ガラル伝説の真実は、あくまで私自身の考察であり、この小説での設定です。
非公式なので誤解せぬようお願いします。
シーソーコンビとの戦いに、終止符が打たれた。 ねがいぼしの力でザマゼンタを無理矢理ダイマックスさせることで暴走させ周囲に失望させるという目的は、失敗に終わった。
「アスベルが、神話にでていた英雄……」
ザマゼンタを助けるため駆けつけたザシアンによって、アスベルは自分の正体を知る。 アスベルはあの戦いの時の姿となり、右手のひらに紋章が宿った。 そのときザシアンにより、自分が神話に出てくる英雄の生まれ変わりであることを知ったのだ。
「オレが……本当なのか、ザシアン……?」
「すべての真実は、我が弟が正気に戻ったときにはなそう」
「弟?」
真意を確かめようとしたその時、ザシアンは弟の存在を口に出した。 そのとき、少し離れたところからよく知る少年の声が聞こえてきた。
「うわぁぁ!」
「ホップ!?」
その声の主は、ザマゼンタを鎮めるため立ち向かっていったホップのものだった。 なにがあったのだと戸惑うアスベルに、ホップの居場所に気付いたマリオンがその場所を指さす。
「アスベル、あそこ!」
「!」
マリオンが指さしたのは、ナックルシティのそと…ワイルドエリアの果てにある場所…通称・げきりんの湖だった。 そこでザマゼンタは己の力を制御しようとしてたのだ。 そこには他に、ホップの姿もある。 その姿を見たアスベルはうなずき、ザシアンに声をかけて彼らの元へ向かう決心をする。
「ザシアン、オレたちもザマゼンタとホップのところへ向かおう!」
「アスベルッ!」
アスベルはザシアンの背に乗り、ザマゼンタとホップのいる場所へ向かった。 げきりんの湖には他に、ソニアの姿もあった。
「あ、アスベル!」
「ソニアさん!」
「あそこに、ホップとザマゼンタが……!」
ソニアが指さす先で、ホップはザマゼンタに声をかけつつ自力で取り押さえていた。 どうどう、と声をかけていたホップと、自分の力に必死にあらがうザマゼンタ。 少しザマゼンタの動きが鈍り、落ち着いたと思われた時、ザマゼンタは口を大きく開き、ホップの肩にかみついてきた。
「うがぁぁぁっ!」
「ホップ!!」
「もう離れろホップ! このままだと、お前が!」
「……ッ! いやだっ!!」
肩から血がとめとどなく流れる。 ザマゼンタのキバはいまも、ホップの肩に強く食い込んでいる。 だがそれでも、ホップはザマゼンタから離れようとしない。
「こいつは、人のために、人と一緒に……戦って! なのに人に言いように使われてしまって、そのせいで苦しんでいるんだ!! だから、助けないといけない! おれが死ぬことになっても、おれは……こいつから離れないっ!!」
そうホップはその金色の目を大きく開かせて宣言し、ザマゼンタに腕を伸ばしそのまま抱きつき、語りかけた。
「ザマゼンタ、大丈夫だ! おれがいるから、お前は戦って、打ち勝てる! お前一人だけにがんばらせない……おれが側にいてやる! だから……!」
「ウルォ……」
「がんばれ! ザマゼンタッ! がんばれ!!」
そう叫ぶと、ザマゼンタの目が大きき見開かされ、そこに大きな力が渦巻き、ホップとザマゼンタを飲み込んだ。
「ホップ!」
「英雄王よ、ゆくぞ」
「ああ!」
そこに、アスベルとザシアンも加わっていき、力の渦は光を放つ。 目の前の光景に対し、ソニアは2人の名を口に出すしかできなかった。
「アスベル!! ホップ!!」
やがて2人と2匹を包んでいた光はやみ、ホップとアスベルはそこにいた。 ホップは少し意識が朦朧としていた。
「うぅ……」
「ホップ!!」
「アスベル……ザマゼンタ、は?」
その中でもホップはアスベルの存在に気付きながらも、ザマゼンタのことを気にする。 アスベルはホップに笑いかけつつある方向を見つめ、アスベルの視線をホップは追いかけ、その先を見る。
「ザマゼンタ、制御できたんだな! えらいぞ!」
そこにいたのは、完全に正気に戻ったザマゼンタだった。 ホップはザマゼンタが正気に戻って落ち着いた姿を見て喜んでおり、ザシアンもザマゼンタに声をかける。
「落ち着いたか、弟よ」
「姉上」
「あ、あねうえ?」
ザシアンをそう呼んだザマゼンタに違和感を抱いたホップは戸惑い、そこにザシアンが説明を入れてきた。
「我らは互いに力を競い合い磨きあう好敵手であり、多くの生命を守るために、共に力を合わせて災厄と闘う使命を授かった……姉弟でもある」
「そうだったのか……」
ザシアンとザマゼンタの関係性を知り、納得するアスベル。 ホップも納得はしながらもそこで、自分の身に異変が起きていたことに気がついた。
「そういえば、おれ……体のどこも痛くない……! おまけにこの姿、今のお前とそっくりだぞ……!」
「言われてみれば確かに……どうなっているんだ……!?」
ザマゼンタにかみつかれた箇所どころか、頭に負っていた傷も消えている。 それだけではなく、ホップの姿もいつもの格好ではなく、今のアスベルに近いどこか豪華な装飾の施された衣服になっていた。 アスベルだけでなくホップまでその衣装になっている理由に検討がつかない。 そこに、ザシアンが語りかけてきた。
「すべてを打ち明けよう、英雄王よ」
「そこの少年よ、汝も耳を傾けてくれ」
ザシアンとザマゼンタがそう言ってきたので、アスベルとホップは静かに話を聞く体制にはいる。 2人が話を聞く体制にはいったのを確認したザシアンとザマゼンタは、彼らにガラル神話の真相を語り聞かせる。
「かつて我々は赤く光りながら流れる願い星を見つけた2人の若者とともに、ガラル地方に訪れた災厄……ブラックナイトと戦い、この剣と盾をもってしてその災厄を退けた」
「その災厄・ブラックナイトというのが、汝等も対峙した存在……ムゲンダイナ。 その力は各地にねがいぼしとなりちらばり、ムゲンダイナの魂は眠りについた。 役目を終えた我々は、戦いの傷を癒すために自分達が生まれたあの森の奥で密かに眠りにつき、かの英雄達の未来を案じ続けていた」
そこまでの話は、アスベルもホップもよく知っている内容だった。 彼らが特に耳を傾けるべきだったのは、その先の話…さらなる神話の真実である。
「王族は長く繁栄していき、いまのガラルは完成した」
「だが、血筋は途絶えた……その誇りを失うことにより、血筋から英雄の力は消滅したのだ」
「ど……どうして……?」
ホップがおもむろにそう問いかけると、2匹はその理由について説明をした。
「2人の王は国を作り繁栄させ英雄としてたたえられていた……だが、晩年になり、一方の王は英雄の名前を我々から剥奪することを考えついたのだ」
「……!」
「王達は我々の存在を隠蔽し、自分たちだけが英雄であると後世に伝えようとしていた。 それにたいし、もう一人の王はそれに反発し……2人の口論は内乱へと発展し……結果、反発した王は我々のいた証を守ることに専念した結果、討たれしてしまった」
「それにより内乱勝利した王は、英雄の名声を我がものにしたのだ。 我々にとどいていたものも、2人で分け合っていたものも含めて、己だけのものにした」
「……英雄の名声もガラルを救った功績もすべて、独り占めをしたという事か」
「それにより名声の欲におぼれ自惚れた王は、徐々に力を失い、彼の血族から血は消え魂も消滅し……王たる証もそこから消えた」
「我々の存在も忘れられていき……我と姉上は森の奥の祭壇で永遠の眠りについていたのだ」
その話を聞いたホップは、ザシアンとザマゼンタの存在が明らかになった歴史の産物について口にしていった。
「じゃあ、あのラテラルタウンの遺跡も……あのタペストリーも……」
「死した王が命がけで守ったものだ。 ラテラルタウンの我々の石像も取り壊されかけたが、王は最後の力を振り絞りその石像に力を与え、どのような道具や技を使っても壊れないようにした。 ゆえに、遺された王は石版で隠すことで妥協をしたのだろう」
「タペストリーも、王が家来に命じ……なにが何でも守れと伝えたからこそ、残ったのだ」
「ザシアンとザマゼンタの名前や力が記載された資料も……そうして守られたんだな……」
「そして、遺された王は血をつないでいったがすでに英雄の力を失い、死した王は力を持ちながら、転生の時を待った……。 己の死を嘆くものに、ガラルの危機が訪れし時に必ず蘇る……と、彼は告げていたのだ」
そういい、ザシアンはアスベルを見つめた。
「そうして、今。 ひとつの欲望によりムゲンダイナが蘇ろうとしたとき……その英雄王は、転生により、生まれ変わったのだ。 汝……アスベル・マクリルとして……」
「アスベルが、英雄王の生まれ変わり……!」
「英雄王の転生者たる汝は、蘇ろうとする災厄を鎮める使命があり、常に運命の時を汝に宿る魂が伝えていた。 そして、時代と共に衰退し力を失った王族にその理由や意味を伝える必要がある」
「………それが、オレの生まれた意味……」
「英雄王の転生者である汝のたどる運命は厳しいもの。 だが、それを越える力がすでに、汝にはある。 それを理解し受け止めるのが、これから汝が果たすべき使命である」
「…………」
そうザシアンに言われ、アスベルは黙り込む。 その横でザマゼンタは、ホップの方をみて告げる。
「そして、そちらの少年よ」
「え、おれ!?」
「貴公も我らと共に災厄と戦い、我を鎮めようと正面から立ち向かった。 己と向かい合い、どのような現実や佳境にもくじけずに戦い抜いた……称賛に値することだ」
「そんな……おれはただ、みんなやお前を放っておきたくなかっただけ。 ただただ、助けたい一心で向かっていっただけだよ」
「それだけでいいのだ。 我が貴公を認めるには、十分に納得のできる理由だ」
「認める?」
ザシアンとザマゼンタは、自分が相手を英雄として認める条件を2人に掲示した。
「私が認めるは、いかなるものにも立ち向かい物怖じせぬ剣を心に持つもの」
「我が認めるは、己の信じるものを守るために己の全てをかける盾を心に持つもの」
「「そして、信じるものと共に歩む勇気あるものこそ、我らと共に未来を生み出す英雄の名にふさわしい」」
そう告げられ、アスベルの手のひらに浮かんでいた紋章は光を放ち、またホップにも、アスベルのものとよく似た紋章が手のひらに浮かんでいた。
「これって……!」
「それこそは、英雄のあかし」
「我々ザシアンとザマゼンタは、いまこの瞬間より……貴公等を英雄として承認する」
「私達の力が必要となったとき、紋章を掲げ念じるといい……いついかなる時でも駆けつけ、力となろう」
「……ああ……ありがとう……!」
「「我らの魂、つねに英雄とともにある」」
英雄のあかしを手に入れたアスベルとホップにたいし、ザシアンとザマゼンタはそう告げた後、光となって飛び去っていった。
「英雄のあかし、かぁ……おれがこういうのを手に入れるなんて、ビックリだぞ」
「ああ、オレも自分のことで驚きが隠せない……今も……」
ホップは自分に英雄のあかしが宿ったこと、アスベルが自分が英雄王の生まれ変わりであることに衝撃を受け、いまだに実感がわいてないようだ。
「あたし……とんでもないことを目撃しちゃった……!」
「あ、そういえばソニアもここにいたんだったな……」
「ヒドッ!?」
その一部始終をみていたソニアにたいし、ホップはそう告げたのだった。
アスベルとホップ、そしてソニアがナックルシティに戻ってみると、捕らえられたシーソーコンビとジムリーダー達、そしてマリオンが待っていた。 3人はザシアンの協力とホップの奮闘もあってザマゼンタが無事に正気を取り戻したこと、そしてガラルの英雄伝説の真相を教えてもらったこと、そして…アスベルのみならずホップもザシアンとザマゼンタの力を借りる英雄として認められたこと。
「伝説のポケモンに認められたものは、英雄として認められるって聞いたが……まさかそれをやり遂げるヤツがいるなんてな! オレ様もビックリだぜ」
「このこと、チャンピオンがしったらもっと驚くでしょうね」
「だけど、きみ達ならどこか納得できるものがあるなぁ」
「そうね。 あなた達は先日のブラックナイトも、今回のダイマックス騒動も……最前線で活躍して解決させたんだもの」
「英雄の名前と同等の功績ですね」
そうジムリーダー達も2人が英雄として認められたことに対し、賞賛の言葉をかけた。 それにたいしアスベルとホップは少しだけ照れており、マリオンはふとホップがボロボロだったことに気付く。
「ホップってば服ボロボロで血が付いてるけど、大丈夫?」
「ああ。 ちょっとケガしたけど平気だぞ! ザマゼンタを止められたし、そのお礼……でいいのかな、ケガもなおしてもらったからな!」
「そっか、よかった」
そう話をしていくと、アスベルは右手のグローブをはずしそこに刻まれた英雄のあかしを見つめて小さく笑った。 そのとき、捕らえられていたシーソーコンビが口を開いていく。
「……ない……!」
「え?」
「認めない! 何故王の血族である我々が否定され、生まれ変わりと言うだけでそのようなポッと出の小僧が賞賛されるんですか!?」
「ずっとセレブリティに振る舞い、実力もつけ、王族の復活の日を待っていたというのに! その日のためだけに耐えしのいできたのに……何故! 何故、高貴な我々が英雄として認められず、王としての資格がないと言うのだ!? なんのために、我々は……このような事態を引き起こしたというのだ!」
そう口にするソッドとシルディに、ジムリーダー達の冷たい視線が突き刺さる。 ホップもあきれてなにもいえず、マリオンは眉間にしわを寄せて口を開いた。
「はぁぁ? なにいってんの? 今回の事態を引き起こしたことはあんたたちが勝手にやったことでしょ? 罪のないポケモンをダイマックスさせて、人を騙して強盗まがいのことはするし、普通に人間としての常識を守らないし、自分達のメンツのために伝説のポケモンは苦しませる。 立派な犯罪者じゃん。 そこに誰の血とか長年のうんたらかんたらは関係ないでしょ」
マリオンがそうつげると、シーソーコンビはそろって声を上げて反発してきた。
「我らこそが選ばれているのだ、この王族の血を引いて生まれたことこそ、その証拠なのだ!!」
「みるものを見誤り、あのような歴史を語るポケモンなぞ信用できるか!! その判断に同意するものは皆、王への謀反だ!!」
全部説明しても、彼らはいっさい理解しようともしなければその真実を受け入れようともしない。 かたくなに否定を続ける2人に対し、ついにマリオンも彼らにはどのような言葉も届かないと気付き、疲れたように首を横に振る。
「黙れ、愚民」
「な……!?」
「誰にそのような言葉を向けているというのだ!?」
「人の心もわからない愚か者には、愚民で十分だ」
突然口を開いてそう言い放ったアスベルに、全員が驚いた。 アスベルは、自分の中にある魂をつき動かせて、シーソーコンビに王を説く。
「王とはなにかを知っているのか。 人を導き国を建て、己を信じるもののために力を尽くし守り抜くもの。 貴様等はそれをなにひとつとして成し遂げてはいない。 己だけを特別と思いこみ、なにをしてもいいなどと自惚れているものは、王として相応しくない!」
「……」
「所詮、貴様等は血族のためでもなく、国のためでもなく、ただ私利私欲のために動き、我が同胞を……ありのままの真実を、なにもみなかった。 そのようなものには王の資格はない! 王族の恥であり、ガラルの民の恥だ! 貴様等は無能だ、ゆえにこの血に不要だ!」
アスベルはその瞳を鋭く光らせて、とどめを刺すかのように告げる。
「けがれた血よ、愚民となり果てその罪を償うまで……二度とこの地に現れるな!」
そう言いきられたとき、ソッドとシルディはガックリとうなだれてひざを折った。
「……ふぅっ!」
ソッドとシルディがすでに戦意を喪失したのをみて、アスベルは気を抜いた。 そのときのアスベルの瞳は穏やかだったので、そこにいるのはガラルの英雄王ではなく自分たちの知るアスベルだと皆が気付く。
「終わったね」
「ああ」
「おう」
その後、ソッドとシルディは様々な罪にとわれることとなり、逮捕され正式に裁きを受けることになった。 二人とも、ザシアンとザマゼンタの気迫に負けたこと、真の王族ではなかったこと、もう2度と自分達は王もセレブも語れないこと…それらの現実をたたきつけられ、すっかり戦意を喪失しおとなしく連行されていった。
「ソニア博士……」
「あ、あなたは」
連行されていく信仰者の中には、ソニアを裏切った例の女性の姿もあった。 彼女は自分のしたことにたいし罪悪感を抱いているようであり、ソニアを前に謝罪の言葉を口にした。
「私はおろかです……あなたを騙して、裏切った……。 こんなことしていいわけがないと、わかっていたのに……ただ、自分たちの長年の悲願を叶えるためだけに、あなたを傷つけてしまった……」
「もういいよ!」
すんなり許したソニアに、助手だった女性は驚き目を丸くする。
「もう事態は解決したし、あなたも罪悪感を抱いた……それに、今回のことであたしも色々勉強になったからね、これを今後博士としての勉強に生かすよ! あ、これイヤミとかじゃないからね!」
「……」
そう語って見せたソニアに対し、女性はまだ驚いていた。 だが、そこにルリナが顔を出してくる。
「ソニア、ちょっといいかしら」
「ルリナ?」
ルリナはカツカツと女性に歩み寄り、目つきをきつくさせ女性をにらみつけた。 直後、乾いた音が強く広く大きく、その場に響きわたった。
「ッ!」
ルリナは、彼女の頬を強くひっぱたいたのだ。 それにより彼女の頬は真っ赤に晴れ上がる。 そこに、追い打ちをかけるが如くルリナは怒鳴りつけてくる。
「よくも私の親友を傷つけてくれたわね、この犯罪者!!」
「る、ルリナ! そこまで言わなくていいよ、あたしも平気だし……」
「よくないわよ!」
ソニアは彼女を養護しようとルリナを止めようとしたが、あくまでもルリナはソニアの制止を振り切り、引き続き言葉を浴びせた。
「相手が許したから帳消しになる罪なんてないわ、それが心に受けた傷ならなおさらよ!! 痛みや傷に心も体も関係ないの!! 相手が許して自分も償うからといって、甘ったれて調子のるんじゃないわよ!!」
「……ッ」
「謝るだけじゃすまない問題もある……それを理解したうえで、償いたいと願いなさい。 いいわね」
そうルリナが厳しく言い切ると、元助手の女性は叩かれた頬に手を添えつつ、ぼろぼろと泣き崩れた。
「……そう、ですね……本当に、本当に……ごめんなさい……!」
そうして、元助手はソニアの許しとルリナの叱責を通して自分のおろかさに気付き自分の犯した罪を認め、残りの生涯を償いに使うことを決めたのだった。 彼女もまた警察に連行されたが、本気で反省しているようなので今しばらくは刑務所にいれられるが、態度次第では釈放もはやまるだろうとのことだ。
「ホップ、今度こそちゃんと休めよ」
「おう!」
そして、事態が落ち着いたホップは、ザマゼンタにつけられた傷も消え、ついでにシーソーコンビに作られた頭のコブも消えたが、大事をとって体を実家で休めることになった。
「アニキとおまえの試合に間に合うようにばっちり、全快してやるからな!」
「……ああ……」
そうだ、今ダンデは集中治療を受けている。 彼はそれが終わったらすぐにでも試合を行うと言っていた。 今回の件もダンデの耳に届いていることだろう。 彼は居てもたってもいられなかったはずだ。 だが、ダンデは近日行われる予定のファイナルトーナメント決勝戦やり直しのために、治療に集中しなければならなかったので、身動きがとれなかったのである。
「事件解決でダンデさんも大丈夫だし、みんな無事で結果オーライでよかった。 ソニア博士も、大事な本の原稿が守られたみたいだし……」
「ああ。 さらにガラルの伝承も本の原稿とは別の形で、遺してくれるみたいだし……これで、真実は伝わって同じ過ちが繰り返されないと思う」
「そうだね。 どんなに残酷でも真実は真実だし、それはそれで大事にとっておいたほうがいいもんね。 今のボク達だけじゃなく、この先の未来にも……伝えていきたいよね」
「少なくとも、オレ達は忘れないさ」
そう、アスベルとマリオンが語り合っていると、奥からジムリーダーが自分を呼ぶ声がきえたのでマリオンは、アスベルにじゃあねとだけ告げて立ち去っていった。 彼女が代表して、アスベルやホップとの行動の軌跡を、ネズとともにジムリーダー達に報告しまとめるつもりらしい。
勉強は苦手なマリオンだが、少しでもアスベル達の力になりたいと思ったことから、この行動をとったのだという。
「……」
アスベルは、このダイマックス騒動を思い返していた。 自分の正体を知るにはこれに最後まで関わるべきだという予感は感じていたが、まさか本当に自分の正体を知ることになろうとは、想像してなかった。
「オレが……伝承の英雄王の生まれ変わり、か……」
なにも事情を知らない人がそれを聞いたら、ただ痛くてヤバイヤツとしかみられないだろう。 ここには重要な人物だけがその真実を知っているので、アスベルは思い返してつぶやくことができる。
だから彼はこの場で、右手の平を見て自分の正体を思い出していたのだ。
「君が、アスベル・マクリルか」
そんなとき、アスベルに一人の男性が声をかけてきた。 黒いコートを身につけ、長い茶髪を一つに縛り、赤い瞳を持った長身の男性だった。
「あなたは?」
「俺はジンキ。 ポケモンリーグ協会のエージェントだ。 今回、あの二人がガラル地方で騒ぎを起こしたというので、連行し制裁をくだすためにきた」
ポケモンリーグのエージェント。 リーグ本部から直々任務を受け、警察と手を組み、事件の解決につとめる組織だ。 当人の身体能力が高いだけでなく、ポケモンバトルも一流。 さらに罪人を捕らえ裁きを下す権限も与えられているという。
「ここにきたのは、それが目的なんですね」
「ああ。 あの頭のヘンな2人組は、血筋だけだが……腐っても王族だ。 だからこそ正式な裁きをくだし罪人として扱い、罪を償わせる必要がある。 当然の決まりを守ることもできなければ、王として人の上に立つ資格はないからな……」
「反省しますかね」
「させるんだよ、これからな」
ジンキは、シーソーコンビへの処罰とそれを決定する場所を伝える。
「奴らが裁かれる場所には、権力や圧力は何の意味もないことだ。 法の下で平等に審判がくだされるさ。 ま、有罪は確定だから刑罰を決めるだけだけどな。 やっていいことと悪いことに、個人の立場なんて関係ない。 そこを、改めて教育する必要がある」
「そうですね。 そういう考え方ができる人がいてよかった」
「やらないやつの時代は終わったんだよ」
そう対話をしつつ、ジンキはアスベルに話しかけてきた理由について語る。
「それと、俺が君に声をかけたのは事情聴取じゃないんだ」
「え?」
「ジムリーダーから聞いたぜ、君が英雄……それも、英雄王の生まれ変わりだと、な」
「……」
「おっと、誤解しないでくれ。 君をどうしようとはしない。 英雄だとしても、君は君だ。 そこに君の能力は問わないし、ポケモントレーナーとしての実力に疑いはかけない。 ただ……」
「ただ、なんですか……?」
アスベルの顔を見て、ジンキはある人物のことを話に出した。
「君はダンデの家で育てられたそうじゃないか」
「ええ」
「ダンデは君と実の弟であるホップくんを、まとめて弟だと思っている。 帰れない事が多くても、君達を大切にしていたし、将来を案じている……今回の件も、君達を心配して自分が動けないことをもどかしく思っていたそうだよ」
「……わかっています」
「そう思っていてくれてるんだろうな、とはわかっていても……どうしてあげるのが一番いいのかなって迷うこともあるし、気になることは気になるものなんだよ。 俺もそうだからな」
「そうなんですか?」
アスベルが少しだけ目を丸くしていたので、ジンキは笑いながら自分とダンデに共通していることを話し始めた。
「はは、俺にも弟と妹がいるんでな。 だから、ダンデの気持ちが分かるんだよ。 おまけにぶっちゃけると、弟は英雄のあかしを持っている」
「え!?」
「あいつも……伝説のポケモンに認められたんだよ。 己自身の力で認められた。 一緒に切磋琢磨した2人の友達と一緒に……な……」
「……」
ジンキは自分の弟たちのことを思いだして目を細めた後、アスベルの方をみる。 彼はただの英雄ではないと、知っているからである。
「だから、そういう意味でもダンデの気持ちがちょっと分かるんだ。 自分にとって弟と呼べる存在が2人とも、伝説のポケモンに選ばれた英雄になったんだからな」
「……オレ達はただ」
「この事件を見放すことができなかった、多くの人やポケモンが傷つくことが耐えられなかった……だから立ち向かったんだろう?」
「はい」
「伝説のポケモン達が英雄として認める人間を選ぶのって、そんな理由なんだよ。 それでいいと思うこともあるしな」
そう語りつつ、ジンキはアスベルにアドバイスだといって頭をなでつつ笑いかけて告げる。
「絶対に自分の背負うものに押しつぶされるなよ。 そのためにも……気負いしすぎるな。 君は一人だけで戦っているわけではない……」
「……はい……」
アスベルの静かな返事を聞いたジンキはにっこりと笑った。
「さてと……せっかくだから、君とダンデの試合、是非俺も見学させていただくよ」
「本当ですか?」
「本当だ。 君達の試合を見届けたいって、話を聞いたときに強く思ったからな。 楽しみにしているよ」
そういってジンキは事件の後始末をするために、アスベルに別れを告げて立ち去っていった。 そうして一人になったアスベルは、一人で決勝戦が終わった後のことを考えていた。
「……試合が終わったら、オレは………!」
そうつぶやいたアスベルは、ある決意をその瞳にやどらせていた。
作中、ルリナがソニアの偽助手に本気で怒る展開は、ルリナとソニアが親友同士だと知ってたから書きたかったところです。
そして、最後に新キャラ登場。
ホントは別の作品で活躍するキャラですが…ほかのポケモンタイトルの話を、ここにのれたいですね。
次回はいよいよ、チャンピオンバトル。
その試合を皆さんにもお届けします。
よろしくお願いします。