アスベルは一人の少年となり、成長した姿で登場します。
彼は今回の話で新しいポケモンをもらい、そして謎の存在に出会い、旅立ちを意識します。
ガラル地方の辺境にある、小さな農業を営む人が多い、平和で穏やかな町・ハロンタウン。 ウールーが多く散歩しているその町にある草原で、一人の少年が寝転がって空をみていた。
「………」
この少年、名前はアスベル・マクリル。
金色の髪に深海のような青い瞳、白い肌を持つ13歳の少年である。 ただ、ほかの少年と少し異なる特徴があるとすれば、片目を眼帯で覆い隠していることだろう。
「アスベル! アスベルー!」
「?」
そんなアスベルに声をかけてきたのは、褐色の肌に紫の髪、そして太陽のような目の色をした少年・ホップであった。 彼に名前を呼ばれたアスベルは起き上がり、自分に駆け寄ってきたホップに声をかける。
「ホップ、どうした?」
「どうした、じゃないぞ! お前、やっぱり約束忘れてたじゃんかよ!」
「え………?」
「今日は兄貴が久し振りに帰ってきて、おれ達にポケモンをプレゼントしてくれる約束だったろ!」
「あ、そうか………そうだったな………もうそんな時間だったのか」
今日はある理由から多忙の日々を送り、家を留守にしているホップの兄が、故郷であるこの町に帰ってくる日だ。 だが、それだけではない。 この日帰ってくる彼は、弟とアスベルに、ポケモンをプレゼントしてくれる約束をしてくれたのだ。 そのためにホップは胸がワクワクとしており、約束を思い出したアスベルもその顔に笑みを浮かべていた。
「兄貴は方向音痴だから、一緒にブラッシータウンの駅へ迎えに行くぞ! それで、兄貴と一緒に家まで帰ろうぜ!」
「ああ」
ホップに言われてアスベルは立ち上がり手袋を取ると、空をみてあるポケモンに向かって指笛を吹き、呼び寄せる。 アスベルに呼ばれたのは小さなとりポケモンだった。
「行こう、ココガラ」
そう言ってアスベルは自分のポケモンである、ココガラを肩に乗せて歩き出す。 そのとき、ドンドンと何かをたたくような音がした。
「ん?」
その音にはホップも気付いたようだ、音のしたほうをみてみると、一匹のウールーが道をふさぐ柵に連続でたいあたりをしかけていた。
「ウールーだ………なんで柵にたいあたりなんかしてるんだ?」
「さぁ?」
「おーい、間違っても柵を越えたりするなよ! まどろみの森にはこわいポケモンがいっぱいいるんだからな!」
ホップの言葉に対し、ウールーはぐもぉ?という間の抜けた声しか出していなかった。 そんなウールーにたいしアスベルは大丈夫だろうかと心配していたが、ホップに勢いよく腕を引かれてしまい、それ以上ウールーのことを気にかける余裕はなかった。
「さぁ、ブラッシータウンの駅に急ぐぞっ!」
「わ、わかってるから! ホップ! あまり強く引っ張るな!」
そうしてアスベルとホップは隣町・ブラッシータウンの駅に到着した。 その駅の前では多くの人が待ち伏せており、やがて駅の中から一人の男性が姿を現した。
「ダンデさんだっ」
そこに現れたのは、ホップと同じ髪と目の色を持つ長身の男性。 彼こそがホップの兄でありこのガラル地方の現チャンピオン・ダンデだ。
彼が姿を現しとあるポーズを決めて、その場に歓声が響きわたる。
「ブラッシータウンのみなさん、チャンピオンのダンデです! 皆さんのためにも、これからも最強の勝負をします!」
笑顔とともにそう宣言をすると、再び歓声が響きわたる。
「我らが無敵のチャンピオン! あんたとリザードンは最高だ!」
「サンキュー! みんなもポケモンを育てて、どんどん勝負をしてくださいよ! そして俺とリザードンに挑戦してくれ!」
「はーい! わたし達もダンデさんにあこがれてポケモンバトルをしています!」
「でもチャンピオンのリザードン強すぎるもん!」
そう言われたダンデは頷きつつ、自分の思いを熱く語り出す。
「確かに俺のリザードンは強い、他のポケモン達も強い! だからこそ、最強のトレーナーと戦いたい……! 俺の夢は、ガラル地方のみんなで、最強になることだからね!」
「ばぎゅあっ!」
その言葉を聞き、その場に再び歓声が響きわたる。 その様子をアスベルとホップは見つめていた。
「相変わらず、すごい人気だね………ダンデさん」
「流石はアニキだぜ!」
そうホップは嬉しそうに笑いながらも、大きく手を振って兄を呼ぶ。
「アニキー!」
「ホップ!」
その呼び声で弟の存在に気づいたダンデは満面の笑顔を浮かべながら、人をかき分けながらホップの前に現れる。
「世界一のチャンピオンファンが、わざわざ迎えにきてくれたのか!」
そう言いながら、ダンデはホップに笑いかけて久し振りに見る弟の顔をじっくり見る。
「ホップ、背が伸びたな……ズバリ、3センチ!」
「正解! さすがはアニキ、最強の観察眼だぜ!」
そんな兄弟のやりとりを横で見ながら、アスベルもダンデに挨拶をする。
「ダンデさん、久しぶりです」
「アスベルも、元気そうだな!」
アスベルが一緒にいたことに気付いたダンデは、彼にも笑いかけながら彼の身長を言い当てる。
「お前も、ズバリ……4センチ伸びたな!」
「はは、当たってます」
ダンデにそう言われ、アスベルも照れたように笑う。 そしてホップはポケモンをもらいたいからと言って一緒に帰ろうと促す。 その際、競争だと持ちかけてきて。
「やれやれ………ホップは相変わらず、勝負好きだな」
「本当ですね」
「……じゃあ、俺達もいこうか! それではみなさん……これからもレッツ・チャンピオンタイムッ!」
そうダンデは例のポーズを決めた後でホップの後を追いかけていった。 アスベルも彼らに続いて、ハロンタウンにある家に帰っていった。
「あれ?」
「んっ?」
するとその家の前には、ホップとアスベルもよく知っている少女の姿があった。
「やっほ、アスベル、ホップ!」
「マリオン、キミもきてたのかい?」
「当然でしょ」
亜麻色の髪に黄緑色の瞳のこの少女の名前はマリオン・ティム。 この町の近所に住む明るい性格の少女であり、ホップやアスベルの幼なじみである。 実は彼女も、この後ダンデからポケモンをもらうことになっているトレーナーの一人だ。
「3人いるから、ちょうどいいと思ってな………彼女の話をきいて、彼女にもあげることにしたんだ。 さぁ、君達に送るポケモン達を紹介するぞ! 彼らのご機嫌なアピールタイムだ!」
自分がポケモンを託すべきトレーナーが3人そろっていることを確認したダンデは、3個のモンスターボールを取り出してそれを投げ、そこから3匹のポケモンを出す。
「くさのポケモン・サルノリ! ほのおのポケモン・ヒバニー! みずのポケモン・メッソン!」
黄緑色のポケモンがサルノリ、白いポケモンがヒバニー、水色のポケモンがメッソンだ。 彼らは家の庭を自由に動き回り、遊びながらそれぞれの良さを出していってる。 ヒバニーは足の裏から炎を出しながら庭のバトルフィールドを走り回り、サルノリは木に上ってそこに実っていたきのみを枝でコンコンたたき、メッソンは池に入って泳ぐ。
「わぁっ!」
「おお、みんな元気だな!」
途中でメッソンの水がヒバニーにあたり、それに驚いたヒバニーがサルノリのいた木に激突、その衝撃によりサルノリがいじっていた木の実が池に落ちメッソンはそれに驚き池から飛び出し、泣き出してしまうというアクシデントも発生した。 だがそれは、サルノリやヒバニーの励ましによってメッソンが泣きやんだことですんなりとおさまる。
「オーケー、みんな集まって!」
ダンデが呼びかけると、3匹のポケモンは集まり、3人の前にでる。
「さぁ、この子達を1匹ずつ選ぶといいぞ!」
「わぁ、だれがいっかなー!」
「どの子もいいね」
そう言ってアスベルは3匹の顔をもういちどじっくりと見た、そのときだった。
「わっ!」
「おっ!」
なんとサルノリはアスベルの顔を見て、自分からアスベルに飛びついてきたのだ。 その唐突すぎるサルノリの行動に驚きながらも、アスベルはしっかりと受け止める。
「なんだよお前、早速サルノリに気に入られてるじゃん!」
「………オレは気に入られているのか………?」
胸の中にいるサルノリをみて、アスベルは呆然とする。 そこでダンデは、彼にサルノリをすすめる。
「アスベル、その子をパートナーにしてみたらどうだ?」
「……彼さえよければ…」
そう控えめに口にするアスベルに対し、お前らしいなと答えるダンデ。 自分から胸に飛び込んだから、良いに決まっているはずなのに。 アスベルはサルノリを抱き上げて彼に告げる。
「よろしく、サルノリ」
アスベルはサルノリに笑いかけながらそう言うと、サルノリは嬉しそうに鳴き声をあげた。
「じゃあオレのパートナーは……おまえだぞ、メッソン!」
「だったらボクは、ヒバニーと一緒にいくよ!」
そのアスベルがポケモンを決めると、ホップとマリオンもそれぞれ自分のポケモンを決めていく。 そうして3人それぞれにポケモンが行き渡り、ダンデも安心したようだ。
「みんな、そろそろ夕食にしましょ! 今日は盛大にバーベキューよ!」
「はーい!」
そこに、ホップやダンデの母とマリオンの母が加わってきた。 今日は双方の家族を交えてバーベキューをする予定なのだ。
「あ、オレ手伝います!」
「ありがとう」
アスベルは、その手伝いのために動き出していた。
そして、楽しい夕食の時間が終わった後。 アスベルはホップの家の庭でサルノリやココガラとともに夜風を浴びていた。 それはまるで、バーベキューであがった自分の熱を冷ますことで、心地よさを感じるかのように。
「サルノリ、ココガラ。 これから仲良くなっていこうな」
そうアスベルは2匹のポケモンに呼びかける。 2匹ともアスベルの言葉に応えるかのように鳴き声をあげて笑っている。 そんな2匹の姿を見て、アスベルは小さいながらも、安堵の笑みを浮かべる。
「アスベル、ここにいたか」
「ダンデさん」
そんな彼に声をかけてきたのは、ダンデだった。 実家でゆっくりするためであろう、ユニフォームとマントは身につけておらず、年相応のラフな格好をしている。
「ホップは?」
「あいつなら、はしゃぎ疲れてもう寝たぜ」
「………はは、またかぁ………」
アスベルはホップが早寝早起きであることをよく知っている。 今日は特に起きている間はずっとはしゃいでいて落ち着きがなく、自分ともよくしゃべっていたから、その分疲れてさっさと寝てしまったのだろう。 そんなホップのことを考えて苦笑するアスベルをみて、ダンデはふとあることを思い出し、ある記憶を口にする。
「にしても、早いもんだな」
「……え?」
「傷だらけのお前をホップが見つけて、すぐに俺と一緒に家につれてかえって………手当をして。 そして、医者に頼んで治療をしてもらった………あの日が、まるで昨日のことのようだよ」
「………」
アスベルは、かつては傷だらけでこの町に流れ着いた……迷い子だったのだ。 怪我が治り意識が戻るのを見計らい事情を尋ねたかったのだが、アスベル自身も家や家族のこと、己の過去はおろか、自分の名前すらわからなかった。 そこで、ダンデとホップは兄弟そろって、アスベルを自分達の家族の一員にしてほしいと両親や祖父母に頼んだのだ。
「………みなさんは、苦労がわかっていたはずなのに……それでも、オレをあっさり迎え入れてくれましたね………」
ふつうなら反対されそうなところではあるが、この一家はアスベルを養子として歓迎してくれた。 自分の名前がわからなかった彼に、アスベル・マクリルという名前も与えてくれた。 部屋も、屋根裏の広いスペースをDIYして、彼の専用の部屋にしてくれた。
「………今のオレがこうしていられるのは、あなた達の助けのおかげです。 ホップにもダンデさんにも、おばさん達にも………感謝してもしきれません。 皆にいつかは、恩返しがしたいと……常に思っています……」
「いいんだよ、そういうのを気負わなくて」
ダンデはアスベルの頭を撫でて、笑いかけた。 いつも自分をみてくれる、暖かい瞳で。
「お前は元気に、そして優しく………しっかりと成長している………俺はそれで十分だよ。 最近じゃ、家の仕事とか、他の人の仕事を積極的に手伝っているって……母さんも言ってたしな。 ホップのことも、あいつのいい遊び相手になってるみたいだな」
「………」
「それだけじゃない………これからは、そのポケモン達も一緒だ。 その子達の声にも、答えてやれるようになれ」
「………はい……!」
アスベルは少し照れて、笑みを浮かべる。 そんなアスベルにダンデはまた、笑顔を向けていたのだった。
その翌日のこと。 ダンデは彼らのスマホロトムにまだポケモン図鑑がないことを知り、彼らにもポケモン図鑑の機能を持っていたほうがいいと思いつき、博士のいる研究所へいこうと提案してきた。
「よし、じゃあ行こうぜ」
「ああ」
一足先に向かったダンデを追いかけようと2人で家をでた、そのときだった。 バゴン、という大きな音がしたのは。
「!?」
「今の音は?」
音のした方向へ向かうと、昨日は閉まっていたあの木の柵が破壊されていた。
「柵が開いてる!」
「まさか、あのウールーが………?」
「もしかしてあいつ…この奥に行っちゃったのか!?」
その柵は昨日、一匹のウールーがたいあたりを繰り返していた柵だ。 たいあたりを繰り返していくうち、柵を破壊してそのまま奥へいってしまったのだろう。 ハロンタウンの裏に広がるという、禁断の地とされるまどろみの森に。
「あの森には誰も入っちゃいけないんだぞ………。 昔、ポケモン博士の孫が迷い込んで、中でひどい目にあって……その後でめっちゃ怒られたって!」
「オレも知ってる………しかし………」
決して森に入ってはならない、それがハロンタウンの昔からの言いつけだ。 もちろんホップとアスベルも知っていることだった。 だがアスベルは首を横に振り、ホップに言う。
「それなら尚更、ウールーが心配だ。 追いかけよう」
「わかってるな、アスベル! 覚悟を決めてさ、ビシっといくぞ!」
「ああ!」
なるべく急いでウールーを見つけ、脱出しなければならない。 そう気を引き締めて、ホップとアスベルはまどろみの森に足を踏み入れた。
「この森、こんなに霧が深かったのか………入ったことがなかったからわからなかった…………」
「………ウールーはどこにいったんだろうな? これ以上霧が濃くなったらやばいぞ………」
森を進めば進むほど、霧が濃くなってくる。 このままでは永遠に迷い続けてしまうだろう。 こんな中のどこに、ウールーがいるのだろうか。
しかし、問題はそこだけではない。
「………?」
「なんだ?」
「なんだろう? なにか………聞こえる………」
どこからか、声のようなものが聞こえる。 おそらく自分の手に負えない、手強いポケモンでもいるのだろうか。 だが、それだけではない。
「……アスベル、お前どうした……? 顔色が悪いぞ?」
「…………わからない………なんだか、体が………さむい………」
アスベルはその時、全身にこのうえにない寒さを感じた。 そんな顔色の優れないアスベルを見て、ホップも不安を覚えたらしい。 ここは入ってはいけない場所と伝えられるのも納得できた。
「………!?」
すぐにウールーを見つけてここからでなければ、と思っていた2人だが、そこに一匹のポケモンが歩み寄ろうとしていることに気づいた。
「な、なんだコイツ!?」
彼らの前に現れたポケモンは、青い体毛に4つ足の、獣のようなポケモン。 突如として現れたポケモンに、ホップは驚く。
「ウルォーーーードッ!!」
「くるのかっ…」
アスベルは戸惑いながら、ボールからサルノリを出して対抗しようとする。
「サルノリ! ひっかく攻撃!」
そうアスベルは指示を出し、サルノリはその指示通りに動き技を繰り出したものの、そのポケモンには技は当たらない。
「えっ!?」
「攻撃がすり抜けてく!? どうなってんだ!?」
「クッ……」
なにか策はないものか、とアスベルは必死に考えるが、霧は濃くなってあのポケモンの姿が見えなくなっていく一方だ。 それだけでなく、アスベルの体をあの寒気がおそってくる。
「な、なんだ!? なにも見えないぞ!!」
ホップも視界が霧に包まれていくことに、混乱しているようだ。 アスベルは、姿が徐々に見えなくなっていくその存在に必死に問いかける。
「待ってくれ! キミは、キミは一体………!」
だが霧は濃くなっていく一方であり、強烈な眠気が2人におそわれていく。
「うわぁぁぁっ………!」
隣からホップの声が聞こえてくる。 自分も徐々に意識が遠のいていくのを感じていった。
「……………ま………て………くれ…………」
そうアスベルは目の前にいた存在に呼びかけるが、その声が届くことはないまま、アスベルは意識を手放していった。
ポケモン剣盾のよさ、そして私が感じたこと。
この長編を通して伝えていきたいですね。
次回は新しい登場人物、様々な旅立ちの準備が整います。