一気に文字数が増えてるなぁ…。
突如あらわれた2人組の野望を阻止するため、アスベルはマリオンやホップ、そして途中で加わってきたネズとともに、ダイマックスしたポケモンを鎮める戦いに身を投じた。
「まさか、あの二人がソニアのところにいるなんて!」
「恐らく、マグノリア博士の研究所に奴らのねらっているものがある……ということですね」
だがその最中、ソニアのいるブラッシータウンの研究所にシーソーコンビが奇襲を仕掛けてきた。 ブラッシータウンにきたホップとネズは、そこでアスベルとマリオンと合流し、4人は研究所に向かう。 だがそこの景色を見た瞬間、4人は呆然とした。
「研究所の周りが……」
丁寧に手入れがされていたはずの植木鉢は倒れ土がこぼれ、鉢が破壊されているものもある。 花壇にも土足で踏み入れられ、窓も割れていた。
「くそ、こんなの強盗じゃねーか!!」
扉はほぼ扉としての機能を失っているのか、ブラブラと風とともに揺れている。 恐らく彼等が鍵をこじ開けたのだろう。 中を少し覗くと、ソニアとシーソーコンビがにらみ合っている様子が見えた。 それにたいしアスベルはマリオンとホップの方を向き、3人は顔を合わせて頷きあうと、行動を起こした。
「いけっ!」
「「おらぁぁぁっ!!」」
「ぐぇ!」
「ゲッ!」
アスベルは力強く扉を開け、マリオンとホップがソッドとシルディの尻に跳び蹴りを食らわせた。 2人をそのまま踏みつけながら、3人は急いでソニアの元に駆けつける。
「ソニアさん!」
「あ、アスベル! みんな!」
「イヌヌワンッ」
ソニアのワンパチは、おそらくソニアの指示によるものだろう、マグノリア博士の前にいて誰も彼女に近寄らないように守っている。
「よくも我々のカレイなオシリを土足で踏みつけましたね!?」
「お前等が自分達のケツを追いかけろって言ったんだろ! だから追いかけてやったんだよ!」
「お前達、女性相手にこのような強硬手段にでるなんて……何様のつもりだ! なにが狙いだ!」
アスベルはシーソーコンビに向かって、彼等の狙いを確かめる。 アスベルのその目つきに対し2人は再び謎の不快感におそわれながらも、あくまでも冷静に振る舞い自分達の目的を打ち明ける。
「私たちの要求は、ねがいぼしですよ。 ここにあるのはわかっているのです」
「ねがいぼし?」
「実はローズ委員長が集めていたねがいぼしは、私たちが回収して納めていたの……もう、ムゲンダイナが目覚めないようにって」
「……」
ムゲンダイナは、アスベルがその血を利用することによって封印された。 だが、ムゲンダイナ復活のために用意された多くのねがいぼしを誰かが管理しなければ、その封印をしたアスベルに影響を与えるかもしれないし、ほかの悪事に利用されかねないのだ。 だから、ダイマックス研究の権威のいる、この研究所に預けられているのだろう。
「そして、もうひとつ!」
「!?」
「いずれ出す予定だという本も、出版を中止させるのです! あのインチキばかりをまとめた本の原稿も、我々が抹消して見せましょう!」
「絶対にイヤ!!」
ソニアはあれをいんちきだと考えていないし、人をだますつもりで研究家として本を出そうなどとは考えてもいない。 そんなとき、マリオンはふとおもったことを口に出した。
「待って!? なんで、まだ発表もしていない本の内容を……あんた達は知ってるんだ!?」
「私が、告発したからですよ。 ソッド様とシルディ様に、情報を横流ししました」
その言葉に対し答えたのは、白衣を着た黒髪の女性。 その言葉を聞いたソニアはショックを受ける。
「え、そんな!」
「彼女は?」
「彼女は、ソニアの雇った助手です……まさか、貴女がその2人の仲間だったとは……」
マグノリア博士はあくまで冷静だ。 助手だった女性は淡々とした態度でシーソーコンビにある報告をした。
「指示通り、ねがいぼしはすべて回収しました。 あれだけの数があれば、我々の計画は成功するでしょう」
「おお、よくやってくれました!」
「ですが、例の原稿はどこにもありませんでした……発見できず、申し訳ありません」
「……まぁ、それはやむを得ないでしょう。 今後出版されたときに焼いてしまえばいいのですから!」
「なんてことを……!」
その言葉に対し、マリオンは彼等の悪に染まった思考回路に対し恐怖を覚える。 彼は自分達さえよければ、ほかのものはどんな目に遭っても構わないと本気で考えているのだ。
「ねがいぼしがあれば、我々の目的は果たされる! 大いなる力を持ってして、我々こそが真の王であることを、証明する!」
「そのためにも、まずは! かの存在を否定する必要がある! というわけで、ここにはもう用はない……オサラバーッ!」
「そのようなことは、させんぞ!」
アスベルは2人を捕まえようと飛びかかろうとしたが、2人はポケモンの技で研究所の窓を破壊してそこから逃げていってしまった。 その衝撃にアスベルは一度足を止めてしまい、気付いたときにはすでに2人の姿はなかった。
「くそっ! 逃げ足だけは無駄に早い!」
「ッ」
「ちょっと、待ってよ!」
同じように立ち去ろうとした助手だった女性を、ソニアは呼び止め、彼女に向かって叫ぶ。
「仕事が出来るっていうから、信用、してたのに……! 最初から、全部だましてたの……!?」
「ソニア博士……ごめんなさいね。 我々が再び王の末裔として君臨するためには、仕方のないことなの」
そう言って、助手だった女性は立ち去っていった。 残されたソニアは、呆然としていたが、ついにアスベル達に背を向けてしまった。 その背中をみたアスベルは複雑な顔になるが、そこにマグノリア博士が声をかけてきた。
「……ソニアのことは、しばらくそっとしてあげてください……」
「マグノリア博士……」
「あの子、怯えながらも必死になって私を守ってくれたんですよ。 自分がどうなろうとも、私には絶対に近づけさせないって……ワンパチにも、自分より私を守るよう指示を出したわ。 それに、命に代えても自分の調べてきたものや目撃したものは覆さないって言って、気丈に振る舞って……そのこともたたっているのでしょう……」
「………」
「大丈夫、ソニアは強い子……すぐに立ち直ります」
そうマグノリア博士が言うので、アスベルはソニアの身を案じつつも彼女をそっとしておくことを決め、そしてあの2人に対する怒りをさらに燃えたぎらせた。 ポケモンを苦しめ、伝承を否定し、人の心に傷を付けることを厭わない。 そんな彼らにたいし、アスベルは憎悪をむき出しにしてつぶやく。
「他の者を己のために利用しておいて人を裏切って……なにが王族だ、なにがセレブだ……! 戯れ言をほざくなよ、けがらわしい下等風情が……!」
「アスベル、憎しみは相手をシメるときだけだすものですよ。 周囲にあたりちらさないように」
「わかっています」
アスベルのつぶやきをきいたネズはそう静かに、アスベルにくぎをさす。 それにたいしアスベルも答えつつ、4人は研究所を後にした。 ソニアのことはそっとしておいて、あとは自分達の力で立ち向かおうと決めたのだ。 こちらには気配を探れるアスベルがいるから、可能だと思ったのだろう。
「ちょっと! ちょっと待ってよ!」
だが、再び旅立とうとしていたアスベル達を、ソニアが追いかけてきた。 その気持ちの切り替えの早さにホップは驚く。
「え、もう大丈夫なのか!?」
「それ、帽子の隙間からちらちらと包帯を見せているあんたが言うの?」
「うぐっ……」
痛いところをつかれたホップは眉間にしわをよせる。 自分も今頭にけがを負っておりまだ完治していないのだが、それでもこの事態を解決させたい一心で戦っているのだ。 ソニアも、今の彼と同じ気持ちなのだろう。 彼等に向かって2人に対する怒りをはいた。
「こんなところで立ち止まるわけないでしょう! あいつら、あたしの勉強成果を……見解をバカにした上に……研究所をメッチャクチャにしたんだから! こうなったら徹底的に追いかけて追いつめて、シメあげて!! 身ぐるみはいででも研究所の修復費用を出させてやるんだから!」
そう強気に啖呵を切るソニアをみて、アスベル達は彼女の意志の強さを感じた。
「ソニア……」
「ソニアさん……」
「あたしはこれからも、あなた達をサポートして、ガラルを守るから。 あなた達も、あたしを信じて」
「もち! いつだって信じてるよ!」
そうマリオンは親指を立てながら白い歯を見せて笑い、アスベルとホップも微笑む。 そんな3人をみたソニアは笑顔になり、自分のタブレットを取り出して彼等にも見せつつ、探知の結果を説明する。
「早速ガラル粒子の数値が異常な場所を探し出したよ! また、同じように各地のスタジアムで起きているみたい」
「やはりか……!」
「またあいつらのせいだな!」
「サイトウちゃんが心配だ!」
「マリィが心配です!」
「あ、マリオンの反応は正しいけどネズさんは間違ってるから。 スパイクタウンは大丈夫だよ」
「パワースポットないじゃん、あそこ」
「そ、そうでしたね」
ネズとソニアのやりとりにたいし、3人はデジャビュだと心の中で思う。 とりあえず、ソニアが機械で探知した結果異常が起きているスタジアムは、ラテラルタウン、アラベスクタウン、キルクスタウンだというのだ。
「……オレ達、絶対にあの二人を許すわけにはいかないな。 絶対に牢獄にブチこむぞ」
「ああ」
「うん」
アスベルの過激な発言に対しては、もう事態が事態だから誰もツッコんだりはしない。 ここは3手に別れて一気に解決した方がいいだろうという判断から、アスベルとホップとマリオンはそれぞれどこへいくかを決める。
「じゃ、おれはキルクスタウンにいってくるぞ!」
「ボクはラテラルタウンだ!」
「オレはアラベスクタウンにいくよ」
「……目的地は決まったか。 じゃ、行きますよ」
「って、またおれとくんの!?」
3人がそれぞれどこに向かうかを決めたのを確認したネズは、ホップを連れて移動用に持っていたバルジーナとともにとび去っていった。 その際、ホップがツッコミを入れたのだがそれは右から左に流される。
「あたしも、あいつらが次になにをするのか先手をとって探ってみる! なにかわかったら教えるね!」
「わかりました、共に戦いましょう!」
「うん!」
そう声を掛け合い、アスベルはアーマーガアに乗っていき、マリオンはそらとぶタクシーで飛んでいった。 その姿を見たソニアはまた、目頭があつくなったが、目を強引にこすって溢れ出しそうなものを封じ込める。
「……泣くのは、全部終わってからだ!」
そう、ソニアは自分に言い聞かせた。
ネズとともにキルクスタウンにきたホップは、迷わずキルクススタジアムに直行した。 道中である人物に会い、そこのジムリーダーを助けるよう頼まれながら。
「マクワさん!」
「ホップくんに、ネズさん!? どういう組み合わせですか!?」
「あれ、ここでもデジャビュ?」
スタジアムの中にはジムリーダー・マクワの姿があり、策を練っていたと言うところだろう。 ネズはさっさと話を進めた。
「事態は把握しています、ここで今ダイマックスポケモンが暴れてやがりますね?」
「ええ、それも3体も暴れています」
「3体も!?」
「恐らく、ねがいぼしが大量に手に入ったことで、一気に多くのポケモンをダイマックスさせられるようになったのでしょう」
そう今の事態を知ったホップは、悔しげに顔をゆがめつつもふと道中であったある人物の話をし始めた。 途中であったあの人物を、ホップもネズも知っているからだ。
「そうだマクワさん、さっき……」
「……母にお会いしたんですね?」
「そうですよ、二次災害を防ぐため、スタッフや観客を避難させて守っていました。 んで、息子を助けてやってくれと言われちまったんですよ」
「そうですか。 今回ばかりはことがこと……人手は多く必要ですからね、協力を要請しました」
マクワはそう口にすると、彼等に告げる。
「では、勝負に行きましょう!」
「そうですね」
「ああ!」
そう声をかけられ、マクワとネズとホップはスタジアムのフィールドに入る。 それぞれ、ダイマックスポケモンを一匹ずつ相手にする体制に入りながら。
「インテレオン!」
「ズルズキン!」
「ガメノデス!」
3人はそれぞれポケモンを出し、ダイマックスしたいわタイプのポケモンを相手に戦う。 ジムリーダー達はそれぞれのポケモンにうまく指示を出し、的確に相手のポケモンにダメージを与え弱らせていった。
「よし、おれも負けられないぞ!」
今ホップが相手にしているダイマックスポケモンは、ギガイアスだ。 野生で見かけるのはレアケースなポケモンは、ダイマックスさせられた影響で攻撃的になっており、ホップとインテレオンに容赦なく襲いかかる。 ホップは負けじとインテレオンに指示を出して、有利に戦っていたが、急激に頭痛とめまいに襲われた。
「うぐっ……!」
「ホップ!?」
「大丈夫ですか、いったいなにが……!」
そのとき帽子がおちたらしい。 頭に巻いてある包帯がマクワとネズにさらされた。
「実は、犯人に思い切り頭をやられて……それでちょっとな」
「え、大丈夫なんですか!」
急いで休ませた方がいいのでは、とマクワが告げようとしたが、ホップは手を彼の前につきだして首を横に振った。 彼のその目は、ダイマックスしたギガイアスに向けられている。
「負けられねぇんだよ……あんなヤツを好きにさせるわけにはいかねぇんだよ! このままやられっぱなしでいられないんだ! 目の前で、そしてこれからも……奴らのせいで苦しむポケモンが増えるのを、黙ってみていることは……おれ自身がゆるせねぇんだよ!!」
「……!」
「だから……この勝負にもかって、ポケモンを助けて! 先へ進むっ!!」
そういってホップは、インテレオンと目を合わせて頷くと、インテレオンは自分の中の水の力を一点に集中させた。 そして、それがあふれ出しそうになったとき、ホップはインテレオンに技の指示を出す。
「インテレオン、ハイドロカノンッ!」
その大技はギガイアスにヒットし、ギガイアスは戦闘不能になった。 そうしてキルクスタウンに出現したダイマックスポケモンは沈静化し、3匹とも元の大きさに戻った後で駆けつけたメロンに託され、3匹ともポケモンセンターに連れて行かれた。 これでもうポケモン達は大丈夫だろうと思われたとき、マクワはホップに笑いかけながら礼の言葉を告げる。
「ホップくん、ありがとう。 きみの力のおかげで事態は解決しました。 あれからとても強くなったんですね。 尊敬に値しますよ」
「へっ!!?」
「そのリアクション、どうも褒められなれていないようですね」
マクワの賞賛の言葉にホップは顔を赤くしてうろたえ、それにたいしネズはからかうようにそう言った。 そのネズの言葉に対しホップはうるさいよ、と照れながら返す。
「しかし、この調子で行けばあのガラル王族を語る奴らに、一泡吹かせられるかもしれませんね」
「おう!」
「ガラル王族?」
「そう、この騒ぎを起こしているのは、胡散臭いけどガラル王族の末裔なんだよ!」
ホップからこの事件の犯人がガラル王族の血族であることを聞いたマクワは、嘆かわしいと呟きつつある疑問を口にする。
「にしても、王族と言うことは……その2人には紋章があるんでしょうか?」
「紋章?」
「ガラルの王族は、その身に正しい後継者の証である紋章が宿っていると……このキルクスタウンに残った伝承の記録には残っている。 そして、その紋章を持つ者こそ王の座につく資格を持つ。 ボクも、王族の話に関する勉強で、そう聞いたことがあるのです」
そんなマクワの話を聞いたホップは、ぽつりとある箇所を小さく、復唱したのだった。
「紋章、かぁ……」
「サイトウちゃん!!」
「マリオン!」
ラテラルタウンに到着したマリオンも、スタジアムに直行しそこにいたいとこの名前を口にする。 マリオンが駆けつけたことが意外だったサイトウは驚き、マリオンはサイトウに現状を確認する。
「ここで、もしかしてダイマックスポケモンが暴れちゃってたりする!?」
「ええ。 観客やスタッフは避難させましたが、いまもダイマックスしたポケモンはこのスタジアムの中にいます」
「ボク達は今、なにが起きてるのか知ってる。 今別の場所で、アスベルやホップ…それとネズさんが戦ってるよ! だから、ボクもここに加勢にきたんだよ!」
「そうだったんですか……」
マリオンの事情をしったサイトウは心強いといいつつ、今回は多くの人手を必要としていることを伝えた。
「実は数が多くて……もう一人協力を要請していたんですよ」
「協力要請?」
「ぼ、ぼくです!」
その声と共に現れたのは、黒髪に仮面を付けた、サニゴーンを連れた男の子だった。 マリオンがだれ、と問いかけると、男の子はたどたどしくながらも自己紹介をする。
「オニオン、といいます……!」
「オニオンくん?」
「近所にすんでいる子です……これでもれっきとした、ジムリーダーの資格を持った優秀なトレーナーなんですよ」
「そうだったんだ! じゃ、一緒にがんばろーね!」
「は、はい!」
「では……いざ、参りましょう!」
サイトウが筆頭となり、3人はスタジアムに向かった。 ここでもダイマックスポケモンが3体いて、大暴れをしているようであり、それぞれ一匹ずつ相手にしていく。
「お願い、コロっち!」
「いってください、オトスパス!」
「いって、サニゴーン!」
マリオンが相手をすることになったのは、ダイマックスローブシンだった。 サイトウはたこがため相手を追いつめつつ攻めていき、オニオンが相手の攻撃を無効化しつつ確実に攻撃をしていく。 マリオンも相性が有利な技で攻めていったが、相手のダイマックス技が強くて押されそうになる。
「うわぁぁ!」
「マリオンッ!!」
「こないで! こいつの相手をしているのは……ボクなのだから! 手強いけど、コロっちだって……ボクだって、強いんだもん!!」
マリオンの脳裏をよぎるのは、いざというとき全く役に立てなかった弱い自分の姿。 その姿はマリオンの闘争心に火をつけさせる。 ココロモリをボールに戻して巨大化させ、ココロモリをダイマックスさせる。
「ボクはこんどこそ、こんどこそ! アスベルやみんなの力になりたいんだ! そのために強くなるって決めたんだ! ここで止まるもんかぁぁぁ!! コロっち! ダイサイコォッ!!」
そう叫び、マリオンはココロモリにダイサイコをめいじて、ローブシンを戦闘不能にした。 それによりダイマックスポケモン達はすべて沈静化したことになる。
「すごい……!」
彼女のその気迫には、サイトウも驚いていた。 そうしてダイマックスポケモンは元に戻り騒ぎは沈静化し、ポケモン達はスタジアムで様子を見つつ回復次第やせいに返されることになった。 そのとき、オニオンはある場所のことを口にする。
「あの、例の遺跡……なんですけど。 さっき変な人がいっぱいいて……邪悪な気配を感じるってぼくのポケモンが言ってたので、手を出させないようにポケモン達に……ま、守ってもらってたんです!」
「そんなことがあったのですか」
「は、はい! ぼ、ぼく……心配だからちょっともう一回、み、みてきます……!」
そうオニオンは二人に伝え、遺跡のほうへ向かっていった。 遺跡、というワードをきいたマリオンは記憶を巡る。
「あの遺跡……」
「どうしたんですか?」
「おもえば……あのときのアスベル……いつもと違っていた……」
マリオンはビートから自分を助けたときのアスベルの姿を思い出し、そう呟いた。
一方、アラベスクタウンのスタジアムを訪れたアスベルは、周囲が落ち着いていることに違和感を抱いた。
「ポプラさん!」
「おやおや、あんたは……」
真っ先に視界にはいった老婆…ポプラにアスベルは事情を確かめるべく声をかける。 ポプラは非常に落ち着いてることからして、自分が抱いている違和感の正体にアスベルは気付く。
「ここはなにもない……もとい、なにかあったにも関わらず事態は解決したということですね」
「察しがいいねぇ。 ここも先程までは大騒ぎだったさ。 でも、平和は戻ってきたよ。 ダイマックスポケモンも今はここで保護されている」
「瞬時に収まったんですね」
「当然です、僕がすべて抑えたのですから」
そう言いながら姿を現したのは、フェアリーのユニフォームに身を包んだビートだった。 自分が駆けつけるより早く、彼が事態を解決させダイマックス騒動を沈静化させたのだと気付いたアスベルは、率直に思ったことをそのまま言葉に出した。
「……そうだったのか。 ちゃんと成長しているんだな……キミも……大人になっていってるんだな」
「まるで僕が今まで子供だったかのようじゃないか、その言い方」
「そのままの意味だが」
「……………」
彼と話していると疲れる、とビートは内心で思った。 彼は真顔でまじめに正論を他人に容赦なくたたきつける上、痛いところも的確につくことばかり口にする。 まるで自分のすべてを見透かされていて、裁きをうけているかのような錯覚に陥る。 おまけにポケモンバトルも強く、本人の力も実はかなり強いときたものだ。 彼のすべてが、ビートにとっては鼻につくものがあったから、ビートはアスベルを苦手としていたのだ。
「!」
ビートが複雑な胸中になっているところで、アスベルは何かに気付き顔を上げる。
「また、また同じことが起こる! ナックルシティで……」
「え?」
「オレには、わかるんだ……ナックルシティ。 そこでもっとも、大きな戦いが起こるだろう……また、ナックルスタジアムが犠牲になりそうだ……くい止めないといけない……」
「犠牲という言葉が正しいのかわかりませんね」
アスベルの言葉に対しビートはツッコみつつ、彼の異変に戸惑っているようだった。 そこで、ポプラがアスベルに話しかけてきた。
「あんた、そのままナックルシティにいくつもりかい?」
「はい」
「……何事も、クイズと同じさ。 どのように考えれば正解を出せるか、その答えを堂々と正しいといえるのか……その自信がなければ、自分の答えをみんなに示せない。 わすれるんじゃないいよ」
「はい」
ポプラの話に対しアスベルは動じず、ただ冷静にそう答えた。 そして、ビートの方を向く。
「ビートはこの町に残れ、ここでは君の強さが必要とされているんだ」
「わかりきったことを言うけどね、あなたはどうするんだ?」
「あの町から強い力を感じたんだ、オレはその力を消さねばならない……だから、いく」
そういってアスベルは再びアーマーガアを出して、ナックルシティに向かって飛び立とうとしていた。 そんな彼を、ビートはとっさに呼び止める。
「待ってください!」
「なんだ」
「あなたは……あなたは、本当に何者なんだ!?」
「…………」
「思い返してみれば、あなたは普通の人間じゃない! 僕を止めるときも高圧的で別人のようだった!」
ビートは、様々な人からの話やあのとき撮影されていたという映像をみたとき、そして自分を止めるために戦ったときのことを思い出しながら、アスベルがふつうでないことを、疑問を含めて突きつけてきた。
「ムゲンダイナのときだってそうだ! あなたは剣と盾の在処をはっきりと理解し、呼び方も戦い方も熟知していた! 聞いた話によれば、あなたは説明もないのにムゲンダイナの存在をすでに知っていたそうじゃないか! あの戦っているときの姿も、ムゲンダイナを己の血で封印したという話も……普通の人間ができることではない!」
「……」
「もう一度、聞きます。 アスベル・マクリル……あなたは、何者なんですか?」
それを聞いて、アスベルは一度黙ったが、今答えなければならないと自分でおもい、正直なことを口にした。
「そんなこと、オレが一番知りたい」
「……!」
「なぜオレは傷だらけの状態で森の前にいたのか、なぜオレには他人には聞こえないものが聞こえたり……気配を探ったりできるのか。 オレはどこでなにをしていた存在なのか……オレのことはオレが一番わからないんだ」
自分が何者なのか、そう問われても答えられない。 自分自身のことをなにも知らないのは紛れもなく、自分自身なのだから。 だが、ここで立ち止まるわけには行かないし、自分がそうはしたくないのはわかっている。 だから、今だせる答えをビートに出す。
「だが、オレは今目の前で起きていることから逃げたくない……逃げるわけには行かない。 この使命が果たされたら、きっと……伝説のポケモンも救えるし、オレがなんなのかも、わかるかもな……」
そう語るアスベルの横顔は、あのときとはまた違った意味で、別人のようだった。
次回で伝説のポケモンが降臨するのか!?
そして、アスベルは本当に何者なのか!?
まだ目を離してはいけませんよ!