ソニアから英雄の話を聞いたアスベルとホップは、ポケモンバトルをした。 結果は引き分けに終わったが、ホップはずっと抱えていたスランプを乗り越え、以前の前向きで明るい性格を取り戻した。 それにたいするおもいをアスベルが打ち明けた瞬間、ホップもまた思いを爆発させ、アスベルに思い切り泣きついたのであった。
「もう平気か?」
「お、おれは泣いてばっかいないぞっ!!」
しばらく泣いた後、ホップはアスベルに声をかけられて泣きやみ、恥ずかしそうに必死に涙をぬぐい取る。
「ふぅ……ずっと引きずってたことが晴れて、今は清々しいやっ」
「そうか」
「アスベルのおかげで色々吹っ切れたし……おれ、キルクススタジアムにリベンジして、バッジをゲットするぞ!」
ホップはまだ、キルクスのジムリーダーに勝てていない。 だから、まずはそこへのリベンジが今、彼がやるべきことである。
「お前もわかっていると思うが、マクワさんは強いぞ」
「わかってる! だからこそ鍛えてもっかい挑むんだ! ジムチャレンジって、諦めない気持ちを育てるためにあるもんだろっ!」
だからこそ、ジムチャレンジは何度でも挑戦ができる。 挑戦権を剥奪されない限りは、バトルで勝とうが負けようが、そこでチャレンジャーがどう判断を下すかにゆだねられる。 ホップは、最後までやるという決断を下しているのだ。
「おれはまだまだ、お前の後を追いかける! だからお前はどんどん、突き進んでくれ! お前をおれの……道しるべにさせてくれよ!」
「ああ!」
そうアスベルは力強くうなずき、キルクスタウンに帰って行くホップを見送った。 そこで、少しだけ涙ぐみつつ、ソニアがアスベルに声をかけてきた。
「いい勝負と、青春を見せてもらったよ」
「ソニアさん」
「あいつが元気ないと、ダンデくんも心配するだろうし……吹っ切れてよかった。 あ、もちろんアスベルのことも気にかけてはいるけどね」
「わかっています。 ……というよりも、ダンデさんにはオレよりも、ホップを大事にした方がいい……そう思っていますし………」
そう少し寂しげに語るアスベルに対し、ソニアはアスベル、とつぶやく。 そんなソニアの反応でなにかを察したアスベルは、自分もまた先へ進むために、行動を開始することにする。
「……じゃあ、オレもここで失礼します。 ポケモンを回復させたら、先へ進みます」
「そうだね、がんばってきなよ! その勢いであのチャンピオンをうちまかしちゃいな!」
「はは……はいっ」
そう語るソニアに対しアスベルは苦笑しつつそう返すと、そのままポケモンセンターへ向かった。 その様子を見届けたソニアは、アスベルとホップの姿を見て、思ったことをつぶやく。
「私も、ダンデくんとああやって周りの目とか違いとかを……気にしないで、立ち向かう強さがあったら……よかったかも、ね」
そう、過去を振り返りながらも多くは語らず、ソニアは自分のやるべきことに集中するため、そちらにさっさと切り替えるのであった。 そうでもしなければ、過去の思いに押しつぶされそうだったから。
そうしてポケモンセンターでポケモンを回復させたアスベルは、自分を応援してくれる女性と遭遇してほほえみ返したところ黄色い声を上げられるという体験をしながらも、キルクスタウンを出て9番道路に突入する。
「ばばいと~!」
「?」
なにかのポケモンの鳴き声が聞こえたのでそちらに向かってみると、そこにはまたというべきか、エール団の姿があった。 彼らはアスベルの存在に気付くと、迷わず声をかけてきた。
「おっと、まさかスパイクタウンに行こうっていうんじゃないよね!?」
「……そのまさか、だが?」
エール団の言葉に対しアスベルはいぶかしげにそう答えると、エール団は奥にいるカジリガメを見せながら、アスベルに宣言する。
「今おれ達、エール団は! カジリガメを応援しながら、誰かが水上を越えていくのをジャマするのだ!」
「どんな妨害だよ………」
「特にあんたは、ロトム自転車をもっていーる! このまま水上をわたられて先へ進まれたらやっかい……だから、ジムチャレンジはここで諦めほしか!」
「断る」
アスベルはエール団の言葉に対し一刀両断をすると、ボールを構える。
「あいにくだが、オレは諦められない……! どうしてもというなら、勝負をさせていただく!」
「力ずくで止めるしか、ないようだね!」
「それは、こちらの台詞だ」
そういって相手のエール団はズルズキンとバルジーナを繰り出し、アスベルもドロンチとタマンタを繰り出した。
「あくタイプにゴーストタイプで挑もうなんて、笑っちゃうね! バルジーナ、ドロンチにあくのはどう!」
「ズルズキン、タマンタにかわらわりだ!」
「タマンタはズルズキンにエアスラッシュ! ドロンチはこうそくいどうでかわせ!」
タマンタはズルズキンの攻撃が自分に当たる前に技をヒットさせ、ひるませることで技をくらわずにすみ、ドロンチも素早さをあげることで、バルジーナの技を回避した。
「そこでドロンチ、スピードスターッ!」
続けてアスベルはドロンチに攻撃の技を指示し、相手のポケモン2匹に同時に攻撃をした。 そしてその隙をつくかのようにタマンタがバブルこうせんをバルジーナにたたき込んでいく。 続けてタマンタがこごえるかぜをうち相手の動きを鈍らせたところでドロンチがりゅうのはどうをたたき込み、まずはバルジーナが戦闘不能になる。
「よし、まずは一匹!」
「ズルズキン、かみくだく!」
そこで相手のズルズキンがタマンタにかみくだく攻撃を命中させ、さらにとびひさげりも食らわせてタマンタを水中にたたき込む。
「タマンタッ!」
「どうだ!」
タマンタがやられた、と誰もが思ったそのとき。 海の中に突如としてテッポウオの群が現れたと思ったら、水面に渦が発生しその中からカイトポケモン・マンタインが現れた。
「……マン、タイン!」
そのマンタインが自分のタマンタだと気付いたアスベルは、マンタインと目を合わせて頷くと、技を指示する。
「決めろ、バブルこうせん!」
アスベルがマンタインに指示したその技で、エール団のズルズキンは戦闘不能になった。 これにより相手のポケモンは倒れ、ビビるエール団にたいし、アスベルは強く言う。
「さぁ、まだ戦うか!?」
「ぐっ……おぼえてろーっ!!」
「スパイクタウンにかえーる!!」
そう捨てぜりふを残して、エール団は立ち去っていった。 彼らの口から出たある地名に、アスベルは気付く。
「……ヤツら、スパイクタウンからきたのか……」
そうしてエール団を撃退したアスベルは、まっすぐにスパイクタウンへ向かった。 その先でアスベルは、人だかりを発見する。 なにかあったのだろうかと疑問を抱いたアスベルは、その人だかりに声をかける。
「どうしたんだ?」
「それが……シャッターが降りていて、スパイクタウンに入れないんだよ」
「え?」
「このままじゃ、あくタイプのジムに挑めないじゃないか!」
人だかりはジムチャレンジャーのようだ。 アスベルも確認をしてみると、確かに町の入り口にはシャッターが降りていた。 そこでアスベルは、スパイクタウンは近年人が減ってきていて寂れているという話を思い出し、シャッターにふれながらぶつぶつとつぶやき始めた。
「いくら廃れているからといって、今この町ジムリーダーがいる以上、はジムチャレンジに必要な場所のはず……シャッターが降りてて閉鎖されているなんて、ありえない……。 もしここが完全に廃れてて閉鎖されてしまったのなら、事前に知らせが入るはずだが、そんな話も聞いていない……!」
「あなた、チャレンジャーと言うより探偵じゃないの?」
そうブツブツ呟いているアスベルにほかのジムチャレンジャーがツッコミを入れる。 とりあえず今はこの町の中に入る手段を探さねば、とアスベルは人だかりを離れて周囲を調べ始めた。
「ちょっとちょっと、アスベル!」
「マリィ!?」
「こっち!」
そんなとき、マリィが町の外壁の陰から少しだけ姿を見せ、アスベルを呼び寄せる。 アスベルは彼女がここにいることに対し意外に思いながら、彼女の元へ向かう。
「どうして……」
「あたし、実はこの町の出身ったい。 だからちょっとした裏口も知ってるんだ」
「そうだったのか……じゃあ、この町がシャッターをおろしてる犯人、そして原因も……キミは知っているのか?」
アスベルがそう問いかけると、マリィは首を横に振り、自分もこの町の今の状況に戸惑っていることを彼に伝えた。 だから、実際に町の中に入り、確かめるしかないと言う。
「あたしが中を案内してあげる……ただし、あんたはあたしのライバルだもの! あたしに勝てたらの話になるけどねっ!」
「ポケモンバトルか……」
そこでマリィは、アスベルにバトルを申し込んできた。 この状況でバトルを申し込む理由をアスベルは推理し、彼女に確認をとる。
「さしずめ、オレにこの先に進む資格があるか……直に確かめてみたいということか?」
「そう思ってもいいよ」
マリィとしては単純に、アスベルとバトルをしておきたかっただけかもしれなかったが、彼がそう解釈をしたのならそれでいいと思ったらしい、彼の推理を受け入れた。 一方のアスベルも、彼女のバトルの申し出を受けることにする。
「わかった、やろう」
「まぁ手早く今回は、一対一で終わらせようか!」
「ああ」
「あんたもあたしも、勝ち残っているジムチャレンジャー! あんたのことはライバルとして尊敬してる。 でも、あたしも色々せおっとるけん、負けるわけにはいかんとよ!」
「オレも、背負っているものはある……だから、キミにもかつ!」
マリィに対しアスベルはそう答え、ボールを構える。
「あたしは、この子でいくよ……レパルダス!」
「頼む、マルヤクデ!」
互いにこのバトルに出すことを決めたポケモンはそれぞれ、レパルダスとマルヤクデだった。 あくタイプのレパルダスにたいしむしタイプのマルヤクデを出したことに、マリィはつぶやく。
「……セオリー通り、やね……!」
「マルヤクデ、ほのおのうず!」
「だけど簡単に勝てると思わないでねっ! レパルダス、かげぶんしん!」
マルヤクデはまず、ほのおのうずで相手の動きを制限しようとしたが、そこでレパルダスはかげぶんしんを使い、その技を回避する。 作戦失敗でアスベルは小さく舌打ちをする。
「とらえそこなったか……!」
「そこでつじぎり!」
「ほのおのムチ!」
レパルダスはつじぎりを繰り出して攻撃をしてきたので、マルヤクデはほのおのムチで対抗しようとする。 結果、どちらも互いの技を受ける結果になった。 そこでマリィは今度はサイコカッターを指示しそれでマルヤクデの動きを一度妨げた後で、もういちどつじぎりを決めようとする。
「そこだ、シザークロス!!」
そのときアスベルマルヤクデに指示を出し、マルヤクデはレパルダスのつじぎりを正面から受け止めながらもシザークロスを繰り出し、大ダメージを与え、戦闘不能に追い込んだ。
「ああ、レパルダス!」
「相手の動きが早く攻撃を回避されるのであれば、攻撃される瞬間に食らわせればいい!」
「クッ……!」
この勝負は、アスベルの勝利になった。 マリィはまずレパルダスにおつかれと声をかけてボールに戻した後、悔しそうに呟く。
「マリィたちのいいところ、ぜんぜん出せなかったじゃんもう!」
「そうかな、オレには伝わったけど」
「……ッ」
そう声をかけてきたアスベルから、目をそらしつつ、マリィは自分はまだジムチャレンジを続ける意志を伝える。
「あんたは強いけど、今までも強い人はいっぱいいたけど……あたしは、まだジムチャレンジは続けるけん!」
「マリィ……」
「あたしは、スパイクタウンのみんなを喜ばせるために……そして、あんたともう一度勝負をするために、絶対に勝ちあがるんだから! あんたもバッジを8個全部集めるけん!」
「ああ、もちろんだ。 オレもやめたりはしない……キミも、続けてくれ」
「あたりまえったい!」
アスベルの言葉にマリィはそう返すと、勝負の前にかわした約束を果たそうとする。
「さぁ約束やけん、スパイクタウンに案内してあげる!」
「ありがとう」
そう言葉を交わし、マリィは抜け道を通してアスベルを町の中に入れた。 スパイクタウンはどこか薄暗く、ネオンのように看板が光っている町並みだ。 さらに、どこか冷たい空気がただよっていて、人気も少ない。 町全体が、どこかもの寂しげだった。
「ここが、スパイクタウン……。 この奥に、ジムリーダーもいるのだろうな……」
町の中に入ったアスベルは、その奥にいるであろうジムリーダーを見つめたのだった。
次回はスパイクジム攻略。
ここが悪タイプのジムなのは、闇が見えるからかな