ポケモンSWSH 黎明の瞳   作:彩波風衣

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今回で戦いに終止符です。



49~英雄の王の魂、覚醒~

 

 次に大きなガラル粒子反応が起こったのは、ナックルシティ。 マリオンとホップとネズは、ソニアからの連絡でそれを知った。 先に気配で察知していたアスベルも、ナックルシティへ向かう。

 

「キバナさん!」

「よう」

 

 駆けつけたナックルスタジアムは全面的に封鎖されており、報道陣や野次馬をリーグスタッフやジムスタッフが必死に押さえ込んでいるところだった。 スタジアムの前にはここを任されているジムリーダー・キバナの姿があり、合流したアスベル達は彼に声をかける。

 

「このナックルスタジアムは今、ブラックナイトの次は、王族の襲撃にあってるぜ」

「災難続きだな」

「全くだぜ……んで、今地下のエネルギープラントに続くエレベーターが急に動かなくなっちまったんで、博士のねーちゃんが動かそうと奮闘しているところだぜ」

「地下のエネルギープラント……恐らく奴らの仕業でしょうね。 そこに奴らの狙いがある……というところでしょうか」

 

 今シーソーコンビは、ムゲンダイナを復活させるために利用された大量のねがいぼしを持っている。 そして、このナックルスタジアムの地下にはねがいぼしを利用したムゲンダイナ復活の実験を繰り返していた、エネルギープラントがある。

 

「奴らのねらっているもの、か……」

「あいつらがほしがりそうなもの……ムゲンダイナの残り香、とか?」

「まさかぁ」

 

 それらの話をつなげていった結果、シーソーコンビの狙いというのもある程度は見えてくる。 だが、それが真実であるとは言い切れない。 真実を確かめるにはまず、ここでも起きているであろう事件を解決させなければならない。 そのためにネズはまず、キバナに状況を確認してきた。

 

「それはそうとキバナ。 今ここでもダイマックスしたポケモンが暴走を引き起こしていますね?」

「その通りだ。 今も暴れている。 今はオレのポケモン達でスタジアムの外にでないように押さえつけているところだぜ」

「やはりか……オレ達は、それを止めにきたんです。 彼らと戦わせてください!」

「おお、お前達がいりゃ百万力だな! いっちょ皆で大暴れしてやろうぜ!」

 

 そう言ってキバナはアスベル達の同行を許し、全員でナックルスタジアムの中に入っていった。 その先には扉の前で機械をいじるソニアの姿もあった。

 

「あ、みんな!」

「ソニアさん!」

「今あたしが解析して、扉を開けてエレベーターを使えるようにしておくから! みんなはダイマックスポケモンを鎮めて!」

「おう!」

「オッケー、まかせて!」

 

 そういって5人がスタジアムのフィールドに足を踏み入れた、そのときだった。

 

「グッ!?」

「アスベル!?」

 

 アスベルの頭に衝撃が走り、その衝撃によりアスベルは苦しそうな声を上げつつひざを突いた。 その光景に見覚えのあるキバナは焦り、彼の顔色をうかがう。

 

「大丈夫か!? お前、まさかまた……!」

「……あのときと同じ? いや、違う……呼んでいる相手は、違う!」

 

 だが、あの時のようにアスベルは意識を失ったりはしなかった。 今の彼にはその頭痛と声の正体がわかっているからだろうか。 すぐにアスベルは立ち上がり、目の色を強気に変えた。

 

「オレがいかねば、この事態はおさまらない! あの贋作どもに、真実を……現実を突きつけ、ガラルを守るためにも……!」

「……一度たりとも気を抜くな。 少しでも気を抜いたらお前、またぶっ倒れるぞ」

「はい!」

 

 横からキバナにそう言われ、アスベルは力強くそう返事をする。 このスタジアムのフィールドでは、多くのドラゴンポケモンがダイマックスさせられ雄叫びをあげながら苦しんでいる。 彼らをなるべく苦しませないように倒し、元の状態に戻さねばならない。

 

「いけ、ジュラルドン!」

「頼む、ドラパルト!」

「お願いね、マホっち!」

「いっけ! ウッウ!」

「バトルオン、ストリンダーッ!」

 

 5人は一斉にポケモンを出し、それぞれダイマックスポケモンに挑んでいった。 やはりドラゴンポケモンは強敵で、ダイマックスという強化をうけている状態の相手を、流石に一人一匹相手にするのは厳しいものがある。

 

「オレの縄張りで、好き放題するんじゃねぇ!!」

 

 そう叫びながらキバナは、自分のジュラルドンをキョダイマックスさせて一気にダイマックスポケモンを蹴散らして見せた。 そこにあったのは、ある意味では執念であろう。

 

「流石はガラルのトップジムリーダーだね、キバナさん」

「お前達はそれを越えただろうが。 ネズもネズで、ダイマックスと正面で戦って互角に渡り合うしよ!」

 

 そうジムチャレンジで3人と戦ったときやファイナルトーナメントでネズと対峙したときのことを思い出しつつ、戦闘不能となり気絶し倒れ、元の大きさに戻ったドラゴンポケモン達をみたあとでアスベル達をみた。

 

「オレと同等、もしくはそれ以上に強いお前達ならできる。 だから、ここまで好き放題してくれたクソッタレどもを、一人たりともにがさすんじゃねぇぞ……!」

「ええ、元よりそのつもりです」

 

 

 そうしてナックルスタジアムのダイマックス騒動も沈静化し、エレベーターを動かそうと奮闘していたソニアのところへむかう。 彼らが無事に駆けつけてきたことにソニアは喜びつつ、エレベーターが動くようになったと朗報を伝えた。

 

「ワンパチが電撃起こしたら動いたわよ!」

「おぉ、ミラクルだぞ!!」

「よし、突撃しよう!」

「うん!」

 

 そう声を掛け合い、4人はエレベーターに乗り込み地下のエネルギープラントへ向かった。 そこにはシーソーコンビの他に、多くの人が屯していた。

 

「ここにいたのか、貴様等!」

「おーやおやおや、こんなところまで追いかけてくるとは」

「おーやおやおや、なんともしつこい奴らですね。 そんなに私達に反逆をしたいのですか」

「ああそうだよ! あんたらみたいな悪党、野ざらしにしてたらガラルが滅ぶからね!」

 

 マリオンがそう叫ぶと、周囲にいた人々が一斉に抗議をするかのように声を上げた。

 

「我らが王を冒涜するな! 汚らわしい庶民、みずぼらしい子供が、王を否定するな!」

「なんだこいつら!?」

「この者達は我らの信仰者……私達が再び王として君臨するための力となってくれる仲間達です!」

「彼らは長年、我らこそが尊き英雄の血族……正しい王であると信じ続け、王位を返上してもなおついてきてくれたのです! そして、私達の声かけにこたえ、ここに集ったのです!」

「なぜここに屯することを選んだのだ!? ここに貴様等にとって利益となる者があるというのか!」

「その通り!」

 

 そういってシルディは、あの朽ちた盾を取り出して彼らにみせた。

 

「盾!」

「私達の目的……ザシアンとザマゼンタが英雄であることを否定する! そのためにねがいぼしの力を2匹に注入し無理矢理ダイマックスさせることで暴走させ、人々に恐怖の印象を与えるのです!」

「なんだって!?」

 

 目的を聞いたアスベル達は驚き、そのとき2人は憎々しげにアスベルをにらみつけた。

 

「もっとも、剣は奪い返され今は盾のみとなってしまったから……ザマゼンタしか呼び起こせないが……ひとつが狂えばもう一つも狂わせられる! 民衆は愚かだからな、大勢の中の一つでも腐った者があれば近くの大勢まで腐っていると思いこみ、徹底的に否定してくれるだろう!!」

「それにより、2匹の英雄説は人々の恐怖により否定される! そうすることで我々は再び、英雄の血族として王族の再建が可能となるのだ!!」

「このナックルスタジアムは、それを実行するための……まさにベスト・ポジションなのです!」

「てめぇ……!」

 

 今まで無理矢理ダイマックスさせられ戦わされたポケモン達、ブラックナイトの傷が癒えぬまま舞台とされるナックルスタジアム。 それらはすべて、2人の邪な野望の足場として利用されてきた。 これを悪行といわないわけがない。 ホップはその怒りに身をふるわせ、立ち去ろうとする2人を追いかけようとしたが、他の信仰者達に邪魔をされてしまう。

 

「じゃまをするな!」

「ソッド様とシルディ様の邪魔はさせない!」

「王族こそ英雄! ポケモンではない! 否定する者は倒す!」

 

 この信仰者達は完全に、あのシーソーコンビを正義だと信じ込んでいる。 そして、その正義のために2人を否定するもの全てを敵として認識し、つぶすつもりだ。

 

「こいつらめっちゃ狂ってるけど、どうするよ?」

「問題ない、全てを相手にする! 共に戦うぞ! そうすれば、必ず勝てる! 奴らを止められる!!」

「そうだな!」

「オーケー、全部ぶっとばしてやろう!」

「騒がしく、かつ攻撃的なトリオですね……キライじゃないどころかその逆ですが!」

 

 容赦なく迎え撃とうとするアスベルとマリオンとホップをみて、ネズも加勢することを決めたときだった。

 

「待てよ! ここころオレ様達の出番だろうが!」

「ガラルメジャークラスジムリーダー、ここに集結!」

「えっ!?」

 

 そこに、今までのジムリーダー達が集結してきたのだ。 まさかの展開に、アスベル達は目を丸くする。

 

「先程、キバナとともに呼び寄せたんですよ。 まにあってよかった」

「いつの間に!!?」

 

 どうやらネズとキバナが、ここにジムリーダーを呼び寄せていたらしい。 マリオンが思わずツッコミをいれると、ジムリーダー達はボールから一匹ずつポケモンを出して、戦う体制に入っている。

 

「彼らの相手はぼく達が引き受けますよ!」

「あいつらの好きにさせるわけには、いかないものね!」

「だからきみ達は先へ進むんだ! 大事なものを取り戻したいのだろう!」

「ガラルを乱す不届き者……見逃すわけには参りません」

「変に事件を起こされたら、ゆっくり老後を過ごすこともできないからね」

「他者を否定するしか能のない者を、人の上に立たせるわけにはいきませんからね」

「お前達はなにひとつ間違ってねぇ……だから、勝つ必要がある! そのためにもオレ達も、お前達の味方になって戦うぜ!」

「迷わずいけよ、いけばいい! シャウトを響かせろっ!」

 

 ジムリーダー達の後押しをその身にうけた3人は、引き続き立ち向かうことを決めてうなずき、彼らにこたえる。

 

「必ず、奴らを止めます!」

 

 そう告げて2人を追いかけに向かった3人。 信仰者達はポケモンを繰り出してその3人を止めようとするがジムリーダー達がそれを阻む。 中にはポケモンを使わずその身だけで3人に攻撃を加えようとした者も板が、それも同じように止められた。 この地下プラントはまさに、戦場と化しているのである。

 

「あ……あんたは!」

 

 そんな3人の前に、ネギガナイトやニダンギル、ギギギアルを連れたソッドが立ちふさがった。

 

「弟のために、ここであなた達を足止めしましょう! 我々の夢は、ここで潰えさせません!」

「あいにくだけど……お前如きに足止めは食らわないぜ!」

「生意気をっ……」

 

 ソッドがポケモン達に指示を出す前に、アスベル達は一斉にボールからポケモンを出し、それぞれ指示を出した。

 

「インテレオン、ねらいうち!」

「ゴリランダー、ドラムアタック!」

「バニっち、かえんボール!」

 

 ねらいうちがニダンギル、ドラムアタックがネギガナイト、かえんボールがギギギアルにそれぞれヒットし、一撃で倒した。

 

「な……ばかな……!」

「やった!」

 

 一瞬で勝負を決められてしまったことにソッドは驚愕し、アスベル達は笑って見せた。 ソッドはショックを受けながらも負け惜しみのように彼らに告げる。

 

「だが……今頃弟が、ザマゼンタを暴走させている頃でしょう! いったところで無駄ですよ!」

「それでも立ち向かう! 絶対に止める! 盾も取り戻してみせる!」

「お前達があの2匹の伝説を否定したいのなら、オレ達はお前達の王族の資格を否定するだけだ」

 

 そうソッドに言い切って、3人は天辺を目指し最後のエレベーターに乗る。

 

 

「ねぇ、今更だけど何でここでザマゼンタを呼ぶ必要があるんだろう?」

「恐らく、オレとホップが一度ここで2匹を呼び出し、ムゲンダイナと戦ったからだろう。 ここにはその余波が残っている……そのエネルギーを利用すれば誰でも、盾や剣を利用して彼らを呼ぶことができてしまうんだ」

「そういうことか……!」

 

 あの2人が本当に王族の血を引いているから、というのもあるが今はそれはどうでもいい。 最上階ついたところでエレベーターを降り、アスベルは頂上にたどりつく最後の扉を開けようとしたが、それもシルディの仕業だろうか、まったく動かない。

 

「アスベル、まかせて! ボクが道を切り開く!」

「ああ、まかせた!」

「おらぁーーーっ!」

 

 そう声を上げてマリオンは、最後の扉を力ずくで容易く開いて見せた。 それをみてアスベルもホップも密かに改めて、彼女の怪力ぶりを思い知る。 だがそれを口に出すことはなく、3人はマリオンのあけた扉から頂上にたどりつく。

 

「追いついたぞ!」

「バカなまねはやめて、降伏しろ!」

「貴様等のすきにはさせない……ッ?!」

 

 そう声を上げた3人の視線の先には、確かに朽ちた盾を持ったシルディの姿があった。 だが、そこにはもう一つ別の存在が居た。 赤い体に青い鬣、鋭い爪を持つ4つ足の大型獣ポケモンが、居た。

 

「ザマゼンタ!」

「フハ……フハハハ……フハハハハハッ! ついにやりましたよ! ザマゼンタにねがいぼしの力を全て、注入してやりましたよ!!」

「なんてことを……!」

 

 シルディは目的を果たしたことで満足しているのか大笑いし、ザマゼンタにはねがいぼしが放つ力のオーラに包まれている。

 

「グゥゥゥゥウ!」

 

 だが、ザマゼンタにダイマックスする気配は感じられない。 苦しそうにもがきうなり声をあげている。 その様子に対し、アスベル達は戸惑う。

 

「なんてことなんだよ……とってもつらそうだよ……」

「おれには、わかる……!」

「ホップ?」

 

 そんなとき、ホップはザマゼンタからなにかを感じ取ったらしい。 今のザマゼンタの姿と容態をホップはそのまま口に出す。

 

「あいつ……耐えてる! あの力に飲まれないように、あの力と必死にたたかってるんだ! あいつはたぶん、ダイマックスできないんだ……だから、ねがいぼしの力が入っても、なにも変化が起きないんだ……」

「そうか! 元々ザシアンとザマゼンタはダイマックスしたポケモンと戦うための力を持っている! だからダイマックスさせる必要がないから、ダイマックスさせることができないんだ!」

「それなのに、ダイマックスさせるための力を無理矢理入れられたら……! このままじゃ、ザマゼンタが危ないよっ!!」

 

 このままではザマゼンタがその力に飲まれ暴走し、多くの人やポケモンを傷つけてしまうだろう。 それだけでなく、ザマゼンタ自身の命が危ない。 それを知ったシルディは高笑いをする。

 

「それならばそれでいい! そのまま汚名を背負いしんでしまえ!! 我らから英雄の名を横取りした罪を死をもって償うとイイ!! ハハハハハッ!!!」

「ざけんなぁぁぁぁ!」

「うぐぁ!!」

 

 そこにホップのパンチが炸裂し、シルディは吹っ飛ばされた。 そのとき、ザマゼンタがほえて彼らに襲いかかってくる。

 

「バイウールー、コットンガードッ!」

 

 それをホップのバイウールーが技を使って防ぎ、戦わざるを得ないと判断したマリオンがチェリムを、アスベルはアーマーガアを出した。 ザマゼンタはバイウールーにさらに攻撃を仕掛けてきたが、バイウールーは防御力を高めて必死に耐える。

 

「チェリっち、にほんばれからのウェザーボール!」

「アーマーガア、ドリルくちばし!」

「バイウールー、たいあたり!」

 

 3方向から攻撃を仕掛けてザマゼンタを止めようとするが、ザマゼンタはそれをはねのけ、逆に相手にダメージを与えていく。 それによりホップの帽子が飛んで、その下にまかれた包帯が露わになる。 だが、その猛攻に耐えながらもホップはザマゼンタに呼びかけ続ける。

 

「ザマゼンタッ! お前が力を追い出せるようにおれ達もお前と戦う! 絶対にお前を解放してみせる! だから、がんばれ! ザマゼンタ!」

「ボクらも全てを尽くして力になる、だからあきらめないで!」

「キミを必ず解放する! そのためにオレ達は自分の命すらかけてみせる! 共に勝つぞ!」

 

 ホップに続いてマリオンとアスベルもザマゼンタに呼びかけ、彼を相手に激しくポケモンバトルを繰り広げていく。

 

 

 3人がザマゼンタを正気に戻すため奮闘していたそのころ、シルディの元にソッドが駆けつけた。

 

「おぉ、弟よついにやりましたか……!」

「そうですとも兄者! ダイマックスこそしなかったものの、この調子で行けば……」

 

 シルディは自分たちの計画が成功したと思い、そのことを兄に報告するが、そこにザマゼンタが弾いたチェリムのエナジーボールが飛んでくる。

 

「ぎゃぁぁああ!?」

「うわぁぁぁぁ!?」

 

 その余波に2人が軽く吹っ飛ばされたことなどつゆ知らず、3人は未だにザマゼンタを止めようと戦っている。 ザマゼンタは時折苦しそうにうなり声をあげては動きを止め、その場にのたうちまわっていた。

 

「グゥゥゥゥルォォォ……グゥッァァ……!」

「ザマゼンタッ……」

「ウルゥード!」

「!」

 

 あとは、なにをすればいいのか、どうしたらいいのか。 3人がそれぞれで必死に策を考えていたとき、どこからか聞き覚えのあるような不思議な鳴き声が聞こえてきた。

 

「ウルォガァッ!」

「!!」

「アスベルッ!」

 

 そんなとき、力に押されたザマゼンタがアスベルに襲いかかろうとしていたが、それを一匹のポケモンが阻止した。 それは、ザマゼンタにそっくりな姿をした、青い体の4つ足の大型獣ポケモン。

 

「ザシアン!」

「………」

 

 それは、ザマゼンタとならぶもう一体の英雄と呼ばれるポケモン、ザシアンだった。 ザシアンとザマゼンタは少しにらみ合い、その場に沈黙が訪れる。 そして、ザマゼンタはゆっくりと歩きだし、2人の前にたつとおおきくほえる。

 

「ウルォーーードッ!」

「ひぇぇぇ!?」

 

 恐らくその声には、2人に対する怒りも込められていたのだろう。 正面から怖い顔と声で吠えられ、ソッドもシルディもおびえてすくみ上がっていた。 そして、2人が恐怖したのをみたザマゼンタは、そこから立ち去っていった。

 

「もう、大丈夫なのかな?」

「……いや、まだザマゼンタは戦っている。 恐らく周囲や他の人に被害がでないように、自分が力を抑えている間にここから立ち去ったんだろう。 あとは、自分だけの力で戦うつもりなんだ」

「そんな……そんなの……」

 

 あのままのザマゼンタを放置していったら、他に傷つくポケモンも人もでないかもしれない。 だが、ザマゼンタ自身はどうなってしまうのだろうか。 戸惑うマリオンの横で、シルディが落とした盾を拾ったホップはある決意をその目に宿していた。

 

「こいつがあれば……もしかしたら……!」

「?」

 

 ホップは盾を手に持ち、アスベルに告げる。

 

「アスベル、おれはザマゼンタを追いかける!」

「ホップ!」

「そんな、一人じゃ無茶だよ! ボクもいく!」

 

 自分も同行すると言ったマリオンに対し、ホップは首を横に振る。

 

「あいつは、おれが止めなきゃいけないんだ……おれが止めるべきなんだと思う! なにより、放っておけないから! おれはいくよ!」

「ホップ!!」

 

 そう言い残し、ホップはザマゼンタを追いかけていった。 マリオンは、ホップのことを心配する。

 

「たどり着けるのかな、ホップ……」

「きっと、ザマゼンタの居場所はあいつだったらわかる。 迷わずいけるから問題ないだろう」

「え、アスベルじゃなくてホップにならわかるの?」

「ああ」

 

 ホップだからたどり着ける、という確信を持っているアスベルはそう答えた。

 

 

 

「アスベル! マリオン! ホップ!」

「みなさん!」

 

 するとそこに、ジムリーダーたちが合流してきた。 それも全員無傷で。 そのことにシーソーコンビは驚く。

 

「なっ……信仰者たちはどうした!?」

「ヤツらなら今、夢の中でしょう。 今はジムリーダー屈指の力自慢であるヤローさんやサイトウさんが取り押さえてます。 じきに警察もきて、皆連行されるでしょう」

「当然、お前達も含めて、です」

「クッ、なんのためにわれわれに着いてきていたのだ……あの者達は……!」

 

 信仰者たちが全員ジムリーダーに敗れたことを知ったソッドはそう呟く。 それをきいたザシアンは、アスベルが持っていた剣を自分の方に引き寄せ、そこから力を得てあの英雄の姿になる。

 

「ザシアン?」

「……グゥッ」

 

 剣を口にくわえたザシアンは、ソッドとシルディの前にでる。 その様子からザシアンがなにをしようとしているのかを察した周囲はどよめく。

 

「まさか、今回の罪で彼らの首をはねようとしているの?」

「斬首の刑、ということ?」

「当然の報いでしょうね」

 

 ソッドとシルディの悪行をしっていたジムリーダー一同とマリオンは、ザシアンの行為に驚きつつも止めようとはしなかった。 彼らは本当に許されないことをしたから、というのもあるだろう。

 

「待ってくれ、ザシアン!」

「アスベル!?」

 

 ザシアンが2人に対し剣を大きく振りかざしたそのとき。 それを阻止したのは、アスベルだった。 周囲はアスベルがその行動にでたことに驚いたものの、アスベルが本来は優しい性格だというのを考えれば納得がいった。 次の瞬間までは。

 

「キミのその気高き姿がこいつらの濁った血で汚れるのはオレも耐えられないんだ! だから、殺しはしないでくれ!! こいつらの返り血でその身を汚さないでくれ!」

「庇っているようで思いっきりボロクソ言ってる!!!」

 

 アスベルの言葉に対し周囲が全く同じせりふでつっこみをいれる。 それを気にすることなく、アスベルはザシアンと向かい合う。

 

「……」

「……」

 

 アスベルに止められたザシアンはおとなしくなり、黙ってアスベルをみつめた。 アスベルも静かにザシアンを見つめ返す。 すると、ザシアンはその瞳と剣を光を放ち、それに応えるようにアスベルの体も光に包まれる。

 

「あ、アスベル」

「この姿、また……!」

 

 光がやんだとき、アスベルの体はムゲンダイナと対峙したときの姿になっていた。 眼帯もとれその下から青みがかった緑色の瞳が現れる。 だが、あのときとは一カ所だけ違うところがあった。

 

「なんだ、これは……?」

 

 アスベルは自分の手のひらに、不思議な紋章が現れていることに気がついた。

 

「そ、それは……紋章!?」

「紋章!?」

「ガラルの王族に現れると言われていた!?」

「そういえば、資料でみたことがある……ガラルの英雄は国を持つとき、その紋章を授かったって……!」

 

 アスベルの右手に現れたその紋章に対し、その紋章が示すものを知っている者達は驚いた。 紋章のことはシーソーコンビも知っているのだが、だからこそだろう、この中で一番、アスベルにそれが現れたことにたいしショックをうけていた。

 

「バカな! なぜ私や弟にもない伝説の紋章を、このような庶民が持っているのだ!?」

 

 ソッドは驚愕し、末裔であるはずの自分達にはあの紋章がないと伝えた。 そんなソッドをスルーしながら、ザシアンはアスベルと向かい合い、彼に告げる。

 

「まことの王よ」

「え?」

「まことの、王?」

「我らとともに、ガラル地方を導く正しき王は、血筋ではなく魂により決められる。 血筋の汚れを感じ離れた魂は、永き時を越え……今、よみがえっているのだ。 ここに、私の目の前に……王はいる」

 

 ザシアンは、アスベルにたいしこう告げた。

 

「汝……名をアスベル・マクリル………。

現代に転生し、蘇った英雄王」

 

 それをきいて、アスベル自身も目を丸くさせて驚いたが、周囲にいた者達も驚く。 長きにわたりガラルで伝えられていた英雄は、歴史から消えたとされる王は、すぐそこにいたのだから。

 

「アスベルが……」

「ガラル神話の、英雄!?」

 

 




アスベルの正体、それはこの小説を書くために剣をプレイしていた時にぼんやりながらもすでに決めていたことです。
私なりの伝説の真相は、次回に。
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