アスベルとホップとマリオンは、ローズタワーを昇っていた。 その目的は最上階にいるであろう、ローズ委員長とダンデにあうためである。
「道中のエレベーターでは連続して止められ、長い時間昇らされ……」
「ポケモンバトルを、ボク達はやってきた」
「………」
その途中で何度もエレベーターは止められ、何度もマクロコスモスの社員達が入ってきてはアスベル達に勝負を挑んできた。 それにたいし3人はほぼローテーションのような形式でポケモンバトルを行い、連勝を決めてきている。
「にしても、このエレベーターも中々にすごいよね……だって、広いのはもちろんだけど……どんだけバトルしても持ちこたえられてるんだもん」
「すげぇ頑丈さだから、みんなバトルを仕掛けてくるんだな。 なぁ、アスベル?」
「……え?」
ホップに名前を呼ばれて、ずっとよそを見ていたアスベルは我に返り、そちらをみる。 ホップはそんなアスベルに対し首を傾げる。
「どうしたんだ、アスベル?」
「……すまない……少し、気持ちが堅くなってきていたようだ……」
「……へーき?」
「ああ、問題ない。 それに、ここまできたからには引き下がれない」
そう返している間に、エレベーターは最上階に到達したようだ。3人はエレベーターを降りると、その奥に一人の女性の姿があり、思わず3人とも息をのむ。
「アスベル、用心するんだぞ」
「ああ」
「……………」
ゴクリ、と喉を鳴らしつつ、アスベルは前にでる。 彼らがきたことに気付いた女性……オリーヴは口を開く。
「ようこそ地上300M……ローズ委員長のスペースへ!」
「……」
「私のオーダーをこなす、特別なスタッフ達をものともせずやってくるなんて……流石は、チャンピオン・ダンデが推薦したポケモントレーナーね……でもね、ここでお帰り願います!」
「今更なにを!」
「だってぇ」
次の瞬間、オリーヴは豹変した。 目を見開かせ歯を見せ今までのクールな印象をがらりと変えて、アスベル達をにらみつける。
「ローズ様の邪魔なんて、私絶対に許しません!」
「ッ!?」
「まずはアスベルさん! 貴方をボコボコにすればチャンピオンもがっかりと落ち込んで、委員長の話を聞くことでしょう!」
そのオリーヴの言葉を聞いたホップはあれがヒステリックてやつかとつぶやき、アスベルは、ためいきをつく。
「できれば……無益な争いは避けたかったが……こちらも、邪魔をするのであれば容赦はしない!」
そう言いながらアスベルはボールを構え、オリーヴと戦う体制に入ったが、それにマリオンが制止をかけた。
「マリオン?」
「アスベル、ここはボクに出番をちょうだい」
「え?」
「この人の相手を、ボクに任せてくれってこと。 キミ達に先に進ませるためにも、ね」
そう真剣に語るマリオンの目をみて、アスベルは頷く。
「わかった、ここはキミに託す。 頼むぞマリオン」
「がんばれよ!」
「ふふ、トーゼン!」
マリオンはニッコリと笑い、アスベルとホップを先へ行かせる。 自分の相手がマリオンであることを認識したオリーヴは、ボールを構える。
「まさか、貴女がくるなんて……」
「ボクだって、伊達にジムチャレンジを最後までやりぬいて……そして、最後のトーナメントに進出した訳じゃないんだ! ここで、大事な人のために戦わないで、それを証明できるもんか!」
そういってマリオンは、ボールからストリンダーを出した。 オリーヴもまた、ボールからエンニュートを出す。
「エンニュート、だいもんじ!」
「エレっち、ほうでん!」
だいもんじとほうでんが衝突し、爆発が発生する。 そこでエンニュートはほのおのムチで攻撃を仕掛けてきたが、ストリンダーはそれをどくづきで受け止めたあとオーバードライブで反撃し、その一撃で相手のエンニュートを倒した。
「まぁ、生意気! オリーヴのパートナーを傷つけるなんて!」
「バトルっつーのは、そういうもんでしょ!」
「おゆきなさい、ユキメノコ!」
次にオリーヴが出してきたのは、ユキメノコだった。 そのままマリオンはストリンダーを戦わせで10まんボルトでユキメノコを攻撃したが、ユキメノコはそれをかげぶんしんで回避してふぶきを浴びせて凍りづけにする。 動けなくなったストリンダーをマリオンは一旦ボールに戻し、今度はマホイップを出してユキメノコにマジカルシャインを浴びせる。 それに耐えたユキメノコは再びふぶきを繰り出したが、マホイップはそれに耐えて、とっておきのわざとしてもっていた、マジカルフレイムをユキメノコに命中させて倒す。
「次は貴女よ、アマージョ!」
オリーヴはユキメノコと交代でアマージョを出すと、速攻でトロピカルキックを指示してマホイップに攻撃を仕掛ける。 マホイップはマジカルフレイムで攻撃をしようとしたが、相手のアマージョの方が動きが早く、アマージョの攻撃を受けてしまった。 そのまま弱ったマホイップにアマージョは連続で同じ技をたたき込み、マホイップを倒す。
「おねがい、次いってコロっち!」
マリオンが次に出したのは、ココロモリだった。 ココロモリはエアスラッシュでアマージョを攻撃すると、アマージョは反撃でマジカルリーフを放ち、そこからさらにパワーウィップを食らわす。 それに耐えたココロモリはサイコキネシスで吹っ飛ばしてからのエアスラッシュで、アマージョを倒して見せた。
「ミロカロス!」
「コロっち交代! 次は、チェリっちだ!」
オリーヴがミロカロスをだし、マリオンはチェリムを出した。 チェリムはマジカルリーフでミロカロスを攻撃し、追撃でエナジーボールも打ち込んだ。 だがそれはれいとうビームで打ち消され、それがチェリムにも襲いかかろうとしていたが、チェリムはそれをまもるで防ぎ再びエナジーボールで攻撃。 ミロカロスはたつまきでチェリムを吹っ飛ばそうとしたが、そこでチェリムははなびらのまいで打ち消しそのままミロカロスを攻撃し、ミロカロス倒して見せた。
「これがラストのポケモン……? マジ? オリーヴ、キレそうだわ!」
「いやあんたとっくにキレてるだろ」
そうマリオンはツッコミを入れつつ、チェリムをさげて次はエースバーンを繰り出した。 たいするオリーヴは、今までのポケモンとイメージが全然違う、ダストダス。 そして2人とも、一気に決着をつけるため、自分のポケモンをダイマックスさせる。
「ダイアシッド!」
「ダイバーンッ!」
まずは双方のダイマックス技が衝突し、弾け飛ぶ。 続けてエースバーンはダイサンダーを放つが、キョダイダストダスの技を受けて大きく体力を削られる。
「バニっち……!」
「マリオン・ティム!」
「!?」
「あなたの両親はマクロコスモスの各社に勤めていましたね……ティムという名字で気付きました」
そこで名字について出され、マリオンは表情が厳しくなる。 それは、ローズやオリーヴは両親がつとめる会社の総合的なトップであることを最初から知っていたからだ。 動揺を見せるマリオンに、オリーヴは話を続ける。
「ここまでマクロコスモスの邪魔をした者たちの中に、ティムの人間がいるとしられれば、貴女の両親の立場は危うい……おそらく、解雇もありえるでしょう」
「…………」
「ずっとずっと、貴女を養うために働いてきたご両親……貴女が従順に、おとなしく言うことを聞いて一人でお留守番できているから、安心して働けていると思っているからこそ、あの2人は貴女を養えてきていること……お忘れでなくて? 今貴女がこうして、我々の妨害をしていることは……そのご両親の厚意に背くことだとは、思いませんか?」
そう、オリーヴは語る。 マリオンの両親は共働きであることも知っていて、そこまでして仕事をするのは他ならぬ目の前の少女を育てるためであることも知っているからだ。 それで揺さぶりをかけようとしている。
「……ふっざけんなよっ」
だがマリオンは、両親のことを思い出して、そうつぶやきながらオリーヴにたいし怒鳴る。 両親のことを持ち上げ、自分を揺さぶろうとしていることに気付いたが故に覚えた怒りだ。
「子どもが大人の言いなりになるために存在するなんて、思いあがるなクソババァ!」
「なっ!?」
「バニっち、とどめを決めるよ! ダイバーンッ!」
マリオンはその感情のままエースバーンに指示を出し、それを聞いたエースバーンはそのダイバーンの一撃で、ダストダスを倒した。
「ダストダス……!」
ダストダスはキョダイマックスの状態から元の大きさに戻り、倒れた。 バトルが終わったことを確認したエースバーンも、ボールに戻る。
「ここは、ボクの勝ちだ!」
「はぁぁぁ…勝てないなんて……オリーヴ……ほんとに、ダメなコ………」
「…………」
勝負に負けた途端におとなしく無気力になったオリーヴにたいし、マリオンはなにも言わなかった。
一方、そんなバトルが繰り広げられていることなど露知らず、ダンデがローズと話をしていた。 そのときの2人の顔は、いつになく険しい。
「何度も言ってるではないですか……貴方の意向のためだけに、明日のトーナメントを中止するのは、理解できないと」
ダンデがそういうと、ローズは残念そうな顔をしながら首を横に振った。
「ダンデくん、もう100回ははなしただろう。 チャンピオンとあろうものが……それでもわかってくれないのか………」
「理解はしているつもりですけどね……しかし、いくらなんでも、1000年も先の問題のために今すぐ動くというのは……やはり受け止められません。 俺はチャンピオンだからこそ、責任を持って、絶対に試合をする! それこそが、今のガラルにとっての最良……ここにくらすみんなの! そして、俺自身の楽しみなんですよ!」
「……わかっていない、君はぜんぜんわかっていないよ!」
ダンデの言葉を聞いたローズは少し声をあらげつつ、この窓で一望できるガラルの景色をダンデに見せつつ、まるで彼を説得しようとするかのように話を続けていく。
「ごらんよ、ダンデくん……この広がるガラル地方を! これだけの輝きを保つためのエネルギーも、1000年先にはなくなる……ガラルのみんなはその時、生きていないのだよ!」
「…………」
「だったら、たった一日とは言わず、一刻も早く! 問題解決のために動かねばならないんだ! よりよい未来にするために!」
「………なるほど………委員長の心配は、わかりました」
ダンデはため息をつきつつ、それでも自分の意志があると伝えるために、返事をしようとしていた。
「……それでも……俺は……」
「アニキ!」
そんなときだった。 そこにホップとアスベルが現れたのは。 思ってもいなかった少年たちの登場に、ダンデも驚く。
「ホップ!? アスベル!?」
「ごめん、邪魔して……だけど、時間になってもこないから、おれ達心配になって! ネズさんやマリィ、マリオンやエール団にも助けてもらって、ここにきたんだぞ!」
そう、ホップはここまできた理由と経緯をダンデに語る。 それをみたローズは、ホップに向かって言う。
「ホップくんを不安にさせたこと、素直に謝ります」
「…………」
「大人はね、プライドが邪魔して正直に話し合えないんだよ」
「ローズ委員長」
ローズがそう語っていたそのとき、アスベルは前にでてローズに向かって口を開いた。
「あなたとダンデさんは大事なお話をしたかった、だからこの時期この時間に彼を呼び、二人きりで話したかった。 そこまで大事な打ち合わせを邪魔するようなことをしたことは……オレも、非礼を詫びます」
ですが、とアスベルはローズと向かいあいながら彼に告げる。
「今日の予定に関しては、オレ達の方が先約でした。 あなたがいかにせっかちであれど……大人とか子供とか関係ない、一人の人としての常識……順番は、守るべきです。 あなたが責任ある立場であるなら、なおさら。 そのため、今回の騒動の責任は、その順番を守らなかったあなたにもあります……ローズ委員長!」
そう、アスベルはその蒼い瞳を鋭く光らせながら、ローズ委員長を叱るような感覚で言った。 ただ、自分の意志を伝えるために。 それをみてアスベルの言葉に黙ってきいていたローズは、一応がつくだろうが彼の言っていることを正論として受け止める。
「そうですね、君のいうとおりだ。 打ち合わせよりも、君達の予定の方が先にあったのだから、そちらを優先してあげるべきだった……打ち合わせはその後でもできることだからね。 私は、知っていながらそれをしなかった……責められて、当然です」
「……………」
「すまなかったね」
そう、ローズはあらためて彼らに謝罪の言葉を口にした。 そして、先ほどのアスベルの様子に対し、ダンデは思ったことを口にする。
「なんか今のアスベルは、流石の俺でも怖いと感じたな」
「アニキも?」
「……」
ダンデですら若干の恐怖を覚える、アスベルの一面。 それは、彼が激しく感情を見せるときに感じるものだ。 その一面はなるべく出させないようにした方がいいかもしれない、と思いつつ、ダンデは2人に笑いかけつつ食事の約束を果たそうと言う。
「さぁ、いこうか。 ホテルで好きなものを食べようぜ」
「はい」
「おう!」
「では委員長、失礼します。 明日の試合が終われば、俺も貴方に協力しますから」
そう、ダンデはローズに告げると、2人をつれて立ち去っていった。 ローズは彼らを笑顔で見送ったが、すぐに彼らには背を向ける。 そこにマリオンに敗北したオリーヴが、彼にある報告をするために合流してきた。
「………ローズ様………必要なねがいぼしは十分集め終わりました、貴方のために、準備は勧めて参ります」
「うむ、ご苦労だったねオリーヴくん。 ここからも君なら果たせるだろう……頼りにしているよ」
「もったいない……足止めに失敗してしまった私の不備に対する償いですわ。 正直、ここまで勝ち上がったジムチャレンジャーの実力を、みくびっていました……」
「なに、それくらいは問題はない」
そう、ローズはオリーヴが失敗だといていることを失敗だと言わずに、ジムチャレンジャーの実力をふりかえる。 今年は特に優秀なトレーナーが多いと聞いていたから、というのもあるだろう。
「確かに、本来はバッジを8個すべて集めるのも難しいこと……。 それを果たしている以上、その者達を認めず弱者と見ることは、なんの面白味もない人間のすること……愚考だろう。 だが、君はすぐにそれに気付いていたし、わかっていながら挑んだ。 実に立派だよオリーヴくん」
「……本当に、もったいないお言葉です」
「私も、今日は失敗をしてしまったからね……」
ローズの失敗というのは、物事の順番を違えて自分を優先させてしまったことだった。
「…………だが………ガラルの歴史は、この私が変えてみせるよ……! チャンピオン、君はまだ甘い……私は、やるよ……」
そうつぶやき、ローズは口角をあげた。
そうして、帰り際にマリオンと合流したアスベル達は、ダンデの予約していた料理店でかなり遅めの夕食にありつくことができた。 途中でマリィやネズ達とも会い、彼らの食事に誘おうとしたが、自分達でやるからと断られた。 ちなみにホテルで彼らが取っている食事は、バイキングである。
「うっめー!」
「今日は俺のおごりだ、待たせたぶんいっぱい食べてくれ! もちろん、君もな!」
「はい、遠慮なくいただきます!」
そう、一緒に夕食の席にいることになったマリオンは答え、自分の好きなものを取りに行った。
「にしても、ホップ」
「ん?」
「勝敗が決まって、悔しそうにしていたのに……今は悔しくなさそうだな?」
ダンデに指摘され、ホップは苦笑しつつ自分の思いを口にだした。
「うん、負けたのすっごい悔しい。 いつの間に、あいつとおれでここまで差ができたんだろうって感じた」
「……ホップ……」
「でも、やっぱアスベルは強くなったことが嬉しいって思ったし、そっちの方が気持ちは大きいぞ! バトルも、めっちゃ楽しかった! あいつ……あんなにちっさくてガリガリだったのに」
「そうだな………本当に強くなった! アスベルも……もちろん、ホップもだ!」
「へへ、アニキから強くなったとお墨付きもらえただけでも、儲けもんだぞ!」
そう楽しそうに語るホップを見て、ダンデは彼は確かに成長していると感じた。 それだけでも、ジムチャレンジに推薦してここまで突き進ませたのは正解だったと感じた。
「ちっさくてガリガリだったはよけいだぞ、ホップ」
そんなとき、食事を取りに行っていたアスベルが戻ってきて、先ほどのホップの発言に対し一言言う。
「今の、聞いてたのか?」
「ああ、お前の声なら聞こえるよ」
そういいながら、アスベルは食事をテーブルに置き、ホップの方を向いてあることを言う。
「ホップ、オレはお前の分まで勝ち続ける。 約束させてくれるか」
「なにを言い出すかと思えば、それかよ! そんなの当たり前だろ! おれとの勝負は、お前の伝説の一ページなんだ、もっと胸を張ってガシッと! ガツッとしていろって!」
「……すまな」
「謝るなよ、お前なにか悪いこととかしたか!?」
「……したつもりはないが」
「だったら謝る必要ねーだろ! さっきもいったけど、胸を張ってろっての!」
そういいながら、ホップはバシバシと音を立てるようにアスベルの背中をたたく。 それにたいし痛い、といいつつもアスベルはホップの言葉を受け止める。
「そうだな……オレ、どうかしてたよ」
「ああ、どうかしてたぞ!」
「ハッキリ言うな」
「お前もおなじだろ」
そうホップと対話をしたあと、アスベルはダンデにむかって言う。
「あの、ダンデさん」
「ん?」
「……………」
先ほどのローズとの対話のことを気にしていたらしい、アスベルは大丈夫なのかとダンデのことを心配して声をかけようとした。 だが、いざとなると口からそれが出てこず、アスベルは口を開けたままだったのを閉じ、目をそらす。
「アスベル」
そんなアスベルの心情に気付いたらしい、ダンデは彼の頭に手をおきつつ、笑いかけて彼に明日の試合の話をする。
「俺達の試合を、委員長に見てもらおうぜ」
「え?」
「最高の試合をしよう。 ガラルの歴史に残るような、試合をな!」
「……はい」
そうだ、明日はトーナメントを勝ち進み、ダンデと戦うことだけを考えよう。 ダンデに勝利をすることだけを目的に戦おう。
「オレは、勝ちます」
アスベルは自分に言い聞かせるようにして、そう勝利宣言をした。 その強い言葉に、ダンデは喜びを覚えてにかっと笑う。
アスベルとホップ、ローズ、オリーヴ、マリオン、ダンデ。
色んな言葉と気持ちが交わる話になりましたね。
次回はいよいよトーナメントです。
お楽しみくださいませ。