ポケモンSWSH 黎明の瞳   作:彩波風衣

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実際にあの事件に巻き込まれてみたかった感がありますね、今までのポケモンでもそうなってたもん。
それはさておき、アスベルも徐々に自分の正体にたいする疑問が膨らんできてますね。


29~巨大なるもの~

 

 激しい戦いの末、7番目のジムリーダー・ネズに勝利したアスベル。 次のジムリーダーをクリアすればジムチャレンジは達成、チャンピオンに挑むための試合に挑むことができる。

 

「次は確か、キバナさんだったな………」

 

 次のジムは一筋縄ではいかない、とアスベルは察していた。 なぜならば自分は、彼の強さを知っているからだ。

 

「ダンデさんのライバルであり、トップジムリーダー……断じて油断はできないな………」

 

 じっくりと特訓をしてから挑むべきだろうとアスベルは思い、もう日が暮れかかっているのもあって、今日はここで野宿をしようとしていた、そのときだった。

 

「うわぁっ!」

 

 不意に背後になにかの気配を感じ、そのなにかが攻撃してきたのでアスベルは咄嗟に振り返りつつその攻撃を回避した。 自分に襲いかかってきたのは黒く鋭い爪…そして、それをもつ巨大なはがねタイプのポケモン。 ガラルのすがたのニャースの進化系である、ニャイキングだった。

 

「な、なんだこいつ……!? だ、ダイマックスしたのか……!?」

「ギュフフフフ……」

「しかし、こんなところでするなんて想像できない……ッ!!」

 

 考えなければならないところはあるが、相手が考える時間を与えてくれるわけがない。 ニャイキングは爪をするどく伸ばし、その爪でアスベルを突き刺そうとしてきた。 アスベルはそれを再び回避する。

 

「クッ…………このままではまずい!」

 

 だが、相手の攻撃を回避するのに必死で、テントから遠く引き離されてしまった。 今自分のポケモン達は、あのテントの中にある。 なんとかテントに接近しボールを手に取らねば、とアスベルが焦りを見せたそのとき、ニャイキングはアスベルに再び襲いかかる体制をとっていた。

 

「しまっ……」

 

 後少しで、ニャイキングの爪が自分に届きそうなところまできたとき。 ニャイキングの爪は何かに妨げられたことにより、アスベルが引き裂かれることはなかった。

 

「………ギルガルド……!?」

 

 アスベルを爪から守った存在は、ギルガルドというポケモンだった。 ギルガルドは防御の姿勢で盾の姿となりアスベルを、ニャイキングの爪から守っていた。

 

「ギルガルド、そのまませいなるつるぎ!!」

「!?」

 

 そして、男性の声とともにギルガルドは攻撃の姿勢になり、剣となって相手のニャイキングを攻撃した。 その一撃が効いたらしい、ニャイキングはそのまま倒れた。

 

「ダンデさん!」

「アスベル!」

 

 そしてアスベルはすぐに、ギルガルドの主である男性の名前を呼びつつ、彼の元に駆け寄る。 ダンデは、アスベルの安否を確かめる。

 

「無事か、アスベル!」

「ああ……はい。 オレは平気です……」

「そうか、よかったぜ!」

 

 とりあえず目の前にいるアスベルは無傷だと知り、ダンデは安堵の笑みを浮かべる。 そして、ダイマックスしたニャイキングが倒れ、徐々に姿が戻っていくのを確認しつつダンデは、アスベルを連れて行く。

 

「ここなら、大丈夫そうだな」

「大丈夫って……なにがですか?」

「お前のキライなアレ、はまだきていない……ということだ」

「………」

 

 そう少しからかうようにいうと、アスベルはダンデが警戒していたものの正体に気付く。

 

「でも、何故突然、野生のポケモンがダイマックスを……?」

「わからない。 これからそれを調べるのが、俺の仕事と言ったところだな」

 

 そういいつつダンデはアスベルのキャンプセットを片づけつつ、その中にあったアスベルの上着を彼に手渡した。 すぐにアスベルはそれをきてポケットを開き、自分の手持ちポケモンが全員そこにいることを確認する。

 

「よかった、全部ある……」

「さて、急いでナックルシティに向かうとしようか」

「は、はい」

 

 そうしてダンデとアスベルは、これ以上騒ぎが大きくならないうちに、ナックルシティへ向かったのだった。

 

 

 

 そうして、リザードンの案内の元ダンデとアスベルは無事にナックルシティについた。 その後ポケモンセンターへ行き、ダンデはある人物に会うといって一旦その場を離れ、アスベルはポケモンセンターでポケモン達を回復させていた。

 

「アスベル!」

「ホップ!」

 

 そうしてポケモンの回復を終わらせてポケモンセンターを出たアスベルの元に、ホップが大急ぎで駆けつけた。 彼はアスベルにぶつかりそうになった直前で急ブレーキをかけてとまり、彼のあわてようにアスベルは戸惑う。

 

「おい、どうしたんだ……」

「見ろよコレ、このニュース! 」

 

 そういってホップは自分のスマホの画面を、アスベルにみせた。 そこには、突然ダイマックスをした野生ポケモンの謎現象のことと、そのポケモンを倒して暴走を止めたチャンピオンの話題がのっている。 それにたいしアスベルは目を丸くし、さっきのだ…とつぶやいた。

 

「なんだ、知ってたのか?」

「ああ。 実はさっき、そのダイマックスポケモンに襲われて……」

「えぇ!? 大丈夫なのか!?」

「ああ、ダンデさんが助けてくれたんだ……そのニュースの通り、オレを守りながらダイマックスしたニャイキングを倒したんだ」

「なにそれ、すげーぞ!」

 

 そう話をしていると、ダンデがソニアを連れて戻ってきた。 どうやらダンデが会っていたある人物とは、ソニアのことらしい。

 

「言ってるそばから、アニキだ!」

「ホップ」

「ソニアさん、きたんですか」

「まぁね」

 

 アスベルにたいしソニアはそう返しつつ、先程起きた事件の話をする。

 

「話は聞いたよ、さすがはダンデくん……ダイマックスポケモンも一瞬で倒したそうね! おまけに、巻き込まれかけたアスベルが助かって、安心しちゃったよ」

「はい、おかげで助かりました」

「なに。 俺は無敵のチャンピオンとして、当たり前のことをしただけだぜ。 それよりも、なにが起きたんだ?」

 

 どうやらダンデは、ソニアだったらあのダイマックス現象のことをなにか知っているかもしれないと思い、偶然この町を訪れていたソニアと話をしにきたようだ。 ソニアは、自分が目撃したことをそのまま伝える。

 

「うん、赤い光が溢れて……パワースポット以外で、ポケモンがダイマックスしちゃったんだよ……! さっきのニャイキングもそれだね!」

「なんで?」

「わからない……なにが、起きているのか……。 もしかしたらまた、赤い光があふれ出すかもしれないから、わからないんだよ」

 

 ソニアも、赤い光が突如現れそれによりポケモンがダイマックスを起こす現場を、目撃したにすぎないようだ。 今までに例がないこの現象に、4人がそれぞれ考え込む。

 

「それを予測するのも、優れた研究家ですよ」

 

 そんなとき、鶴の一声とでもいうかのように女性の声が聞こえてきた。 声のした方を向いてみるとそこには、マグノリア博士の姿があった。

 

「おばあさま!?」

「マグノリア博士!」

「どうしてここに?」

「実は、委員長に呼び出されてね……ダイマックスとの関係をあれこれ聞かれたのですよ」

「委員長が?」

「なにか、わかりましたか?」

「さぁ……? 委員長はエネルギーは大事だからと、秘書にまかせっきりでしてね……データがぜんぜん足りないのですよ」

 

 そうマグノリア博士は首を横に振りながら語り、その話をきいたアスベルは、ローズに対する印象をそのまま口に出す。

 

「またエネルギーの話、か……そこまでくると、彼ってまるでエネルギー依存症ですね」

「依存症って」

「お前、ズバリと言い過ぎだぞ」

 

 そのアスベルの言葉に対しては、集まっていた一同は苦笑した。 そしいてマグノリア博士は、ソニアのほうをみて彼女に告げる。

 

「だから、ソニア。 貴女も調べなさい」

「わ、私!?」

「ええ。 だってブラックナイトのこと、誰よりも調べているのでしょう?」

 

 マグノリア博士にそう言われ、ソニアは自分の宿題とダイマックス事件の関連についてある説を思い浮かべ、それを口に出す。

 

「まさか、赤い光がその災厄かもってこと!?」

「……!」

 

 あのダイマックスの光が、災厄と関係があるかもしれない。 そう思ったアスベルの耳に、別の声のようなものが響く。 それにたいし背筋をふるわせたアスベルはたまらず、その声のようなものに向かって叫ぶ。

 

「誰だっ!!?」

「アスベル!?」

 

 突飛なアスベルの行動に一同は目を丸くした。 そして、自分が叫んだ瞬間に声のようなものが聞こえなくなったことと周囲の視線で、アスベルは我に返り、少し眉を下げながら彼らに謝罪する。

 

「……すみません、空耳だったようです……」

「なぁ……アスベル! お前旅に出てからなんかヘン、だぞ! ホントにどうしちゃったんだよ!?」

「………わからない………」

 

 突然耳鳴りを起こしたり、頭痛を起こしたり寒気を感じたり、伝説の痕跡に見入ったり…旅に出てからと言うものの、アスベルはずっとそれを繰り返していた。 さらには奇妙な夢も、よくみる。 自分の異変に対し、アスベルは恐怖を感じる。

 

「………アスベル」

「はい」

「貴方は、やはり普通の子とは違う……」

「……それは……オレが一番よくわかっています」

 

 それは外見からして昔から感じていたことだから、とアスベルは告げる。 だがマグノリア博士は、それは外見ではないと返す。

 

「それは目のことではありません。 あなたの本質……言うなれば、運命が普通の人と違う、ということをいいたいのです。 貴方は、普通の人とは違って、なにか特別な……運命を持っている……そう感じていました。 ダンデとホップが、まどろみの森の近くで貴方を見つけたと聞いたときから……」

「……博士……」

「でも、それはまだ、今はわかりません……そのときがくるのを、待ちなさい。 自分の信じるものを、信じながら……ね」

「……はい……」

 

 マグノリア博士の言葉に対し、アスベルはそう静かにうなずいて返した。

 

 

 

 アスベルは自分の運命を知り、確かめるには、この事件に自ら足を踏み入れていくしかないと感じ、自分も協力することをもうしでる。

 

「ダンデさん……オレに、できることはありませんか」

「お、おれも! なんか困ったこととか力になれることがあったら手伝うぞ!」

「サンキュー! お前達の気持ちはありがたく受け取るぜ!」

 

 ダンデは2人の申し出にたいし、そう明るく返すと、話を続けた。

 

「だが、俺の一番の願いは、最高の決勝戦なんだ! 俺が未来を守り、その願いを叶えるから、ジムチャレンジを勝ち進んでくれ! そして、俺の願いを叶えてくれ!」

「……わかった! なんたってアニキは無敵のチャンピオンだもんな!」

「そうだろ!」

 

 ホップはすんなりとダンデの言葉を受け入れ、彼なら問題はないと信じた。 一方のアスベルは、その顔に不安の色を残したままだった。

 

「………」

「アスベルも、そんな心配そうな顔をするな。 俺は無敵のチャンピオンだぜ。 その肩書きにかけて、決して倒れたりはしないさ」

 

 そしてダンデは、アスベルにたいしやるべきことを伝える。

 

「アスベルの次の相手は……最後のジムリーダー・キバナだろ! あいつは強いぜ、俺がライバルと認める男だ!」

「………」

「まずは彼を越えろ! 自分の強さを証明しろ! それが……アスベルの、お前が自分の運命の真相をつかむ方法だぜ!」

「……ダンデくん……」

 

 ダンデは自らの強さで未来を手に入れ、今その強さの代表という立場にいる。 だからこそ、こうして説得もできるしそこには確かな説得力もあるのだ。 そんな幼なじみの姿を見たソニアは意を決したようにうなずき、祖母に告げる。

 

「おばあさま、実は気になることがあります。 どうか、手伝ってくれますか」

「もちろんですとも」

「俺も、あなた達を護衛します」

「うん、頼りにしてる」

 

 そういってまずはマグノリア博士とソニアが動きだし、ダンデは気を引き締めようとつぶやく。 つぶやきにしてはやや声が大きいが。

 

「さて、今一度…チャンピオンタイムだ!」

 

 そういい、ダンデはマグノリア博士とソニアの後に続いた。 その場に残されたホップとアスベルも、それぞれでやるべきことを決める。

 

「おれもやれることをやるぞ! まずはスパイクタウンのジムリーダーに挑戦だ! お前も、負けるんじゃないぞ!」

「……ああ……必ず、勝ってみせる」

 

 そう言葉を交わした後、ホップはスパイクタウンへ向かって走り出していった。 そこに残ったのはアスベルのみとなったところで、アスベルは今後にたいする意欲を高める。

 

「そうだな……ここで倒れたら、他人を手伝うとかどうこう言えないな……! ………強くなり、彼に力を貸せれば……オレも……!」

 

 ぐ、とアスベルは拳を強く握り、自分の運命を感じる。

 

「オレがなんなのか、わかるはずだ……!」

 

 

 

 そうして、ダンデは宝物庫で調べ物をしているマグノリア博士とソニアを護衛する形で宝物庫の近くにいた。 そこでは彼を見かけたファンと出会うこともあり、彼らに笑顔を向けつつも、ダンデはローズ委員長と話をしようとしていた。

 

「こういう時に限って、ローズ委員長は次の仕事に移動してしまったのか……」

 

 だが、ニアミスというべきだろうか。 先程キバナに確認をとってみたところ、確かにローズ委員長を見かけたものの、別の支社に向かってしまったというのだ。 一応電話をしようとも思ったが、不在着信になってしまった。 このままでは報告できないではないかと、ダンデが少し頭を抱えたそのときだった。

 

「あれ、ダンデさん!」

「んっ?」

 

 ここは気持ちを切り替えるしかない、とダンデが思ったそのとき。 聞き覚えのある少女の声がしたのでそっちを向く。 そこには、一匹のポケモンを連れた、弟達の幼なじみの少女がいた。

 

「君は、マリオンじゃないか」

「お久しぶりです」

「そうだな。 それに、そのエースバーンは……」

「はい! ダンデさんからもらったヒバニーですよっ! ボク、がんばってこの子を育て続けました!」

 

 彼女と一緒にいた白くて長い耳を持つポケモン、それはかつてダンデがマリオンにプレゼントした、ヒバニーの最終進化系であるエースバーンだった。

 

「ジムチャレンジはうまくいってるのか?」

「はい、今6個目に勝ったところです! そんで今は……もっと強くなんなきゃって思って、修行中です!」

「修行中?」

 

 ダンデの問いに対しマリオンははい、と答えながら最近ポケモンバトルで敗北したときのことを語る。

 

「実は最近、ホップとバトルをして……それで負けちゃったんですよ。 最近まではなんか、ずっと暗くて悩んでたのに……なんか、以前のホップに戻ったみたい……」

「………」

「アスベルも、まさかあんなにポケモンバトルが強いなんて思いませんでした。 もすこし、クールというかおとなしー印象ばっかりだったから……。 そんな2人を見たら、ボクも負けてられないし、負けたくないなーって思うんですよ。 だから、今もこうやって、がんばってポケモン達と鍛えてるんですよっ!」

 

 そうホップやアスベルのことを交えながら、元気に答えるマリオンに、ダンデは何かを感じて、彼女に言う。

 

「マリオンくん」

「はい?」

「……ジムチャレンジがおわっても、アスベルとホップと、仲良くしてあげてくれ」

「……はい……?」

 

 それだけをいって、ダンデは宝物庫の中に入っていった。 そんなダンデの後ろ姿を見て、マリオンは首を傾げる。

 

「ダンデさん、急にどうしちゃったんだろ……? 仲良くしてほしいって願っているのは、ボクのほうなのに…………」

 

 あの少年達は自分と違う、別人だし当たり前なのだが、マリオンは最近それを強く感じるようになっていた。 なぜそれを強く思うのかは、マリオンにはわからない。 だが、できるのであれば、2人と違っていても関係は続けようと、違いに対し抗いたいと思っている。 だから、ポケモンたちも鍛えて、自分も強くなろうとしていたのだ。

 しかし、そんなときに突然、友人の兄からそう願われると、戸惑ってしまうものである。

 

「……アスベル………」

 

 その中でマリオンは、思わず、一人の少年の名前を口にした。

 

 




次回はジムリーダー・キバナ戦です。
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