エンジンシティに到着したアスベルは、そこで開会式に参加する。
自分がこれから挑んでいくジムリーダーと、最終目標であるチャンピオンを見たアスベルは、冒険に心躍らせつつ旅立っていくのであった。
最初のジムリーダーがいるというターフタウンをめざすには、エンジンシティを出て3番道路に向かい、第一鉱山を越えて4番道路を通り抜けるしかない。 だから、ジムチャレンジに挑む人はそのルートをたどっていく。
「ココガラ、みだれづき!」
その途中でアスベルは、ほのおとむしの二つのタイプを持つポケモン・ヤクデを発見し、そのポケモンを相手に勝負をしていた。
「あれ、アスベル!」
「ホップか」
そのときにホップがアスベルの存在に気づいて声をかける。 その目の前にいるのが野生のヤクデであることに気付いたホップは、アスベルの狙いを察する。
「もしかして、あのポケモンをゲットしようとしているのか?」
「ああ。 興味があるからな」
そう返事をしつつ、ココガラにたいしひのこを放ってきたヤクデの攻撃を回避させ、そこでココガラは反撃としてつつくを繰り出してヤクデを攻撃する。 その一撃が決まり、ヤクデは吹っ飛ばされる。
「そこだっ!」
それこそ捕獲のチャンスだと悟ったアスベルは、ヤクデに向かってボールを投げる。 モンスターボールはヤクデを入れると数回揺れた後で止まった。
「よし、ヤクデゲット!」
「やったなぁ!」
ポケモンをゲットして、アスベルは満足げに笑う。 一緒にいたホップも、自分のことのように喜んでいるようであり、アスベルの肩に腕を回して笑った。 それにアスベルは驚きつつも笑みを浮かべており、ヤクデの入ったボールを拾い上げる。
「無事にゲットできた以上、オレは彼を強くしていくつもりだ」
「そうだな! お前ならそいつを絶対に強くできるぞ!」
アスベルが無事にポケモンをゲットできたことを確認したホップは、自分の頬をたたいて気合いを入れた。
「よし、おれもアスベルに負けてられない! おれもいっぱい、ポケモンを仲間にしていくぞーっ!」
「お、おい!」
そう言ってホップは先へと走り去っていってしまった。 その場には、アスベルとココガラのみが残される。
「行ってしまった………。 何度目なんだ、このパターン…………」
「チチチッ」
「そうだな、今に始まったことじゃないな」
元々ホップはあまりある元気故に、行動力は旺盛で常に落ち着きがない。 それにアスベルは振り回されてばかりおり、時にはついていけなくなることもあった。 もうすっかり、慣れてしまっている自分が恐ろしい。
「さて、当面の目的は果たされたし………オレも行くとしよう。 あいつに遅れをとるわけにもいかない」
そういってアスベルはヤクデの入ったボールを、ボール専用ポケットに入れて、歩き出したのであった。
「よ、ジムチャレンジャー!」
「ん? ………あっ」
その先には、顔見知りの女性がいて彼のことを呼んだので、アスベルは迷わず彼女の元へ向かう。
「ソニアさん」
「開会式、あたしもみたんだ。 カッコよかったよ!」
「そうですか?」
「そうだよ」
開会式をみられていたことに対し、アスベルは少し照れる。 そんなアスベルに対しソニアは笑うと、ホップは一緒じゃないのかと尋ねてきた。 アスベルは、自分とホップは別々で動いていることを彼女に告げた。
「そっか、あなた達は別行動なのね」
「ええ……というより、あいつが先走っているだけですが……」
「うん、そんなことだろうなって思ってた。 まぁあんた達一緒に育ったとはいえ………今はライバルだもんね。 鍛えるときは別々だよね」
「………」
そう語るソニアをみて、アスベルは内心思った。 彼女と彼も、同じだったんだろうか……と。 そんなアスベルをよそに、ソニアはふとこの場所で思い出したことがあり、彼にある情報を伝える。
「そうだ。 せっかくだし……ちょっとだけ、おもしろいことを教えてあげようか」
「え?」
そう言ってソニアは、岩と岩の間からのぞける、長い煙突から煙を出している建物を指さした。
「あそこに建物があるでしょ。 あれもね、ローズ委員長の会社なの」
「あれが?」
「そう。 3番道路の先には鉱山があるんだけど、そこで掘り出した鉱石をエネルギーに変えているんだよ。 つまり、ガラル地方全土のエネルギーも、委員長が支えているわけ」
つまりローズ委員長は、このガラル地方になくてはならない存在なのだ。 ポケモンリーグを自ら切り盛りし、多くの会社を持ちガラル地方の生活のための資源を生み出している。
「よくわかんない人だけど、すっごいんだよね……ローズ委員長って」
「…………」
「どうしたの、アスベル?」
だがその話を聞いて、アスベルは疑問に思ったことをそのまま口に出した。
「ローズ委員長、ポケモンリーグの委員長もしてて、会社を経営するなんて………色々と、疲れないんでしょうか?」
「………うーん……」
意外なところを気にする子だ、とソニアは思いながらも、ローズからはそんな疲労している様子は感じ取れないことを彼に伝えた。
「たぶん、好きでやってることなんだし………そんなに苦労はしてないんじゃないかな? おまけに……隣にはいつも、敏腕な秘書がいることだし」
「そう……なんですか」
ソニアの回答に対し一応は納得したらしい、アスベルはそう返事をした。 そんなアスベルにソニアは、これから彼がいくべき場所を伝える。
「さて、ここからターフタウンまでの道のりも長いけどさ、それもチャレンジの一つだよ! がんばれ、ジムチャレンジャー!」
「はい!」
そうソニアと言葉を交わして一度別れたアスベルは、彼女に告げられたとおり第一鉱山へと向かう。 その道中ではポケモントレーナーからバトルを挑まれることがあったが、それにたいしアスベルは全戦全勝を決めた。 彼のその実力に、多くのものが驚く。
「なんだあいつ、めっちゃ強いぞ!」
「片目の癖に………」
「………」
その最中には、アスベルの目についてふれるものもいた。 それに対してアスベルは思わず相手をにらみつけ相手をふるわせることがあったが、なにも言わず彼は歩みを進めるのであった。
「この先だな、第一鉱山は」
そうして突き進んだ先に、第一鉱山はぽっかりと大きな穴をあけ洞窟の形をした状態で人々を待ち受けていた。
「よしっ!」
「うぅーん、あなたって強いのねぇ!」
その鉱山の中では、やはり彼にポケモンバトルを仕掛けてくるものがいた。 ほとんどがこの鉱山につとめる従業員であり、仕事の合間にバトルをしているんだとか。 そんな話を聞いたアスベルは内心、ふつうに仕事をしろよと思っていたのは、内緒の話である。
「あれ、アスベルだ」
「マリオン?」
名前を呼ばれたのでそちらを見るとそこには、腕にポケモンを抱いたマリオンが立っていた。
「キミもここを越えようとしていたのか?」
「うん、ボク……この洞窟でこの子をゲットしようとして………たった今成功したばかりなんだ」
そう話をして、マリオンは自分の腕の中にいるコロモリを見せた。
「コロモリか。 でも、目的を果たしたのなら……何故ここに止まっているんだ?」
アスベルが声をかけると、マリオンは悩ましげな顔をしながら洞窟の奥をみる。 そこには、全身を包むようなコートを身につけた、癖のある金髪の少年が立っていた。 その顔を見たことのあるアスベルは戸惑う。
「あれ……彼ってたしか、ジムチャレンジャー……だよな……」
「なんかこの先にイヤーなヤツがいるの。 こっちにきたらバトルだって言ってくるんだよ? ボク……あまり関わり合いたくなくて………」
「…………」
「あ、ちょ、アスベル!?」
マリオンの話を聞いて、アスベルは迷わず彼の元へいった。 この状況にデジャブを感じたマリオンは、アスベルを止めようとするが、アスベルは少年に迷わず声をかける。
「道をあけてはくれないか。 キミがそこにいると通れない人がいて…困っているんだ」
「ん?」
その少年は、紫色の瞳でアスベルをにらみ返した。
「………唐突に現れて、なにを言い出すかと思えば……僕は暇でないのですよ。 だから、邪魔は許されないことです」
「そこを通るくらい、いいだろう?」
アスベルは少年にそう告げると、少年はアスベルの顔をじっくりと見て、彼のことを思い出し告げる。
「…………あなたは確か、チャンピオンに推薦されたというジムチャレンジャーですよね?」
「そうだが」
少年の言葉にアスベルは率直にそう告げると、少年は鼻で笑う。
「……くだらないですよ」
「なに?」
「いいですか? チャンピオンよりもリーグ委員長の方が偉いですよね?」
「………?」
「つまり、委員長に選ばれたボクの方がすごいのですよ」
どうやらこの少年は、自分の方がアスベルより上位だと伝えたいらしい。 マリオンはそんな少年の態度に引いている一方、アスベルはきょとんとした顔で、少年に問いかける。
「………それは…オレ達の実力や旅に、そこまで関係あることなのか?」
「………理解はできないようですね」
「ああ」
「そこハッキリ言う!?」
思わず横にいただけのマリオンは、アスベルのすんなりとした返事に対しツッコミを入れてしまう。 その一方で少年は、アスベルの態度をどこか気に入らないと呟くと、ボールを構える。
「では、ボクの言ってることがわからない……そんなかわいそうなあなたに、ポケモンバトルを通して、ボクの強さを教えてあげますね」
「……待て」
「ん、敵前逃亡するつもりですか?」
「逃げる気はない。 だが……」
アスベルは、少年の顔を見て告げる。
「勝負をするなら、その前に……名前くらい教えてくれても、いいだろ」
「……………」
「オレの名前は、アスベル。 アスベル・マクリルだ」
「……ビート、ですよ」
アスベルが名乗ると、それに続いて少年はビートと名乗る。 彼の名前を知ったアスベルは頷くと、ボールを取り出して彼に向ける。
「そうか……じゃあ、ビート。 オレと勝負をしてくれるな。 それで、オレが勝つことができたら、オレと彼女に道をあけてくれ」
「自分だけでなく他人の分まで……忙しいことだ」
そう言ってビートは、ボールから一匹のポケモンを出した。 それと同時にアスベルも、ボールから一匹のポケモンを出す。
「行きなさい、ユニラン!」
「頼む、サルノリ!」
ビートはユニラン、アスベルはサルノリを繰り出したのだ。 まず動き出したのはスピードのあるサルノリであり、えだづきでユニランを攻撃する。 その一撃は鋭く、ユニランに大きなダメージを与えたが、ユニランはそれに耐えたら、反撃としてサイコウェーブを放ちサルノリを攻撃する。
「サルノリ!」
「ユニラン、そこでシャドーボール!」
「かわして、ひっかく攻撃!」
サルノリはシャドーボールを回避し、ユニランにひっかく攻撃を仕掛けようとした。 だがそれをユニランはリフレクターで防ぎ、ダメージを軽減させた後に再びシャドーボールを打ち込んできた。
「よし…そのまま……」
「その岩をバネにしろ!」
「なに!?」
「キャキーッ!」
サルノリが吹っ飛ばされた方向にあった岩を、サルノリは大きく蹴り、跳ね返ることでダメージを軽減させた。 続けて繰り出されたえだづきはリフレクターにより軽減されるが、アスベルは決して攻撃の手をゆるめようとはせず、新しい技を指示する。
「そこだ、はっぱカッター!」
そのはっぱカッターはユニランに命中し、リフレクターなど意味がなかったのではと思わせられる大きなダメージを与えた。 それによりユニランは戦闘不能になった。
「!?」
「急所に……当たったんだ……!」
あのはっぱカッターが急所に当たったことを、観戦してたマリオンがしっかりと見ていたのだ。 相手のポケモンを倒すことに成功したアスベルは、サルノリにたいし笑みをみせる。
「よし、いいぞサルノリ」
「キャッ!」
アスベルの言葉に対し、サルノリは笑顔で飛び跳ねて、全身で喜びを表現した。
一方、ビートは戦闘不能となったユニランをボールに戻していた。
「…クッ…まぁでも、あなたのポケモンにも見せ場はあげないとね……!」
「………明らかにいいわけ臭いんですケド………」
そのビートの言葉を聞いたマリオンは小声で呆れてツッコミを入れる。 そんなマリオンをビートはにらむが、マリオンは口笛を吹くだけであった。
「次のポケモンはうまくいかないことでしょう!」
ビートはそういって、もう一個のボールを手に取った。
「まだいるのか」
「当然ですよ……ゆくのです、ミブリム!」
そういいビートが繰り出すのは、桃色の体に水色の頭のポケモン、ミブリムだった。 相手が新しいポケモンを出してきたことにたいし、アスベルはサルノリを一度下げる。
「あれ、変えちゃうの?」
「ああ、この子でいってみたいんだ……頼む、ヤクデ!」
アスベルはそういうと、先ほどゲットしたばかりのヤクデを繰り出した。 まず動き出したのはミブリムであり、ヤクデにたいしサイコショックを放ってきた。 その一撃は非常に効いており、このことからこのミブリムのレベルが高いことが伝わってくる。
「ねんりき!」
そこでミブリムはさらに、ねんりきでヤクデの動きを封じてそのまま振り回す。 その動きは激しいがアスベルは冷静にヤクデにひのこを指示し、そのひのこがミブリムに降りかかったことでヤクデはねんりきから解放される。 すぐビートはミブリムに再びサイコショックを指示して、ヤクデを攻撃したがヤクデはそれをひのこで打ち消しつつミブリムに接近する。
「そこだ、ヤクデ! かみつく攻撃!」
そのかみつく攻撃がミブリムに命中すると、なんとミブリムはそのまま倒れてしまった。
「み、ミブリム……!」
「よし、いいぞヤクデ!」
アスベルはバトルに勝利したヤクデをほめると、ヤクデもアスベルによってくる。 そのヤクデを抱き上げたアスベルはヤクデを撫でて、勝利をしたと確認する。
「ふぅ、なんとか勝てたな」
「やったね、さっすがアスベルだよ!」
そのアスベルをマリオンが賞賛している一方で、ビートは眉間にしわを寄せつつミブリムをボールに戻し、彼に告げる。
「なるほど……いいんじゃないですか? こちらも本気ではありませんし……」
「そうか、本気を出さなかったのか」
その言葉をアスベルはさらりと受け流す。 そんなアスベルに対しビートは話を続ける。
「驚いた、少しはやるようですね……ですが、あなたの戦い方はきちんと記憶しておきますから……本番ではボクが勝ちますよ」
「………」
「では、失礼させていただきますよ。 ここで集められる願い星は集めましたからね……もう用はないですよ」
「………そうか」
それだけを言い残し、ビートは立ち去っていった。 そのときアスベルは、ビートの腕につけられている腕時計がしっかりと彼の腕のサイズに合っていないことに気付き、指摘をする。
「……腕時計、ぶかぶかだぞ?」
「……未熟ものが、委員長のおくりものにけちをつけないでください」
アスベルの言葉に対しビートはそう返すと、足早に去って行ってしまった。
「なんだろ、アイツ? 負けたくせしてエラソーに」
「…………」
「アスベル?」
少し様子のおかしいアスベルに気付いたマリオンがもう一度名前を呼ぶと、アスベルは我に返ったかのように呟く。
「多分これから、彼と何度も戦いそうな予感がする…」
「えー? ボクはヤダー。 あからさまにメンドクサイもーん」
「同じジムチャレンジャーだろ? だったら競い合うなかで、実力を確かめあう機会も多いとおもうぞ」
「それは…そうかもだけどぉ…」
それでも不満の色を浮かべているマリオンを横目に、アスベルはあの勝負の中でビートから感じていたことを口に出す。
「それに……」
「それに?」
「オレ……彼と何か……似通ったものを感じる………」
アスベルは、自分とビートがどこか似た部分があるのでは…と、彼とのバトルを通して感じていた。 どこが、と言われても答えられないのだが。 だがその発言を聞いただけで、マリオンは不満の色を見せる。
「アイツとアスベルは全然違うじゃん!」
「そうか?」
「そうだよっ! あいつはあからさまに嫌みったらしくて……周りを自分の敵としか認識してないように感じるけど……でもアスベルはそんなのちっとも感じない……いつもボクやみんなに、優しいもん!」
マリオンはアスベルとビートの違いを指摘すると、アスベルはきょとんとしながらも小さく笑みを浮かべる。
「ふふっ………マリオンがそう思っているのなら、オレもそう思うとするかな?」
「そうそう!」
アスベルのその小さな笑顔をみて、マリオンはにっこりと笑った。
次回予告。
鉱山をこえ、道路をこえたアスベルは、最初のジムリーダーにであう。
彼とポケモンバトルを約束したアスベルはそのまえにまず、ターフタウンにあるという地上へをみにいくのであった。
まるで、惹かれていくかのように…。