ポケモンSWSH 黎明の瞳   作:彩波風衣

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ポケモン25周年おめでとうございます!
というわけで今回はチャンピオン戦!
アスベルとダンデのバトルを、おとどけします!


51~王者と英雄の頂上決戦~

 

 王族の末裔がやらかしたあの事件から、3日後のこと。

 シュートシティのシュートスタジアム、そのバトルフィールドは完全に修復された。 もうバトルをしても大丈夫だと保証をもらったことで、中止になっていた決勝戦を行うことになった。

 

「……」

「アスベル、大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

 

 試合前、アスベルは試合前インタビューをしようとしていた取材班を一切相手にすることなく、控え室に入りユニフォームに着替えた。 取材班をはねのけられたのは、ネズを筆頭とするジムリーダー達やリーグスタッフのおかげだ。 今この控え室にいるのは、アスベルのほかにはマリオンとホップがいる。 彼らの存在に気付いたアスベルは、自分の調子を伝えた後で2人の調子を確かめる。

 

「マリオンとホップこそ、体は平気なのか?」

「ボクはこのとおり、ピンピンしているよ」

「おれもバッチリ、回復したぞ!」

 

 アスベルがマリオンとホップの体調を気にしていると、2人とも満面の笑顔をアスベルに向けた。 特にホップは完治したとはいえけが人だったので、アスベルは彼を心配していたのだろう。 2人の顔を見てアスベルも安堵の笑みを浮かべる。

 

「ボクは全力でアスベルを応援する」

「おれも……アスベルを応援するぞ!」

「え……ホップ……いいのか?」

「ああ!」

 

 この2人がチャンピオンの座をかけて戦うことになったときからずっと、ホップはライバルと実兄を天秤に掛けていたのだろう。 だが今は、家族としての情や己の尊敬より、ずっと競い合い助け合っていた相手を応援したい気持ちがホップの中で勝ったらしい、アスベルを応援すると決めたのだ。 ホップのその思いに後悔はないし、あると決めつけることもしたくない。 だからアスベルは、ホップの思いを正直な気持ちとして受け止めたのだ。

 

「さて、もう始まるよ! いってらっしゃい!」

「びしっといってこい!」

「ああ、行ってくる!」

 

 ホップとマリオンの激励を受けて、アスベルは控え室を出てバトルフィールドにでた。 その中心には自分がずっと憧れていた男・チャンピオンのダンデが立っていた。 アスベルがここにきたことにたいし、ダンデはにかっと笑う。

 

「きたか」

「はい」

 

 そして、ダンデは最近起きた事件のことを思い出し、そのことを口にする。

 

「先日はサンキューな、本当はチャンピオンである俺が立ち向かわなきゃいけないのに、今は絶対安静だと言われて病室から出してもらえなかったんだ」

「でしょうね」

「ずっともどかしかった。 だから、心配をしていた……そして、それは杞憂に終わった。 お前が、もとい、お前達が戦ってくれたおかげで……ガラルの平和も皆の心も守られた。 ありがとう」

 

 ガラルを救って未来を守ってくれたことに礼を言い、アスベルの正体を受け止めていることも口にしつつ、ダンデはこれからアスベルと、ポケモントレーナーとして向かい合おうとする姿勢を見せた。

 

「さぁ、今からはお前とはチャンピオンの座をかけて、真剣勝負を行うぜっ!! 俺はお前に紹介状を出したときからずっと、この瞬間を楽しみにしていたんだ! だから、短期間の厳しいリハビリも乗り越え、ポケモン達も試合会場も、最高の状態に仕上げたんだ!!」

 

 ダンデがそう高らかに声を上げると、アスベルは目を閉じ顔を伏せ、深く呼吸をしながらその言葉に返す言葉を口に出していく。

 

「オレもです。 オレも、貴方とこうして向かい合い雌雄を決する日を……ずっとずっと待っていました。 そのためにも、先日の戦いも勝ち抜いてきたのです……!」

 

 アスベルは顔をあげながら目を開け、言葉を続ける。

 

「オレは……オレは貴方と戦いたい! そして、越えたい!! 今まで一緒に戦ってきたポケモン達! 競い合い助け合ってきた人達! 彼らとともに、オレは貴方と戦う! それだけです!」

 

 アスベルは一番手として選んだポケモンの入ったモンスターボールをつきだし、真剣な瞳でダンデを見つめ、宣言をした。

 

「アスベル……いい目をするようになったな……」

 

 そのときダンデが思い出していたのは、10年前のあの日のこと。 森の手前で発見した、傷だらけで小柄で、体も骨と皮しかないのではというほどにやせ細っていた、今にも死にそうなほどに弱々しい少年…それがアスベルだった。

 だが目の前にいるこの少年は、思い出の中の少年と同一人物であるにも関わらず、別人のようだった。 そう感じるのは、彼が正しい形で成長した証である。

 これは全力で迎え撃ち、かつ跳ね返す甲斐があると、ダンデは思った。

 

「最強のチャレンジャーの強さ引き出した上で、圧倒的に叩き潰してこそ! チャンピオンの強さが際だつ!」

「だったらオレは先の通り、信じるものと共に戦い共にあることを第一にする、それこそ強さの証だと証明します!」

「いいだろう! ではいくぞ! チャンピオンタイムを楽しめ!」

「はい!」

 

 二人が声を掛けあった直後、実況が響きわたる。

 

「さぁぁ!いよいよジムチャレンジチャンピオンカップ、ファイナルトーナメント・決勝戦が始まります!! ブラックナイト騒動・ダイマックス騒動という度重なるガラルの不運を乗り越え、その運を向上させるかのように、ずっとずっと延期させられていた本試合!!」

「おぉぉぉぉおっ!!」

「チャンピオン・ダンデがこの王者の座を今年も防衛するか! あるいはチャレンジャー・アスベルが奪い取るのか! この試合の一部始終を、我々で見届けましょう!!」

 

 実況が入ったことで観客達のボルテージも上がっていく。 そして、試合開始の合図が響きわたると同時にアスベルとダンデは、同時にポケモンを繰り出した。

 

「ギルガルド、いけっ!」

「頼む、マルヤクデ!」

 

 ダンデが繰り出したのはギルガルド、アスベルが繰り出したのはマルヤクデ。 その2匹が、2人の一番手である。

 

「相性ではマルヤクデが有利やけど……ギルガルドは攻守一体のポケモン。 いきなり苦戦しそう」

「早々から本気の試合、ですね」

 

 

「マルヤクデ、ほのおのムチ!」

「ギルガルド、キングシールドで防げ!」

 

 マルヤクデは早々に相性のいい技で攻撃を仕掛けてみるが、ギルガルドはキングシールドで防ぐ。 それにより攻撃を防がれたマルヤクデはキングシールドの力で能力は少し低下し、それによりひるんだところでギルガルドは攻撃の形態にはいり、マルヤクデにシャドーボールを放った。

 

「ギルガルド、そこでもう一度シャドーボールッ!!」

「隙を逃すな、だいもんじ!」

 

 シャドーボールが再び飛んでこようとしたとき、アスベルは咄嗟にマルヤクデにほのおの大技を指示し、その火炎の力でギルガルドに大ダメージを与えた。 その判断力にダンデは驚きつつも戦いの手を止めることはなく、再び放たれただいもんじをキングシールドで防ぎつつ、つるぎのまいで己の能力を上げてくる。

 

「そこだ、シャドークローッ!」

「ほのおのうず!」

 

 シャドークローで攻撃を仕掛けてきたギルガルドにたいし、マルヤクデはほのおのうずで抵抗をする。 それに一度足止めを食らったギルガルドだが、そこでダンデが指示をしたせいなるつるぎを使い、炎を振り切りマルヤクデに攻撃を仕掛けた。 それに耐えたマルヤクデはほのおのムチで反撃するが、それもせいなるつるぎにより弾かれ、連続で繰り出されたシャドークローを受けて戦闘不能となった。

 

「マルヤクデ……!」

「おっと最初に倒れたのは、アスベル選手のマルヤクデだぁぁ!!」

 

 最初に戦闘不能になったのがアスベルのポケモンだった。 ダンデはやはり強い、といわんばかりに観客が盛り上がり、それと相反するようにアスベルは静かに、マルヤクデをボールに戻した。

 

「アスベル、なにもいわんね」

「あいつは前からそうだぞ?」

 

 そんなやりとりがあったことは知らずに、アスベルは次のポケモンとしてブラッキーを出した。 防御が得意なポケモンを出して守備に徹する作戦にでたのだと思ったダンデは、その守りを力ずくで打ち砕きたい衝動にかられ、ギルガルドはせいなるつるぎで攻撃をしかける。

 

「道をふさげ、あくのはどう!」

「おっと!」

 

 その道を妨げるようにブラッキーはあくのはどうを放ち、ギルガルドは攻撃のためのせいなるつるぎでそれを相殺する。 そのすきにブラッキーはのろいで己の能力を高めており、ダンデはそのまませいなるつるぎで攻撃をするようにギルガルドに技を出させる。

 

「打ち破れ!」

「させませんよ」

 

 ダンデの叫びに対しアスベルはそう返しつつ、ブラッキーにダメおしを指示した。 二つの技がぶつかり、ダンデは押せると思ったが直後にギルガルドに炎が襲いかかり、その炎の中でダメおしを食らったことによりギルガルドは力つきた。

 

「ギルガルド!」

「ギルガルド戦闘不能! ブラッキーの勝ち!」

 

 おぉぉぉ、と響きわたる歓声。 一方ジムリーダー達は、ギルガルドが倒れた原因に気付きコメントをする。

 

「ほのおのうずのダメージが、たたっていたんだね」

「たとえ戦闘不能になってでも絶対に相手のポケモンを倒すという執念が、感じ取れました」

「執念……彼って意外と、執念深いところがあるのでしょうか……」

 

 そうジムリーダー達がコメントをする目の前でダンデはギルガルドをボールに戻し、次のポケモンをそこに出した。

 

「次はお前だ、いけドサイドン!」

 

 ダンデが次に出したのは、硬質な体をもつポケモン・ドサイドンだった。 アスベルは一歩もひくことなくブラッキーでの試合続行を決め、まずはブラッキーにイカサマを指示して相手の攻撃力を利用して大ダメージをドサイドンに決める。

 

「おもしろい技を使うな! だが、それでは俺のドサイドンは崩れないぞ! ドサイドン、がんせきほう!」

「まもる!」

 

 ドサイドンのがんせきほうをブラッキーはまもるで防ぎ、のろいで己の力を高める。 そこにドサイドンがつっこんできて、メガホーンでブラッキーを攻撃した。 その技は急所に当たったようであり、その場に土煙が舞い上がる。

 

「きゅうしょにあたったーっ!!」

「急所に当てられても怯むな!」

 

 そうダンデはアスベルが悔しさに耐えるよう声をかけたが、直後にブラッキーに大ダメージを与えたはずのドサイドンが吹っ飛ばされた。

 

「むっ……!」

「アドバイスしてる暇があったら、試合に集中したらどうですか! オレのポケモンは、この程度では臆しません!」

 

 ブラッキーが、しっぺがえしをつかってドサイドンの攻撃をそっくりそのまま返したのだ。 そして、ダンデの先ほどのアドバイスもこの場を盛り上げるための挑発であると見抜いていたアスベルは、逆に彼を挑発するために大きく口を開いた。

 

「オレ達はいま、パフォーマンスではなく勝負をしているんですよ! 真剣な場に演出は不要です!!」

「余裕がないと楽しめないぜ!」

 

 そう返しつつ、ダンデはドサイドンにがんせきほうを指示した。 それをブラッキーは再びまもるで防いだが、その直後にドサイドンは急接近しブラッキーに今度はアームハンマーを決めた。 直撃直前にブラッキーはある光を放ったが、直後に技をくらいそのまま戦闘不能となった。

 

「ブラッキー戦闘不能! ドサイドンの勝ち!」

「……かまわない……次だ! 頼むぞマンタイン!」

 

 アスベルがブラッキーと入れ替わりで繰り出したのは、マンタインだった。 攻撃にでようとしたドサイドンだが、ブラッキーが最後の一撃として放っていたあやしいひかりの影響で混乱し、わけもわからず自分を攻撃していた。

 

「ドサイドンッ!」

「そのまま決めろ、ハイドロポンプッ!!」

 

 相手のドサイドンが混乱している隙にマンタインはハイドロポンプを食らわせ、そのダメージによりドサイドンは戦闘不能となった。 そうして2体目を失ったダンデはすぐにドサイドンを下げ、3体目のポケモンをそこに出す。

 

「いけ、オノノクス!」

「一回下がってくれマンタイン! 次は……ドラパルト頼む!」

 

 3体目であるオノノクスをみたアスベルはマンタインを一度ボールに戻し、次にドラパルトを出して戦わせた。

 

「りゅうのはどう!」

「りゅうのはどう!」

 

 オノノクスとドラパルトは同時にりゅうのはどうを放ち、バトルフィールドに大爆発を呼び起こした。 その中でオノノクスはドラゴンクローでドラパルトにつっこんでいったが、ドラパルトはそれをゴーストダイブで回避する。

 

「そのくらいならっ!」

 

 ダンデはドラパルトというポケモンを熟知している。 だからアスベルは次にドラパルトに、姿を隠したまま攻撃の技を繰り出させてゴーストダイブで追撃をするつもりだと読み、ダンデはオノノクスにつるぎのまいを指示した。 姿を現したときに、迎え撃つために。

 

「そこだ、ドラパルト!」

「あえてそうきたか!」

 

 だがアスベルのドラパルトは直接ゴーストダイブでオノノクスに直接勝負を仕掛けてきた。 だがダンデは動じることなくオノノクスにドラゴンクローを指示して、ドラパルトを跳ね返す。 そこでさらにオノノクスはワイドブレイカーで攻撃をしようとしたが、ドラパルトは至近距離で10まんボルトを放ちふいをつく。

 

「なに!」

「いまだ、ドラゴンダイブッ!」

 

 そして、立て続けにドラゴンダイブをくらい、その影響でオノノクスは大ダメージと同時に怯んでしまった。

 

「オノノクス!」

「この一撃で決める! ドラゴンアロー!」

 

 そのドラゴンアローという技が2発、オノノクスの急所に当たったことで、オノノクスは戦闘不能となった。

 

「すごいぞ、アスベルのドラパルト!」

「あのオノノクス、攻撃力が相当なはずなのにあっという間に倒しちゃった……!」

 

 

 ダンデはオノノクスにお疲れと声をかけつつボールに戻すと、アスベルの顔を見た。 アスベルは涼しい顔をしていることに一瞬驚いたものの、彼は元々感情を顔に出すのを苦手としているだけだということを思いだし、気を取り直して次のポケモンを出す。

 

「なんと、ダンデ選手の3番手は……ドラパルトだぁぁぁーーーっ!!」

「そう! 今から行う戦いはドラパルト同士だ! おもしろそうだろ!」

「そうですね……!」

 

 ダンデの案にアスベルも乗る。 そして先に動き出したのはダンデのドラパルトであり、ドラゴンアローで攻撃を仕掛けてくる。 アスベルのドラパルトはでんこうせっかのスピードを利用して回避し、ゴーストダイブで姿をくらましてりゅうのはどうの追撃をも回避して攻撃をする。 すると相手のドラパルトは姿を現したところを狙ってワイドブレイカーで攻撃をしてきた。

 

「りゅうせいぐん!」

 

 そこでアスベルのドラパルトはりゅうせいぐんでダンデのドラパルトを攻撃、それにより相手は大ダメージを受け、その最中でドラゴンアローを放ち反撃した。 すると相手のドラパルトはゴーストダイブを繰り出してきたので、こちらも同じ技を繰り出させ、見えない攻撃を繰り返す。

 

「どこにいるのかわかんねぇよ!!」

 

 その試合の光景にたいしホップがそう言うと、アスベルとダンデはしばしの沈黙の後、同時に同じ技を指示した。

 

「「ドラゴンクローッ!!」」

 

 その竜の技が影の中で衝突し、同時に双方のドラパルトが姿を現した。 だが姿をみせたとき、どちらも力つきていた。

 

「相打ちか!」

「そのようですね……」

「おっと、ここはダブル・ノックアウト! 二人ともドラパルトをうしなったぁぁぁ!」

「おぉぉぉおーーーーっ!!」

 

 実況と、絶叫にも近い歓声が響きわたる中、ダンデもアスベルも自分のドラパルトをボールに戻し、体制を立て直すために次のポケモンをそこに出す。 ここで止まれない、という気持ちを胸に抱いて。

 

「いけ、バリコオル!」

「頼んだぞ、アーマーガア!」

 

 ダンデが出したのはバリコオル、アスベルが出したのはアーマーガアだった。 アーマーガアは相性のいいはがねのつばさで先制攻撃をしかけるが、バリコオルはリフレクターを使いダメージを軽減させ、至近距離でふぶきを放ってきた。

 

「うわわ、あの距離でふぶきなんて打たれたらヤバイよぉ!」

「アーマーガア、ラスターカノン!」

 

 そのふぶきにたいしアーマーガアはラスターカノンを放つ。 するとバリコオルはそれを受けて大ダメージを受け、それをみたダンデはバリコオルに続けてひかりのかべを指示する。 それにより再び放たれたラスターカノンは決定打にならなかった。

 

「これで防御は完璧だな! バリコオル、10まんボルト!」

「かわせ!」

「逃がさないぜ!」

 

 アーマーガアは空中を大きく飛び回りバリコオルの技を避けようとしたが、バリコオルは放ったでんき技をねんりきで操作してアーマーガアを攻撃する。 このままではまずい、と判断したアスベルはアーマーガアにちょうはつの技を指示して、バリコオルに補助系の技を使わせないようにした。 後継につなぐつもりなのだとダンデは察し、アスベルに向かって叫ぶ。

 

「そのポケモンは確実に俺に勝利するための捨て駒なのか!」

「なにを言っているんですか! 誰を捨て駒になんてしません!! オレはそんな戦いは望まない!」

 

 そう叫びながら、アスベルはアーマーガアに今度はこうそくいどうを指示し、立て続けにぼうふうでバリコオルを攻撃した。

 

「そこのバリコオルだって、絶対にこのアーマーガアで倒してみせる! アーマーガア! ラスターカノン!」

「バリコオル、ふぶき!」

 

 先程はラスターカノンが勝利したが、今度はバリコオルのふぶきがおしかった。ふぶきを浴びせられながらもアーマーガアはこうそくいどうであげたスピードでその吹雪を突破し、バリコオルに素早く接近してはがねのつばさをヒットさせた。 そこに、壁は存在していなかった。

 

「壁は決して長続きはしない!」

「守りなどなくても構わないぜ! バリコオル、サイコショック!」

 

 サイコショックを受けたアーマーガアは耐えるが、直後にバリコオルの10まんボルトを受けてしまう。 さきほどの技は、この10まんボルトを確実に命中させるための牽制だったのだと気付いたアスベルは、アーマーガアに止まるな、と激励を与えつつ技の指示を出す。

 

「ダメおし!」

 

 相手は既にダメージを受けていることで、ダメおしは効果が増している。 それをまともに受けてしまったバリコオルだが、倒れることなく10まんボルトで反撃にでる。 それをアーマーガアは受けてしまう。

 

「この一撃には耐えられないだろう!」

「構うなアーマーガア!」

「!?」

「はがねのつばさ!!」

 

 だがアーマーガアは電撃を受けながらもバリコオルにつっこんでいき、電撃をまといながらはがねのつばさをくりだし、命中させた。

 

「バリコオル!」

「バリコオル戦闘不能! アーマーガアの勝ち! さぁチャンピン・ダンデ! 追いつめられました!! 彼の残りポケモンはあと一匹です!!」

「あのチャレンジャーすげぇな!」

「今までチャンピオンを追いつめた相手は、他地方のチャンピオンをのぞいて、このガラルではライバルであるキバナ選手だけでした! ジムチャレンジャーで彼に挑むことを叶えることはおろか、ここまで追いつめられたトレーナーは、アスベル選手が初めてといっても過言ではないでしょう!!」

 

 実況はこの戦況に対しそうコメントをし、観客達が声を上げてざわついた。 この試合の行く末が見えなくなったからだ。 だが、遺された彼のポケモンに対しての期待も、膨らむ。

 

「だけど、アニキの最後のポケモンは……」

「あの子、だよね……」

 

 ホップもマリオンも、同じことを思っているから、同時にゴクリと息をのんだ。

 

 

「まだまだチャンピオンタイムは終わらない! 終わらせないッ!! いけ、リザードン!!」

 

 そこでダンデは自分の最後の一匹にして、最強の相棒であるポケモン・リザードンを繰り出した。

 

「出たぁぁぁぁっ!! ここでダンデの最強のパートナー・リザードンの登場だぁぁぁーーーっ!!!」

「リザードン……!」

 

 そこに現れたダンデの最強の相棒に対し、アスベルはつぶやく。 今まではリザードンに触れたり共に戦ったり守ったり、時にはダンデに振りまわされる彼に同情を覚えたこともあった。 だからこそ、アスベルはずっと胸に秘めていた思いを打ち明ける。

 

「キミと戦える瞬間を、オレはずっと心待ちにしていたよ……!」

「バギュア!」

「キミもそう思ってくれてるのか……ありがとう……! いくぞ!」

「ガァァーッ!」

 

 アスベルの声にあわせてアーマーガアも声を上げた。 アーマーガアもずっと前からリザードンを知っているからこそ、アスベルと同じ気持ちなのだろう。 相性はよくないが、一歩もひいたりしない。

 

「リザードン、かえんほうしゃ!」

 

 まずはリザードンが動き出し、アーマーガアにほのおの技を食らわせようとしてくる。 それをアーマーガアはこうそくいどうで回避し、リザードンにみだれづきを繰り出す。 直後にアーマーガアは再びかえんほうしゃを受けてしまう。 

 

「きんぞくおんだ!」

 

 それにより大ダメージを受けてしまったアーマーガアは反撃としてきんぞくおんを出してリザードンのまもりを弱める。 それにより動きは一瞬にぶったが、リザードンはすぐにだいもんじを放ってアーマーガアをねじふせようとしてくる。

 

「ブレイブバードッ!」

 

 だがだいもんじを受けながらもアーマーガアはブレイブバードを繰り出して、リザードンに攻撃を仕掛ける。 そうしてアーマーガアはリザードンにダメージを与えながらもブレイブバードの反動で倒れた。

 

「ありがとうアーマーガア。 ゆっくり休んでいてくれ」

「……いまのは……」

「……アーマーガアが、こうしろと言っていたんです。 昔からこいつはそうだった……相手の攻撃で倒れるより自ら攻撃をして倒れることを選ぶ……。 今回だって、そうだったんです」

 

 そう告げて、アスベルはアーマーガアをボールに戻した。

 

「最後の最後で、きんぞくおんとブレイブバードを使ったのも……負けるとわかっていての決死の攻撃だったんだな」

「最後まで戦った強いポケモンでしたね」

 

 誰もがアーマーガアの特攻をほめたたえ、賞賛の声をあげる。 それを受けてアスベルはアーマーガアが入ったボールを胸に抱きながら、次のポケモンを出す。

 

「マンタイン、もう一度頼む!」

 

 アスベルが出したのは、先程も試合に出てきたマンタインだった。 ほのおのリザードンにたいし、みずのマンタイン。 相性で攻めるつもりだと気付いたダンデはその顔に笑みを浮かべつつ、リザードンと目を合わせてうなずき、先手をとってエアスラッシュをマンタインにたたきつけた。

 

「どうだ!」

「ハイドロポンプ!」

 

 アスベルは負けじとリザードンにみずタイプの技で攻撃を仕掛け、リザードンの体力を奪った。 そして追撃でバブルこうせんもうちこみ、体力をさらに削っていく。

 

「マンタイン、そこでエアスラッシュ!」

「かわして、がんせきふうじ!」

 

 リザードンはダンデの声にあわせてマンタインの攻撃を回避すると、相性のいいいわタイプの技で攻撃を仕掛ける。 そのがんせきふうじにより動きを制限されつつ体力を大幅に削られたマンタインに、リザードンはさらに攻撃を仕掛けていく。

 

「いまだ、そこでかみなりパンチ!」

 

 リザードンが繰り出したのは、かみなりパンチだった。 その一撃がモロに入ったことで、マンタインは戦闘不能となってしまった。

 

「マンタイン……!」

「ここでマンタインも戦闘不能だぁっ!! やはり先のドサイドンとの戦いのダメージが残っていたのか!」

「ワァァァァ!!」

「さぁこれにより、アスベル選手の残りポケモンもあと一匹となってしまいました! やはりチャンピオンのエースは、ただ事ではない強さをもっているぅぅぅ!!!」

 

 ダンデもアスベルも、残ったポケモンはあと一匹。 この勝負ですべてが決まる。 誰もが胸を高鳴らせさらに試合に見入っていく。

 

「でも、アスベルの最後の一匹って……」

「あっ……!」

 

 アスベルにのこされた、最後のポケモンが誰なのかに気付いたホップやマリオンは戸惑う。 アスベルは、マンタインをボールに戻した後で最後のポケモンが入ったボールを取り出し、祈るようにボールを額に当てた。

 

「……オレは、キミを信じる……。 皆の想いをつないで、共に戦おう……!」

 

 そうアスベルはポケモンに語りかけ、そのポケモンをその場に出す。

 

「頼んだぞ、ゴリランダーッ!」

 

 アスベルが最後に出したのは、ゴリランダーだった。 それにより、観客達はどよめく。 ゴリランダーはタイプ相性的に、リザードンには圧倒的に不利だからだ。

 

「……アスベル、ここからどうするつもりなのかな……」

「わからねぇ。 でも……おれは、アスベルを最後まで応援したい。 あいつとは、そう約束したから……」

「……そうだね。 アスベルならもしかしたら、とおもうし……ボクだってアスベルを応援したい……!」

 

 だがその状況でも、ホップもマリオンもアスベルを応援するという意志を曲げたりはせず、彼の勝利を信じることを決めた。

 

「この戦いの勝利はもらったぜ! リザードン、かえんほうしゃ!」

「ばくおんぱっ!」

 

 やはりリザードンは、かえんほうしゃでゴリランダーを攻撃してきた。 そこでゴリランダーはばくおんぱの技を使い、かえんほうしゃを相殺した。 これが、アスベルが見つけだしたほのお対策なのかとダンデは気付く。

 

「弾き飛ばしたか……!」

「ダメおし!」

 

 そしてゴリランダーはリザードンに接近し、ダメおしの技を使ってリザードンの体力を削る。 先程までアーマーガアやマンタインが与えていたダメージが、その威力を増させたのだろう。 そのままゴリランダーはドラムアタックで攻撃をしたが、リザードンはそれをだいもんじで焼き払いそのまま炎でゴリランダーをやく。 それになんとか耐えたゴリランダーはドレインパンチでリザードンを攻撃し、体力を奪う。

 

「絶対的に不利なくさタイプであそこまで戦うなんて、すさまじいですね……」

「彼も少しは出来るようになったということですね」

「はいはい、わかったわかった」

 

 

 リザードンの方が圧勝すると思われたが、ゴリランダーは全力で迎え撃ち立ち向かっていき、試合はやや長引く。

 

「アスベル……お前がポケモンと共に俺にここまで噛みついてくるとは……」

 

 おとなしい姿に見合わず力強く戦い、そして冷静な判断を決して忘れたりしない。 そんなアスベルの強さを知ったダンデはにやりと笑うと、リザードンと顔を見合わせてうなずきあう。

 

「お前の強さを認め……リザードンの本気を見せよう! キョダイマックスタイム!」

「……であればオレも、まいります! ダイマックス!」

 

 ダンデはリザードンをキョダイマックスさせる体制に入り、アスベルもまた、ゴリランダーをダイマックスさせる体制に入った。 2人はポケモンを一度戻しボールを巨大化させ、それぞれポケモンをダイマックスさせて再びその場に降臨させた。

 

「あれ!?」

「姿が違うぞ!」

「そうか……キミも、キョダイマックスが出来たのか……!」

 

 リザードンがキョダイマックスできるのは知っていたが、ゴリランダーも姿が大きく変わっていた。 それにより実はゴリランダーもキョダイマックスが可能であることを知った。 そして、2人はダイマックス技を叫ぶ。

 

「ダイアークッ!」

「ダイジェット!」

 

 ダイアークとダイジェットが衝突し、その場に大爆発を起こし、2体の体が大きく揺らぐ。

 

「これこそチャンピオンタイムの真骨頂! 味わうといい……キョダイゴクエン!」

「ッ! ダイウォールだゴリランダー!!」

 

 そこでダンデはリザードンのキョダイマックス技を繰り出させ、ゴリランダーを追いつめる。 その威力に気付いたアスベルはゴリランダーにダイウォールを指示して防ぎ、直後にダイアタックを使わせてリザードンを攻撃する。 だが直後には、先程のキョダイゴクエンを受けてしまった。

 

「クッ!」

「まだまだキョダイゴクエンは、襲いかかるぞ!」

 

 キョダイゴクエンを受けた後で2匹はキョダイマックスのタイムリミットがきてしまったため、元の大きさに戻ってしまう。 だがそれでもゴリランダーにはキョダイゴクエンのダメージが襲いかかってきている。

 

「ゴリランダーッ!!」

「リザードン、とどめと行くぞ! だいもんじ!」

「ばくおんぱからの、ドラムアタック!」

 

 だいもんじをばくおんぱの厚保で吹っ飛ばしつつダメージを与え、ドラムアタックで追撃を与える。 とどめはかなわなかかったものの、ダンデはそのままかえんほうしゃを指示して、ゴリランダーを追いつめる。

 

「決めるぜリザードン、アクロバット!」

 

 とどめとして放たれたアクロバットはゴリランダーを捕らえた。 これによりゴリランダーは戦闘不能になると思われたが、アスベルは目を大きく開けながら技の指示を出した。

 

「ゴリランダー! ギガインパクト!!」

「……ッ!!」

 

 倒れる直前で放たれたそのギガインパクトは、リザードンを捕らえ壁にたたきつけた。 その場に土煙が舞い上がり、その場に静寂が訪れる。

 

「……あっ……」

 

 そして、煙がはれたときそこには、倒れたリザードンの姿があった。 その光景に対し実況も観客も、アスベルもダンデも黙っていたが、やがて我にかえった実況がこの試合の結果を伝える。

 

「……り、リザードン戦闘不能!! ゴリランダーの勝ち!! よって勝者は……チャレンジャー・アスベル!!」

「……わぁ! ワァァァァァァーーーーーッ!!!!」

 

 その実況を聞き、この試合の結果を理解した観客が大きく声を上げる。 それにたいしアスベルは呆然とその場に立ち尽くし、 ダンデは帽子を深く被って悔しそうに歯ぎしりをたてていたが、やがてその口元に笑みを浮かべていき、満面の笑顔で帽子を投げた。

 

「チャンピオンタイムイズオーバー! 最高の試合にありがとうだ!!」

 

 その明るい声を聞いて、観客は再び盛り上がる。 そのなかで自分が勝利をしたという実感を得たアスベルは、我に返るとゴリランダーにあゆみよった。

 

「……ゴリランダー、大丈夫か?」

「グォォウ……」

「おっと……」

 

 アスベルは体制を崩したゴリランダーを抱き留める。 おそらく彼は今になって戦闘不能になったのだろう。 それまでは気合いだけでその場にたち、戦っていた。 そしてリザードンを倒しアスベルが勝利するまでを見届けて気が抜けたのだろう。

 

「……ありがとう……」

 

 そうアスベルは優しい顔と目、そして声でゴリランダーにお礼を言ってボールに戻した。

 

「リザードン、お前もお疲れ様だな! お前はどこまでいっても、俺の最強のパートナーだぜ!」

 

 ダンデも同じように、リザードンに言葉をかけてボールに戻す。 そして、笑顔を浮かべながらアスベルに歩み寄ってきた。

 

「アスベル、おめでとう!」

「……ダンデ、さん……」

「無敵のチャンピオンを倒したお前が、新しいチャンピオンだ! お前という素晴らしすぎるポケモントレーナーを、心の底から賞賛する!」

 

 ダンデはアスベルの肩に手をおいて賞賛し、語り続ける。

 

「お前が強くなった今、俺も未来のことを考えよう。 未来につながる今現在を、俺達大人もよりよくする!」

「……はい……!」

「さぁアスベル! これからも自分自身と! パートナーのポケモンを信じて突き進め! 自分達がのぞむ、明るい未来を作るために!」

 

 

 そして2人は堅く握手を交わした後、ダンデがアスベルの手をつかんで高く掲げさせた。

 

「ガラルのみんな! 今ここに! 新しい伝説が生まれた! すごい力を持つ者なら、どんな未来でも描けるだろう! 彼が見せてくれる未来、みんなで楽しみにしようぜ!」

「わぁぁぁーーーーーーっ!!!」

 

 そうして、このジムチャレンジはアスベルという新らしいチャンピオンの誕生と共に幕を下ろした。 観客はもちろんのこと、マリオンやホップ、ビートにマリィ、ジムリーダー一同も、アスベルをたたえるための歓声と拍手を惜しみなく送る。

 

「……」

 

 だがそれを受けているアスベルは、嬉しそうでありながらどこか、寂しそうであった。

 

 




次回が、最終回です。
アスベルの旅、戦い…その結末を、見守ってください。
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