そこで二人はダンデから、推薦状をもらうことになったが…。
迷い込んでしまったウールーを探すために、まどろみの森に行ったアスベルとホップは、その先で見知らぬポケモンに出会った。 そのポケモンにはアスベルとサルノリの攻撃が当たらず、すり抜けていった。 やがて周囲は濃い霧に包まれていき、ポケモンの姿は見えなくなっていった。
「……………ぅ………」
いつの間に気を失っていたのだろうか、アスベルはゆっくり目を覚ました。 そして、何度も瞬きをしながら起き上がり、記憶をたどろうとする。 だがそれと同時に、自分の側で倒れているホップに気付く。
「ホップ、ホップ!」
「う、うーん………あれ………アス……ベル………?」
アスベルの必死の呼びかけにより、ホップも目を覚まして起きあがる。 直後、ある人物の声が2人の耳に届く。
「ホップ! アスベル!」
「へっ!? アニキ!?」
「ダンデさん!」
その人物とは、ダンデだった。 彼は2人にポケモン図鑑を与えようと、研究所にいたはずだ。
「アニキ、方向音痴なのによくこれたな……」
「なにを言ってるんだ! お前達がいつまで待っていても来ないから、心配で探しにきたんだぞ!」
「す、すみません……!」
ダンデに叱られ、アスベルはすぐに頭を下げて謝った。 ホップも少し罰が悪そうな顔をしていたが、すぐにここに迷いこんだであろうウールーのことを思い出した。
「そ、そうだ! ウールーは!? おれ達、ウールーがここに迷い込んだから……助けにきたんだよ!!」
ホップが慌てて説明をすると、ダンデはふっと笑みを浮かべながら自分の側にいたリザードンと、ウールーを見せる。 そのウールーは間違いなく、ここに迷い込んでしまったポケモンで間違いなかった。
「無事だよ。 俺がここにきたときは、みんな気絶していたけどな」
「……よかった……」
ウールーの無事を知り、アスベルもホップも安心した。
「事情はわかった。 森にはいったのはアウトだが……お前達の勇気は認める! よくやったな!」
それをきき、ホップはやったぞと喜んで笑った。
「アニキには怒られたし、深い霧に包まれたり不思議なポケモンと戦ったりしたけど………それも無駄じゃなかったぞ!」
「不思議な………? なにをみたというんだ?」
「うん……なんだかとても強そうな………とんでもない存在感なのに、技が効かなくてというか……すり抜けていくような感じだったんだ」
「技をすり抜ける……?」
「ええ………結局、霧に飲まれて………そのまま姿を消してしまいましたが………。 オレ達もそのまま意識を手放してしまって………あれはなんだったのかがわからないままのです………」
2人が嘘をついているようにはみえないが、そのようなポケモンがいるとは信じられないダンデは、考え込む。
「………まどろみの森にいると言われているポケモンは、幻なのか?」
「その秘密……いつかはわかりますかね?」
「お前達が強くなれば、ありえるかもな」
そう話をしている間に、ホップはあることを思い出した。
「そういえばアスベル、お前もう寒くないか?」
「………あ………言われてみれば、今はもう………」
ホップに言われて、アスベルは確かに今はあの寒気を感じないことに気付く。 一応、ホップがアスベルの額に手を当てて、熱がないことを確認する。 彼が寒気を感じたことと、森で出会った不思議なポケモンには関係があるのかはわからないが、ダンデはこの森をでることを提案する。
「とりあえず、今はこの森をでよう……帰りは俺が一緒だから、心配はいらないぞ!」
「はい!」
「ああ!」
そうしてアスベルとホップはダンデに連れられながら、森を出て行った。 その様子を、2つの視線が見つめている。
「「……………」」
無事に森を脱出しウールーを元の場所に返した後、開かれた柵を閉じながら、ダンデはアスベル達に問いかける。
「さて………俺は先に行かねばならないから行くが……あとは2人で、マグノリア博士のところへいけるな?」
「大丈夫です」
貴方とは違うので、とは思ったが言わなかったアスベル。 隣にいるホップはアスベルがなにを考えているのか悟ったのか苦笑している。 そうして一足先にマグノリア研究所へ向かったダンデを見送ったあと、ホップはあることを思いつき、アスベルにその提案をする。
「そうだ、アスベル! せっかくだ! マグノリア博士のところにいったときに、アニキから推薦状を貰うぞ!」
「推薦状?」
「そ、ジムチャレンジの推薦状!」
ジムチャレンジとは年に一度、チャンピオンへの挑戦権をかけて各地のジムリーダーに挑むガラル最大のイベントだ。 アスベルもホップも、毎年そのニュースをテレビで見ているし、そこで行われるダンデの試合も毎年見ていた。
「ジムチャレンジ、か………そういえばホップ、今まで何度もやりたいって言ってたな。 でも………」
「そう! アニキがおれ達はまだ未熟だって言って、認めてくれなかった! だけど、おれ達はもうポケモントレーナーなんだ……立派にバトルもできるぞ!」
「達、て……オレも入るのか?」
「当たり前だろ! 伊達にバトルの練習していないだろ!」
ホップとアスベルは、それぞれウールーとココガラを仲間にしたときから、何度も練習や遊びの感覚でポケモンバトルをしていた。 それはすべて、ホップが最強のトレーナーになりたいという願いがありアスベルがそれに付き合っていたからである。
「そうだ! マリオンなんだけど、あいつっていとこがジムリーダーやってるだろ? そのいとこから推薦状を貰って、一足先に旅だったんだぞ!」
「え、そうだったのか………いとこがジムリーダーというのは聞いてたけど………」
そこでマリオンが既にその推薦状を持っているという話を思い出したホップはその話題をアスベルにふる。 アスベルはマリオンが既に推薦されていることよりも、マリオンもジムチャレンジに挑もうとしていることに驚いていた。
「………というか、マリオンも挑む気でいたんだな………」
「みたいだな」
マリオンは基本的に趣味は女性的ではあるものの、口調や言動にはやや男の子っぽいところがある。 それは幼なじみである2人もよく知っていることではあるのだが、まさかチャンピオンの座もねらっているということなのだろうか。
「ということは、もう旅だったのか? マリオン」
「………マリオンがじっとすると思うか?」
「お前がいうことじゃないと思うが、思えないな」
「さらっと失礼なことを言うな」
そう会話をしているうちにホップとアスベルは、ブラッシータウンにある、マグノリア博士の研究所にたどり着いた。 2人は言葉を交わし、扉の前にたつ。 施設の中からは、ダンデと誰かの声が聞こえてくる。
「では、ダイマックスの謎はすべて明らかに……?」
「いえいえ、まだわからないことだらけですよ」
「………にしても、ダンデ君の顔を見たときはまた、最強のポケモンを知りたいって無茶ぶりをされるかとおもったんだけど………」
「イヌヌヌワッ!」
「はは、今回もワンパチがいたおかげで、道に迷わずにすんだぜ」
「………私も昔から、道に迷った貴方を助けたりしたんですけど?」
「ああ、もちろん忘れてないぜ」
「ホントかしら」
声からして、ダンデ以外には2人の女性がいるのだろう。 彼らは扉をノックした後でその扉を開ける。
「こんにちはー!」
「おじゃまします」
「お、来たな!」
その研究所の中には、ダンデの他に一人の老婆と明るい色の髪にアクセサリーをつけた女性の姿があった。
「あら、アスベルにホップ」
「ひさしぶりっ!」
「元気そうですね、ソニアさん、マグノリア博士」
「そうね」
その2人には、アスベルやホップも会ったことがある。 老婆の方はマグノリアというポケモン研究者だ。 そして女性の名前はソニアといい、マグノリア博士の孫であり、そこにいるダンデの幼なじみでもある。 2人とはダンデが関係していたり、たまにこの研究所に遊びに来ることもあったために、アスベルとホップは顔見知りなのだ。
「今日はどんなご用事かしら?」
「ああ……実はこの2人に、ポケモン図鑑を与えてあげようとおもい、貴女達にお願いしようと思っていたところなのです」
「じゃあ私がやってあげる! へい、ロトム!」
「ケテー!」
そこでソニアが名乗りを上げて、2人のスマホロトムを起動させた。 そして、スマホロトムを操作して、ポケモン図鑑のデータを送信する。
「はい、ポケモン図鑑をダウンロードしてあげたわよ!」
「サンキュー!」
「ありがとうございます」
2人は無事に、ポケモン図鑑を入手することができた。 そこで、ホップは推薦状の話を思い出してその話題をふる。
「そうだ、博士からも言ってくれよ! おれとアスベルをジムチャレンジに推薦してくれってさ!」
「………そうね、ダンデ。 なんで彼らを推薦しないのかしら?」
マグノリア博士にそう問われると、ダンデは少し戸惑いながら理由を語る。
「ホップもアスベルも、最近13歳になったばかりですよ。 まだ子どもなのに……認めるのは早い気がして……」
「………ダンデ。 あなたの願いは確か、ガラル地方のポケモントレーナーみんなが強くなることよね?」
「………ああ! そういえば、そうでしたね!」
「さらに言うと、貴方がチャンピオンになったのは、まだ10歳の頃よね」
「………そうだな……」
つまり、今のアスベルとホップよりずっと若い頃に、ダンデはチャンピオンの座を勝ち取っているのだ。 自分とそう変わらないのに、とダンデは少し考えた後でうなずき、2人にたいしある提案をした。
「よし、アスベルとホップでポケモンバトルをして見せてくれ!」
「バトル?」
「なんでそうなるのよ」
ソニアが呆れて突っ込みを入れると、ダンデは意気揚々と語る。
「俺を満たし、燃え上がらせるような、あついバトルを見せてくれれば……俺も2人に推薦状を出したくなるかもしれないだろ!」
「どういうことなの」
「とりあえず、ビシっとバトルをすればいいんだろ!」
「……」
そうしてアスベルとホップは外に設置されているバトルフィールドへ向かい、バトルの準備に入る。
「若きトレーナー同士のバトル、私も見させてもらいますよ」
そう話をし、ダンデとマグノリア博士、そしてソニアは2人のバトルを観戦する姿勢に入った。 ホップはモンスターボールを構えながら、アスベルに告げる。
「じゃあここは、おれのメッソンとお前のサルノリでやろうぜ!」
「え、それだとお前が不利じゃないのか?」
アスベルが戸惑いながらそう聞くと、ホップはいいじゃんと笑った。
「だっておれのウールーとお前のココガラって、いつも勝負の練習してるじゃん。 それって、お互いに手の内がわかっちゃってるってことだろ?」
「…そうか」
「え、それで納得する?」
ソニアはツッコミを入れるが、アスベルは特に気にすることなくサルノリの入ったボールを構える。
「いっけー! メッソン!」
「頼む、サルノリ!」
「バトル・スタート!」
ホップはメッソン、アスベルはサルノリをそれぞれだす。 まず動き出したのはスピードのあるサルノリであり、メッソンにひっかく攻撃を繰り出す。 それを受けてメッソンは泣きそうにもなったが、すぐにホップの声でこらえ、みずでっぽうを繰り出してサルノリを攻撃しようとする。
「よけろっ!」
「遅いぞっ!」
アスベルはすぐにサルノリに回避するよう指示を出すが、メッソンはサルノリを逃がさずみずでっぽうを当てる。
「サルノリッ!」
「おれのメッソンは、相手に技を当てるのが得意なんだぞっ!」
「……えだづきだ、サルノリ!」
すぐにアスベルはサルノリに指示を出して、くさタイプの技を繰り出してメッソンに効果抜群の一撃を与える。
「相性の有利不利がわかるなんて、流石だぞアスベル!」
「当たり前だろ」
「けど、相性をひっくり返してこそ、最強の条件だぞ! メッソン、そこではたく攻撃!」
「ひっかくでむかえうてっ!」
メッソンとサルノリがぶつかり、双方の技は互角に終わるかに思えた。
「そこだ、みずでっぽう!」
「!」
そこでホップはメッソンに、至近距離で技を繰り出させたのだ。 その攻撃は急所に当たったようであり、そのままサルノリは吹っ飛ばされ、戦闘不能となった。
「よっし、やったぞ!」
「サルノリ………ありがとうな」
この勝負はホップが勝利し、アスベルは敗北したのであった。
「やっぱりおれは、最強になれる男なんだな!」
「ホップ、いつもボールの投げ方ばっかり練習していたくせに……」
「なんだとぉっ!」
勝利に喜ぶホップに、アスベルはくぎを差すようにそう言った。 なにはともあれ、勝負を見届けたダンデは笑って頷く。
「うん! 2人とも、いいバトルだったぞ! 俺もリザードンで参加しそうになったくらいにな!」
「それはやめなさい!」
「そして今のバトルをみて、確信した………チャンピオンの推薦状を、お前達に出すしかないってな!」
「やったぁ!」
ダンデはホップだけでなく、アスベルにも推薦状を与えた。 そのダンデの判断に、アスベルは意外そうな顔をしている。
「2人で切磋琢磨して、強くなっていけ!」
「おう! おれ達でチャンピオンを目指して、ジムチャレンジに挑戦だっ!」
「………オレも、負けたのに貰ってもいいんですか?」
「構わないさ! お前達のどちらが勝ち、どちらが負けたとしても………ただ、いい勝負をしてくれればそれでいいんだからな!」
そう言ってくれるダンデの言葉がうれしいのか、アスベルは小さく笑みを浮かべた。 そして、やがて意を決したように頷くとアスベルはホップの方をみる。
「………ホップ」
「アスベル?」
「………オレは今回は負けてしまった……だが、オレにも出来るなら………今より強くなりたいと思ってる。 だから、ジムチャレンジで強くなって、お前にリベンジをするよ! この子達のためにも……!」
アスベルはどこか楽しそうに、そして強気にホップにライバル宣言をする。 そんなアスベルの姿がホップには嬉しいことだったようであり、笑顔で頷く。
「なんだかんだで、お前バトル結構好きだもんなっ!」
「ふふ……だてにお前に付き合ったりしていないからな」
「2人で一緒に、チャンピオンを目指すぞ!」
「ああ!」
そうアスベルとホップが互いに誓い合った次の瞬間。
「……!」
「なんだ、あれ!?」
2人の真上を、一閃の赤い光がかけていった。 そしてその光は彼らの近くに落ちてきて、2つの石のかけらにわかれた。
「おい、願い星だぞ! 2つあるし、1個はおまえにやるよ!」
「これが、願い星………」
願い星というのは、このガラル地方の各地にあるという特別な力を秘めた石のことである。 それがあれば、このガラル地方の伝統の一つである、ダイマックスを使うことができるのだ。
「強い願いを持つものの元に、願い星は降ってくる……とは言うものだが………ここで落ちてくるとは……」
ダンデも、願い星が落ちてくる瞬間を見るのは初めてのようだ。 そんなダンデをよそに、ホップは最強のトレーナーになると言う願いを3回唱える。
「………よし、3回言ったからかなうはずだぞ!!」
「………それって……ねがいぼしに反映されるのか?」
「もちろんだ! そうだ、アスベルも何か願えよ!」
「えぇ!?」
「あはは、ホップってば唐突すぎ。 そんなに焦って願い事を決めなくてもいいよ、アスベル」
はしゃぐホップをたしなめながら、ソニアはアスベルにそう言う。 アスベルは黙って、自分の手の中にある願い星をみた。
「お2人とも、その願い星を私に貸してくださいな。 そのままでは使えませんからね」
「そうだ、博士はダイマックスの研究家! 博士に頼めば、おれのポケモンもダイマックスだぞ!」
「ふふ……そうはしゃいでいると、明日の旅立ちに支障が出ますよ」
そう言ってホップとアスベルは、マグノリア博士にねがいぼしを託す。
「そうだ、せっかくだしみんなでゴハン食べていきなよ。 私ちょうど、今はやりのカレーライス作りに凝ってるのよね」
「カレーライス…!」
「そういやお前、カレー大好きだったな」
「……いいだろ……」
アスベルの好物の話に触れると、アスベルは照れた。 彼は昔から好き嫌いはないが、カレーライスと紅茶が特に好きなのだ。 そうして一同は、その夜、ソニアが作ったカレーライスを口にしていった。
「うん、うまい! やっぱりソニアの作る料理は、手早く食べられていいぜ」
「だったらゆっくり食べなさいよっ」
早口でカレーを口に運んでいくダンデにたいし、ソニアは呆れながらそうツッコミを入れる。 今日自分は何度ツッコミを入れたことだろうかと、心の中で思いながら。
「やっぱりソニアとアニキは、仲がいいな!」
「……確かに……」
「そうですねぇ」
「ああ、幼なじみだからな」
「………」
そう語るダンデに対し、ソニアはただため息をついたのであった。
このあたりは一直線にするため少し原作と違う展開…というかストーリーの流れを変化させることにしました。
アスベルがなぜ、様子がおかしくなったのか…それは今後の展開で明らかになっていく、かもしれませんね。