まどろみの森で不思議なポケモンに遭遇したアスベルとホップは、ダンデとともにその森を脱出する。
そうしてポケモン研究所に向かったアスベルとホップは、ポケモンバトルをすることでダンデに認められ、ジムチャレンジの推薦状をもらう。
そのとき、彼らのもとにねがいぼしが落ちてきたのであった。
そうして彼らは、ジムチャレンジに挑むために旅立つことになったのである。
ねがいぼしを手にし、ダンデから推薦状をもらったアスベルとホップ。 その夜は二人ともマグノリア博士のところに泊まり、今日旅立つことになったのであった。
「おはよう、アスベル!」
「………ああ、おはよう」
今日から旅にでることにたいし元気にはりきっているホップにたいし、アスベルはどこかぼーっとしていた。 それに気付いたホップは首を傾げ、ソニアはそれについて問いかける。
「あれ、アスベルどうしたの?」
「なんというか………久しぶりに、奇妙な夢を見ました。 内容までは覚えていないんですが…………」
その話を聞き、ソニアはふと、アスベルは夢見がよくないという話を思い出した。 だが、その話を聞いたのは数年前のことであり、最近はそれがなかったのだ。
「そういえばあんた、昔からあまり夢見がよくなかったんだっけ」
「ええ………ここ最近はなかったんですけど……」
「平気か?」
「……もう大丈夫だ」
その夢により心身に異常をもたらすことはなかったようだ。 アスベルはいつものようにホップに答える。 そのとき、マグノリア博士が朝食のプレートを持ってきて席に着き、話をする。
「今後、そういうことがあったら、誰かに相談しなさい。 あなたになにかあってからでは遅いですから」
「そうだぞ!」
「はい、わかっています」
「さてと………。 昨日あなた達から預かったものを、あなた達が使えるようにしておきましたよ」
そしてマグノリア博士はあるものを、アスベルとホップに差し出した。 それは、ダイマックスバンドと呼ばれる白い腕輪だった。
「ありがとうございます」
「ありがとう、マグノリア博士! これでおれのポケモンもダイマックスできるぞっ!」
ホップはこのダイマックスバンドがあるおかげで、ポケモンがダイマックスできることに喜んでいた。 その一方でアスベルは、このダイマックスバンドに、自分達の元に舞い降りたあの石が使われていることに関心を抱いていた。
「ダイマックスバンド………これに、あの願い星が使われているんだな……」
いつか、このバンドに埋め込まれた願い星に、自分の願いを込めることがあるだろうか。 そんなことを考えながらアスベルは、マグノリア博士やソニアと挨拶をし、ホップとともに出て行った。
「そういえば……ダンデさんはもう行ったんだな」
「ああ、開会式に向けて一足先に出て行ったみたいだぞ」
「大丈夫なのか?」
「案内してくれる人がいると思うぞ! なんたってあのアニキだからな!」
ダンデの方向音痴のことを心配しつつもブラッシータウンの駅に到着すると、そこにはダンデとホップの母親が立っていた。
「あ、母ちゃん!」
「おばさん」
「ダンデから話は聞いたわ。 推薦状を出したって………そうなれば旅立つことはわかってたから、見送りにきたのよ」
「あ………挨拶はすべきでしたね、すみません……」
アスベルが謝ると、彼女はいいのよと笑った。 そして、同時に彼らのジムチャレンジの旅立ちを許し、見送ろうとしているのだ。
「じゃあ母ちゃん、おれ最強になって帰ってくるからな! 兄弟でチャンピオンなんて史上初だぞっ!」
「はいはい、いってらっしゃい!」
「おばさん……オレも行ってきます」
「そうね………アスベルも十分に成長したものね……」
ホップのことは今更やめろといっても聞かないだろうと判断して返事をしつつ、アスベルの方をみる。 思い出すのは、アスベルを自分の家で引き取ることを決めたときの、弱々しい姿だった。 今は、隣にいるホップと変わらない背丈や体型になっている。
「……ホップ、アスベルのこともしっかり守ってよ」
「わかってるって!」
「アスベルも、ホップのことお願いね」
「はい」
そう言葉を交わしていると、エンジンシティへ向かう電車がくるというアナウンスが駅の中に響きわたった。 彼らはジムチャレンジに挑むために、この電車に乗る必要がある。
「いってらっしゃい!」
「いってきまーす!」
「………いってきます………!」
そう告げて、2人は親に見送られながら電車に乗って町を旅立っていった。
電車の中、ホップとアスベルは向かい合いながらスマホを操作しつつ、これから目指す場所についての情報を交換しあっていた。
「開会式が行われるエンジンシティのまわりには、ワイルドエリアが広がっているぞ!」
「ワイルドエリアか………話では聞いていたが、どんなところなのだろう………」
「おう、おれも行ったことはないけど」
ホップはワイルドエリアについて知っていることを話す。
「とんでもなく広くて、いろんなポケモンが歩き回っていて、天候がコロコロ変わるって話だぞ!」
「………それもなかなかだな………」
「あー、そっちにもいってみたいぞ!!」
「お前、少し落ち着け」
そうはしゃぐホップをアスベルがたしなめていると、電車が減速していることに気付く。
「あれ?」
「ここって、ワイルドエリアの駅だよな?」
「ああ………この電車はエンジンシティ直行のはずだ。 ここで減速するはずが………」
電車が止まろうとしていることに気付いたアスベルがそうつぶやくと、電車の中にアナウンスが流れてきた。
「………みなさまに申し上げます、この電車はここ、ワイルドエリア駅にて停止させていただきます……」
「えぇ?」
思わぬ足止めだ。 電車に乗っていた人々はそのワイルドエリア駅で降りることになった。 アスベルとホップが降りたところにはちょうど駅員がいたので、事情を尋ねた。
「なにがあったんですか?」
「線路の上でウールーが集まって……それで足止めを食らって、電車を止めざるを得なくなってしまったんです」
「ウールーか……」
駅員のいうように、確かに列車の周りには野生のウールーが大量にいた。
「………でもそうなると、エンジンシティへ行くには、ワイルドエリアを歩いていくしかないのか? ここで待ってたらいつになるかわからないし……」
「…………」
「ホップ?」
隣にいたホップが黙り込んだので、アスベルは彼のことが心配になった。 ジムチャレンジにたいする意欲が人一倍強かっただけに、エンジンシティへはすぐにいきたいはず。 だから、ここで足止めを食らってしまったことがショックだったのだろうか。 アスベルが彼のことを気にして顔をのぞき込もうとした時だった。
「むしろこれはチャンスだぞっ!!」
「え?」
ホップは満面の笑顔をアスベルに向けてきたのだ。 自分の予想とは真逆の反応だったので、アスベルはきょとんとする。
「ワイルドエリアはとにかく広いし、いろんなポケモンがいっぱいいる! 大冒険ができるし、おれ達のポケモンも強くなれるぞ!」
「……前向きだなぁ」
今にはじまったことではないが、とアスベルは苦笑しながらつぶやいた。
「ホントだよね」
「え?」
そのとき、聞き覚えのある声がしたのでそちらを向くと、そこには自分たちがよく知っている女性の姿があった。
「あれ、ソニアじゃん。 どうしたんだ?」
「………おばあさまに言われたのよね。 ………あんた達が旅にでるのにあなたはどうするのかしら………って」
「えっと、大変ですね……?」
おそらくソニアは、マグノリア博士に言われて旅にでることになったのだろう。 アスベルは気にかけるつもりでそう言うと、ソニアは少しため息をつきつつも彼に言う。
「あの……気にしなくていいからね。 今回の宿題をクリアすれば、おばあさまもわたしを認めてくれるはずだし!」
「やっぱ大人って大変なんだな」
「だから、気にしなくていいから。 それに、私も久しぶりにキャンプとか釣りとか楽しむしね!」
あくまでもソニアは明るく振る舞うつもりだろう、だったら自分も合わせることにしようと思いアスベルはワイルドエリアをみる。
「ここを越えていくんだな」
「うん、ここから冒険ははじまるよ!」
「よーし、ワイルドエリアでビシッとポケモンを鍛えて、強いポケモンをゲットするぞ!! これも、伝説の1ページだぞー!!」
「あ、ホップ……」
大声でそう宣言をしながら、ホップは走り去っていってしまった。 それにより、その場にはポツンと、ソニアとアスベルが取り残される。
「行っちゃったね」
「はい……」
「まぁ開会式は3日後だし、それには間に合うでしょ」
ワイルドエリアは広いが、この駅からエンジンシティへは一日かそこらの距離である。 それに、危険から守るために警備員が各地に存在しており、迷子になったときは彼らを頼れば問題ないだろう。
「さぁ、ここから本格的に冒険の始まりだ! 気を引き締めなよっ!」
「………はい!」
「じゃ、いってらっしゃい!」
「いってきます!」
ソニアにたいしアスベルは笑みを浮かべると、立ち去っていった。 そんなアスベルの顔を見て、だいぶ感情が顔にでるようになったと感じながら、自分に与えられた課題について考えていた。
「私の課題……ブラックナイト伝説、かぁ………」
それは、ガラルに大昔から伝わる伝説だった。 マグノリア博士はソニアが一人前の博士になるための条件として、その伝説を調べるように言ったのである。 これを果たさねば、と思う一方でソニアは、自分の幼なじみのことを気にせずにはいられなかった。
「………ダンデくん、無事に開会式までにスタジアムにたどりつけるかしら………?」
ワイルドエリアは、自分が思っていた以上に広く、ポケモンも多く存在している。 アスベルはその広大な大地に目を輝かせている中で、野生のヤンチャムを発見した。
「一か八か……やってみるか」
そのヤンチャムを、アスベルはゲットしようと望む。 ポケモンをゲットするにはバトルで弱らせるのが一番、ということで、アスベルはサルノリを繰り出して戦いに挑む。 サルノリはうまく立ち回り順調にヤンチャムの体力を削っていく。
「そこだっ」
いい調子に体力が削られたところで、アスベルはヤンチャムに向かってボールを投げた。 ヤンチャムはボールに吸い込まれ数回揺れた後、ボールから飛び出した。
「……あれ……」
ボールはまっぷたつに壊れ、ヤンチャムはどこかへと逃げ去っていった。 残されたアスベルはしばらく呆然としていたが、やがて苦笑する。
「………ははは、早々にうまくはいかないか………」
今はワイルドエリアを越えてエンジンシティに向かうのが先決か、と思いつつアスベルは歩き出す。 道中は豊かな自然が広がっており、遠目にはいろんなポケモンも見える。 また、ワイルドエリアは天気が変わりやすいらしいが、少なくともアスベルがいるところは晴天だ。 だから、歩いていても気持ちいいものがある。
「………いつかは、このワイルドエリアを隅々まで探索したいものだ………」
アスベルがそうつぶやいた、そのときだった。
「うわっ!!」
突如なにかが突っ込んできたので、アスベルは瞬時に反応して回避する。 そしてすぐに、自分に突っ込んできた何者かの正体に気付く。
「………こいつ……」
それは、いわへびポケモンのイワークだった。 どうやら自分は知らないうちに、このイワークの縄張りに入ってしまったのだろうか。 イワークの目は闘争心に満ちており、目の前の敵を叩き潰すという殺気が宿っている。
「クッ……!」
直感で分かった。 このイワークは自分のポケモンより遙かにレベルが高い、と。 ここは逃げるしかないと判断したアスベルだったが、そこでサルノリがイワークに飛びかかろうとするので必死に阻止する。
「サルノリ、だめだっ!」
「キャ!?」
アスベルはサルノリを抱き抱えると、全速力で走り、その先で見つけた岩の間に飛び込んで隠れる。 やがてイワークの足音は聞こえなくなり、アスベルはゆっくり姿を現す。
「ふぅ……もう行ったか……?」
「キャキャッ!」
アスベルがイワークの姿がないことを確認した、直後にアスベルの腕の中にいたサルノリが怒っているのか騒ぎ出す。 そんなサルノリを
「落ち着け、サルノリ」
「キャキー!」
「逃げることになって、キミは悔しいかもしれない………。 だが……今のキミはまだ小さい。 相手を見誤るな」
「……キィ……」
アスベルに正直なことを言われ、サルノリは落ち込みうなだれる。 そんなサルノリにたいし、アスベルは柔らかく微笑んだ。
「…………大丈夫だ、オレと強くなっていけばいい。 一緒に強くなろう」
「キキィ!」
そのアスベルの言葉が、励ましになったようだ。 サルノリは笑顔になる。 そのとき、同時にココガラも鳴き声をあげた。
「チチッ!」
「ああ、キミも同じだ………ココガラ」
そのココガラにもアスベルは微笑みかけ、声をかける。 今はこの2匹がいる……と確認したアスベルは彼らに呼びかけ、先へ進むと告げる。
「さ、今はエンジンシティへ急ごう。 またあんな手強いのに遭遇したら厄介だからな」
アスベルの言葉に対し、サルノリもココガラも頷き、彼についていった。
そうしてアスベルは一度野宿を経験したり、キテルグマを発見しこそこそ隠れながら移動する羽目になる経験をしながらも、無事にエンジンシティに到着することができた。
「………ここがエンジンシティか………なんとか着いたな………」
先程ついたばかりであるため、アスベルの顔には疲弊の色が浮かんでいた。 とりあえずエンジンシティの中に入れば安心であることが、今のアスベルには安心を与えてくれる。
「………開会式には、間に合ったみたいだ………よかった………」
そう口にしながらスマホでスケジュールを確認するアスベル。 もし間に合わなかったら自分はジムチャレンジに挑戦できなかっただろう。 それだけはイヤだと思えば思うほど、間に合ってよかったという気持ちが膨らむ。
「………まずは、ポケモンセンターで一服しようかな………」
「バギュアッ!」
「ん?」
ポケモンセンターへいこうとしていたアスベルの耳に、あるポケモンの鳴き声が聞こえてきた。
「リザードン!」
そこに現れたのは、一匹のリザードンだった。 そのリザードンに見覚えのあるアスベルはリザードンに声をかける。 するとそれに続いて、リザードンのトレーナーが駆けつけた。 そのトレーナーの姿を見て、アスベルはやっぱりと呟いた。
「リザードン、お前がいないと俺はスタジアムにいくこともできない!」
「ギュウ」
「………ダンデさん………」
「ん? おお、アスベルじゃないか!」
そこにリザードンのトレーナー、もといダンデがいること…それがなにを意味しているのかに気付いたアスベルは、まさかと思いつつもダンデに問いかける。
「もしかして、また迷ったんですか?」
「ああ、あの昇降機をついつい見失ってしまってな!」
「…………」
ダンデは堂々と明るく笑ってそう言うので、アスベルはガックリうなだれつつ、そばにいたリザードンをそっと撫でる。
「リザードン、毎度お疲れさま……」
「バギュア」
アスベルはこのとき、改めてリザードンに同情をしたのである。
「さて、アスベル。 そろそろ自分のポケモンとも馴染んできただろ?」
「はい、まだ手持ちは……サルノリとココガラだけですからね。 実際は途中でポケモンをゲットしようとして……失敗しただけなんですけどね……」
その話を聞いたダンデはそうか、と言いつつアスベルに焦らなくていいとつげる。
「まぁ…まだこれから、いくらでもチャンスはある。 それを確実に追えばいいさ」
「はい」
ダンデの励ましを受けてアスベルは笑みを浮かべたが、そのとき耳にピィーという電子音のようなものが入ってくる。
「んっ?」
「アスベル、どうした?」
「今、すこし耳鳴りがしたような……」
それをきき、ダンデはすこしアスベルのことが心配になったようだ。 アスベルの顔をのぞき込みつつ問いかける。
「大丈夫か?」
「はい、平気です。 耳鳴りは一瞬でしたし……ワイルドエリアを越えたばかりだから、疲れてたのかもしれません……」
「そうか、ならいいんだ」
彼の無事を知ったダンデは安堵し笑いかけると、突然歓声が聞こえてきた。
「あ、チャンピオンだ!」
「おぉぉ、チャンピオンがいるぞー!」
どうやらそこには、チャンピオンファンが大勢いたようだ。 人々が群がってきたことに気付いたダンデは彼らに笑顔を向けた後、アスベルに告げる。
「じゃあな、アスベル! 開会式で会おう!」
「は、はい!」
そう言ってダンデは立ち去っていった。
「………相変わらず忙しい人だ………」
そんなダンデの姿を見て、アスベルはポツリとそうつぶやいた後で、ポケモンセンターに向かったのであった。
前書きを前回のあらすじにしてみましたが、いかがでしょう。
今後はこうしていったほうがいいかもしれませんね。
このあたりの展開はワイルドエリアを突破する、そしてその中でアスベルは自分のポケモンに強くなるよう言う・・・・・というのは決めてました。
ゲットをしようとして失敗することでまだ初心者っぽいところも、みせていってますね。
あと、やはりダンデの方向音痴は致命的だ(笑)
リザードンに同情するアスベルもかきたかったものです。
さて、次回はいよいよ開会式。
あのシーンは感動モノでしたね。