途中のアスベルの言葉は、私が本編のエール団の行動に対して物申したかったからいれました。
何故かシャッターが降りていて、中にはいることができないスパイクタウン。 ただ、アスベルだけはマリィの案内のおかげでこの町の中に入ることができた。 だが、町の中に人の気配はない。 故郷のこの状況に対し、マリィも戸惑っているようだった。
「にしても、なにが起きてるんやろ……シャッター降ろしてたら誰も挑戦できんのに……」
「マリィ……?」
「アスベル!」
そんなマリィにアスベルが声をかけると、マリィは冷静になろうとしながら、話をする。
「えっと、ごめん! 案内はしてあげたいけど、あたし……この町の、今の状況を調べなきゃいけなくなった! だから、あんたは先にジムリーダーに挑んで!」
「え、でもこの町ってスタジアムがないじゃないか……どこにいけばいいんだ……?」
「そこの受付にいけば、そこでジムミッションがはじまるったい!」
マリィのその言葉をきいて、アスベルは察した。
「まさか、今はこの町全体がスタジアムのようなものになっているというのか!?」
「そういうことったい」
「……とにかく、ジムチャレンジであることに変わらないなら、ユニフォームに着替えた方がいいか」
「うん、すぐにお願い」
そう言われ着替えようとしたアスベルだったが、そこで目の前にマリィがいることに気付き、手を止めた。 着替えているところを他人に見せることは好きではないし、その相手が女の子であればなおさらだ。
「あ、えっと……」
「……ゴメン、あたしがいると着替えにくいよね……」
アスベルが少し挙動不審だったことと、その理由に気がついたマリィは、すぐにそこを立ち去った。 その直後、彼はすぐに着替えて、ジムチャレンジに挑んでいった。
「受付にいたのは、エール団………まさか………」
ジムチャレンジの受付ができ、ジムリーダーに挑むためのジムミッションは受けることができるものの、その受付をした人物にアスベルは違和感を抱いた。 その姿はエール団そのものだったからだ。 彼らの正体にひとつの説を頭に浮かべたアスベルは、目の前に現れ勝負を仕掛ける体制に入っているエール団にたいし、モンスターボールを向けた。
「……その答えあわせは、勝負をしながらしていくとしよう!」
「先へ進みたいお前と、先へ進ませたくないオレ達との、バトルだぜ!!」
相手は2人であり、それぞれフォクスライとコマタナを出してきた。 アスベルはマルヤクデとゴリランダーをだし、それに対抗する。
「まさか、妨害をかいくぐりながら先へ進むというのが、ジムチャレンジの内容だったとはな………」
おまけに、今まで何度も遭遇していたエール団の正体が、スパイクタウンのジムトレーナーであるという真実まで知らされた。 受付である程度の察しはついたが、何故そこまでするんだと、アスベルがつい苦笑をもらした、そのときだった。
「しぇからしかっ!!」
「!?」
突如、町全体に怒声が響きわたった。 声の感じから誰のものかはすぐに気付いたが、彼女はあんな声を出せるのかと驚きながらも、怒声の主である少女の姿を発見し、彼女に声をかける。
「マリィ!」
「アスベル! えっと……ごめん!」
「ど、どうしたんだ?」
「実は、シャッターをしめた犯人はこいつらで、しかもあたしのためだというの……」
「なに?」
マリィからきかされた、シャッターの犯人に対しアスベルは目を丸くする。 なぜここまでするのか、と疑問を抱いたアスベルに、エール団は口々に事情を語る。
「スパイクタウンも寂れるばかり……。 ネズさんも大丈夫!しか言わないし……」
「それもこれも、ローズ委員長がジムチャレンジを盛り上げすぎているせいだ! ここにはパワースポットがないからスタジアムもつくれないし、委員長はネズさんにたいし、ここより別の場所にジムをうつし住むことしか勧めない……」
「……」
「だがそこで、オレたちは思ったんだ! オレ達のお嬢だけが、ジムチャレンジに勝ち上がっていけば! お嬢はチャレンジカップにすすめーる!」
「そうすれば、お嬢が新チャンピオンになれーる可能性がたかまーる!」
「そのためにオレ達は、ほかのジムチャレンジャーを足止めすることで、お嬢が進めるように応援してーた! というわけなのーさ!」
今スパイクタウンに起きているシャッター事件だけでなく、今までのエール団の行動に対する動機がここでハッキリとした。 そのすべてを聞いたマリィは眉間にしわを寄せ眉をつりあげつつ、ため息をついた。
「……はぁ、そんなのちぃっとも応援じゃないし!」
「そうだな」
そしてアスベルも、少し眉をつり上げながら、エール団の前にでた。
「あ、アスベル……?」
「故郷が寂れることに対し、お前達がさみしさと危機感、そして委員長を気に入らない理由は、少しだけわかった………。 だが、お前達にとって、マリィはどんなレベルのポケモントレーナーなんだ?」
「えっ?」
アスベルの言葉にたいし、マリィもエール団もきょとんとした。 そんな彼らにアスベルは、強く言う。
「お前達がやっていたのは、応援なんかじゃない……冒涜だ。 この子は周囲の妨害でもないと、ジムチャレンジでかち上がれない……勝ち上がる力はないと言っているだけだ。 彼女は自分の力だけで突き進むことのできる、強さがある。 ……お前達は、自分達のおこないでそれを否定しただけにすぎない」
「……ッ!!」
アスベルのその厳しい指摘にたいし、エール団はショックを受けてうなだれる。 マリィはアスベルの言葉にたいし思うところがありながらも、今彼がすべきことをすぐに思い出し、彼には先に進むようすすめる。
「……アスベル、こいつらの説教はあたしが受け継ぐから、一足先にジムリーダーに挑んで!」
「遠慮なく、そうさせていただくよ」
マリィに対しアスベルは力強くうなずき返すと、奥のライブ会場らしき場所を見つめた。 そこには観客のようにエール団が声を上げていて、ステージには白黒の髪に青緑色の目の男性がそこにたち、激しく歌っていた。
「あれが、ジムリーダーの……ネズさんか……」
そうアスベルがその男性がネズであると気づいたことをつぶやいていると、向こう側もアスベルがいることに気付く。
「……はぁ、やっときましたか」
その声とともにネズは歌うのをやめ、アスベルの前に現れる。 近くでみると、髪のボリュームもすごいし意外と背が高いので、アスベルは戸惑う。その間にネズのライブを盛り上げていたエール団はそこを離れてフェンスの向こうに移動した。
「おれ……本当にダメなヤツだからさ、だから誰もこないんだ。 そんな想いが強かったね」
「…………」
「おれ、いい耳してるから、シャッターのこと聞こえていたけど……一人でいる時間は、心が泣きそうになるんだよね。 ダイマックスが使えないジムスタジアムだからさ、シンプルな戦いになるけど、ちょっとは楽しんでほしいよね」
「ネズさん……」
ネズの言葉にしばらく耳を傾けていたアスベルだったが、真剣な表情になると彼に対し改めて挑戦することを告げる。
「オレ、アスベルといいます。 ここまでくるのに、ジムバッジは6個集めてきました。 どうか、ジムバトル、お願いします……!」
それに答えるようにネズはふぅ、と一息をつくと、スタンドマイクを取り出して叫ぶ。
「おれは! スパイクタウンジムリーダー! あくタイプポケモンの天才! 人呼んで、哀愁のネズ!! 負けるとわかっていても挑む愚かなお前のために! ノリノリな仲間と共にいくぜー! スパイクタウン!!」
「それでは、チャレンジャー・アスベルとジムリーダー・ネズのジムバトル! これより開始!」
ネズが叫ぶと同時に審判が合図を送ると、2人は同時に最初のポケモンを繰り出す。
「いくぜズルズキン、いかくだ!」
「頼む、アーマーガア!」
ネズが最初に繰り出したのはズルズキン、アスベルが最初に繰り出したのはアーマーガア。 最初相手のズルズキンのいかくで攻撃力が下がったアーマーガアだが、体勢を崩すことはなく、アスベルの指示にあわせて技を放つ。
「ラスターカノン!」
「防げ!」
そのラスターカノンをズルズキンは、体の伸びる皮膚で防ぎ、すぐに反撃にでた。 接近してから放たれたかわらわりを、アーマーガアはまともにくらい吹っ飛ばされる。 アーマーガアは高く飛び上がり、スピードスターで牽制をかけつつ接近してはがねのつばさを食らわせる。 ズルズキンはそれに耐え、アーマーガアにかみくだく攻撃を食らわせる。
「とびひざげりだっ!!」
「そらをとんでかわせ!」
そこで追撃でとびひざげりを食らわせようとしたズルズキンだったが、アーマーガアはそれを回避する。 それによりズルズキンは自らにダメージを与える結果となってしまい、ネズは悔しげに歯ぎしりをたてる。
「ぐっ……!」
「そこだ、ドリルくちばし!」
「ズルズキンッ!」
その直後に放たれたドリルくちばしを受けて、ズルズキンは戦闘不能になった。
「ズルズキン戦闘不能、アーマーガアの勝ち!」
審判の声にたいしネズは冷静にズルズキンをボールに戻し、2番手としてスカタンクを繰り出した。
「におうけどいいよな、いくぞスカタンク! ふいうちだ!」
「かげぶんしん!」
スカタンクがふいうちを食らわせてこようとしていたのを、アーマーガアはかげぶんしんを使うことでそれを空振りに終わらせる。 そして分身しながらラスターカノンを放ち、スカタンクにダメージを与える。
「はがねのつばさ!」
「えんまく!」
アーマーガアは立て続けにはがねのつばさで攻撃を仕掛けようとしたが、それはえんまくにより妨げられる。 そこでアスベルは冷静になり、今度はスピードスターで攻撃を仕掛けた。 そのスピードスターはスカタンクに命中したものの、それこそがネズのねらいだったようであり、スカタンクにそのまま技が放たれたところに攻撃するよう指示を出す。
「そこだ! かえんほうしゃ!!」
「アーマガアッ!」
そのかえんほうしゃはアーマーガアに効果抜群だ。 それによりひるんだアーマーガアにたいし、スカタンクは続けてつじぎりを食らわせ、アーマーガアを戦闘不能にする。
「アーマーガア戦闘不能!! スカタンクの勝ち!」
「ありがとうアーマーガア……ゆっくり休んでくれ。 次はキミでいく、ブラッキー!」
アスベルはアーマーガアを戻すと、すぐに次のポケモンであるブラッキーを繰り出した。 同じあくタイプで攻めてきたことにたいし、ネズはにやりとおもしろげに口角をあげると、スカタンクにつじぎりを繰り出させる。
「ブラッキー、でんこうせっか!」
アスベルの声にあわせてブラッキーはでんこうせっかを繰り出し、スカタンクのつじぎりを回避しつつ攻撃を食らわせる。 そして至近距離でシャドーボールを放ち、弱らせる。
「かえんほうしゃ!」
「サイコキネシス!」
かえんほうしゃにサイコキネシスを使い、操作してスカタンクに逆にダメージを与える。
「なんだとっ!」
「本来サイコキネシスは効かない……だがかえんほうしゃを操り仕向ければ、別だ!」
「…スカタンク、ヘドロばくだん!」
「かわせ!」
スカタンクのヘドロばくだんをかわした直後、スカタンクはつじぎりでブラッキーを攻撃する。 ブラッキーはそれを受けとめる。
「そこだ、しっぺがえし!」
そして、つじぎりのダメージをしっぺがえしで倍返しにし、相手のスカタンクは戦闘不能になる。 審判がそれを告げるとネズはスカタンクを戻す。
「最後のはおれの!イカしたメンバーでいくぜ!! ゆけ、タチフサグマッ!」
そういってネズが最後に繰り出したのは、タチフサグマというガラルのジグザグマの最終進化系だった。 おそらくこのタチフサグマこそが、ネズのエースポケモンなのだろうと読んだアスベルは、まずブラッキーに回復するよう指示を出す。
「つきのひかりだ、ブラッキー」
「させねぇぜ、タチフサグマ! クロスチョップ!」
だが回復したところに効果抜群のダメージを受け、ブラッキーは弱る。 スカタンクとの勝負によるダメージが残っていたら、確実に戦闘不能になっていただろう。 回復の技を使っておいたおかげで戦闘不能を回避できたのは、不幸中の幸いだ。 そこでネズはタチフサグマにかみなりパンチを指示してブラッキーにダメージを与える。
「そこだ、しっぺがえし!」
それをブラッキーはしっぺがえしで倍返しにし、タチフサグマに大きなダメージを与えた。 続けてでんこうせっかを繰り出したブラッキーだったが、それをタチフサグマはブロッキングで防ぎ、直後に再びクロスチョップを命中させ、それが急所に当たったようであり、ブラッキーは戦闘不能になった。
「くっ……! 戻ってくれブラッキー! 今度はキミだ、ゴリランダー!」
アスベルはすぐにブラッキーをボールに戻すと、最後の一匹としてゴリランダーを繰り出した。
「かわらわりだ!」
「タチフサグマ、ブロッキング!」
すぐに効果抜群の技で攻撃をしようとしたゴリランダーだが、それはブロッキングにより妨げられる。 そうして防御が崩れたゴリランダーにタチフサグマはほのおのパンチを繰り出してきた。
「ゴリランダー!」
「攻めていけタチフサグマッ! 再び繰り出せほのおのパンチ!」
「ドラムアタック!」
ほのおのパンチを繰りだそうとするタチフサグマにたいし、ゴリランダーはドラムアタックを繰り出し、攻撃をする。 そのダメージを受けながらもタチフサグマは接近し、ほのおのパンチで攻撃する。
「そこだ、ドレインパンチ!」
それと同時にゴリランダーはドレインパンチで攻撃し、そこにほのおのパンチとドレインパンチによるクロスカウンターが成立した。 その攻撃はドレインパンチのほうに軍配が下り、よろけながらも立ち上がったタチフサグマが再び攻撃をしようとしていたところに、ゴリランダーは再びドレインパンチで迎え撃った。
「タチフサグマッ」
「決めろ! ドラムアタック!」
そのドラムアタックがタチフサグマに命中した直後、タチフサグマの戦闘不能がハッキリとした。
「た……タチフサグマ戦闘不能! ご、ゴリランダーの勝ち! よって勝者は、チャレンジャー・アスベル!」
これにより、アスベルはスパイクタウンのジムバトルに勝利したのであった。
「……出し切りましたよ、おれも、メンバーも……」
「よく頑張ってくれたな、ゴリランダー」
アスベルはゴリランダーをなで、ネズはタチフサグマをボールに戻した。 そしてネズは彼の前にたつ。
「きみと戦えてよかったね……おれのポケモンたちはそう感じているみたいですよ」
「そうですか?」
「では、渡しましょうか。 あくタイプのバッジ……あくバッジを」
「ありがとうございます、ネズさん」
アスベルはネズからあくバッジを受け取りはめると、このジムバトルと今までのジムバトルを比べて思い出し、そこから疑問に感じたことをそのまま口に出す。
「にしても……そんなに、ジムバトルにダイマックスは必要なんでしょうかね?」
「ん?」
アスベルの言葉にたいし、ネズは首を傾げる。
「オレはポケモンバトルを真剣に楽しめれば、そして、それを見てくれている人に伝えられれば……ダイマックスの有無なんてどうでもいいと思いますよ。 今回のバトルも、楽しかったから、そう疑問に思ったんです」
「……そういう考えのトレーナーも、今の時代にいるんですね」
アスベルの言葉に対し、ネズは長年胸の中で抱えていたものが晴れていくような感じになった。 そして、次は自分の妹が挑戦しにくるだろうか、とネズが思ったそのときだった。
「ちょっと、感動しちゃったな。 アスベルとアニキのバトル」
「みていましたか、妹よ」
そこに現れたのは、マリィだった。 それによりアスベルはこの2人が兄妹であることに気付く。
「負けてしまっては、兄として教えられるものがなくなりますね」
「アニキのバトルを見て、色々学んだんだけど?」
「そうでしたか」
そこでネズは、ずっと考えていたことをそのままマリィに告げた。
「そうだ、マリィ……お前に言っておくべきことがあります。 このスパイクタウンのジムリーダーを、お前に譲りたいのです」
「え、ネズさん」
「おれよりも、マリィの方が才能はありますよ」
ジムリーダーを交代しようとするネズにたいし、アスベルは彼がどうなるのかに気付き戸惑う。 そんなアスベルに対しネズは、自分より妹が優れていることを告げる。 そんな兄に対しマリィは、
「……うん、知ってるよ。 アニキが今回のジムチャレンジを最後にジムリーダーを引退するって。」
「………」
「今まで、委員長の言葉に対し首を縦に振らず、ダイマックスも使わないでよくやってきたんじゃない」
そうマリィは笑顔でネズの今までの実績を賞賛しつつ、首を横に振りながら彼の申し出に対する返事をした。
「そんなアニキが好きだけど……返事はNO、かな! だってあたしはチャンピオンになるけん、ジムリーダーはできんよ」
「そうですね。 では、チャンピオンになれるかどうか、アニキが確かめるとしますよ」
次は、ネズとマリィが勝負をする。 ジムチャレンジャーとジムリーダーとして、互いの力を見せる番なのだろう。 しばらく2人の会話を通して様子を見守っていたアスベルに、マリィは告げる。
「アスベル、アニキと最高の勝負をしてくれて、ありがとうね! 今度は、あたしの番だよ!」
「ああ。 次は、チャンピオンの座をかけて勝負をする時に、会おう」
「うん」
ほほえみと共にでているアスベルの言葉にたいし、マリィは小さく笑って返した。
「……いいな、きょうだい……というのは……」
自分にはかなわないものだとしりながら、羨望してしまうものだ。 アスベルはネズとマリィを見つめて、そう呟いたのであった。
ここでマリィの正体がわかるとはいえ、なんというか薄々の予感的なものはありましたよね。
スパイクタウンであの男のダメなところというか、ボロが少し出たと思います。
次回はダイマックス事件にアスベルが巻き込まれる!?