ポケモンSWSH 黎明の瞳   作:彩波風衣

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事件解決直後のお話。
ゲームで言えば、3日間の空白を埋める話になりますね。


44~休息の静けさに包まれて~

 

 ムゲンダイナが静まり、伝説のポケモン達が帰っていったあと、倒れたアスベル達は、マリオンに抱えられ病院へ送り届けられた。 ナックルスタジアムをでたマリオンは、キバナをはじめとするジムリーダー達に発見され、アスベル達を病院へ搬送する手伝いをしてもらったのだった。

 

「マリオン、あんたは大丈夫?」

「マリィ……」

 

 そして、病院のロビーで、マリオンは3人の治療が終わるのを待っていた。 そんな彼女に、マリィが声をかけてくる。

 

「サイトウさん、あんたのこと心配してたよ。 マリオンのことだから、ローズ委員長をぶっとばしに行ったかもしれない……って」

「……あはは……さすがはボクのいとこ。 お見通しなんだな」

 

 マリィと他愛のない話をするマリオン。 そんなとき、病院の外がなにやら騒がしいことになっていることに気づき、目線をそちらに向ける。

 

「おやめください、ただいま、取材は一切禁止です!」

「チャンピオンが重傷というのは事実なんですか!? あの夜になにがあったんですか!? ブラックナイトについて、教えてください!」

「お引き取りください!」

「ほかのジムリーダーやセミファイナリストも、この病院にいるんですか!? お話を、お声を聞かせてください!」

「病院は騒音は厳禁となっています、入らないでください」

 

 騒ぎの正体は、昨晩の騒ぎで話題や荒稼ぎをねらうマスゴミ達のようだ。 彼らはリーグスタッフや警察に足止めを食らっている状態であり、しまいにはただ病院に出入りしている人やたまたま近くにいた医者や看護師にも取材を要求する始末。 そんなマスゴミに対し、マリィは舌打ちをする。

 

「こんなときに……マスゴミうざったい……!」

「……」

「マリオン?」

 

 そんな彼らをみたマリオンは、立ち上がってマスゴミ達の前にでる。 彼女がセミファイナリストのマリオン選手だと気づいたマスゴミは、片っ端からカメラのシャッターを切り、マイクを突きつけてくる。

 

「マリオン選手、チャンピオンの容態についてなにかご存じですか!?」

「目の前で起きたこの事件について、どう思いましたか!?」

 

 だが、彼女はそんな陳腐なものにたいし答えない。 なぜならば、答える気など生まれたときからない上に、その必要もないからだ。 彼女は、ボールを構えるとそこから一匹のポケモンを出す。

 

「チェリっち……はなびらのまい!!」

 

 ボールから出てきたチェリムは、はなびらのまいを放ちマスゴミを吹っ飛ばした。 あくまで軽く吹き飛ばすだけに威力をおさえてはいたので、けが人も死人もいなかったが、彼女のとった行動にその場にいた全員が唖然とする。

 

「ま……マリオン……!?」

「……あんたら、今自分達がなにをやってんのかわかってんの!!?」

 

 マリオンの声は、彼らに対する怒りで震えている。

 

「あの夜に起きたこととか避難してるときの心情とかあの事件になにを思うかとか決勝戦はどうなるかとかなにを聞いてるの!? そのカメラで、なにを撮影していたの!?」

 

 地面を強く蹴り、マリオンはその瞳を大きく開かせてマスゴミに対し、盛大に怒鳴りつける。

 

「今取材とかカメラとか、そんなものはどーでもいいでしょ! アスベルとホップとダンデさんが、ちゃんと無事でいることだけを祈っていてよ!!! 今一番大事なのは、ムゲンダイナと直接戦った彼らの身の安全でしょ……!」

「……ッ……」

「あんた、大人なんだろ! ボクよりずっと長く生きてるんだろ!! 理解力のなさでその人生を無駄にしてんじゃねーよクソどもがっ!!」

 

 マリオンの怒声にたいし、そこにいた者達は一斉に黙り込む。

 

「マリオンッ」

 

 マリィはすぐにマリオンにかけより、彼女の手を握りつつもマスゴミを睨みつけた。

 

「あんたらほんとに、しぇからしか! マスコミはクソだという言葉をよう聞くけど……あのウワサはガチやったってことだね! 空気よみなよクソども!!」

 

 マリィも続けてマスコミに罵声を浴びせると、病院で騒ぎを聞いて駆けつけてきたファン達も怒りを露わにしていった。

 

「そうだそうだ!」

「けが人が出たことをチャンピオンが大ケガしたことをメシのタネにするんじゃねーよ!!」

「ナックルシティが大変なことになったのに、みんな不安になりながら必死で、ジムリーダーの人々の指示の元で避難してたのに! キバナさんがダイマックスして暴れてたポケモンを押さえてくれてたから被害者がでなかったのに!!」

「ロクに助けもしないでマイクやカメラを突きつけてこないでよ!」

「ようやく一難さって安心したいのに変に騒ぎ立てないで!」

「かえれ、マスコミはとっととかえれーーっ!!」

 

 そう多くの人が声を上げて、一斉にマスコミを非難していく。 その気迫に負けたマスコミは、全員さっさと立ち去っていってしまった。

 

「……みんな……」

「マリィ……大丈夫だよね、みんな、無事に目を覚ますよね……?」

「もちろんばい……みんなの強さ、幼なじみのアンタがしっとるでしょ?」

「うんっ」

 

 マリオンは涙ぐみながら、マリィの言葉に対し頷いた。

 

「アスベル、言ってたもん……信じてくれれば、力になるんだって……だから、今もアスベル達が起きあがるって信じて、待ってる」

 

 

 

 真っ白で清潔な病室、そこに置かれているベッドの上でアスベルは目を覚ました。

 

「う……ん……?」

「あ、気がついた?」

 

 アスベルが目を覚ましたことに気付いたマリオンは、顔をぱぁと明るくさせ、アスベルに笑いかけた。 アスベルは、目の前の少女が本当にマリオンなのかを確認するため問いかける。

 

「マリ、オン……か……?」

「そーでーすっ」

「……オレは……たしか……ムゲンダイナを封じるために戦って……」

「そうだね、ボクが駆けつけたときはビックリしたよ。 みんな倒れてるし、アスベルにいたっては、右手が血に染まっていたよ?」

「……それは……ムゲンダイナを封じるには、オレの魂が宿ったオレ自身の血が必要だったからだ」

「ちょっとなにいってんのかわかんない」

 

 アスベルの言葉に対し、マリオンは苦笑しつつそう感想をもらした。 アスベルとしては本当のことを言っているだけなのだが。 そんなとき、アスベルは自分とともに戦っていた少年と男性のことを思いだし、声を上げる。

 

「そうだ! ホップは、ダンデさんは、みんなは!?」

「おれはここだぞ!」

 

 そんなアスベルに対し、元気のいい返事が聞こえてきた。 そちらをみると、少しケガはしているもののいつものように明るいホップの姿がそこにはあった。

 

「ホップ」

「おれも少しはやめに目が覚めたぞ!」

「そうなのか……すまない、オレの目覚めが遅かったんだな」

「気にしなくていいぞ、お前が一番大変だったんだからな!」

 

 ホップの言葉に対しアスベルも安堵したそのとき、アスベルが目を覚ましたときのために飲み水を取りに行っていたマリィが帰ってきた。 マリィは目を覚ましたアスベルに対しよかった、とほほえみつつ話をした。

 

「幸い、あんた達は精神的に疲労していただけだったばい。 けがも大したことないから、あんた達の意識が戻るのをまつだけの状態だったんだよ」

「そうだったのか……じゃああの場にいた者は、皆無事ということでいいんだな?」

「うん。 アスベル達のポケモンも今、ポケモンセンターで回復し終えて、あんた達の迎えを待っているところばい」

 

 ポケモン達も大丈夫だと聞いて、アスベルはすぐに迎えに行かないとなと笑う。 それにたいしてはホップも笑っていたが、直後にふっと顔を暗くさせる。

 

「ただ、アニキが……」

「だ、ダンデさんが?」

「おれ達よりもヒドくて……意識不明の重体だって」

 

 それをきき、アスベルは顔をさぁっと青ざめさせた。 ムゲンダイナの力にダンデが敗北をしたのだと思いこみ、彼の安否が心配になる。 いてもたってもいられず、アスベルはベッドから勢いよく起きあがり、走り去っていってしまった。

 

「まぁさっき意識戻ったみたいだけど………ってあれ!?」

「行っちゃったよ」

 

 

 アスベルは、ダンデの病室の扉を開けた。

 

「ダンデさんっ」

「!?」

 

 病室にはいってきたアスベルに対し、ダンデは驚く。 ダンデは今、全身包帯だらけではあるが、意識はハッキリしているようだ。 ダンデはすぐに、病室にはいってきたのがアスベルであることに気付き、笑いかける。

 

「ああ、アスベルか」

「ダ、ンデさん」

「話は全部、ソニアから聞いたぜ。 お前とホップが、伝説のポケモンと一緒に戦って……そしてムゲンダイナを封じ込めたんだな」

 

 意識が戻り、アスベル達の安否や自分が倒れた後のことを心配していたダンデに、一部始終をみていたソニアがすべてを語った。 まだ少しの謎は残されたままではあるが、伝説の力には伝説の力で対抗せねばならなかったという新事実や、それが可能である人物のことはハッキリとわかった。

 

「ムゲンダイナを封じることが出来るのは、最強のトレーナーでもなくチャンピオンでもなく、ましてや、ガラルの発展を願うものでもない。 お前だったんだな……」

「………」

 

 自分だったら、自分だけがムゲンダイナを制御できるし、ガラルの平和を守れる。 なぜなら自分は無敵のチャンピオンだから。 だが、それはただの自惚れであり自己中心的なものでしかなかったのかもしれない。 情報不足やすれ違った思考など、今回の負傷については多くの説が浮かび上がる。 今回の事件に対し、正直まったく整理が追いつかないダンデだったが、そこにアスベルが告げてくる。

 

「この結果や真実には、なにもいわないでください」

「アスベル?

「……今は、皆が無事だったことだけを、喜ばせてください……」

「そうか……それも、そうだな」

 

 今回の事件の立役者にそう言われ、今重要なことを思い出したダンデはそう返した。 アスベルも、ダンデ達が無事に生きてここにいることをかみしめたいのを感じたのもあるだろう。 ダンデが自分の言葉を受け入れたことに対しアスベルは目を細めた。

 

「ちょいと、じゃまするぜ」

 

 そんなときだった。 ダンデの病室の扉が開いてそこからキバナが姿を見せ、病室に入ってきた。

 

「キバナさん」

「アスベル、意識戻ったのか……よかったぜ………」

「キバナさん、その顔は」

 

 アスベルの無事を喜びつつ、キバナは自分の頬につけられた大きめのガーゼに気づき、かすり傷だと笑って見せた。 そして、キバナはアスベルにある話をしてくる。

 

「早速でわりぃが…………アスベル、少しオレとこいつを2人きりにさせてくれねぇか」

「えっ?」

「なーに。 用事はさっさと終わるから、少しの時間だけだ」

 

 キバナがダンデと2人きりになって、なにか話があるのだろうか。 アスベルは疑問を抱きつつもキバナの言うとおりにする。 失礼します、とだけ言い残して病室から去っていくアスベルを笑顔で見送るキバナ。 そしてアスベルの姿が見えなくなった後、キバナの表情は打って変わって冷徹なものに変わった。

 

「………………ダンデ…………」

「ん?」

「はぁくいしばれ」

「え」

 

 キバナがそういった直後、ダンデの頭頂部に彼の拳が降ってきた。 ダンデはその瞬間、自分はキバナに拳骨を落とされたのだと気づく。 痛そうに頭を抱えるダンデに対し、キバナは怒鳴りつけてくる。

 

「このバカ野郎!! 一人で乗り込むとかチャンピオンの責任だとか言って一人だけで戦って! その結果がこのザマだぁ!? てめぇはいつ、そこまでやって許される男になりさがったんだぁぁ!!?」

 

 怒鳴りつけてくるキバナに対し、ダンデは間の抜けたような顔になる。 そんなダンデに対しキバナは立て続けに怒りをぶつけてきた。

 

「こんな遺書みたいなもんよこしやがって、クソヤローがっ!」

 

 そういってキバナがダンデに突きつけてきたのは、スマホの画面。 メールとして彼の元に届いたダンデの言葉に、キバナは怒りを覚えていたのだ。 そして、この事態が終結したらそれを一気に発散すると、心に決めていて、今それを実行しているところである。

 

「俺の身になにかあったら、チャンピオンはお前が引き継いでくれ……だぁ? そんな内容納得できるかっ!! ふざけたことをぬかしてんじゃねぇ!!」

「き、キバナ……それは……」

「言い訳すんな! 聞くつもりもねぇし言わせねぇよ!! この、バカヤローが!!」

 

 キバナとしては、望まないチャンピオンの座だった。 ただ、ハッキリと言えるのは、そのとき戦う相手がチャンピオンの地位に立つものなら誰でもいいわけではなく、ダンデでないと意味がないということだろう。

 

「オレが一勝もぎ取るまえに、死体になってオレの前に現れてみろ………その死体、オレが粉砕してやる」

 

 このまま怒声を浴びせ続ければ、看護師に怒られる。 そう思ったキバナは、ダンデを睨みつけながらそう言い残し、病室を立ち去っていった。

 

「…………これは……絶対に死ねないな…………」

 

 一人病室に残されたダンデは、苦笑しつつそうつぶやいたそうな。

 

 

「キバナさん」

「お、アスベル!? それに、ジムリーダー一同」

 

 ダンデの病室をでたキバナを、アスベルとジムリーダー達が迎えた。 そして場所を移動し、キバナの怒声が廊下にまで響きわたったんだと伝えると、キバナは苦笑しつつ語り始めた。

 

「……あいつのことは本気で怒鳴ったけどよ……」

「ん?」

「昨晩の事件でオレは……自分が無力だって、感じたから……ちっと、八つ当たりをまぜちまったぜ」

 

 キバナの言葉に対し、最初にフォローを入れたのはヤローだった。

 

「それは……こういってしまうのは失礼かもしれませんが、仕方のないことだと思います。 あんなことが起こるなんて誰も思わなかったから……その中心が、キバナさんの守るナックルシティのスタジアムだなんて、誰も予想が……」

「ちげぇよ」

 

 キバナが自分の無力さを感じているのは、ローズ委員長の異変や地下での活動に全く気付いていなかったことではなかった。 ダンデが重傷を負い意識がなかったことを知ったとき、彼は自分の無力さを思い知ったのだから。 自分もこの異常と戦いはしたが、そこで彼は自分にとって致命的なミスを犯していたと気付いていた。

 

「結局、オレはあいつを……チャンピオンだから大丈夫と信じたわけじゃねぇ。 あいつの強さを知ってたわけでも、役割を分担していたわけじゃねぇ。 …………ただ………ただ………」

 

 ぐ、とキバナはヘアバンドを握り、歯ぎしりをたてつつその致命的なミスの内容を口に出した。

 

「すべてを………あの重い役目を………あいつに全部背負わせて押しつけてただけだ………なにもかもを。 あいつがチャンピオンの地位に立っていることを良いことに……全部あいつがいれば解決するからいいや………ってどっかで思ってしまっていた…………。 んなもん、ただの怠惰でしかねぇのによ」

「……」

「それに気付けなかっただなんて、オレはライバルだとかトップジムリーダーだとか……強い奴を気取ってだけなんだな………ホンット、笑わせるぜ」

 

 自分からダンデの背中を守ろうとしなかったから、彼はあのような重傷を負ったし、自分ですべての責任を背負い果たそうとしてしまった。 それに気付いてやれないのは、ライバルとして人として如何なものだろうか。 それに気付いたとき、キバナは自分がとんでもない失態をやらかしたのだと自覚したのだ。

 

「…………キバナさん………」

「だから、だろうな……お前とホップはチャンピオンじゃないのに、ムゲンダイナを封じることに成功できたんだ」

「……」

 

 キバナの言葉に対し、アスベルは黙った。 彼の言葉は正しいからだ。 そんなとき、自分の病室に残していた友人達のことを思い出し、彼らが待っているからといって立ち去っていった。

 

「……キバナくん……」

「んぁ?」

 

 その後、カブが口を開いた。

 

「君だけが気負いする必要はないと思うよ。 それは、ぼく達も同じことだから。 彼は心身ともに強いから、何があっても問題ないだろうと思っていて……結局、彼とともに戦おうとはしなかったからね」

「方向音痴と時折無神経かつ大雑把な面を見せる以外は、非の打ち所がない……。 だから、ぼく達も、気を抜いてしまっているところがあったんですね。 その結果が、あのケガだと思うと……ぼくも胸が痛みます」

 

 カブとヤローはともにナックルシティへ向かい、ダイマックスして暴走しはじめたポケモン達を相手に戦い、暴走をしずめていった。 だが、それで手一杯かつそこから動こうとはしなかった。 指示の有無など関係なく。

 

「そうよね……ダンデもダンデで、人を頼ろうとしないから……すっかり忘れていたわ。 私も、ソニアほどじゃないけど……彼とのつきあいはそれなりに長いはずなのに……」

「他者の状況もまともにみられないのでは……強くなったところでなんの意味もない……。 私は、それに気付くことができず意見も口にしなかった。 たったそれだけのことでも、己の未熟さを覚えます」

 

 ダンデのことをジムチャレンジ時代から知っているルリナはそう口にし、サイトウも目を伏せつつそうつぶやく。

 

「今回は、反省点が多くありますね……。 早急にまとめ、各々で対処していかなければ……同じことを繰り返すだけです。 それは、あってはなりません。 なので、我々で今後どうしていくべきか……どのようにして、同じことを繰り返させないようにするべきか、決めてく必要があります。

たとえ、チャンピオンがアスベルさんかダンデさんか、どちらになろうとも」

 

 マクワのその言葉に対し、一同は頷いたのだった。

 




マスコミ批判が強い? 当然の結果でしょう。
そんなことはまぁさておき、あとはジムリーダーたちの反省会もかいてみました。
よくよく考えれば、いくら最小とはいえなんでもかんでも押し付けすぎてねーかなってなって。
それに自主的に気付いて反省する彼ら、というのをかきたかったんです。
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