このオッサン、結局わけのわからん狂人っぽい人というのが、私の総合的な印象ですね。
最初にみたときから、うさん臭さは満載でしたが。
ムゲンダイナの存在を知ったホップは、それを阻止するために地下にいるローズ委員長の元へ向かう。
「はぁ、はぁ!」
荒い呼吸を繰り返しつつも、ホップはひたすらに、急いでいた。 早くいかねば、ローズ委員長の意図を確かめねば、兄が危険にさらされ多くの人とポケモンが、きずついてしまう。 絶対に阻止しなくてはならない事態だ。
「きゃあ!」
「マリオン!?」
地下から聞こえてきたのは、マリオンの声だった。 それに気付いたホップは、階段なんて律儀に降りていられるかと思い立ち、飛び降りた。
「………なんだよ、なんでボク、ここでなにもできないんだよ……! ダンデさんたちを、助けなきゃいけないのに……!」
その地下室で、マリオンは悔しげに顔をゆがめる。 目の前にいるエースバーンはギリギリで持ちこたえられているが、まともに戦えそうにない。 目の前の相手のポケモンは、まだ戦う力があるというのにである。 歴然とした力の差に、マリオンは絶望を覚えていた。 そんなとき、相手のポケモンはエースバーンを倒すためのとどめの一撃を放とうとしてくる。
「やめっ……」
「インテレオン、ねらいうち!」
マリオンが戦いをやめようとしたとき、インテレオンが飛び出してきてねらいうちを放つことで、相手のポケモン…ダイオウドウの行動を妨げる。 呆然とするマリオンの前に、ホップが現れる。
「大丈夫か、マリオン!」
「ホップ………」
彼の顔を見てなにもいえなくなったマリオンは、顔をうつむかせる。 そして、そのホップに声をかけてきた男がいた。
「ほう、まさにレディを救うナイトですね……ホップくん」
「……なにを、やってんだよ……ローズ委員長!!」
そこにいたのは紛れもなく、ローズ委員長だった。 自分達は彼のことを信用してジムチャレンジに挑み、勝ち上がり、最後のトーナメントまで進んだというのに。 最後の試合が台無しにされたことで、裏切られた気分になる。 ダンデも、彼を信頼していたはずなのに…と、ホップの中でローズに対する怒りがこみ上げてきた。 そんなホップに、マリオンは謝罪を口にする。
「ごめんホップ……ボクじゃ、委員長には勝てなかったんだ……」
「なんだって!?」
「キミや、アスベルのために……道を切り開いて、先へ進ませたかったのに……! くやしいよっ!」
マリオンは己の無力さを感じたようだ、彼女をこんなに追いつめたことを知ったホップは、怒りの炎に油を注がれた気分になった。 そんなホップに対し、ローズは演説でも行うかのように口を開く。
「ちょっといいかな?」
「?」
「きみからすれば、私はヒドいことをしているんだろうね……微塵も、理解できないのだろう」
「あったりまえだろ!」
このような騒動を起こしておきながら、目の前にいる友人を傷つけておきながら理解しろなどと、なにをほざくか。 その意味を込めてホップはローズをにらみつけるが、ローズの態度は変わらず、ただ淡々と演説を続けた。
「だがね、私にはガラル地方が永遠に安心して発展するために、無限のエネルギーをもたらす信念と使命があるのだよ! そのため……ムゲンダイナにねがいぼしを与えていたのだ!」
「よくいうぜ、でかいもんぶっぱなしてポケモンをダイマックスして暴れさせて! 大事なイベントを、大事な試合をメチャクチャにしておいて……それがガラルのためだなんて、あるわけないだろ!! そんなわけのわかんない使命、勝手に自分で作るな! バカヤローが!」
ホップは大声でローズに対し、罵声を浴びせた。 それにたいしローズは無表情で、ボールからダイオウドウをだした。
「ダイオウドウ、道を防ぎなさい」
「!!」
ダイオウドウが出てきて、ホップは身構える。 自分がどうなろうともせめて、ここにいるマリオンだけでも逃がして助け出さねば、と。
「マルヤクデ、だいもんじ!」
だがそこで、巨大な炎が飛んできてダイオウドウを止めた。 その攻撃をダイオウドウはまもるで防いだが、ローズはそのだいもんじを放ったのは誰なのかと、技が飛んできた方をみた。
「間に合って、よかった!」
「アスベル!」
そこには、アスベルの姿はあった。
姿を現したアスベルは迷うことなく、ホップとマリオンのところに駆け寄った。 アスベルの顔を見たマリオンは、彼にも無力さを謝罪をする。
「アスベル、ごめん……またボク、キミに情けないところを……」
「大丈夫だ、マリオン。 オレに託してくれ。 ホップ、お前は彼女を頼む」
「わかった!」
アスベルはマリオンにそう微笑みかけながら言ったあと、彼女のことをいったんホップに任せ、アスベルはローズと向かい合う。
「なにをする気なのかな? ジムチャレンジャーさん」
「……ブラックナイトを鎮め、ダンデさんを助ける」
「それは困るよ、きみ。 チャンピオンにはムゲンダイナを制御してもらわないとね」
ローズの計画を聞いたアスベルは、冷静に言う。 その態度から、アスベルはすでに、ムゲンダイナのことを知っているかのようだった。
「ナックルシティで起きた赤い光の騒ぎ……あれも、ムゲンダイナを目覚めさせる実験の一環だったか……」
「ほう、そこに気付いていたのだね」
「……アスベル、お前……ムゲンダイナのことも……!?」
アスベルはさきほど、伝説のポケモンの名前を言い当てた。 誰にも教わっていないにも関わらずだ。 今アスベルがムゲンダイナの名前を言い当てているのも、彼にしかない能力なのだろう。
「いいかね? ガラルの未来を守る計画をジャマするなんて……もってのほかなんですよ!」
ローズは滅多に出さないであろう、激しい大声で怒鳴るようにアスベルにそういいつつ、ボールからシュバルゴを出す。 だがアスベルは動じることなく、重々しく口を開いた。
「愚か者が」
「!?」
「己の欲望を国の将来で覆い隠し、今民を困惑させ他者を踏みにじるものが、一つの国を救えると思うな……。 それは、うぬぼれにほかならない……お前に、その才はない」
アスベルの言葉は、口調も今まで聞いてたものとは違う。 目の前のローズをハッキリと否定をしている。 たたきつけられたローズは、眉間にしわを寄せながら、アスベルに反論をする。
「厳しいね、厳しすぎるよ。 そういうの、よくないんじゃないの?」
「黙れ」
ローズの言葉を冷たく一喝してとめ、アスベルはマルヤクデにだいもんじを指示し、ローズのシュバルゴを一瞬で戦闘不能にした。
「己の浅はかさを認めろ、さもなくばムゲンダイナはガラルの宝を我々から奪うだけだ」
「ぐっ……ニャイキング!」
「認めないのであれば、やむを得ない……マルヤクデ!」
ローズは次にニャイキングを出してきた。 アスベルは引き続マルヤクデでたたかう。 ニャイキングはすばやくうごいてマルヤクデを攻撃していくが、マルヤクデは動じずに確実に相性のいい技で攻撃し、ニャイキングも倒した。
「ダイオウドウ、ここで決めてくれますね」
そう言って、ローズは今度はダイオウドウを前に出す。 それをみたマリオンは身を震わせた。 自分はこのダイオウドウに勝てなかったのだから。 一方、アスベルはマルヤクデを戻し、ゴリランダーをかわりにそこに繰り出す。
「さて、ここでダイマックスをさせましょうかね!」
「……いいだろう、こちらもダイマッスさせてやる!」
ここは短期決戦だ、といわんばかりにローズはダイオウドウをキョダイマックスさせ、アスベルもまたゴリランダーをダイマックスさせた。
「ダイアース!」
「ダイソウゲン!」
ダイアースがゴリランダーにぶつかると、ゴリランダーは反撃でダイソウゲンを放ちダイオウドウに攻撃をする。 直後、ダイオウドウのキョダイマックス技がゴリランダーに命中し、それによりゴリランダーは大ダメージを受けてしまった。 その光景を見たマリオンは、焦る。
「アスベル、ダメだよ! そのダイオウドウの強さは、とんでもないんだ……! これ以上戦ったら、マズイよ!」
「そちらの子の言うとおり……アスベルくん、君はここで諦めて帰りなさい。 それこそが、ガラルのためであり君のためである」
そうローズは、アスベルに言う。 マリオンは顔をうつむかせるが、そこでホップがローズに向かって言った。
「……委員長、なにもわかってないな。 おれ達も、ポケモン達も……どこまでもあきらめる気はないぞ」
「?」
「どんな絶望を経験して、くじけそうになっても……最後の最後まで絶対にあきらめないで、何度でも立ち向かう。 これ……あなたが開催してくれたジムチャレンジのおかげで、おれが学んだことなんだぞ。 だから、おれ達はおれたりしない……アスベルも、おれも! もちろん、マリィもマリオンもビートも、みんな同じだ!」
マリオンは、ホップの言葉に目を丸くした。 そしてホップは、アスベルに向かって叫ぶ。
「そうだろ、アスベル!」
「むろんだ」
ホップの言葉に対しアスベルはそう返すと、ゴリランダーにも声をかける。
「ゴリランダー、お前もそうだろう」
「ホゥッ!」
その返事だけでゴリランダーの気持ちを読みとったアスベルは頷くと、ゴリランダーにダイマックス技を指示した。
「決めろ、ゴリランダー! ダイナックル!」
そのダイナックルは、ダイオウドウにクリティカルヒットしたようだ。 ダイナックルをまともに受けたダイオウドウは、戦闘不能となる。
「……ダイオウドウでも、かなわなかったか……」
「ローズ委員長に……勝っちゃった……」
「すごいぞ、アスベル……!」
ローズ委員長のポケモンを全滅させたアスベルの力に対し、マリオンもホップも呆然としていた。 戦いが終わったアスベルは、あの緊迫した重々しい空気を消し、いつもの穏やかさを取り戻していた。
「……ありがとう、ゴリランダー」
アスベルはゴリランダーにそうつげ、ボールに戻す。 その瞬間、この部屋に拍手の音が鳴り響く。
「流石ですね、アスベルくん! 完敗です! 愛しのガラルが誇る無敵のチャンピオンが選んだジムチャレンジャーですよ!」
ローズは悔しがる様子もなく、素直に自分の敗北を認めアスベルの力を賞賛した。
「いやぁ、きみとチャンピオンのチャンピオンマッチ、みたかったねぇ。 ジムチャレンジとか無駄にしちゃって、本当申し訳ない!」
「……全部、あんたがメチャクチャにしたくせに……」
ローズの言葉に対し、マリオンはローズをにらみつけつつそう言った。
「だけど、仕方ないよね。 エネルギー問題を一刻でも早く解決するべく、ムゲンダイナを目覚めさせたが制御できなかった。 そんな私を助けるために彼は、試合を捨ててやってきたんだ。 それこそ、お姫様をドラゴンから守るナイトのようにね」
「きれいに片づけるな」
「さて、私は演説が好き故に話が長くなってしまったが、ここで終わりにするとしよう。 だって上では、チャンピオンがムゲンダイナをとらえた頃、でしょう」
「……いずれにせよ、オレはいくつもりだ……ムゲンダイナを止めるのは、オレだから」
そうアスベルはローズに告げた。 チャンピオンでない彼にムゲンダイナを止められるのかと疑問を抱くローズだったが、今のアスベルには彼のことなどどうでもよかった。 そして、ホップもアスベルとともにいこうとする。
「ホップくんも、いくんですね」
「いくさ」
ローズにたいしホップはそう答えつつ、自分の意志を語る。
「そりゃ、おれは最強にはほど遠いし……どこまで出来るか出来ないかなんて、たかがしれてるかもしれない。 だけど……アニキやみんなのためを本気で思いながらだったら、どんな行動だって恥ずかしくないし怖くもないぞ。 だから、おれはいくんだ」
そう、ホップは拳を強く握り、真剣な眼差しでローズを見つめた。 そしてアスベルとホップはマリオンを連れてその場を離れ、彼の姿が見えなくなったところでアスベルはマリオンに声をかける。
「マリオン」
「アスベル」
「キミは逃げろ。 必ずオレ達がダンデさんを助けてブラックナイトをしずめてみせる。 あのときいったように……キミには、オレ達を信じてほしいんだ。 信じてくれていれば、オレ達は勝てるから……どうか、その気持ちだけは絶対に捨てないでほしい。 頼む」
アスベルはマリオンのポケモンを回復させた後で、彼女を非常口に連れて行き、ここから外にでるよう言った。 マリオンはそれに従い、外にでる。
「……」
マリオンは、外にでたところでホップの言葉を思い返していた。 自分達は絶対にあきらめたりしないと言う言葉。 そして、アスベルも自分を信じてほしいと願っていた。 そんな彼らに自分がしてあげられることは、なにかと考えた。 そして、やがてある結論にいたり、ポケモン達をボールからだした。
「バニっち、みんな……まだ、ボクと一緒に戦ってくれる?」
「バーン!」
ボールからポケモン達を出したマリオンは、ポケモン達にある確認をとる。 彼女のその言葉を聞いたポケモン達は、迷わず彼女の言葉にうなずいた。 それにたいし、マリオンもうなずく。
「そうだよね……あの2人も、最後まであきらめないって言ってた。 だったら……ボクも、あきらめない! アスベル達を信じる……信じるために、ボクは……まだ、戦う! やるべきことを、やる!」
そう口にした瞬間、別のポケモンがダイマックスしたのが見えた。 それをみたマリオンは意を決して、自分のポケモン達にお願いをする。
「お願い、町中に現れたダイマックスポケモンを止めるために、ボクと一緒に戦って!」
マリオンの頼みを、彼女の手持ちポケモン達は頷いて答え、受け止めた。 そんなポケモン達にマリオンはこたえようと、彼らに指示を出してダイマックスポケモンに立ち向かう。
マリオンを脱出させた後、エレベーターを使いナックルスタジアムの塔の頂上へ向かう。 塔の上は、第二の闘技場というべき広さを持っており、そこにダンデの姿はあった。 側には、彼の相棒であるリザードンの姿もある。
「な、なんだあれ……!?」
だが、そこにはダンデとリザードン以外にもうひとつの存在がいた。 それは、とてつもなく大きい。 深い闇のような紫色の、竜のような形の骨格。 顔も翼も爪も尾も、すべてその骨で出来ているようだ。 そしてその骨は、その生物に宿っている赤い光を採り囲っている。 あまりにも異形すぎるその存在にホップは呆然とし、アスベルは冷静にそのポケモンの名前を口にする。
「あれこそが……ブラックナイトを呼ぶ存在……ムゲンダイナ」
「ムゲンダイナァ!? あれが!?」
オリーヴやローズが口にしていた存在、ムゲンダイナ。 まさかあれもポケモンだというのか、とホップは戸惑いつつ、そこにいるダンデを呼ぶ。
「アニキ!」
「ダンデさん……」
その声で、2人がそこにいると気付いたダンデは、彼らの方を少しみた後で、彼らに告げる。
「危険を省みず助けにきてくれたのか……たくましくなったな! 心の底からサンキューだ! ホップ、アスベル!」
「……」
「だが、安心しろ! ムゲンダイナの能力なのか、ダイマックスできずにてこずったが……チャンピオンタイムもいよいよ、クライマックスだぜ!」
ダンデはいつものように、堂々とした態度で彼らに告げた。 このほうが、彼らが心配しなくてすむと思ったからだ。 自分達の強さに、戦いに、絶対的な自信があるからだ。
「リザードンをはじめ、チャンピオンチームの力でムゲンダイナを追いつめた」
「……本当ですか?」
「ああ、間違いない! あとは暴走を止めるためボールで捕獲する……ただそれだけだ! 見てろよ、チャンピオンタイム!」
アスベルの怪訝な問いにたいしても、堂々と答えて見せたダンデは、目の前のムゲンダイナめがけてモンスターボールを投げた。 ボールが命中し、ムゲンダイナはボールの中に吸い込まれ、そのままボールは閉じて地面に落ちた。
「お、やった!」
目の前の光景に対しホップは嬉しそうな声を上げたが、アスベルは一切表情を変えないまま、首を横に振った。
「ダメだ」
「えっ?」
「このままではヤツを封印できない」
アスベルがそう言った直後、ボールはミシミシと音を立てヒビをいれていく。 やがてボールは粉砕され、中からムゲンダイナが飛び出してきた。
「なにっ!?」
「アニキが……失敗、した……!」
「……くっ!」
見誤ったのか、と思ったダンデはもう一度捕獲を試みようと、今度はハイパーボールを構えた。 そこに、アスベルが彼を制止するために声を上げる。
「ダンデさん、格好を付けている場合ではありません!! さがってください!」
「だが」
「チャンピオンだの無敵だの、今そんなものはどうでもいい! 今のあなたでは、これを制御できない!」
常にダンデが掲げていたものをそうバッサリと切り捨てて、彼にたいし不可能を突きつけるアスベル。 直後、ボールから飛び出したムゲンダイナが、咆哮をあげた。 それにたいし危機感を覚えたダンデは、リザードンと視線をあわせる。
「ッ」
ダンデの目で彼の指示を受け取ったリザードンは、アスベルとホップをその両腕に抱き抱え、相手に背中を向ける。 直後、激しい爆風が起こり周囲のものを吹き飛ばした。
「がっ………は………」
「……!」
アスベルとホップは、リザードンが庇ってくれたおかげで助かった。 だが、ダンデは、ムゲンダイナの一撃をまともに受け、吹っ飛ばされ、壁にたたきつけられた。 瞬間、彼の体からとんでもない音がして、吐血した。
「ダンデさんっ!!」
「アニキィッ!!」
漆黒の空の元、2人の悲痛な声が響きわたる。
次回はムゲンダイナとの戦いをお届けします!
ストーリーでも最も熱い展開ですよね!