この展開は、2人の関係にとって大事なものだと思ったので気合を入れましたよ、これでも。
キルクススタジアムにて、ジムリーダー・マクワに勝利したアスベルは、次のジムリーダーがいる場所をチェックしていた。
「次の目的地は、スパイクタウン……か……」
「あ、アスベル!」
「ホップ!」
そこに、ホップが駆け寄ってきた。 彼に気付いたアスベルは、まず確認をとる。
「ホップ、もう足は大丈夫なのか?」
「ああ、バッチリ退院許可もでたし……今はぜんぜん痛くないぞ!」
そう言ってホップはけがをしていた足で、とんとんと地面をたたいた。 ここまでこれたことからも、あの怪我は完治していることが伺える。 それによりアスベルは安堵の笑みを浮かべた。
「そういうお前はどうなんだ? ここのジムリーダーには……」
「ああ、この通りだ」
「あ、いわバッジ! お前マクワさんに勝ったのかよ!」
「まぁな」
アスベルが自分でも勝てなかった相手に勝てたことを、ホップはひがみもせず自分のことのように喜んだ。
「そうそう、すっごくいい勝負だった! ジムリーダーだって強いのにね」
「ソニア!」
「ソニアさん」
そこにソニアが合流してきた。 どうやらアスベルの試合を直にみていたらしい。 彼が見事な勝利を決めたことに賞賛するソニアは、ホップのことも含めて、ある場所へいこうと誘ってくる。
「実はキルクスには、すっごいいいお店があるんだ。 はなしたいこともあるし、そこでアスベルの勝利祝いをしようよ。 ついでに、ホップの退院祝いも!」
「オレの勝利祝いとか、大げさですよ」
「それに、なんでソニアがおれの怪我を知ってるんだ?」
「ナックルのジムリーダーに聞いたのよ」
キバナさんの仕業か、とホップとアスベルが苦笑した。 この話はおそらく、ダンデの耳にも届いているだろう。 彼のことだから自分達が怒られる心配がないように配慮はしてくれるだろうとは思いながら、2人はソニアの案内の元、キルクスタウンの中にある、レストランに向かった。
「ここが、ステーキハウス・おいしんボブだよ」
「おお、うまそーなにおい……!」
「確かに……」
店は繁盛しており、こんがり焼けたお肉のジューシーな香りが店内に広がっている。 その香りは成長期の2人の食欲をそそっていた。
「実はブラックナイトのこと……剣と盾のポケモンのこと。 なにもわからなくて……」
そう、ソニアは自分の課題である、ブラックナイト伝説についての研究のことを口にした。 どうやら祝いをかねて、彼らとともにその謎について語り合おうとしていたようだ。 そんなとき、アスベルは店の奥にあるものに気付く。
「!」
「どうし…ちょっとちょっと! えーっ!? なにこれー!!」
それに気付いたソニアも、店の奥にあるものに目を向けた。 そこにあったのは、この店の看板ともいえるボブのポスターと、なにか古い壁掛け…もといタペストリーだった。
「いいポスターだよな!」
「そうそう! このおいしんボブの笑顔全開のポスターが……って、ちっがうでしょーっ!」
「あれ?」
ホップのボケにたいしソニアは見事なノリツッコミを、披露したのであった。
そんな2人のやりとりをよそに、アスベルはそのタペストリーに歩み寄りそれをじっくりと眺める。
「これは……タペ……ストリー……5枚目の………」
「この絵の2人、どこか悲しそう……それに、剣も盾も、持っていない……どこにいったというの? タペストリーにかかれた絵は、なにを意味している……?」
「まさか、どこかに……封印……された?」
「そうかな? 封印というか、どこかで眠りについたのかも……」
ソニアとアスベルの語り合いをそばで聞いていたホップは、ラテラルタウンで発見されたという遺跡のことを思いだして、その話題を出す。
「そうだ、おれも見たぞ、ラテラルタウンの遺跡! それによると、剣と盾ってのは、2匹のポケモンなんだっけ?」
「ああ、それは間違いない……確定してもいいだろう」
「もしかして、おれ達が出会った不思議なポケモン……アイツが剣や盾のポケモン、かも?」
「……まどろみの森で出会った、あのポケモンか」
「そう! おれ達を霧でつつんだ、不思議なポケモン……わっ!?」
2人が旅立ち前に遭遇したあの謎の存在のことを思い出し、その話にはいっていったそのとき。 ソニアが2人に突っかかってきた。
「ねぇ、出会ったってどういうこと!? というかまどろみの森にはいったって……話、もっと詳しく聞かせて!」
「……そういえば、ソニア……昔あの森にはいって怖い目にあって怒られたって………」
「そのことはどうでもいいから!」
ホップのその言葉に対しては少し本気で怒りながら、彼らはとりあえず席を取り料理を注文し、運ばれた料理を口にする。 アスベルとホップはその中でソニアに、森の中に入ったときに見かけたポケモンのことを語る。
「うぅーん……おばあさまに言われて旅だったのに……いま、すごい楽しすぎるよ!」
ソニアは元々祖母であるマグノリア博士が、助手の座に甘んじている彼女に博士号を与える条件として、自分が研究しているダイマックスとなにかの関係があるであろう、ブラックナイト伝説を調べるように言われたことで、アスベル達とともに旅立ったのだ。 最初は仕方なしのつもりでやっていたが、真実に近づくにつれ彼女は自らの意志でその伝説について調べていく気になっていったようだ。
「そういやお前、あのとき寒気がするっていって、気を失うまでずっとあのポケモンのことを呼んでたよな?」
「……ああ……見失いたくなくて、離れてほしくなくて………なにも知らないはずなのに、オレはずっと彼を知っていたかのように……。 自分でなにが起きていたか、なぜ必死に呼んでいたのか……わからなかった」
「……あれから、変なことは起きていないか?」
「…………」
そんなとき、ホップはふとあの森で起きたアスベルの異変について思いだし、そのことを彼に追求した。 それにたいしアスベルは黙ったが、ソニアが口を開いてきた。
「ホップ知らない? アスベル……旅に出てからたびたび様子がおかしくなるのよ」
「変な言い方はやめてください」
「えぇ!?」
そのことにホップは驚き、声を上げた。 それにたいしアスベルは観念したように、旅に出てから自分のみに起きた異変をすべて語った。 以前からよくなかった夢見、幻聴のようなもの、頭痛。 そして伝説に誘われるように関連するものにひきつけられていること。
「ねぇ、そういえば、アスベルをあんたとダンデくんが見つけたのも……あの森のすぐ近く、だったよね?」
「ああ」
「ブラックナイトのこともそうだけど……今思い返せば、アスベルも謎だらけよね……」
「…………」
「……でも、ま! アスベルは全然奇妙でもないしそんなに警戒する必要はなさそうよね! 疑ったりしなくていいか!」
「そうだな、だから気にしなくていいぞアスベル!」
確かにアスベルはまだわからないところが多い。 だがそれでアスベルの性格や今までの彼の行いが否定されるものでもないし、否定すべきものなどない。 彼は彼だと、ホップもソニアもすぐに気付き、そう彼に声をかけた。
「……ああ……」
その2人に対し、アスベルは少しぎこちなさを残しながらもほほえみ返す。
そうして3人はおいしんボブでの食事会を終えると、店を出てある場所へと向かう。 そこは、暖かいお湯が流れたまっている場所。 白い湯気がたちのぼっているそのゆだまりには、ポケモンたちが気持ちよさそうに浸っている。
「温泉?」
「ここは英雄の湯。 大昔2人の英雄が、悪しき存在を打ち破り、戦いの傷を癒した場所……。 でも今英雄の湯につかれるのは、ポケモンだけ」
「………」
「うーん……大昔、温泉に入っていたという英雄とはなにか、あとで調べてみようっと」
もうひとつ調べることを提案したソニアはそこで、不思議なポケモンに会ったという2人を見てふと思ったことを口に出す。
「まどろみの森で不思議なポケモンと出会ったあんた達……もしかしたら、その2人の英雄になれるかもね」
「そういえば…」
そのときアスベルが思い出したのは、ナックルシティの宝物庫にあった、あのタペストリーの一枚目。
「あのタペストリーの最初の絵……ねがいぼしをみる2人からはじまってた」
「ねがいぼし……ああ、あのときもおれとお前で2人で見つけて、おれたちでわけあって……んで、ここにあるんだよな」
そういってホップは、自分の手首にあるダイマックスバンドを見た。 アスベルも一緒になって自分の手首にあるダイマックスバンドを見て、自分達とタペストリーの英雄を照らし合わせた。
「あの英雄達はどんな戦いをしたかな?」
「戦い……英雄……」
ソニアの言葉に対し、アスベルが考え出したそのときだった。
「なぁアスベル! 手持ちポケモンは大丈夫か?」
「ああ……回復はさせたからな」
「じゃあポケモン勝負をするぞ!」
「なんで唐突に!?」
突然ホップがアスベルに対し、ポケモンバトルを申し出てきたのだ。 それにたいしソニアがツッコミをいれると、ホップはにかっと笑って彼らにいう。
「ごちそうしてくれたうまいモンくったら、やる気がドバドバ出てきたんだよ! 今から、未来のチャンピオンによる……エキシビジョンマッチだぞ!」
「負けないからな」
そのホップに対しアスベルは冷静にそう返すが、その表情はどこか嬉しそうだった。 ルールは、3対3だ。 少し広い場所に出た彼らはソニアの見守る前で勝負を開始する。
「理屈はわかんないけど、みせてもらうよ! じゃ……試合開始!」
「いくぞ! バイウールー!」
ホップが最初に出したのは、バイウールーというポケモンだった。 その姿はハロンタウンでみたことがあり、どんなポケモンなのかを知っているアスベルは、そのバイウールーの正体にすぐに気付く。
「バイウールー? まさかそいつ……!」
「頼むぞ、相棒!」
「だったらオレは……こいつでいく! アーマーガア!」
その相棒という言葉を聞いて、アスベルは笑みを浮かべつつ自分もまたアーマーガアを繰り出した。 旅立つ前から一緒にいるポケモンをそれぞれそこにだし、勝負を始める。
「バイウールー! とっしん!」
「アーマーガア! はがねのつばさ!」
まずはバイウールーがとっしんを繰り出しアーマーガアにつっこんでいき、アーマーガアははがねのつばさでそれをむかえうつ。 すぐにアーマーガアはドリルくちばしで攻撃したが、バイウールーはそれをコットンガードで防ぐ。
「アーマーガア! ラスターカノン!」
「かわして、もう一度とっしんこうげき!」
アーマーガアがねらいを定めて繰り出した攻撃を、バイウールーはとっしんするときのスピードを利用して回避しそのとっしん攻撃を食らわせる。
「そこでさらに、にどげり!」
「ドリルくちばしでむかえうて!」
直後にバイウールーはにどげりで追撃をしようとしたが、それは相手のドリルくちばしにより妨げられる。 だがホップの顔から笑みは消えず、さらに技を繰り出してきた。
「今だ、ワイルドボルトだ!」
「!?」
そこで繰り出してきたのは、アーマーガアに有利なでんき技である、ワイルドボルトだった。 不意にそれを受けたアーマーガアは背後にあった木に強くたたきつけられ、戦闘不能になってしまった。
「うそ! ジムリーダーの猛攻に耐えていたアーマーガアを、倒しちゃった!?」
「どうだ! これが……また一緒に進むことを決めた、おれと相棒の力だぞ!」
「……よくいうよ、一度は手放したくせにっ」
ホップのふんぞり返りながらの言葉に対し、アスベルは少し彼をからかうようにそう言った。 そして、アーマーガアにお礼を言った後でボールに戻す。 ホップもバイウールーをめいっぱい褒めた後でボールに戻す。
「次はこいつだぞ、いけウッウ!」
「次はキミだ、頼むぞブラッキー!」
すぐに気持ちを切り替えるようにして、ホップは次のポケモンとしてウッウを繰り出す。 一方のアスベルはブラッキーを繰り出した。 最初に動いたのはウッウであり、まずはとみずでっぽうを繰り出してくる。 それをブラッキーは持ち前の耐久力で耐え、しっぺがえしを繰り出して反撃する。
「エアスラッシュ!」
「あくのはどう!」
エアスラッシュとあくのはどうが衝突し、はじけとぶ。 ブラッキーはでんこうせっかでウッウを攻撃し、ウッウはこごえるかぜを放ちブラッキーの動きを鈍らせる。 それをみたアスベルは、ブラッキーにのろいの技を指示した。
「さらにスピードをさげた!?」
「ウッウ! 連続でドリルくちばし!」
そこにウッウはドリルくちばしを連続でたたき込む攻撃を繰り出し、ブラッキーを攻撃する。 それでもブラッキーは相手の攻撃に耐えながらのろいを積んでいく。 頃合いだと感じたホップは、そこでみずでっぽうを繰り出してきた。
「いまだ、しっぺがえし!」
「なにっ!」
みずでっぽうを受けたブラッキーはそこで、しっぺがえしを繰り出した。 そのしっぺがえしによる反撃ダメージによりダメージを大幅に削られたウッウにたいし、ブラッキーはさらにダメおしをして、ウッウを戦闘不能にした。
「ウッウ!」
「いいぞ、ブラッキー!」
「……よく戦えたな、よかったぞウッウ!」
アスベルはブラッキーを、ホップはウッウをそれぞれボールに戻す。 これで成績は五分五分、とソニアがつぶやく前で、2人はそれぞれ最後のポケモンを繰り出す。
「最後はお前だ、インテレオン!」
「だったらオレはキミでいく……頼む、ゴリランダー!」
最後に彼らが繰り出したポケモン。 ホップはインテレオン、アスベルはゴリランダーだ。 どちらもダンデからもらったポケモンの最終進化系である。
「インテレオン、ねらいうち!」
まず最初に動いたのは、インテレオン。 ねらいうちでゴリランダーに先制ダメージを与える。 ゴリランダーは相性に有利なためそれに耐え、反撃としてはっぱカッターを繰り出してインテレオンに効果抜群のダメージを与える。
「インテレオン! こっちから攻めていくぜ! アクロバット!」
今度は相性のいい技で攻めていく。 その動きは早く、ゴリランダーはうまくねらいをさだめられず必死に耐えていた。
「ゴリランダー、さわぐ!」
そこでゴリランダーはさわぎだし、インテレオンをふっとばす。 その後もゴリランダーはさわぐことでインテレオンを遠ざけ、それに面食らいながらもホップはインテレオンにねらいうちを指示して攻撃を試みる。
「さめた!」
「いまだ、インテレオン! もういちどアクロバット!」
「たたきつける攻撃だ、ゴリランダー!」
アクロバットで向かってきたインテレオンを、ゴリランダーは強力な一撃を食らわせてたたきつける。 そして、インテレオンは距離を置いてある技を放つ体制に入る。 その力が冷気をまとっていることに気付いたアスベルは、対策をとらせる。
「れいとうビーム!」
「ドラムアタック!」
インテレオンはれいとうビームを、ゴリランダーはドラムアタックを、それぞれ繰り出す。 その技は本来なられいとうビームが優勢に見えたが、ドラムアタックの威力も高い。 そして、双方の技は双方のポケモンにヒットした。 その二つの技はそれぞれに効いたらしく、そのままインテレオンもゴリランダーも、倒れてしまった。
「相打ち……!」
「だな……!」
倒れたインテレオンとゴリランダーをみて、2人はそうつぶやいた。
「この勝負は、ひきわけだね」
「ああ」
「はい」
ソニアに言われ、アスベルもホップもこの勝負の結果を受け入れた。 2人はそれぞれのポケモンの健闘をたたえながら、ボールにもどした。 そのときホップは、笑顔を浮かべて彼らに言う。
「でも、いいんだ……今はこれで!」
「ホップ?」
「今、勝負をして……改めて、お前の強さがわかったぞ……アスベルは自分の意志で動いて、誰よりも頑張ってるし、乗り越えようとしてる。 だから、おまえは強いんだって、わかったんだ。 おれは、アニキもそうだけど……お前の強さに、今……すごいあこがれてるんだ」
「……」
「そんなお前だからおれは、本気で競って勝負をしたい。 そしてもっと先へいきたい。 一緒に育って、旅だって、同じ目標を持ったアスベルと……さっ!」
ホップは迷いなくそう言った。 その表情と言葉から、あのとき思い悩み苦しんでいた彼はもういないのだと、あの明るい彼が帰ってきたのだと悟ったアスベルは、安堵の笑みを浮かべた。
「……よかった……」
「えっ?」
突然そんなことを言い出したので、ホップは首を傾げる。 アスベルはホップにたいし目を細めながら、語る。
「お前なら、きっとオレを目標に進んでくれる……そして、必ず立ち上がって、オレのライバルとして……再びオレと競い合ってくれる。 オレはそう信じて、先へ先へ進んだんだ」
「………!」
「だから、大切なことに気付いて、吹っ切れてまた前向きになったお前を見て………ここで一緒にバトルをしてよかった。 オレも、同じだよ……お前と競い合いたいんだ……ホップ。 同じ家で育ち、同じ人を尊敬し、その人と戦いたいと願っている……お前と」
そうほほえみを携えた真剣な表情で語るアスベルにたいし、ホップは自分の涙腺がゆるむのを感じた。 ホップ、とアスベルは目が潤んでいるホップを心配そうに見る。
「あすべるぅぅぅぅ!」
「うわっ!?」
次の瞬間、ホップは泣きながらアスベルに抱きついた。
「おれ、おれ………おまえにも、ひどいことをしてっ」
「……………」
「おまえ、は、なにもわるくないのに……なにも、ひどいこといってないのに……なのに、おれ、お前にやつあた、りして……ポケモンも、ふりまわして……ほんっとに、バカ、だった……ごめん、ごめん……!」
ホップはアスベルにしがみついて、思い切り泣きじゃくった。 そんなホップを、アスベルはずっと受け止めていた。
次回は移動編ですね。
…こういうとき、なんて語ればいいのか……説明力と語彙力と文章力のなさが目立ってしまう気がします。
でも、アスベルとホップがどういう関係なのか、そして互いにどう思っているのかを感じ取ってもらえればうれしいかな。