ポケモンSWSH 黎明の瞳   作:彩波風衣

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アスベルとキバナとホップが出てきます。
ちょっとストーリー改変あり。


23~さらなる強さのために~

 

 これから激しくなるであろう、ジムチャレンジ。 それに耐え抜くためアスベルは、自分のポケモン達を鍛えていた。

 

「そこだ、ブラッキー!」

 

 今鍛えているのは、ブラッキーとドラメシヤである。 最近進化したばかりのブラッキーだったら、ドラメシヤのトレーニングの相手にうってつけだと判断したからだろう。 この提案にはその2匹ものった。

 

「……それまでだ!」

 

 互いに技を出し合い、まずは動きをよくすることを目標にする。 ブラッキーはイーブイの頃ほどスピードは出せないが、そのかわり耐久力に優れている。 なので、ドラメシヤの攻撃を受け止める役目をまかせたのである。 ドラメシヤは、ブラッキーにたいし全力で攻撃を繰り出していった。

 

「ドラメシヤ、動きがよくなってきているな……この調子でいけば、強くなれるんじゃないか? バトルに出せる日も、そう遠くないかもしれないな」

「ドラー!」

「おー、めっちゃトレーニングしてるな!」

 

 そんなとき、アスベルにある人物が声をかけてきた。 その声に聞き覚えのあるアスベルはふりかえり、返事をする。

 

「キバナさん、お久しぶりです」

「お、そうだな。 にしても、すげぇ力のいれようだったぜ」

「ああ……彼らのことを考えたら、つい歯止めが利かなくなっていて……」

「そっか。 でもまぁ……特訓に夢中なのはいいが、長旅とかいろんな奴に関わったりしてて疲れてるはずだろ。 そういうときはキチンと休めよ?」

「大丈夫です、ちゃんと夜はテントで睡眠をとっていますし」

「キャンプとホテルは全然違うっつーの!」

「あ、はい」

 

 キバナに言われて素直にそう返事をするアスベル。 どうやらキャンプで休むのが普通だと思いこんでいたらしいことを、彼の言葉で察したキバナは、あきれてため息をついた。

 

「はぁ、お前もダンデもつくづく、オレ様に世話焼かせるのが得意なようだな……」

「え?」

 

 突然ダンデの名前が出てきたので、アスベルはきょとんとする。 そんなアスベルに対しキバナは、頭をポリポリと掻きながら語り出す。

 

「知ってるだろ、あいつの方向音痴。 あいつが行動するたびにオレ様はつきあってやってんのよ。 チャンピオンにヘンに迷子になってもらっちゃ、たまんねーからな」

「そ、そうなんですか………」

「お前はダンデと比べると、だいぶおとなしいと思ったが……ポケモンのことになると我を忘れるところは、同じようだな」

「………」

「ん、どうした?」

 

 自分とダンデの話をされ、アスベルは顔をうつむかせて黙った。 そんな彼の様子が気になったキバナが問いかけると、アスベルは思ったことをそのまま口に出した。

 

「いや、ダンデさんもホップも、オレを弟と呼んでるんだよな……って思って……」

「違うのか?」

 

 キバナの問いに対し、アスベルは苦い顔をしながら語る。 血の関係上、自分は決して、ダンデとは兄弟にはなれないと思いながら。

 

「彼の弟はホップだけですよ。 オレはただのもらわれっこというか………居候なので………。 オレを実の家族のように見てくれることには、とても感謝していますが……彼らの兄弟を語る資格はありません」

「ほう、随分謙虚だな」

「事実を伝えてるだけです」

 

 そう言っているアスベルの横顔に、キバナはなにか思うことがあったようではあるが、なにも言わないでおいた。 こういうことにむやみに踏み込んだり、なにも理解していないのに理解しているつもりで話し相手になったところで、偽善でしかないと知っているからだ。

 

 

 

 そうして、その日の夜は結局、キバナの勧めにより町の中にあるホテルで一泊することになったアスベル。 翌日には、気分がかなりスッキリしていた。 今ここで思い切り背伸びをしているのが、リラックスできた証拠だ。

 

「思えばここ最近、野宿続きだったな……だから、キバナさんにホテルに勧めてもらったのは、ラッキーだったかもしれない」

 

 風呂にも入ったしベッドで寝たし、カレー以外のものを久し振りに口にした。 それだけでいつもと違う、それだけで気持ちがリセットされる。 このまま、キルクスタウンを目指してしまおうとアスベルが思い足を出した、そのときだった。

 

「ガァッ」

「めぇぇ」

「ん?」

 

 アスベルのアーマーガアが何かに気付き、鳴き声をあげたのでそちらを見てみると、そこには一匹のウールーがいた。 そのウールーをアーマーガアは知っているようであり、アスベルもすぐに気付く。

 

「キミはまさか、ホップのウールーか!?」

「ぐめぇ」

「どうして……まさか……」

 

 ウールーが一匹だけでそこにいることに疑問を抱いたアスベルは、ある予感を抱く。 そのを確かめるためにもとにかくホップを探そうと決め、アスベルはウールーをつれて歩き出した。 まずは7番道路にでて見ようと思いそちらへ向かうと、そこにはキバナの姿があった。

 

「キバナさん、どうしたんですか?」

「アスベル」

 

 アスベルに声をかけられたキバナは、真剣な面もちだった。 バトルの時とも普段とも違う一面を目の当たりにし、アスベルは戸惑う。 そんなアスベルにたいし、キバナは忠告をするかのように告げる。

 

「もし先へ進もうというのなら……今日は7番道路の周辺にはいかないほうがいいぜ」

「え、どうして……」

「……さっき、うちのジムトレーナーが報告してきたんだ。 土砂崩れに巻き込まれそうになったところを、あるトレーナーが助けてくれたみたいなんだが……そのトレーナーが、自分の代わりに土砂崩れに巻き込まれてしまったらしい……」

「え、それって大変じゃないですか!」

「ああ、しかも……」

 

 キバナは苦虫をかむような顔をしながら、報告にあったトレーナーの特徴を口にする。

 

「そのトレーナーの特徴が……紫の髪に褐色で、金色の瞳で……顔つきが、ダンデにそっくりらしいんだ………」

「………え………まさ……か………」

「ああ、弟の、ホップである可能性が高い」

「………ッ!」

 

 土砂崩れに巻き込まれたのはホップかもしれない、それを知ったアスベルは目を大きく見開かせ、側にいたウールーを見る。

 

「ウールー……やはり、キミは………ホップを追ってきたのか……」

「ぐめぇ!」

 

 アスベルは内心、自分の予感が的中した確信を得た。 そしてそんなウールーを見て意を決したようにうなずくと、キバナの方を向き宣言する。

 

「キバナさん、オレ……彼を捜しに行ってきます!」

「そいつは無茶だっ! また土砂崩れがおきる可能性があるんだぞ!」

「しかし、黙っていられません!」

「ダメだ、いかせられねぇ!」

 

 キバナはアスベルがホップを捜しに行くのを阻止しようと呼びかけるが、アスベルはそれに強く反発をした。 キバナが止めるために腕をつかんでも、アスベルはそれを強く振り切り、側にいたウールーに呼びかける。

 

「ウールー、一緒にホップを捜しに行こう!」

「ぐめめっ!」

「ダメだ、待て!」

 

 アスベルは、ウールーとともに事故現場に向かって走っていった。

 

「アスベルッ!!」

 

 走り出したアスベルとウールーの耳には、彼らを呼ぶキバナの声は届いていなかった。

 

 

 

 一方、土砂崩れが起きた場所より低い土地では。

 

「いててて………」

 

 高く積みあがった土の壁にふさがれた、大きな穴の中の中にホップはいた。 彼はこの近辺で修行をしていたはいいが、その際に地震が発生し、土砂崩れが発生しかけていたので避難をしようとしていたのだ。 だがその時、別のトレーナーがそれに巻き込まれそうになっていたので、迷わずそのトレーナーの元へ向かい、腕を引っ張って投げ飛ばすことで救出した。 だが、トレーナーの身代わりとなる形でホップは投げ出され、そのまま土砂とともに落下し、この穴に落とされてしまったのである。

 

「そっか、おれ……ここに落ちてきたんだな……」

 

 今自分がなぜここにいるのか、そのすべてを思い出し現状を把握したホップは、僅かにさしている光を見つめた。

 

「あの人、大丈夫かな? おれも、急いでナックルシティに戻らなきゃ……」

 

 自分が助けたあのトレーナーの安否を確認するためにも、ホップは立ち上がろうとした。 だがその時、ホップは自分の足に激痛が走るのを、全身で感じた。

 

「ぐぁぁっ!!」

 

 その痛みにより、ホップは再びその場に座り込む。 痛みを感じた足ををみてみると、赤く晴れ上がっておりわずかながらに血も出ている。 自分が思うより重傷だと思ったホップは、ポケモン達に脱出を手伝ってもらおうと思い、ボールに手を伸ばそうとした。

 

「やっべ……ボールがベルトごと無くなってる……!」

 

 だが、腰につけていたモンスターボールが、専用のベルトを含めなくなっていた。 おそらく土砂崩れに巻き込まれたせいだろう。 ポケモンがいなければこの状況を打破できない、と気付いたホップは舌打ちをした。

 

「くそ……このままじゃ、ジムチャレンジを続けるどころか、ここからうごけねぇ………!」

 

 そう口にして、周囲に誰もいなくて自分は独りぼっちなのだと感じたホップは、ジムチャレンジをはじめてからここまでのことを思いだし、そのすべての記憶に押しつぶされそうになる。

 

「おれなに、やってんだ? 一度負けたからって迷っちゃって、ジムバッジあつめられてても……そのたびに苦戦してて……その結果キルクスで……また、負けて……」

 

 自分が強くなければ、兄が侮辱される。 弱い自分が弱いせい、誰かを不幸にするかもしれない。 耐え難い屈辱、不安。 それが、孤独になったホップに容赦なくのしかかってくる。

 

「おまけに、こんなケガまでして……ポケモンともはぐれて……」

 

 それだけではない。 自分が相棒と呼んでいたあるポケモンを手持ちからはずして、さらには一緒に競い合おうとしていた、親友の少年まで拒絶をした。

 

「いま、まで……おれ……なにを、やってたんだ……」

 

 自分はなにも考えず、その先のこともわかっていないまま、ジムチャレンジに挑んでいたのかと、ホップは世の厳しさや自分の小ささに気付き、再び悩み苦しんだ。 徐々に、これからまたどうすればいいか、わからなくもなってくる。 やめるべきか続けるべきか、その選択が襲う。

 

「!?」

 

 だがそのとき、ホップに悩む時間を与えないといわんばかりに、穴の中が大きく揺れた。 またどこか崩れるのだろうか、とホップが身構えていると、目の前に一匹の野生ポケモンが現れた。

 

「げっ……サ、サイドン!?」

 

 現れたのは野生のサイドンだった。 どうやらこの穴を己の巣にしようとしているらしい。 先にそこにいたホップを、追い払おうとしてる。

 

「くっそぉ……動けよ、オレの……あしっ!」

 

 ポケモンさえいれば戦って追い払えるが、それができない。 急いで走って逃げなければ。 そう思ったホップは動きたかったが、足は動くどころかさらにホップの動きを封じる一方であった。 それでも、必死にあがいて立ち上がろうとするホップ。 そんなホップにサイドンは容赦なく、攻撃を加えようとしていた。

 

「うわぁぁ!」

「ぐめぇぇ!!」

 

 このままでは自分はサイドンに殺されるかもしれない、そう思ったホップは叫ぶ。 その次の瞬間、白くてふわふわしたものがサイドンにたいあたりをしかけて、サイドンの攻撃を妨害した。 何事かと思いホップは閉じていた目をゆっくりあけると、そこには自分が手放したはずの相棒の姿があった。

 

「う、ウールー!?」

「ゴリランダー、いわくだき!」

「!?」

 

 そこにさらに、ゴリランダーが現れいわくだきでサイドンを攻撃する。 その一撃により怯んだサイドンに、さらにゴリランダーは攻撃技をたたき込む。

 

「決めろ、ドラムアタック!」

 

 それはくさタイプ技である、ドラムアタックだった。 効果抜群の技を受けたサイドンは、耐えられなくなりそのまま立ち去っていった。

 

「……あ……」

 

 そして、ホップの目の前に、眼帯に金髪の少年が姿を見せたのであった。 彼の蒼い右の瞳は、ホップの姿を映している。

 

 

 

「アスベル……!」

「ホップ、大丈夫か!?」

「……ぁ……」

 

 アスベルの顔を見てホップは声を詰まらせたが、そのホップの反応で彼の身になにかあったのではと思いこみ、問いかける。

 

「なにかあったのか!?」

「………いや……大丈夫、と言いたいけど………足、ひねって……まともにあるけねぇんだ……」

「そうか」

 

 ホップが今どんな状態かを知ったアスベルは、冷静にそう返す。 彼は無傷ではなかった、だがこうしてここにいることに、アスベルはまず安堵した。

 

「だけど、生きててよかった」

「勝手に殺すな」

 

 アスベルの安堵からでた言葉に対し、ホップはそうツッコミを入れた。 彼の様子から、アスベルは自分を捜しにきたのだと知ったホップは、彼と一緒にいたウールーに目を向けた。

 

「ぐもも!」

「それよりウールー、お前どうして……」

 

 自分はこのままでは強くなれないのでは、という思いこみから手放した、幼なじみポケモン。 それがなぜ、ここにいるのだろうか。 確かに故郷に帰したはずなのに。 ホップが疑問を抱いていると、アスベルはホップの方を見て、口を開く。 自分の予感を、そのまま伝える。

 

「お前……そいつを手持ちから外していただろ」

「……!」

「お前のやり方や決めたことに、オレは口を出す権利なんてないし……お前の手持ちポケモンにこだわらせる気もない。 だが、これだけは言わせてもらう」

 

 アスベルは、ただ、ウールーがここにいる理由だけを伝える。

 

「このウールーは探しにきたんだよ……お前のことを……」

「………」

「どれだけ離れていようとも、預けられていても……ウールーはホップと一緒にいたいって思ってたんだろう。 お前がいつも、ウールーに……一緒に強くなろうって言っていたから……なおさら、な。 そして、今回オレとあい……さらにホップがピンチだと知って、オレと一緒にここまで助けにきたんだ」

 

 そう説明するアスベルの話を、ホップは黙って聞いていた。 そんなホップに、アスベルはここにくる途中で見つけた、ホップのモンスターボールと専用のベルトを見せる。

 

「あ、それ!」

「そうそう。 ついでに、お前のモンスターボールも見つけておいた。 みんな無事だから、安心しろ。 もちろん、お前が助けたという人も……今はナックルシティのキバナさんのところにいる」

「……はは、そっか……それは、よかったぞ………」

 

 ポケモンやあのトレーナーが無事であることを知ったホップは、安堵の笑みを一瞬浮かべた。 そんなホップにたいしアスベルは笑みを浮かべつつも、彼に話しかける。

 

「お前も……言いたいことは、色々……いっぱいあるはずだ。 だが、まずは…………」

 

 そう言ってアスベルは、ホップに手を伸ばした。

 

「帰ろう。 オレが肩を貸すから。 一緒にナックルシティへ戻って……そこで治療をしよう」

「……あ、ああ……!」

 

 ホップは伸ばされた手を握り返して立ち上がり、アスベルの肩をかりポケモン達に守られながら、ナックルシティに帰って行ったのだった。

 




本来はここで、ホップとバトルする展開でしたが、ちょっとオリジナリティを入れたくて、こういう展開に。
このほうが私のイメージする、ホップらしさっていうのが出ている気がしたので。
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