あのクイズには私も引っ掛かりました。
ルミナスメイズの森を抜けたアスベルは、ポケモン達をポケモンセンターで休ませた後、アラベスクスタジアムに足を運んだ。 ここが、アスベルにとって5番目に攻略するべきジムバトルである。
「確か、ここはフェアリータイプのジム……だったな」
ジムリーダーは、ここにくるまでに何度も出会った老婆・ポプラだ。 そして彼女を筆頭にアラベスクジムはフェアリータイプのポケモンの使い手がそろっている。 アスベルの手持ちの中でフェアリータイプに有利なのは、はがねタイプであるアーマーガアだ。 彼を主軸にしていけば、大丈夫だろうと考えつつ、アスベルは受付をすませてジムバトルに挑む。
「おや、ここまできたんだねぇ」
「はい」
ユニフォームに着替えたアスベルは、まるで劇場の舞台裏のようなところまでつれてこられた。 その先には、ジムリーダーのポプラが待ち受けていた。
「ここでのジムミッションは、同時に、あたしにとっては跡継ぎを決めるためのジムリーダーオーディションでもある」
「……跡継ぎ……」
「そう。 後継者をかれこれ10年以上探しているんだよ」
どうやらポプラは老いていく自分自身を見つめなおし、自分だけの価値観では限界があるのではと感じていたようだ。 そんな現状を憂いでいるゆえに、新しい世代へとバトンタッチをしたい…といったところだろう。 しかも、後継者をわざわざ探していることから、彼女には子…ひいては孫もいないのだろう。
「なに、ルールはカンタンさ。 ジムトレーナーと勝負をしつつ、みんなが出題するクイズに答えていくだけ」
「く、クイズですか……」
「そのクイズに正解できれば、戦っているポケモンの能力があがる。 ただし、間違えると戦っているポケモンの能力が下がる」
「……どうなっているんですか、それ」
「まぁフェアリータイプポケモンの不思議な力さ、細かいことは気にしなくて良いよ」
そうポプラはジムミッションのルールを説明し、自分の席に向かう。
「さぁ、あんたの本気じっくりみさせてもらうよ」
「よろしくお願いします」
そうしてアスベルは、アラベスクスタジアムのジムミッションに身を投じたのであった。
「なんとか勝負を繰り返し、ここまできたぞ」
そういってアスベルは、ジムミッションを一通りクリアし、ジムリーダーに挑戦する権利を得た。 ジムトレーナーがそこそこ年輩の女性ばかりだったのが気になったものの、口に出したり気にしたりしたら相手に失礼だとおもい、アスベルは淡々とポケモンバトルをしたりクイズに答えたりしていた。 ちなみにそこまでのクイズは、アスベルはすべて正解している。
「みんな、次がジムリーダーだ。 準備は良いな?」
自分のポケモンたちに確認をとり、アスベルはスタジアムのバトルフィールドに向かう。 するとそこには既にポプラの姿があり、アスベルの姿を見て口を開く。
「今更だけど名乗るかね……ジムリーダーのポプラさ」
「アスベルです」
相手が名乗ったので、アスベルも同じように名乗る。 ポプラは、ジムミッションの最中でみたアスベルの人物像を口にする。
「クイズに答えたあんたのリアクションを、みさせてもらったよ。 あんたは、眼帯のせいで感情がわかりにくいだろうけど、細かいところをみてみれば……ちゃんと表情が変わってるね」
「………」
「そんな中、相棒のポケモンにどんな振る舞いをさせるのか……ちょいとみせてもらうよ」
「はい」
ポプラの言葉に対しアスベルは真剣な表情でそう答え、それぞれポジションにつく。 そして、試合開始の合図とともにポプラとアスベルはそれぞれ、最初のポケモンを繰り出す。
「いっておいで、マタドガス」
「頼む、アーマーガア!」
ポプラが最初に出したのは、ガラルの姿のマタドガス。 対するアスベルはアーマーガア。
「さぁ試合がはじまりました! ジムリーダー歴70年のジムリーダー・フェアリーポケモン使いのポプラさんに立ち向かうのは! 最近注目を浴びているジムチャレンジャー・アスベル選手です! さて、今回はどのような戦いが繰り広げられるのでしょうか!」
「アーマーガア、てはじめにドリルくちばし!」
「マタドガス、かえんほうしゃ!」
まずはアーマーガアがドリルくちばしをしかけた。 マタドガスはそれを受け止め至近距離でかえんほうしゃを放ってくる。 やはりはがね対策はできていたのだな、とアスベルはすぐに気付き、アーマーガアがかえんほうしゃに耐えたのを見て、体制を立て直す策を練る。
「旋回して、はがねのつばさ!」
「マタドガス、えんまくだよ」
今度は相性のいい技で攻撃をしようとしたが、そこにえんまくがかかりマタドガスをとらえにくくされる。 その隙をついてマタドガスはかえんほうしゃを放ってきたので、アーマーガアはそれを回避し、技が飛んできた方向に向かってはがねのつばさで突っ込み攻撃を命中させる。
「問題!」
「!?」
「あんた……あたしのあだ名を知っているかい?」
なんでここでクイズがくるのだ、とアスベルは戸惑ったが、ここにくるまでに聞いたウワサを思い出し、それを答える。
「魔術師、とうがかいました!」
「正解だよ」
そう答えた直後、アーマーガアーの動きがよくなった。 それにより、マタドガスの攻撃を軽々と回避できる。 これは好機、とにらんだアスベルは、勢いのままに相性のいい技で攻め立てる作戦にでた。
「そこだアーマーガア! はがねのつばさ!!」
「かえんほうしゃ!」
「とまるな、突破しろ!!」
アーマーガアははがねのつばさをマタドガスに食らわせるために、つっこんでいく。 相手のマタドガスはかえんほうしゃで攻撃をしてくるが、アーマーガアはそれに耐えながらはがねのつばさをマタドガスにヒットさせ、そのまま戦闘不能にした。
「よし、いいぞアーマーガア」
「はいお疲れさん。 ……次は、この子でいくとしようかね」
そういってポプラは冷静にマタドガスをさげたあと、2番手としてそこに出したのは、トゲキッスだった。
「トゲキッス……か……アーマーガア、まだいけるな?」
「ガァ!」
「よし、続けてくぞ」
アスベルは相性のいいアーマーガアで試合を続行する。 先に動いたのはしんそくを繰り出したトゲキッスであり、わずかながらもアーマーガアに早速ダメージを与える。 アーマーガアは反撃としてついばむ攻撃を繰り出しつつ、はがねのつばさで効果抜群のダメージを与える。 そんなとき、ポプラは再びクイズを出してくる。
「さてと、次の問題! あたしの好きな色は?」
「え……やはりピンク、ですか?」
「他人には勧めるけど、あたしはそうじゃないよ」
「えぇぇ!?」
彼女が何かとピンクを口に出していたから、てっきりそうなのかと思ったら全然違った。 衝撃の事実に対しアスベルは困惑し、そのスキにポプラはトゲキッスにある技を指示する。
「てんしのキッス」
それは、相手のこんらんを誘う技・てんしのキッスだった。 アーマーガアはそれをまともに受けて、混乱を起こしてしまう。
「アーマーガア! オレの言葉がわからないか、アーマーガア!!」
アスベルは必死に呼びかけるが、アーマーガアは混乱して我を忘れている。 そのスキにポプラはエアスラッシュをたたき込んでいき、とどめにだいもんじを食らわせて、アーマーガアを戦闘不能にしてしまう。
「アーマーガア戦闘不能! トゲキッスの勝ち!」
「……こんらん状態によりポケモンだけでなくあんたも、我を忘れてしまったのが敗因さ」
「……アーマーガア、戻って休んでてくれ」
ポプラの厳しい指摘に対しアスベルはなにも言い返すことができず、アーマーガアを戻し次のポケモンを繰り出す。
「次はキミでいこう……頼むぞ、マルヤクデ!」
「なんとアスベル選手が次に出したのは、マルヤクデだぁぁ! フェアリータイプだけならまだしも、トゲキッスはひこうタイプも持っている! むしタイプのマルヤクデで、どう戦うのだぁぁぁ!!?」
「……まぁいいさ。 トゲキッス、エアスラッシュ!」
「マルヤクデ、まもる!」
トゲキッスの攻撃をマルヤクデは防御し、そこから技を繰り出す。
「ほのおのうず!」
そのほのおのうずはトゲキッスを閉じこめる。 それによりじわじわとトゲキッスは体力を削られていく。 それにたいしトゲキッスはげんしのちからを繰り出して抵抗しようとしたが、マルヤクデはそれをまもるで防いだ直後、大技を繰り出す体制に入る。
「そこだ! だいもんじ!」
その繰り出されただいもんじが決まり、ちょうどきゅうしょにあたったらしい、弱ったところでたたきつける攻撃を決めたことで、トゲキッスは戦闘不能となった。 これによりポプラの手持ちポケモンは残り一匹となった。
「眠気覚ましのモーニングティー……ようやく効いてきたようだよ」
最後の一匹をまえに、ポプラはそうつぶやいた。
「さぁいっておいで、マホイップ」
そうポプラが最後の切り札として出してきたのは、クリームポケモンのマホイップだった。
「マホイップ……か……」
「クデッ」
「まだいけるか、ならばいくぞ……だいもんじ!」
さっそく大技を繰り出してマホイップを攻撃するマルヤクデ。 するとマホイップはそれに耐えてみせ、じこさいせいで体力を回復させた。 予想より耐久力があるんだなと思いつつも、アスベルはさらに攻め立てようとする。
「たたきつける攻撃だ!」
「マジカルシャイン!」
攻撃技を決めるために突っ込んできたマルヤクデに、マジカルシャインを食らわせる。 それはめくらましの一撃だったようだ、続けて出されていたミストフィールドが、視界を妨げている。
「どこだ……!?」
「トライアタック!」
すると別の方向から、トライアタックの一撃が飛んできてマルヤクデを攻撃した。 その一撃のダメージは大きいが、相手の位置をとらえたと思ったアスベルは、ある一方を指さしマルヤクデに指示を出す。
「マルヤクデ! かえんほうしゃ!」
「サイコショック!」
そのかえんほうしゃはサイコショックで打ち消され、サイコショックはそのままマルヤクデに命中した。 その攻撃により、マルヤクデは倒れてしまう。
「マルヤクデ、ここで戦闘不能となったぁぁ! これでアスベル選手も残すポケモンはあと一匹! さぁ、ここからどちらが勝つのか……わからないぞー!」
「うぉぉぉっ!」
互いに最後の一匹となったところで、実況があおり観客は歓声を上げた。 マルヤクデにお疲れさまと声をかけつつアスベルは冷静にボールに戻し、最後のポケモンを出す。
「最後はキミでいく! バチンキー!」
彼が最後のポケモンに選んでいたのは、バチンキーだった。 アスベルが最後のポケモンを繰り出したのをみたポプラは、アスベルに向かって叫ぶ。
「腹はくくったかい? ちょいと、楽しませてもらうよ!」
「ダイマックスか……オレ達もいくぞ!」
そういって互いにポケモンをダイマックスさせる。 とはいえ、ポプラの方はダイマックスというよりキョダイマックスなのだが。 そうしてその場に巨大化したマホイップとバチンキーが現れたとき、ポプラはまた、クイズを出題してきた。
「さてと……あたしの年齢は?」
「………」
そのクイズにたいし、アスベルはリアクションに困ったらしく、目が点になる。 ポプラは明らかに自分の数倍は生きているであろう老婆ではあるが、年齢をそのままいっていいのだろうか。 しかし答えなければなにも進展しないので、アスベルは思い切って言ってみる。
「18くらい!?」
「あんた良い答えだよ!」
「いいのか!」
若くみられたいのだろうかと思い、思い切った答えを出したところ、ポプラにはそれがうれしいらしく、正解としてみられた。 これはなんのテストだったのだろうかとアスベルは戸惑うが、すぐにバトルに気持ちを切り替える。
「と、とにかくバチンキー! ダイアタックだ!」
バチンキーが先に動き、ダイアタックでマホイップに攻撃を仕掛ける。 マホイップは高く積んだケーキのような体でその一撃を受け止めると、ポプラはマホイップに、キョダイマックスわざを指示した。
「あんたらに足りないピンク……あたしらがプレゼントしてやるよ! マホイップ、キョダイダンエン!」
「耐えろ、バチンキー!」
マホイップが繰り出したのは、キョダイマックスわざである、キョダイダンエンだった。 その一撃をバチンキーは全身で受け止めるが、マホイップは同時に、自分の体力を回復させた。 激しい一撃を相手に与えつつ自分の体力をも回復させる技なのだとアスベルは気づき、力押しで惜しきそうとする。
「ダイソウゲン!」
「ダイサイコ!」
バチンキーがダイソウゲンを繰り出してマホイップを攻撃すると、マホイップは反撃でダイサイコを繰り出してくる。 直後には双方ともにダイアタックを繰り出していたが、そのあとすぐにダイマックスの効果がきれようとしていた。
「ダイマックスの時間切れか……」
「そのようだねぇ」
互いがダイマックスの制限が切れたことを確信した、そのときだった。
「バチンキー……!?」
ダイマックス状態が解除され、元の大きさに戻るかと思われたとき。 バチンキーの体は緑色の光に包まれ、周囲に広がっていたグラスフィールドのエネルギーで全身を包み込んだ。 そして体は徐々に筋肉質で大きくなり、頭や背には葉のような毛で覆われていき、丸太でできたドラムがそこにおかれ、2本の太い棒を両手で持つようになる。
「………!!」
「なんとここで、バチンキーがゴリランダーに進化したぞーっ!!」
「うぉぉぉ!」
バチンキーは、ゴリランダーに進化を遂げたのだった。
「ゴリランダー……いくぞ! ドラムアタック!」
アスベルは進化してすぐに覚えた技を、ゴリランダーに指示した。 ゴリランダーはその指示に答えるようにして持っていたドラムを激しくたたき、何本ものツタを出現させてそれでマホイップを攻撃する。
「マホイップ……」
その威力にマホイップは押し負けてしまい、そのまま戦闘不能となってしまった。
「マホイップ戦闘不能! ゴリランダーの勝ち! よって勝者…ジムチャレンジャー・アスベル!」
「おぉぉぉお!!」
「ピンクは足りないけど……あんた達はいいトレーナー、いいポケモンだよ!」
アスベルに対し、ポプラはアスベルの強さに一度は驚きながらも、そう評価を送った。
「すごいぞゴリランダー……まさかここで、進化を遂げるなんて……」
「うっほほほぅ」
「こんなに強く、そして大きくなってたんだな……オレもうれしいよ。 勝たせてくれて、ありがとう……」
自分のところに帰ってきたアスベルはそっとゴリランダーを撫でて、彼にそう告げた。 あのときダンデに見せてもらい、自分になついたことから譲り受けた小さなポケモンが、今では自分より大きくなっている。 それが、アスベルにはうれしいことだった。
そんなアスベルに、ポプラは歩み寄り声をかけてきた。
「あんたは……ピンクというより、ネイビーだねぇ」
「え、そうなんですか?」
確かに普段はそんな色合いの、正直暗い色の衣服ばかり身につけている気がするが、こう色の名前で指摘されるのははじめてだ。 あまりにも唐突に言われたので、それもあってアスベルは戸惑ってしまっているのである。
「あんたは実力は十分。 バトルの腕も確か、才能もある……だけど、オーディションは不合格。 あたしのお眼鏡にはかなわないから、ジムリーダーの後継者には相応しくないよ」
「そ、そうなんですか」
そもそもジムリーダーにはなろうとしていなかったのだが、なんとも複雑な気持ちである。 そんなアスベルに対しポプラは笑いながら、彼に言う。
「まぁそれはあくまで、アタシの好みの問題さ。 後継者は別に探すから気にしなくていいよ。 約束通りあんたの実力は認めるし、バトルの記念にフェアリーバッジもあげるよ」
「あ、ありがとうございます」
そう言ってポプラは、自分に勝利した証である、フェアリーバッジを授与した。 バッジを受け取ったアスベルは彼女と握手をし、試合を終了させる。 ポプラは驚いて落とした傘を拾い上げて、立ち去っていく。
「年寄りを軽んじるのは、もちろんよくないことだけどさ……年寄りがでしゃばる世界も、よくないからねぇ………」
「……………」
そう言い残し去っていくポプラの、細い後ろ姿をアスベルはずっと見ていた。
次回も登場人物がわんさかいます。
今年こそは、ハイペースで更新できるよう心掛けていきますので、よろしくおねがいします。