さて、彼らはどう動くのか?
それぞれの「動き」を書いてみました。
シュートスタジアムにて行われたファイナルトーナメント、残す試合はアスベルとダンデの、チャンピオンの座をかけた最後の試合のみとなっていた。 誰もがこの瞬間を待ちわび、心を躍らせていた。
「なにがあったんだ!?」
「チャンピオンとチャレンジャーは、無事なのか!?」
だが、そこでおもわぬハプニングが発生してしまった。 突如としてモニターにローズ委員長の姿が映し出されたとおもいきや、彼はブラックナイト開始を宣言した。 その直後、スタジアムに異変が生じ、赤い光があふれたかと思えばそのままバトルフィールドが崩壊し、それにアスベルとダンデが巻き込まれてしまった。 観客はスタジアム全体に広がる土煙の中、2人の安否を心配する。
「クッ………!」
「アニキ!」
「フゥ……ハァッ!」
ダンデは奇跡的に無事だった。 とはいえ、がれきの一部に必死にしがみついている状態ではあるのだが。 すぐに腕に力を込め、体を持ち上げて飛び上がり着地をする。 そしてすぐに、アスベルのことを探し始めた。
「アスベル! どこだ、アスベルー!」
「………ダ、ンデ……さん……!」
「アスベル!?」
ダンデがアスベルを呼ぶと、アスベルも苦しそうにしながらもその声に答える。 彼の声に気付いたダンデはその方向を向き、晴れていく砂煙の中でアスベルの姿を目撃した。 だが、その姿を見たときダンデはその目を丸く大きく、見開く。
「………う、ぐぅ………!」
アスベルは確かにそこにいた、だがその体は時折赤く光る謎の硬質な物体に絡められ、アスベルを捕らえていた。 アスベルはそれから逃れようと抵抗していたが、まったく脱出できる気配がなかった。
「……なんだ、これは……!?」
アスベルの身体を縛り付けているものの正体はわからないが、このままでは危険だと判断したダンデはそれを引きはがそうとする。 だがそれはかなりの強度を持っており、ダンデの力では振り払えなかった。
「アスベル、動くなよ」
そう低い声で告げると、ダンデはボールからオノノクスを出し、ある技を指示する。
「オノノクス、ハサミギロチン!」
そのハサミギロチンでアスベルのからだを縛り付けていた謎の物体を破壊し、彼を解放する。 ダンデは、解放されたアスベルを抱き留める。 アスベルは呼吸は少し荒いが、外傷はないようだ。
「……ハァッ……」
「走れるか!」
「……はいっ!」
そうして、ダンデはアスベルを支えつつ走り、控え室へ続く道に避難をした。
「……とんでもないハプニングですね……」
「ああ」
「委員長、なにをしでかしてくれちゃってんのよ!?」
ジムリーダー一同も、この状況に戸惑いを隠し切れていない。 そんなとき、キバナのスマホに電話が入りすぐにそれにでると、スマホの向こうからダンデの声が聞こえてきた。
「キバナ、俺だ!」
「ダンデ! 遠目で見ていたが、お前達には影響はないか!?」
「ああ……俺はなんともない。 もちろん、アスベルも無事だ」
電話越しにダンデは、自分とアスベルの無事を彼らに伝えた。 そんなダンデに、キバナは問いかける。
「なぁ、ダンデ。 委員長がなにを考えているか、わかるか」
「……いや、まったくわからん。 だが、このまま放っておくわけにも行かない。 さっきアスベルがおそわれスタジアムのフィールドが崩壊してしまったのを見てわかるとおり、このままだと被害が広がってしまう」
「……確かに、今も観客は状況についていけず、混乱を起こしていますね」
「しかもあの現象……ナックルシティで起きているみたいだな……クソッ!」
ローズ委員長がブラックナイトを実行した場所がナックルシティであることにたいし、キバナは目つきをきつくさせる。 その一方でダンデは、ジムリーダーにあることを頼む。
「二次災害を懸念し、ジムリーダー一同に、観客の避難を要請する! リーグスタッフと協力して、観客をホテルに避難させてくれ!」
「ああわかった! だが、お前はどうするんだ!?」
「俺は……チャンピオンとして、ローズ委員長を止めてくる!」
そう言ってダンデは一旦、通信を切った。 ダンデの言葉を聞いたジムリーダー達は行動を開始しようとしたところ、キバナはほかのジムリーダーに言う。
「シュートスタジアムの人々の避難は、お前達に任せる!」
「キバナくんはどうするのだ!?」
「オレはナックルシティへ行く」
そう言ってキバナは、ボールからフライゴンを出してその背に乗る。 そんなキバナを、カブが呼び止めた。
「待つんだキバナくん、ぼくも行こう!」
「それはっ……」
「きみ一人では荷が重いだろうし、ナックルシティの人々やそこに待っているスタッフなどを避難させる必要もあるだろう! だったらそちらにも人員が必要なはずだ!」
「ぼくも手助けしますよ!」
カブに続いてヤローも名乗りを上げると、キバナは若干観念したかのようにため息をつき、頷く。
「……わかった! じゃあヤローとカブさんはオレとナックルシティにきてくれ! サイトウとルリナ、マクワとネズにはここを任せる!」
「わかったわ!」
「手が空き次第、ボク達も加勢に向かいます!」
「オーケー! じゃ、オレは一足先に行くぜっ! フライゴン、スピードはマックスでとばしてくれ!」
キバナはフライゴンにそう呼びかけると、フライゴンはその指示に答えるかのように翼を大きく羽ばたかせ、上空を飛んでいった。 それを合図としてジムリーダーは動きだし、ほかのリーグスタッフにもダンデからの言葉を伝えて、ともに観客をスタジアムから避難させていく。
「ぼく達は、空飛ぶタクシーで向かおう!」
「はい!」
カブもヤローに声をかけて、外に出て空飛ぶタクシーを呼び2人でナックルシティに向かっていった。
「はっ……そうだ……!」
そのなかでサイトウは従姉妹のことを思いだし、すぐに彼女のいる席へと向かった。 だが、そこにその少女はいなかった。
「マリオン! どこですか、マリオン!」
「どうしたの?」
焦っているサイトウの様子に気付いたルリナやマクワが、サイトウに声をかけてきた。 サイトウは、自分が気付いたこの異変について口にする。
「ここで観戦していたはずの、セミファイナリスト達がいません!」
「なんですって!」
「マリオンに電話も試みましたが、返事もないんです……じっとしてるわけがないとは思っていたんですが……」
「ほかの観客とともに避難したのではないですか?」
「………だと、いいのですが……」
そう呟いたサイトウは、マリオンがなにをしようとするのかを連想して、ある可能性に気付く。
「まさか!?」
一方、通路に避難しジムリーダーに司令を送ったダンデは、アスベルの容態を気にしていた。
「アスベル、苦しくはないか?」
「は、はい……もう、大丈夫です」
もってきた水を飲ませ、呼吸を安定させたアスベルは、そう答える。 するとそこに、2人の安否を心配していたホップが駆けつけた。
「アスベル! アニキ!」
「ホップ!」
「なんかやばいことになったな! まずは2人とも無事で安心したぞ!」
とりあえず2人が無事にそこにいることに、ホップは安心していた。 そしてすぐそのあとで、ローズ委員長の奇行にたいする疑問を浮かべてダンデにそのことを問いかける。
「そういや今うつしだされたのって、ナックルシティのスタジアムだよな? ローズさん、なにをしちゃったんだ?」
「さっぱりわからない! だが……もしや、昨日の夜……1000年先の問題を解決するために動いたのか!?」
「はぁ? なんでそんな、途方もないことを?」
やはりローズ委員長の思考は理解しがたいものがある。 今までも彼の行動や思考はわからないことばかりではあったが、昨日のことや今回のことは、その限度を超えている。 ダンデは、このままではここにいるホップとアスベルも危ないと感じ、ナックルスタジアムに向かうことを決めた。
「とにかく俺が……チャンピオンの俺が行く!」
「それは、ダメです! オレもいきます! オレがいかなきゃ……ダメなような、気がするから……だから!」
アスベルは、昨日のことでなにか責任を覚えているのだろう。 そうよんだダンデはアスベルに向かって笑いかける。 まるで、彼は関係がないこと言うかのように。
「リーグ委員長の意図をきちんと理解しなかった、俺に責任がある……。 だから、俺が責任をとる!」
「ダンデさん……」
「俺に任せるんだ! 今からチャンピオンタイムだぜ!」
そう言ってダンデは走り出し、ホップはそんなダンデに不安を覚えていた。
「アニキ! 方向音痴なのに、ナックルシティに行けるのか……」
「そこがまず心配だな」
そのホップの不安に対し、アスベルは否定しなかった。 もちろん、彼らがダンデに抱いた不安はそれだけではなかった。
「……それに、いくら無敵と言っても……全部アニキに任せっぱなしなんて……そんなの、なんか違う!」
その不安を、ホップは口に出し、そしてアスベルに言う。
「アスベル……おれ、アニキの力になりたい!」
「ああ」
「でも……アスベルに勝てなかったおれに、なにができる……こんな、おれに……」
「なにをいっている!」
こんな時に自分と他者を対比して弱気な姿勢を見せるホップに、アスベルは彼の肩をつかみ、正面で向かい合いながら怒鳴る。 突然怒鳴ったアスベルに対し驚くホップに、アスベルはさらに告げる。
「この際勝ち負けの差とか、強い弱いはどうでもいいだろ! お前はなにがしたいんだ、どうしたいんだ!! 大事なのはお前の気持ちだろう!?」
「………アスベル………」
「それとも、このままオレに勝てないことを理由に、このまま引っ込むか! このままダンデさんを一人で戦わせるのをじっと見ているだけでいるつもりか!? まわりみんなを、このまま物陰に隠れて見捨てるのか!」
「それは絶対にやだ!」
アスベルの言葉を、ホップは強い声で否定した。
「おれの前で……おれの大事な人や、いろんなポケモンが傷ついて、困っていることはやだ! そして………それをただじっと見ているだけなんて絶対にやだ!」
それでホップの本心を聞いたアスベルは、確認をとるかのようにホップに言う。
「だったら、オレ達がすべきことは、とうに見えているだろう!」
「………ブラックナイトを、止めること………!」
「そうだ!」
アスベルのその言葉で自分がなにをすべきなのかを確認したホップは冷静さを取り戻し、ブラックナイトを止める手がかりを、これまでの旅を通して探していく。
「ローズ委員長が言ってたブラックナイトって、大昔の空が暗くなったことだろ? はじめるってなんだ? そもそもどこで聞いたっけ……」
「英雄像の前だな、ソニアさんが言っていた」
「英雄は2人で、剣と盾のポケモンとともにブラックナイトを鎮めたんだ……」
「そして、そのポケモンは戦いが終わった後、眠りについた」
「よし、眠りについただろう2匹のポケモンを探すぞ! どこだとおもう!?」
「……オレ達は、もうきっと知っている」
そう、アスベルは蒼い独眼でまっすぐにホップをみた。 ホップも金色の双眼でアスベルを見つめ返し、その目線が重なった2人は力強くうなずき、その場所を同時に言い当ててみせる。
「「まどろみの森だ!!」」
「あのときのポケモンの幻……あいつが、眠りについたポケモンだぞ!」
「ああ、そのもので間違いない」
あの日にみたポケモンのことを思いだし、アスベルとホップはそこへ向かうことを決める。
「あの森へいこう、剣と盾を探しに!」
「ブラックナイトを鎮めて、アニキを助けよう!」
そう声を掛け合い、アスベルがいつもの服に着替えたところで外に出た。
「アスベル、ホップ!」
「マリィ、マリオン」
そのとき、外にいたマリオンとマリィがアスベルとホップに気付き、声をかけてきた。
「2人とも、無事だったんだ……よかった」
「特にアスベル! きみの体にからみついてたアレ、なに!? 今アスベルは何ともないの!?」
「ああ、オレはこのとおりなんともない」
とりあえず2人の無事を知ったマリオンとマリィは安堵しつつも、先程リザードンにのって飛んでいくダンデの姿を見たことを伝えてきた。
「リザードンが一緒なら大丈夫だな」
「ダンデさんにたいして心配していたの、そこ?」
ホップの言葉に対しマリオンはツッコミをいれつつ、自分の不安を打ち明ける。
「ボクは、キミたちが心配だよ! きみ達がなにかをするんじゃないかって、それで危ない目にあうんじゃないかって……このままダンデさんを追いかけて、みんなより大変なことにつっこもうとしてるんだとしたら、ボク……!」
「マリオン……」
「マリオン、オレ達なら大丈夫だ。 キミ達は避難……あるいは、避難の手伝いをしてやってくれ」
「………」
「おれも大丈夫だぞ! アニキもアスベルもおれも、みんな無事で帰ってくるから、お前達はおれ達が帰ってくるのを、ここで待っていてくれ! ここなら、みんなが守ってくれるだろうしな!」
そう声をかけて、アスベルはボールからアーマーガアを出すとそれにホップとともに乗って空を飛んでいった。
「そんなの………じっと待ってられないよ!」
「マリオンッ」
待っていろと言われたマリオンだったが、彼女はそれに従わずにどこかへ走り去っていってしまった。 彼女を止めようとしたマリィだったがかなわず、呆然とそこに立ち尽くしてしまった。 そこに、妹を呼ぶネズの声が聞こえてきた。
「マリィィィッ!」
「アニキ!」
「あなたは無事だったんですね、ほかのセミファイナリストは!?」
サイトウは、ある予感を覚えながらもマリィに確認をとりたかった。 彼女が一人だけでそこにいることで薄々ここにはいないだろうと思っていたが、どうしても聞きたかったのだ。
「アスベルもホップもマリオンも、どっかいっちゃった」
マリィがそう彼らに伝えた、ちょうどそのころ。
ホップとアスベルは、アーマーガアの力を借りて、まどろみの森がある、ハロンタウンに帰ってきていた。
「ソニアさん!」
「ソニア!」
そして、まどろみの森の前でなにか考え事をしているソニアの姿に気付き、まずは彼女に声をかける。 名前を呼ばれたソニアは振り返り、アスベルとホップの存在に気付く。
「あれ? アスベルにホップ……」
そして、2人の姿を見たソニアは、今日はなにがあったかを思い出し叫ぶ。
「って、忘れてたぁ! チャンピオンマッチって今日じゃん!」
「忘れるなぁ!!」
「実は、それどころではなくなって……」
ソニアの発言に対しホップがツッコミをいれ、アスベルは事情を説明した。 チャンピオンとの試合は中止になったこと、その原因はローズ委員長にあること、ブラックナイトがはじまってしまったこと。 ブラックナイトという単語をきいたソニアは、呆然とする。 伝説が現実になってしまうことに対して。
「まどろみの森を調査している間に、そんなことが起きていたなんて……」
「だから、オレ達はそれを止めるためにここに来たんです」
「……確かに、伝説が真実なら、剣や盾のポケモンがブラックナイトを治めてくれる……災厄をはらう力となってくれる! でも……ここに本当に?」
「います、確実にここに!」
そう強く言い切ったのは、アスベルだった。 そこまで自信がある彼らに疑問を抱きつつも、今はそれに託すしかないと思ったソニアは、笑顔でうなずき彼らを送りだす。
「いってくるぞ!」
「絶対に、災厄をはねのけるんだよ!」
ソニアの言葉を受けた2人は、まどろみの森に足を踏み入れる。 思えばあの日以来だ、ここに足を踏み入れるのは。
「相変わらず不思議な場所だ」
「また、モヤモヤって不思議な霧に包まれるかもな……だけど、おれ達もポケモンも強くなったし、問題ないぞ!」
そう自信満々にいいながら、ホップは初めてこの森に足を踏み入れたときのことを思い出して、目を細めてそのときのことを口に出す。
「思い返せば、あのとき……ウールーを探すためまどろみの森に入ったのが、伝説のはじまりだったかもな………」
「……ホップ……」
「よし、今からの出来事も、伝説の1ページに追加するぞ!!」
そう告げるホップに対しアスベルはうなずき、そして遠くを見つめつつ、自分が行くべき道を示すようにつぶやく。
「今のオレにはわかる……どこへいけばいいのか、どこまで進めばいいのか……」
「本当か!」
「ああ……オレを呼ぶ声が……聞こえてくる……!」
今まで聞いたことのあるような、不思議な声。 今アスベルの脳裏に響いてくるのは、ある場所へと導くためのものだ。 いまはなにも恐ろしいと感じることはない。 むしろその導きの声は、アスベルの中の勇気を奮い立たせ、先へ進ませるためのもののように聞こえてくる。
「さぁ、いこう! 一緒に!」
「ああ!」
そして、アスベルとホップは森の奥へと進んでいった。
「我々の元にこい、災厄をはらう希望のものよ……ともに戦うものとともに、ここへ……導かれるままに、こい」
という声を、ききながら。
アスベルを襲ったものの正体とか、多くの謎はありつつも、伝説のポケモンを探しに行きます。
そして、戦いが激しくなっていく…。