ポケモンSWSH 黎明の瞳   作:彩波風衣

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あの道は、ほかのシリーズで言うところのチャンピオンロードですね。
そして決戦の地でライバルも集結、熱いバトルの前日をお楽しみに。


33~戦地へ~

 

 ナックルスタジアムでジムリーダー・キバナへのリベンジを果たしたアスベルは、セミファイナルトーナメントが行われる、シュートスタジアムのあるシュートシティへ向かうため、ナックルシティ駅へ向かった。

 

「アスベル!」

「ホップ!?」

 

 そこでアスベルを待っていたのは、ホップだった。 どうやらこれから電車にのる手続きをしようとしていたようだが、アスベルがきたことでそれを中断させたようだ。

 

「お前、復活したんだなぁ!」

「あ、そっか………お前にはまだ、オレの体調のこと言ってなかったな。 オレはこの通り、大丈夫だ」

 

 おもえばホップとは、自分が倒れる直線に会っただけだ。 ホップのことだから、キバナにはすでに勝っていることだろう。 アスベルはそれを交えつつ、自分の体調についてはもう問題がないと伝えた。

 

「まぁみてわかるけど、無事にお前に元気が戻ってきてよかったぞ! んで、ジムバッジは……」

「安心しろよ、こいつはオレを軽く越えていきやがったからな」

「あ、キバナさん」

 

 そこに、キバナが姿を見せ、アスベルが自分に勝利したことを伝えてくる。 そのキバナの言葉ですべてを察したホップは目を輝かせてアスベルに言う。

 

「越えたってことは……アスベル、勝ったんだな! すごいぞ、おめでとう!」

「ああ、ありがとう」

 

 ホップは素直にアスベルを賞賛し、彼の勝利をまるで自分のことのように喜んでいた。

 

「一度打ち負かされたからこそ、こいつは反発して一気に強くなった。 諦めないという言葉を、自分の強さに変えた。 そんなヤツの強さを認めないのは、ただ愚かだ」

「……キバナさん……」

「オレはまったく落ちぶれてねぇし、落ちぶれるつもりもない。 だから認めている。 こいつは、強いってな! また、勝負したいヤツが増えた……ゾクゾクしてるぜ!」

 

 そういい、キバナは二人を見て笑いかけつつ、自分がジムリーダーになってからのことを思い返して告げる。

 

「今までそれなりの数のジムチャレンジャーを相手にしてきたが……ここまでオレを高ぶらせるジムチャレンジャーは、お前達が久しぶりかもしれねぇな」

「そんな、大げさですよ」

「大げさでここまで言う訳ないだろ」

 

 キバナとしては、アスベルとホップの実力を素直に賞賛しているつもりなのだ。 その実力についてわざわざ大げさに語るつもりはないのはもちろんのこと、見誤ることはしていない。 そのこともあり、キバナは彼らに次の目的地を教える。

 

「というわけでお前等、これからシュートスタジアムのあるシュートシティへむかえ! そして勝ち進み……チャンピオンに挑んで勝てよ!」

「おう! 本命はおれで対抗はアスベル! 最後まで全力でぶつかっていくぞ! 目指すは最強チャンピオンだぞ!」

「オレも、今より強くなって見せます」

「おう、気張っていってこい!」

 

 その激励を受けたアスベルとホップは、次に駅からでる電車に乗っていった。 その様子を、キバナは笑顔で見送る。

 

「………もしかしたら、あいつら………。 チャンピオンになるどころか、それ以上の……もっと大きなことを、しでかすかもしれないな………!」

 

 キバナは、アスベルとホップが乗った電車を見つめて、にやっと笑った。 彼らは自分達とは違う、となにかに気付いているようだ。 ほかのトレーナーにできなくて、彼らにできることが、もしかしたらあるかもしれない、という可能性を直感で感じていた。

 

「………さーてと……あと、誰が来るんだろうな」

 

 と、彼ら以外の挑戦者のことを考えながら、キバナはほかのジムチャレンジャーを迎え撃つため、スタジアムに帰っていった。

 

 

 電車の中で2人は、スマホでシュートシティの情報を見ながら自分達の目的地についての雑談をしていた。

 

「………思えば、シュートシティには初めていくな……」

「いつもお前、人が多すぎるからって行きたがらなかったもんな。 そのたび留守番して、テレビで試合を見てたんだったな」

「ああ」

 

 幼い頃のアスベルは、人が多すぎる場が大の苦手だった。 そこにいるだけで息苦しくなり、大勢の中にいるのが苦痛でしかなく、多くの声や視線が恐怖だった。 あれから長い時間がたったことで、ある程度は平気になり、多くの人が観戦しているスタジアムの中で試合をしていても問題はなくなった。

 

「とはいえ、大勢に囲まれるのはふつうに迷惑だからやめてほしいとは思うけどな」

「バッサリ言ったよコイツ」

 

 ある程度は平気とはいえ、思うことはあったらしいアスベルの言葉に、ホップは冷めた目でツッコミを入れた。 そんな話をしていると、電車が10番道路のところで止まった。

 

「あれ、電車が止まっちゃったぞ?」

「お客様にお知らせします、シュートシティいきで運行していたこの電車は、突如の雪崩事故により、この10番道路駅で停止させていただきます」

「……雪崩……」

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません、現在雪崩除去作業を行っていますので、今しばらくお待ちください」

 

 どうやら突然の事故によって、電車の運行は中断されてしまったようだ。 アナウンスを聞いた2人は、ここからどうするかを話し合う。

 

「ここからは厳しい雪道の、10番道路だ。 だがそれを越えた先にあるのは、シュートスタジアム……」

「ああ」

「チャンピオンカップに挑むトレーナーの中には、あえてここで電車を降り突破しようとするものがいて……そのためにチャンピオンロードと呼ぶ人もいる」

 

 その話をわざわざするということは、つまりそういうことである。 アスベルとホップは互いに顔を合わせると、うなずきあう。

 

「いくぞ、アスベル! このまま電車がもっかい動き出すのを、じっと待ってられないしな! それに、ここを突破して強くなるのもおれの伝説の1ページになるもんなっ!」

「ああ、いくぞ」

 

 そういって2人は電車を降り、駅を出た。 外は雪が降り積もっており、空気もやはり冷たい。 風もそこそこふいており、タイミングが悪かったら間違いなく吹雪いているなと、アスベルは思った。 キルクスの町とその周辺も雪が降り積もっていたが、それより厳しいかもしれない。 だが、ホップの気持ちはそんな寒冷な地とは正反対に熱く燃え上がっていた。

 

「さぁ、越えていくぞ!」

「ああ、ここは競争だな」

「なんだよ、リアクション薄いぞおまえ」

「……お前のことだから、この状況で競争を持ちかけてくるんじゃないかと予想はついていたからな。 というか、お前もオレの反応は予想できてたんじゃないのか?」

 

 アスベルの返しに対し、少しむすっとしていたホップは今度はにやりと笑った。 どうやらアスベルの指摘は的を射てたようだ、さすがはアスベルだぞ、と言うとホップは前に出て腕を高く突き上げた。

 

「よーっしゃ! シュートシティ目指して、レッツゴーだぞっ!!」

 

 そう声を上げながら、ホップは走り去っていってしまった。 そんなホップの姿を見て、アスベルは苦笑する。

 

「やれやれ……だな」

 

 今のホップをみてアスベルは呆れもするが、同時に喜ぶべきコトもあった。 というのも、ホップが落ち込み元気をなくし、苦しんでいた姿をアスベルはみたからだ。 そのときと比べれば、やはりホップはすぎるくらいに元気な方がいいと、アスベルは今強くおもうからだ。

 

「やはりオレは、あいつと力比べをしたほうがしっくりくるな……オレも、おくれをとるわけにはいかない……!」

 

 そう気を引き締め直し、アスベルも足を動かす。 不思議と雪の中にいるとよけいなことを考えてしまいそうになるのだが、今はそれを無理矢理にでも振り払い、先へ進むだけである。

 

「なんだっ?」

 

 そうして10番道路を、道中のトレーナーとポケモンバトルをしながら進むアスベル。 だが、そこで何かの物音が聞こえてきたので振り返り、音の正体を探ろうとする。

 

「うわぁぁ!?」

 

 次の瞬間、アスベルに向かって重い何かが襲いかかってきた。 アスベルはそれをとっさに回避したが、この光景にデジャヴを感じないわけには行かなかった。 自分に襲いかかってきたのは、白く太い腕だったと気付いて顔を上げると、そこには巨大なポケモンがいた。

 

「つ、ツンベアーッ!?」

 

 白い体毛と屈強な体つきのこおりタイプのポケモン、ツンベアー。 だが、ふつうのツンベアーと違うのは、赤い光に包まれていることと、通常の数倍の大きさを持っていることだった。

 

 

「この間のニャイキングと、同じ状態かっ……!」

 

 以前もアスベルは、ダイマックスした野生のポケモンにおそわれたことがある。 そのときはダンデに救われたが、今彼がここにいるとは限らない。 だが今のアスベルはあのときと状況が違う、手元には確かに、自分のポケモンがいる。

 

「ここは、オレがやるしかない! 頼む、アーマーガアッ!」

 

 周りに誰もいないし、誰かを巻き込むわけには行かない。 だからアスベルはアーマーガアとともに立ち向かう。 アーマーガアもまた、アスベルと気持ちを共有しているようだ、果敢にツンベアーに戦いを挑んでいく。

 

「そこだ、はがねのつばさ!」

 

 ここがパワースポットではない以上、自分のポケモンをダイマックスさせることはできない。 だから、相性が有利なポケモンで戦っていくしかない。 先日ギルガルドでダイマックスニャイキングを打ち破ったダンデの姿を思い出しつつ、アスベルはアーマーガアに指示を送り、確実にダメージを与えていく。 相性のいい技で攻撃し、相手の攻撃を見極めていけば、勝てるかもしれないと思って。

 

「つららおとしがくるぞ、よけろアーマーガア!」

 

 相手のツンベアーがつららおとしで攻撃を仕掛けてきたのを、アーマーガアはアスベルの指示にあわせて回避し、そのまま再びはがねのつばさで攻撃を繰り出す。 その一撃はきいたが、相手は反撃でダイアイスを放ってきた。

 

「クッ……!」

「インテレオン、ハイドロポンプ!」

 

 そのダイアイスの冷気に、アスベルもアーマーガアも耐えていたそのとき。 激しい水流がツンベアーに襲いかかり、攻撃は中断される。

 

「ホップ!」

「大丈夫か、アスベル!?」

 

 そこに駆けつけたのは、ホップだった。 ハイドロポンプの水流にひるんだツンベアーにたいしホップは引き続きインテレオンに、ねらいうちを指示してダメージを与える。 その連続攻撃をみたアスベルは助かった、と頷き、彼に声をかける。 一気に勝負をつけるために。

 

「一気に決めるぞ……!」

「おう!」

 

 アスベルの声かけにホップは頷き、2人は高い威力を持つ技をそれぞれ指示に出す。

 

「インテレオン、ハイドロポンプ!」

「アーマーガア、とっておきの技でいくぞ……てっていこうせん!」

 

 ハイドロポンプとてっていこうせんが同時にヒットし、ツンベアーは倒れた。 倒れるときに、ツンベアーはダイマックスの状態から元に戻っていく。

 

「やったな!」

「ああ……お前が駆けつけてくれたおかげだ。 ありがとう」

「へへっ! おれも、お前が無事でうれしいぞっ!」

 

 互いにそう声を掛け合ったあと、2人はツンベアーにかけより自分の持っているいいきずぐすりやげんきのかけらを使って、ツンベアーを起こして助ける。 目を覚ましたツンベアーは、自分がダイマックスして暴れていたことをまるで覚えていないようであり、そのまま野生に帰って行った。

 

「これでよかったよな」

「ああ……もしお前が、戦って倒してなかったら……あのツンベアーはあばれて、罪を重ねるところだったぞ。 悪いヤツじゃないのに、悪いことしちゃってるところは、見ているのもつらいからな」

「そうだな」

 

 自分達でそれを阻止できたのは、喜ぶべきコトである。 そうして2人はツンベアーを見送り、引き続きシュートシティへ向かい、無事にその町にたどり着いた。

 

「ついたぞー! おれの伝説が生まれる地、シュートシティ!」

「お前の伝説はどこにあるんだ」

 

 一人でまた盛り上がっているホップにたいし、アスベルは冷静にそうつっこんだ。 そして、ガラル最大級の都会と言われている、シュートシティの町並みをみる。

 

「住宅街も広いし、建物もどれも高層で数多い……広場もあり設備も店も……しっかり整っているな。 奥には観覧車がみえる……あの高い塔も気になるな」

「おーい、お前の分析が細かすぎるぞー」

「すまない……初めて来るものだから、つい……」

 

 そう言ってアスベルが苦笑していると、ホップはそれよりも、と話を切り替えてくる。

 

「さっきの道中のポケモンバトルもそうだけど……ダイマックスポケモンとの勝負もあったし、まずは休もうぜ」

「わかっている。 とはいえ…………」

 

 チラリ、とアスベルは視界の隅に目をやる。 そこではシュートシティのスタジアムで近々トーナメントが行われるというアナウンスをしているリポーターやカメラマン、スタッフの姿があった。

 

「………彼らにオレ達の存在がバレないように、ポケモンセンターへいこう。 捕まったらやっかいだ」

「……OKだぞ」

 

 じきに行われるチャンピオンカップに期待をして盛り上がっているテレビ局の人間に見つかれば、既に顔が知られている自分達は彼らに捕まって、質問責めをされるだろう。 あの道路でポケモンバトルを繰り返し越えてきて、疲れているところに突っかかられたらたまったものではない。 自分達は気を引き締めたいから、取材に応じる暇もないから、なおさらだ。

 

「よし、ふつうにたどり着けたな」

「だな」

 

 2人は無事にポケモンセンターにたどり着き、自分のポケモン達を休ませた。 その後、なんだかんだでホテルに泊まることになりそれぞれその部屋で休むことになった。

 

「……そういえば、あの高い塔って……」

「あれはどうやら、ローズタワーって場所らしいぞ。 ローズさん個人の仕事場みたいなものだって、アニキが言ってた。 アニキ、あそこでよくローズさんと仕事の打ち合わせをよくやるんだってさ。 中はバトルができるくらい頑丈で広いとも言ってたぞ」

「…………へぇ…………」

 

と、ローズタワーについての話をしながら。

 

 

 翌日、ホテルを出たアスベルとホップは、シュートスタジアムに向かった。 まずはジムバッジを8つすべて集めて、セミファイナルトーナメントに進出できることを証明するために。

 

「やぁ!」

「マリオン!」

「マリィも!」

「久しぶりったいね」

 

 そこにいたのは、マリオンとマリィだった。 彼女達もセミファイナルトーナメントへの進出を決めたのかと思っていると、マリオンから説明が出た。

 

「どうやら、ボクが最後のジムチャレンジャーだったみたいだね」

「え、最後?」

「うん、ボクもキバナさんとの勝負が終わった後で知ったんだけどね。 最初に勝ったのはホップ、そしてアスベル……その後で二人相手にしてキバナさんが勝ちそれでリタイア………そしてマリィが勝って……そこから一人脱落…………最後に、ボクってわけ」

 

 マリオンは細かく、キバナが相手にしたジムチャレンジャーのことを伝える。 毎年ジムチャレンジャーがここまで勝ち進むのは難しい話なのだという話はよく聞くが、実際にこうして体験して、またジムリーダーを相手に戦ってみて、わかる。 挫折する人間が多いことが。 ここまで勝ち残っているだけでもかなりの強者として認められるだろう。

 

「じゃあ結局ここまで残ったのって、おれとアスベルとマリィとマリオンか」

「割と交流のあった人達が残った……という感じだな」

「うん」

 

 アスベルとホップとマリオンは元々幼なじみだったし、マリィも3人それぞれとふつうに関わったことがある。 そんな中、ホップはふと自分と関係のあるとあるトレーナーのことを思い出し、その名前を出す。

 

「そういや、ビートはいないんだな。 あいつなら勝ち上がってきそうだったのに!」

「「あ」」

「でも、まぁいいか」

「よくないと思うったい」

 

 マリィはビートのことはよくしらないながらも、一応ホップにそうツッコミをいれる。 一方、彼がなぜここにいないのかを知っているマリオンは、同じく理由を知っているアスベルに小声でたずねる。

 

「アスベル、あのことを言ってなかったの!?」

「………すまん、正直忘れてた………まぁいいかとも、思ってたし………」

「おいおい」

 

 実はアスベルはあのあと、ビートがどうなったのかも知っていたのだが、そこは敢えてなにも言わなかった。

 

「まぁこのまま黙っていた方がいいだろう。 もしあの事件が多くの人に知られたら、彼は恥をかくことになるだろうし……せめてもの情けとして、名誉は守ってあげよう」

「うーん……アスベルがそういうんだったら、ボクはもうなにも言わないけど……自然にバレた場合はフォローしないよ?」

「そのときはそのときだ、仕方ない」

 

 そう、こそこそと話をしているアスベルとマリオンが気になったマリィは、2人に話しかける。

 

「あんた達、なんの話しとるん?」

「「なんでもない」」

「おいアスベル、おれ達のエントリーはまだだろ、はやくやろうぜ!」

「ああ、今いく」

 

 そうしてアスベルとホップも、セミファイナルトーナメントへのエントリーを、8個のジムバッジで権利を証明したことですませた。 今回参加したジムチャレンジャーと、脱落者とここの4人を照らし合わせたことで、今日の午後から、セミファイナルトーナメントを行うことになった。

 

「ついに、ここまできたんだな……」

「ああ!」

「そうだね」

「じゃ、参加者がみんなあつまったところでセミファイナルトーナメントは今日の午後開催するって話だし! みんな、そのときは………いっさい手抜きなしで正々堂々! 恨みっこなしで戦うよ!!」

「「「おーっ!」」」

 

 そう声を掛け合い、4人はセミファイナルトーナメントにたいする思いを確認しあった。 それぞれの実力を知りここまできた相手をたたえているからこそ、そして本気で戦いたいと思っているからこそ、彼らはこうして声を掛け合ったのである。

 




最後のアスベルとマリオンのやり取りは面白く描いてました。
にしてもあそこでわざわざヤツを話題に出して気にするあたり、ホントにホップはいいやつだ……そのまま存在を忘れても、またこなかったことにザマァと思っても、誰も文句は言えないのに。
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