ラテラルタウンの遺跡とされていた壁画は崩壊し、その真の姿を現した。 芸術的な絵がかかれていた壁画の奥にあったのは、2人の人間の像と、剣や盾を持った2匹の獣の像。
「これって……なに? なにかの、像……?」
「………」
「もしかしてっ……そういうこと……!?」
「え、ええ?」
戸惑うマリオン、黙り込むアスベル。 その2人の側でソニアは、自分がかつて調べたタペストリーと目の前の像を、脳内で照らし合わせていき、やがてなにかに気づいて声を上げた。 突然声を上げたソニアに対しマリオンは驚くが、ソニアは気にせず、確認するかのようにアスベルに問いかけてくる。
「アクシデントにより日の目を見た遺跡………さてこれは、ガラルのどんな伝説を伝えている?」
「これは、ポケモン……ですね」
「うん! 英雄よりも遙かに、ポケモンらしき存在が目立つ! しかも、2匹のポケモンが使っていたかのように、剣と盾を持っている!」
「そして、英雄は2人いる……ポケモンも2匹いる……」
ソニアの言葉に対し、アスベルは淡々とした態度で返していく。 そんな2人のやりとりにたいしキョトンとしつつも、マリオンは英雄というワードについて思ったことをそのまま口に出す。
「英雄って、スボミーインにあった英雄像のこと? でも、それって……ひとつしかなかったよね」
「ああ……そこはどうしてかは、わからない………だが………」
「英雄の像よりも、古いタペストリーよりも……昔につくられた遺跡が、より真実を伝えているはず………」
ソニアは英雄像と地上絵と、タペストリーを交えながら目の前の像を見つめ、現段階の答えを告げる。
「英雄の持っていた剣と盾は、どちらもポケモンのことだった。 だがいつしか、剣とポケモン……そして盾とポケモンは……同じものとして扱われ、歴史の陰に消えていった…………」
「英雄は2人で、剣と盾はそれぞれポケモンだった………」
「でも、真実を伝える遺跡は……芸術的な絵で隠された……」
石像は表にでないまま長い時間が経過した、それもすべて、この壁画によって隠されてしまったからだ。 その説を聞いたマリオンは、素朴ながらも疑問に思ったのでそれをそのまま口に出す。
「どうして……そんなことをしたんだろ? そんなウソをついて隠して……それにいったいなんのメリットがあるというの?」
「うん……そこが新たなナゾになりそうね。 壁画を作って隠した、真犯人的なものがいるかもしれないし……そこも地道に追求した方がいいかも?」
「そうしてください」
アスベルは、像を見つめつつソニアに、この存在を隠した真実も突き止めてほしいと願った。 それにたいしソニアもマリオンもきょとんとしていたが、やがてソニアは頷き、像を見つめて達成感に満ちたような笑みを浮かべていた。
「この遺跡が明らかになったことで、ガラル神話の真相にまた一歩近づけたよ! まさに大発見だね!」
「もし、ここからさらに調べて、真実がわかったら………。 そのときは、オレに教えてください」
「そうだね………アスベルはずっと………このガラル伝説を気にしているもんね」
そういってソニアはもう少し遺跡の調査をすると言って、アスベルとマリオンにはジムチャレンジを続けてと激励を送る。 そうしてソニアとわかれたアスベルやマリオンは、それぞれで次にやることを決めて話をしていた。
「じゃあ、オレはポケモン達を休ませてからいくとしよう。 マリオン、キミはどうするんだ?」
「どうするもなにも、ボクはまだサイトウちゃんと戦ってないもの……まずはラテラルスタジアムをクリアしなくちゃ。 まぁ、今はサイトウちゃんの用事済み待ちだけどね」
「そうか」
「きみとサイトウちゃんの試合みてたら、ボクもがんばらなきゃ……って激励をもらった気がしたしね。 それに……」
「ん?」
マリオンはアスベルの顔を見て、彼の意志を確かめようとする。
「………アスベル、まだきみは……諦めていないんでしょ? これから……ジムチャレンジ、やめたり……しないよね?」
「………ああ、当たり前だ。 オレ自身が放棄することも、失格になるようなこともしない」
きっとマリオンは、挫けかけているホップも、たった今失格になったビートも見ているから、自分を気にかけているのだろう。 そう思ったアスベルは彼女に微笑みかけながらそう答え、そしてマリオンに問いかける。 彼女を安心させてあげるために。
「それは、キミも同じだろう?」
「う、うん!」
アスベルのジムチャレンジへの意思を確認したマリオンは、それで自信がついたらしい。 笑顔を浮かべて頷き、自分もジムチャレンジをさらに続けると言った。
そうしてラテラルスタジアムに挑もうとしているマリオンと別れたアスベルは、アラベスクタウンを目指すために歩き出していた。
「キノコが光ってる………話できいたとおり、不思議な森だ………」
そのためには今いる森・ルミナスメイズの森を抜ける必要がある。 このルミナスメイズの森は、薄暗く迷宮のように入り組んでいるため、迷ってしまう人が多いという。 そんな森を進む方法としては、今もほのかな光を放ち、かつ触れると光が大きくなる不思議なキノコを頼りする事だ。
「べっべばぁーっ!」
「うわぁっ!?」
そして、ルミナスメイズで迷い人が多い理由がもうひとつ。 それはそこに住み着くポケモン達のイタズラだ。 今アスベルの目の前に現れたポケモン・ベロバーがその代表である。 突然出てきたそのベロバーに驚いたドラメシヤがでんこうせっかを食らわせたところ、その攻撃が顔面に当たりベロバーは逃げていった。
「ドラァ」
「よしよし、怖かったな」
その直後、ドラメシヤはすぐにアスベルに抱きついてきた。 そんなドラメシヤをアスベルは撫でて慰めつつ、ふと思ったことを口にする。
「……そういえばドラメシヤって、まだバトルを経験したことがないよな?」
「?」
「ジムチャレンジを続ける以上、キミもバトル慣れさせて……強くしていかなくちゃな」
「ドラァ?」
「進化系はたしか、ドラパルトだったな……ダンデさんも手持ちに入れていた気がする」
ドラメシヤを助けたあとで思い出した、ダンデがそのポケモンの進化系をメインパーティに入れていたことを。 そのドラパルトは常にドラメシヤを携えていたはずだ。 あまり見たことはないが。
「でも、すっごく強かった気がする。 ドラメシヤ、キミもそうなるのだろう。 オレは、キミも強くしたいから……バトルにはそろそろ出す必要があるな」
「………」
「まぁ、焦る必要はない。 キミのペースに、オレはあわせるよ」
そうアスベルが声をかけると、ドラメシヤは少し考えたような顔になってから、やがて笑顔を浮かべた。 そんな時、木の下に小さな男の子がいるのを発見した。 黒髪で、小柄な男の子を。
「あの」
「……うわぁ!?」
「!?」
もしや迷子かもしれない、と思ったアスベルはその男の子に声をかけると、男の子は大きな声を出してビックリした。 それにアスベルは驚くものの、男の子に問いかける。 その男の子は、顔に仮面を付けていた。
「……えっと……キミは?」
「ぼ……ぼくは、オニオン……です……」
「オニオンくん、だね。 オレはアスベルだ。 こんなところで、なにをしているんだい?」
「え、えっと……」
とりあえず名前を確認し、自分も名前を名乗る。 そして彼がここにいる理由を聞こうとすると、彼の目の前にゲンガーが飛び出した。
「ゲンガー?」
「こ、この子はぼくのゲンガーです……。 じ、実はゲンガーと一緒に……このルミナスメイズの森で……盗みを働く賊を退治しようと思って………い、いたんです………」
「え、退治? キミが?」
信じられない、と言った様子のアスベルに、オニオンは信じられないかもしれないけどと前置きしつつ、自分の素性をアスベルに打ち明ける。
「ぼ、ぼく確かに子どもですけど………これでも………この森や、墓場の見回りをやってるんです。 そ……それに、今年は違うけど………ジムリーダーの資格も、も……持っているんです」
「そうなんだ……その年で、ジムリーダーになれるなんて………キミはすごいな……」
自分より幼いのにジムリーダーを努めることができる、そんな彼の才能にアスベルは素直に感心していた。 そんなアスベルの素直な感想に対しオニオンは戸惑いつつも、自分が仮面を付けていることを彼に問いかけてみる。
「か、仮面………気に……ならないんですか………?」
「うん、顔を隠しているという意味では……オレも同じだからね」
そう言ってアスベルは自分の眼帯を指さし、顔を明かせない理由が彼にもあるのだと悟り、語る。 まるで、自分のことを重ねるかのように。
「だから……そうやって顔を隠すのを、オレは悪いことだと思わない。 隠すのには、なにか理由があるんだと……オレも同じだから、わかるからね」
「…………ぼ、ぼくは人目が苦手で………話も苦手で、あがりやすいから……それで、つけているだけなんです………。 ひ……人と交流しないと、つとめを果たせないし、困ることも多いから………だから………仮面で素顔を隠して……い、いるんです……。 た、単純、かも……しょうがない……理由かも、しれないですけど………」
「それでも、いいと思うよ。 それがキミにとって、救いになるなら……そうしたらいいと思う」
アスベルがそう言うと、オニオンはずれかけた仮面をなおした。 まるで、安心をしたかのように。 そんなオニオンにたいしアスベルが笑いかけた、そのときだった。
「ドアァ!?」
「ドラメシヤ!」
突然、アスベルに捕まっていたドラメシヤがなにか網のようなものにかかってしまった。 急いでドラメシヤを目で追うアスベルの先には、ドラメシヤの入った網を手に持った男がいた。 その男の顔を見たオニオンは、声を上げる。
「あ、あの男です……ポケモン強盗は……!」
「なんだって……!」
「ぐへへへ……」
男は下品な笑い声をあげて、2人をみた。 どうやら相手が少年2人であることに、余裕を覚えてるようだ。
「貴様っ……ドラメシヤを返せ!」
網に掛かってしまったドラメシヤを助けようと、アスベルはその強盗に立ち向かおうとする。
「頼む、イーブイ!」
「ゲンガー!」
アスベルはイーブイを繰り出し、オニオンもそばにいたゲンガーに声をかける。 強盗はボールからエンニュートとコノハナを出すと、コノハナのはっぱカッターで2匹を攻撃しようとしてきた。
「イーブイ、かわせ!」
「ゲンガーも!」
イーブイとゲンガーははっぱカッターを回避し、ゲンガーはサイコキネシスでエンニュートを攻撃し、イーブイはでんこうせっかでコノハナを攻撃する。 エンニュートはかえんほうしゃで2匹を攻撃しようとしてきたが、ゲンガーもイーブイも回避をする。
「てめぇら、ガキの分際でこのオレ様にたてつくのか!」
強盗はアスベルやオニオンに向かってそう怒りを交えて叫ぶと、アスベルはさらに大きな声で強く、答える。
「たてつくさ! ガラルを犯罪でけがす貴様を、オレの大事な仲間を奪おうとする貴様を! オレは許さない! 己の罪の重さ……思い知れ!」
そう叫ぶアスベルにこたえ、イーブイは目の前の2匹に向かってスピードスターを放つ。 そしてコノハナが反撃であくのはどうを放ってきたが、イーブイは自らの意志で回避せず受け止める。
「イーブイッ!?」
突然イーブイがとったその行動に対し、アスベルは驚く。 だがそのあくのはどうを浴びたイーブイは、その中で徐々に姿を変化させていった。 全身の体毛を漆黒の色に変えていき、さらに金色の輪のような模様を体に浮かべていく。 四肢や尻尾、胴体や耳は全体的に細長くなっていき、その瞳は鋭く、赤い光を宿した。
「ブラッキ」
「ぶ、ブラッキーに進化した!」
イーブイはブラッキーに進化を遂げたのだ。 それをみたアスベルは目を丸くしていたが、ブラッキーが振り返りうなずくと、アスベルは頷き返して指示を出す。
「ブラッキー、でんこうせっか!」
アスベルの声にあわせ、ブラッキーはでんこうせっかを繰り出す。 そしてその技は、強盗の持っていた網に命中し、それにより網がとかれ中からドラメシヤが現れた。
「ドラメシヤッ」
「獲物を逃がすか、やれ!」
「させない……!」
ドラメシヤを奪おうとする強盗を、ゲンガーが阻止する。 それによりドラメシヤはアスベルのもとに帰ってくることができた。
「大丈夫か、ドラメシヤ」
「どらぁ」
「……よかった……」
まずはドラメシヤを取り戻すことができた、となれば自分達がやるべきことは、あとひとつである。
「……さて……オニオンくん……やろうか」
「……はい……!」
アスベルもオニオンも、強盗をにらみつけ、ブラッキーとゲンガーを前に出す。
「ゲンガー!」
「ブラッキー!」
「「シャドーボール!!」」
2匹は同時に技を放ち、強盗とその手持ちポケモンを同時にふっとばし、木にたたきつけた。
「………あ………あぁ…………!」
その威力にひるみ、それでも強盗は逃げようとしたが、それをゲンガーとブラッキーが阻む。
「おとなしく、してください……!」
「さもなくば、潰す」
そう2人が低い声で脅すように告げ、さらにブラッキーとゲンガーもそろって睨みつけると、強盗は畏縮した。
「ひ、ヒィィィィッ……」
「…………ゲンガー、強盗をサイコキネシスで縛り付けてね。 すぐに、警察にそいつを渡すから」
「下手なまねをしたら、こいつが噛みつくからな。 おとなしくしていろ」
そう脅しをかけ強盗の身を拘束し、連行をする2人。 そのときアスベルは腕の中でドラメシヤを慰めていた。
「そ、それにしても………そのブラッキー………す、すごくいいですねっ」
「ふ……そうだな」
オニオンにいわれ、ブラッキーにも目を配るアスベル。 あのとき勝てたのはイーブイがブラッキーに進化したからであり、そのおかげでこうして、ドラメシヤを取り戻すことができた。
「キミのおかげで、彼を取り戻し、この事件は解決したよ……ありがとう」
「どらぁ!」
「ブラッキ」
「ふふ、よろしくな……ブラッキー」
そういってアスベルは、ブラッキーをそっと撫でてやった。
こうして強盗は、無事に警察に引き渡された。 彼は、あのアスベルやオニオンの静かな気迫がトラウマになっているようで、すっかりおとなしくなっている。
「よ、よかったです、ね………! 悪者、退治ができて………!」
「ああ、それに………」
アスベルは、森の中でほのかに光を放つ幻想的な現在地について口に出した。
「ついにきたぞ、アラベスクタウン」
「……そういえば、アスベルさんは、ジムチャレンジャー………でしたね………」
「ああ」
オニオンには気付いていた。 彼がつけているチャレンジバンドに。 だからアスベルはアラベスクタウンを目指していたし、次になにをしようとしているのかに気付いていた。
「………お次は、アラベスクスタジアムに………挑むんですね………?」
「もちろん」
アスベルはオニオンの問いに即答し、今度はオニオンがこれからどうするかを問いかける。
「キミはどうするんだい、オニオンくん」
「ぼ、ぼくは……家に、帰ります」
「一人で大丈夫か?」
心配しているアスベルに対し、オニオンはうなずく。
「………は……はい。 ぽ、ポケモンもいますし………道もわかるから、ちゃんと……ラテラルタウンに帰れるので………心配はいりません」
「そうか……じゃあ、気をつけてね」
「は、はい……その………」
オニオンが何かをいいたそうにしていたので、アスベルは首を傾げながら続きの言葉を待つ。 オニオンは、必死になって自分の彼に対する願いを打ち明けた。
「ま……また会えたら、ぼくと、ポ……ポケモンバトル、してくれる……?」
オニオンがそういうと、アスベルはにっこりと彼に笑いかけた。
「ああ、いいよ。 約束しよう」
「……はい……!」
そういって、アスベルとオニオンは指切りをしたのであった。 自分といつか勝負をしてくれると約束をしてくれたときのオニオンは、これ以上なくうれしそうな顔をしていた。
「……彼のためにも、このまま、負けられないな」
そして、アスベルはその約束のためにも、さらに強くなろうとしていた。 そんなアスベルと同じようにドラメシヤも、彼の腕の中で、強くなりたいと望んでいた。
一応この長編はソードの世界線なのですが、オニオンは出したかったので出しちゃいました。
この調子で、シールド限定のことも取り入れちゃいたいと思います。