というわけで、アスベルがアレからどうなったのか…確かめてくださいませ。
アスベルはキバナに勝負を仕掛けたものの、あと一歩及ばず敗北してしまった。 そんなキバナの強さをその身に感じながらも、リベンジを誓うアスベル。 だがその矢先、突然謎の頭痛に襲われ、気を失い倒れてしまった。
「キバナッ」
「ダンデか」
その一時間後のこと、キバナから連絡を受けたダンデが焦った様子で彼に合流をしてきた。
「電話をもらって驚いたぞ………アスベルがお前とのバトルの後で倒れたって…………今はどうしてる?」
「スタジアムから近いのもあって、オレの家で休ませてるぜ。 一応医者にも見せたが………異常はない、疲れが出たのだろうと診断された。 お前に報告したのは、現状を知ってもらうためだ」
キバナの状況説明に対しダンデはそうか、と呟く。 アスベルの安否を気にしているダンデにキバナは笑いかけつつ、アスベルのみの安全を保障すると伝える。
「大丈夫だ。 あいつのことはオレに任せておけ」
「……キバナ……。 そうだな、お前に任せておけば、問題はないだろう。 頼んだよ」
「ああ。 それと、アスベルに異変が生じたからといって、ここであいつの挑戦権を剥奪するようなことはするなよ。 なんとなくだけど、あいつはそれを……いやがりそうな気がする。 それは、お前もわかってるだろ?」
「ああ、わかってる」
ここまできたのだから、アスベルは最後までやり遂げたがる。 その一面があるのは、ダンデもよく知っていることだった。 アスベルの回復とその先の話は本人の口から聞くことにし、ダンデは今は彼のことをキバナにたくした。
「アニキ」
「ホップ」
そうしてキバナの家をあとにしようと出て行った先で、ダンデはホップと会った。 ホップもアスベルが倒れた現場に居合わせていたため、彼のことを心配して、キバナのところを訪れたのだろう。
「アニキ、キバナさんに聞いてアスベルのことを見に来たんだろ?」
「ああ、病気とかじゃなくて安心したぜ。 まぁあとは、キバナに任せておけば問題はないだろう。 あいつはバトルが強いだけじゃなくて、懐が深くて面倒見もすごくいいからな。 信用できる男だぜ」
「……ああ」
ダンデの言葉を聞いても、ホップはやはりアスベルのことを気にしているようだ。 自分より他人を気にしやすい性格だからこそだろう、だからこそダンデは、ホップに今なにをするべきかのアドバイスを送る。
「アスベルはお前が必ず自分に追いつくと信じて、先へ進んでいたんだろ? だったら今度はお前の番だぜ!」
「おれの、番………」
「ああ。 今度はお前が、アスベルが自分に追いつくと信じて……先へ進む番だ!」
それでホップは、彼が自分にしてくれたことを思いだして頷いた。 彼が自分を信じてくれていたのなら、自分も彼を信じるべきだと気付き、ホップは笑顔になりながら頷いた。
「わかったよ、アニキ!」
「その意気だぜ!」
そういってホップは、キバナに勝負を改めて申し込むといって走り去っていった。
「……あいつらのためにも、俺は今以上に強くならないと、な………! チャンピオンとして……!」
と、ダンデは自分の弟たちを見つめ、さらに力を付ける決意をした。
「…………うっ……」
あるベッドの上で、アスベルは目を覚ました。 頭はまだぼうっとしており、記憶をたどるまでにいたらない。 だから、自分が何故ここにいるのかもわからない。
「………オレ、は………」
「気が付いたか」
アスベルが意識を取り戻したことに気づいたらしい、一人の男性…もとい、キバナが部屋にはいってきて声をかけてきた。 だが、アスベルは彼に対し首を傾げるだけだった。
「…………どなたですか?」
「お決まりのボケをかますのはやめろ。 オレ様だよ。 もっと近くで顔を見て認識してくれ」
そういってキバナはアスベルに一気に顔を近づける。 アスベルはキバナの顔を凝視した後、記憶をたどってある人物と顔をかさね合わせる。
「…………ああ、キバナさんでしたか」
「そーだよ」
服装とヘアバンドの有無と髪型でここまで別人感がでるものなのか。 目の前にいるのがキバナであることを確認したアスベルは、今度は自分の身になにが起ころうとしているのかを思いだそうとする。
「…………オレ………今まで、なにを………?」
「覚えてないのか? お前……オレとのバトルの後、急に頭を抱えながら気を失って倒れたんだぞ」
「………そうだ………」
キバナの言葉でアスベルは、気を失うまでのことを全て思い出した。 自分が彼とバトルをして負けてしまったことも、だがそれで終わらずリベンジを誓ったことも、ホップと再会し彼に激励を送り自分も鍛えようと決めたことも。 そして…その直後に頭痛におそわれたことも。
「確か、あのとき……激しい頭痛におそわれて………そのまま、意識が遠のいていって…………」
そこでアスベルは、自分が今いるのはどこなのかという疑問に至った。 ここでキバナが素の姿でいることで、だいたいの察しがついているが。
「そういえば、ここって……」
「ああ、オレの家だ。 心配せずともオレは天涯孤独でね………つまり、一人暮らしなんだよ」
「………一人で………?」
「そ、一人で」
一応ポケモン達もいるのだが、この家に住んでいる人間はキバナだけのようだ。 彼は親や親族はいないのだろうか、という疑問も抱いたアスベルだったが、そこにはふれず、自分のことを彼に問う。
「……あれから、オレはずっと寝ていたんですか?」
「ああ、24時間も寝てたぜ」
「えぇ!?」
自分は丸一日寝ていたことになる。 キバナの言葉に対しアスベルは驚きを隠せず、変なボケをかましてしまう。
「水増ししているとかじゃなくて、ですか!?」
「それでどーやったら24って時間が出てくるんだ。 それにそんな行為、誰得なんだよ」
そんなアスベルのボケにもキバナは冷静にツッコミをいれつつ、今日行われた試合についての話をする。 今日相手をしたトレーナーは、アスベルにもっとも関係の深いトレーナーだからだ。
「そうそう、あのときホップが一緒にいただろ」
「はい」
「あいつならさっきまでオレとジムバトルをして、勝利をしていきやがったぜ」
「え、本当ですか!?」
ホップが自分より先にジムバトルを全部勝ち抜いたと知り、アスベルは目を丸くした。 アスベルのリアクションをみて、キバナはああ、と返しつつホップを評価する。
「ダンデと違って騒がしかったが、このキバナからバッジを獲得した実力は本物だった!」
それをきいたアスベルは、勢いよく起きあがったので、キバナは焦る。
「ちょ、まてよ!」
「……うぅ………」
「ホラいわんこっちゃない」
だがすぐに目眩を起こして再びベッドに伏せてしまう。 そんなアスベルにキバナはあきれる。 彼は自分が突破できなかったのにライバルが先に突破をしたことで、このままじっとしてられなかったのかもしれないが、今のアスベルを動かすわけにはいかない。 キバナはアスベルを、少なくとも明日までは解放しないほうがいいと思い、このあとのことをはなす。
「オレは今日はもう、この後はオフだ。 お前には聞きたいこととかあるしな……まぁ、ゆっくりしてけ」
「聞きたいことって、オレが倒れたことに関する話ですか?」
「勘が鋭いじゃねぇか」
アスベルはキバナが自分が倒れたことに疑問を抱いているのだと気付き、彼はその話を聞きたいのだと悟る。
「聞かせてくれるな?」
「そうですね」
これもジムリーダーとしての責務として、ジムチャレンジャーの体調をしっかりみたいという判断だろうか。 いずれにせよ話さねば解放されないだろうし、このまま心配をかけさせるわけにはいかないと判断し、アスベルは話すことを決め、首を縦に振った。
そうしてその日はキバナの家で世話になることになったアスベル。 ちょうど夕食時というものあって、キバナはアスベルを食卓に誘った。
「一応お前の分のメシ作ったけど、食えるか?」
「ええ、問題はありません」
十分に休みを取って顔色もよくなったし、普通に動く分にも問題はない。 アスベルは普通に席に着き食事をごちそうになった。 割と普通に食べれる味だったので、人並みに料理が出来ることに驚いていたが、やはり一人暮らしができているのは伊達ではないということだろう。
「さて、こんなところでこんな話はアレだけどよ」
「オレの体調のことですね」
「話がはやいな」
カチャリと食器をおきつつもアスベルは、あのとき起きていた自分の異変を語り出す。 もちろん、あの瞬間までは特に異常はなかったことも正直に。
「少なくとも、あなたとジムバトルをしている間はなにもなかったです。 あのバトルも、オレは本気でした」
それは、バトルをした相手であるキバナも気付いていたことだった。 アスベルは自分に対し今出せる力をすべて出すつもりで、挑んでいたこともわかっていた。 自分が勝ったとは言え、アスベルの本気の思いもそこにある実力も、嘘はいっさいない。 アスベルは引き続き、旅の間に自分の身に起きていた異変のことを打ち明ける。
「実はこの旅の間にも、オレは何度か………自分の調子が悪くなることがあって…………」
「なんで?」
「わかりません……たまに声が聞こえた気がしたり、伝説に関わるものに心を奪われそうになったり、つい注目してしまったり……この前も地震の際に、倒れそうになったんです」
ふと話をしてて、旅の間に何度もおきていた自分の異変にたいし畏怖を覚えるアスベル。 その話に耳を傾けていたキバナは、かつてダンデから聞いたアスベルの話を思い出した。 自分の故郷で発見した、傷だらけの子供の話を。
「………ただ………」
「ただ?」
「本当はオレ…………ダンデさんとホップに発見され、拾われる前のこと今までは覚えていないと口にしていたんですが…………本当は……覚えているんです。 そして、その過去は……この左目に大きく関係している」
そっと、眼帯に覆われた左目に触れ、アスベルは遠くをにらむように目つきを厳しくする。
「名前も生まれた場所も、知らないことは合ってますけど………でも傷だらけになって…………死にかけてた理由はハッキリと覚えてて…………」
アスベルは話を続けようとしていたが、それをキバナが、ちょいまちと言って妨げた。
「それ以上は、無理してはなす必要はねぇよ。 オレも無理に聞くつもりもねぇし、お前に強要はしない」
「……キバナさん……」
「オレとしちゃ、なぜあそこで体調を崩したのか……その原因を確認できりゃ満足だったんだ。 まぁお前にも原因がわからないなら、真実は謎のままだろうな」
「オレがウソをついてたり、まだ隠し事をしているとは思わないのですか?」
「ねぇよ。 相手がうそをついているか本とのことを言ってるか……それくらいのことなら、わかるからな。 体調とかその辺の話なら、なおさらだ」
体調が戻ったのなら、恐らくもう問題はない。 彼は再び挑めるだろうと判断し、笑いかけて頭をなでながらアスベルに告げる。
「とにもかくにも、明日には解放してやるから……あと今晩くらいはここで休め。 な?」
「はい」
そういってキバナは、それ以上アスベルの秘密などにたいしてはいっさいきかなくなった。 あまり深くは追求しない彼の性格が、今のアスベルにはありがたいことであった。 残った紅茶を飲みながら休むアスベルに、一匹のヌメラが近づいてくる。
「ぬめぇ」
「ああ、キミもキバナさんのポケモンだね?」
そう言ってアスベルはそっと微笑みかけつつ、ヌメラをなでる。 そして、キバナがダンデのライバルとしてたてる理由や、あれほどの実力を持っている理由に気付いたことを、アスベルはヌメラに語りかける。
「キミの主人は、自分のことだけ考えている訳じゃない。 常に他者を気にかけて、しっかりとみている。 だからこそ己を高めようとする……そんな、器も大きくてしっかりとしてる人なんだね……。 自分に自信があるからこそ、己を高められるし他人をみられる。 だから、あんなに強いんだ。 オレも、見習うべきだよな……」
そう、呟くように。
そして、翌日。 アスベルは無事に体調が回復し、立ち上がって動いても問題がないことが確認されたことで、キバナから解放された。
「よし、体調もいいみたいだな」
「とはいえ、ムリしたりすんな。 またいつでもいいから、挑みにこいよ!」
「はい! お世話になりました!」
一応、キバナには再び体調不良で倒れないように念押しされた。 アスベルはそのことを肝に銘じつつ、しばらく休ませてもらった礼を告げて、そこを立ち去っていった。
「……さてと……オレもいくかね」
そういってキバナはアスベルに向けていた人なつっこい笑顔とは一転して、鋭い眼孔を宿しながらある方向をみた。
「誰の断りもなく他人を実家まで尾行して、変な話を作ったり暴露するのは、タブーだってこと……。 オレ様の力をもってして教えてやらねぇとな」
そう言ってキバナが動き出したのと同じ頃。 アスベルは自分の修行の場としてワイルドエリアを選び、早速修行を始めた。
「ガァッ」
「大丈夫だアーマーガア。 オレは負けたりしない……オレ自身の異変にな」
そう、自分のことを真剣に心配している幼なじみに笑い返すと、アスベルはゴリランダーとドロンチを前に出す。 アスベルとしては、この2匹で負けたからこそ、この2匹で再び挑み勝利したいのだろう。
「ゴリランダーはドレインパンチ、ドロンチはりゅうのはどう!」
ゴリランダーもドロンチも、技を出してレベルアップをはかる。 それぞれの技は命中するところに命中していき、威力も少しずつ増している。 途中でアーマーガアーの放ったスピードスターをそれぞれが相殺できたことで、技の威力が増していることに手応えを感じていたアスベルだったが、そんな彼の鼻先にぽつんと水が落ちてきた。
「雨、か?」
どうやら自分が修行をしていた地域に、雨が降ってきたようだ。 本当にワイルドエリアの天候はすぐにかわるのだと感じたアスベルは、すぐにはれている場所へ移動するよう彼らにこえをかける。 3匹はそれにこたえ、ともに移動を始める。
「うわっ!?」
だがそんなとき、アスベルの目の前で土砂崩れが発生し道を阻まれてしまった。 あと一歩前にでたら自分も巻き込まれていたであろう土砂崩れに戸惑いつつ、回り道をするしかないと思ったそのときだった。
「バッギャーズ!」
「ば、バンギラス!?」
そこに、このへんに生息している個体だろうか。 バンギラスの群が現れてアスベルに敵意を向けてきた。 すぐにゴリランダーとアーマーガアがむかえうち倒していくが、そこでドロンチに相手の技が命中してしまう。
「ドロンチ!」
ドラメシヤの頃はバトルが苦手で弱かったが、ドロンチに進化してからはそれなりにこなせるようになっていた。 だが今の相手はドロンチに相性的に有利なバンギラス、相手のあく技は効果抜群でドロンチは追いつめられる。 それにより弱ったドロンチに、バンギラスは容赦なく追撃をしようとする。
「やめろぉっ!」
それをアスベルは間一髪でドロンチを抱えて転がり回避したが、その際にガケから滑り落ちてしまう。 アーマーガアもゴリランダーもそれに気付いて助けにいこうとしたが間に合わない。
「!?」
だがそんなとき、アスベルの腕の中にいたドロンチが光を放った。 するとその光に答えて複数のドラメシヤが現れてアスベルとドロンチをとり囲い、ドロンチの体はみるみるうちに大きくなり、アスベルを乗せるほどになった。
「ドラ……パルト………!」
そして現れたポケモンを、アスベルは知っている。 ドラパルトはアスベルを頭に乗せた状態でりゅうのはどうを放ち、バンギラスをけんせいし追い払う。 一気にパワーアップを見せた自分のポケモンに驚くアスベルは、着地した後でそっとドラパルトを抱きしめる。
「ありがとう、ドラパルト。 キミのおかげで助かったよ」
「グゥルルル」
助けられたのは自分の方だ、と言いたげにドラパルトはアスベルに寄り添うようにすりよる。 そんな彼らをアーマーガアとゴリランダーはじっと見つめており、この進化は大きなパワーアップだと感じたアスベルは、彼らに告げる。
「今日この後は、修行の仕上げだ。 明日……キバナさんに、勝つぞ」
必ず勝つと宣言するアスベルの目は、決意に満ちていた。
次回はキバナ再戦です。