたきうちだった。 その技をまともに受けてしまったバチンキーは、戦闘不能となる。
「バチンキー……!」
「おっとここでアスベル選手のバチンキーが戦闘不能! さぁアスベル選手、この驚異的な力を持つネギガナイトにどう立ち向かうか!?」
「………よくやった、戻ってくれ」
アスベルはボールに戻ったバチンキーに労いの言葉をかけると、次のポケモンを出した。
「………ここは、キミに託そう……! ゆけ、タマンタ!」
アスベルが繰り出したのは、タマンタだった。 次のポケモンが出てきたことでネギガナイトは、再びリーフブレードで切りかかろうとする。
「タマンタ、こうそくいどう!」
それにたいしタマンタはこうそくいどうを繰り出して、相手の攻撃を回避しつつ隙をついてバブルこうせんを繰り出しネギガナイトを攻撃する。 ネギガナイトは、相手にねらいを定めてかたきうちで攻撃をしようとしていたが、タマンタはまもるで防ぎ直後にエアスラッシュでネギガナイトを攻撃する。
「ネギガナイト!」
「グゥゥゥ……!」
「かたきうちです!」」
「もういちど、こうそくいどう!」
再びかたきうちを繰り出してきたネギガナイトだったが、再びタマンタはこうそくいどうを繰り出して回避した。
「みずのはどう!」
「盾で防ぐのです!」
回避しつつ繰り出した次の技は、みずのはどうだった。 それくらいなら耐えられると読んだサイトウはネギガナイトに盾で防ぐように指示を出し、そこから反撃に繰り出そうとしていた。
「グッホォ……」
「ネギガナイト!?」
確かにダメージは軽減され、ネギガナイトはみずのはどうに耐えることはできたが、そこでネギガナイトに異変が生じた。
「なんとここで、ネギガナイトが混乱を起こしてしまった!」
「なっ……いけませんネギガナイトッ」
ネギガナイトが混乱をしていると知ったサイトウはさがるように言おうとした、だがネギガナイトは混乱したままで突っ込んでいき、タマンタはそれを回避してネギガナイトは自ら壁に衝突し、その衝撃により戦闘不能になった。
「………ネギガナイト………!」
「なんとネギガナイト、混乱により自滅をしてしまったぁぁ!!」
「………これも、心の乱れが出てしまった証拠……!」
サイトウはそう言って、ネギガナイトを下げた。
「ですが……ここからが、ふんばりどころです! 私も一緒にがんばります! カイリキー、出陣です!!」
「ここで出てきたのは、サイトウ選手の自慢の一匹! カイリキーだぁぁ!!」
「ウォォォォオ!!!」
サイトウはさらに目の色を変えて、最後のポケモンであるカイリキーを繰り出した。 彼女の切り札が出てきたことで、会場が一気に盛り上がる。
「カイリキーか……タマンタッ」
「ターマー」
「……うん、タマンタ、エアスラッシュ!」
アスベルはタマンタで試合を続行し、それにタマンタはおうじエアスラッシュでカイリキーを攻撃した。
「……!」
だが、カイリキーはそのエアスラッシュに耐えた。 カイリキーは耐久力も高いようだ。 サイトウは、カイリキーと目を合わせて頷くと、カイリキーは全身の筋肉に力を入れた。 ビルドアップという技を繰り出したのだ。
「……かみなりパンチ!」
「まずい、タマンタよけろ!」
「させません!」
でんき技であるかみなりパンチを食らったら、マズイ。 そう思ったアスベルは技を回避させようとしたが、相手のカイリキーの方が早い。 4本の腕を駆使してタマンタをねらい、確実にかみなりパンチを当ててきた。
「タマンタっ!!」
「タマンタ戦闘不能、カイリキーの勝ちっ!!」
「ワァァーーッ!!」
流石にパワーアップしてからのでんき技には耐えられなかった、タマンタを下げ、アスベルは最後の一匹として再びアーマーガアを、その場に繰り出す。
「頼むぞ……アーマーガア!」
そういってアスベルはダイマックスバンドを見つめる。 それでアスベルがアーマーガアをダイマックスさせようとしていることを悟ったサイトウは、自らもカイリキーをダイマックスさせようとする。
「もう、すべてを壊しましょう! 尊敬をこめて、キョダイマックス!」
それは、普通のダイマックスではなく、キョダイマックスだった。 サイトウはカイリキーを一度ボールに戻し、バンドの力でカイリキーをキョダイマックスさせる。 そこに現れたキョダイカイリキーは、今も筋肉が張り裂けそうなくらいの体格を持っていた。
「いくぞ……アーマーガアッ!」
アスベルもそれに応じて、アーマーガアを一度ボールに戻しアーマーガアを巨大化させて再びそこに繰り出す。 だが、そこでアーマーガアにある異変が起きていたことに、気付いた。
「!?」
「これは………アーマーガアのキョダイマックス………!」
それにたいしアスベルは驚き、サイトウもこのアーマーガアがキョダイマックスできる個体であることに気づきそうつぶやいた。
「キミ……キョダイマックスが出来たのか………!」
幼い頃からともに過ごし、今まで何度かダイマックスさせたことはあるが、アーマーガアになってからはダイマックスさせたことがまだなかった。 そのアーマーガアが、今キョダイマックスして戦おうとしている。
「………驚きはしたが、これは心強い………!」
「ガァーッ!」
アスベルはそれに心強さを感じ、笑みを浮かべる。 アーマーガアはそれに応じるように、高く鳴き声をあげる。
「お前のことなら、わかっている……いくぞ!」
「カイリキー、ダイサンダー!」
「アーマーガア、ダイスチル!」
まず攻撃を繰り出したのはカイリキーであり、ダイサンダーがアーマーガアにぶつかる。 アーマーガアはそれにダイスチルで対抗しようとしたが、ダイサンダーの方が威力が勝り、激しい電撃がアーマーガアに襲いかかる。 それにより大きなダメージを受けたアーマーガアにたいし、カイリキーはさらにキョダイシンゲキを繰り出してくる。
「……まだいけるか、アーマーガア!」
大ダメージを受けてしまったアーマーガアに向かってアスベルが問いかけると、アーマーガアは大きな赤い瞳でアスベルをみおろした。 その目でアスベルは、アーマーガアがまだ戦えると悟り、引き続き指示を出す。
「アーマーガア、いくぞ……キョダイフウゲキッ!」
そこでアスベルが繰り出させたのは、キョダイアーマーガアだけが使える技である、キョダイフウゲキだった。 ともに浮いている8枚の羽を操りながら繰り出されたそのキョダイフウゲキを、カイリキーは正面から受ける。
「カイリキー!」
「さらにいくぞ……ダイジェット!!」
そこで今度は、ダイジェットを繰り出させる。 それをカイリキーは回避できずに正面から受け、その破壊力に押されて倒れた。
「か、カイリキー……!」
「ここでカイリキーが戦闘不能! キョダイマックスポケモン同士の勝負……勝利したのはアーマーガア! よって勝者は……チャレンジャーのアスベル選手!! ジムリーダーのサイトウ選手を、打ち破りましたあぁぁ!!」
「うおぉぉぉぉぉ!!」
「………よし……!」
これでラテラルスタジアムのジム戦に勝利したことを確信し、アスベルは笑みを浮かべた。 そして元の大きさに戻ったアーマーガアをそっと抱き寄せる。
「………よく頑張ってくれた、ありがとうアーマーガア」
「ガァ」
アーマーガアも、目を細める。
一方、サイトウとカイリキーも立ち上がっていた。
「カイリキー……よく勝負をしてくれました。 貴方の健闘を……私はたたえます」
「リッキ」
「………そうですね、彼らからも確かに感じました……武芸の心を………どんな相手でも全力で立ち向かい、正面から戦う心に応じようとする……強い心を………」
そうカイリキーと言葉をかわし、サイトウはカイリキーをボールに戻した。
「お手合わせ、ありがとうございました」
「こちらこそ」
2人は向かい合い、まずは言葉を交わすことから始まる。 そしてサイトウはほほえみを浮かべながら、アスベルに試合の中で感じたことを口に出す。
「ふぅ……手合わせをしてわかりました。 貴方達との立ち会いで、私………思わず………心が躍っていたようです」
「オレも同じです。 思い切り激しくぶつかると、その後すっきりするものですから」
「そうかもしれません。 ………騒がないのも勝負であれば、楽しむのも勝負、ですね………」
そう言ってサイトウは、かくとうバッジを取り出してアスベルに差し出す。
「では、かくとうバッジを受け取りください」
「ありがとうございます」
アスベルはサイトウからかくとうバッジを受け取ると、彼女と握手を交わした。
「これからも、様々な出会いと試合があるでしょう。 それら全てが貴方の心の糧になりますように…………」
「はい……オレも、このジムチャレンジのすべてを受け止め………そのすべてを、オレの中に残していきたいと思ってます………。 今の、あなたとの試合のことも………」
そうシンケンな表情で告げるアスベルの顔を見て、サイトウはもう一度微笑むと、いとこのことを思い出してつぶやいた。
「………マリオンが、あなたを注目するのも………わかりますね………」
「え?」
サイトウがポツリと呟いた言葉の意味が気になったアスベルは、きょとんとした。 だがすぐに、マリオンは幼なじみだし今はジムチャレンジのライバルだと彼女との関係性を思い出し、それで注目しているのだと思いこんだ。
次回はあの事件が起きます。
そこでのアスベルの変貌に目を向けてくれると幸いです(いいのかそれで)