ジムチャレンジをはじめたアスベルは最初のジムのある街を目指して歩き出す。
目的地であるターフタウンを目指すには、鉱山を抜ける必要があったのだが、そこでアスベルは、同じくジムチャレンジャーのビートに遭遇し、彼とバトルをした。
結果はアスベルの勝利だった。
この勢いを保とうとアスベルは、鉱山を抜けたのだった。
第一鉱山を越えたアスベルは、4番道路に到着した。 途中ではガラルの姿のニャースを使うポケモントレーナーと勝負をしたり、自分に群がるピカチュウの群にたいし顔をほころばせたりした。
「おーい、待ってくれよぉ!ウールー!」
「え?」
そんな道中のこと、どこからか声がしたかと思えば、白くて丸くてもふもふしたなにかがつっこんできた。
「うわわっ」
アスベルは、その白くて丸くてもふもふした何かを受け止める。
「めぇぇ~~」
「う、ウールー?」
自分につっこんできた、その白くて丸くてもふもふしたなにかの正体は、ウールーだった。 そのうしろから、大きな帽子をかぶった大柄の男性が駆け寄ってきて、のんびりとした口調でアスベルに話しかけてきた。
「あのう、ウールーがたいあたりしてきて、大丈夫ですかねぇ……?」
「ああ、平気です。 ウールーのたいあたりには慣れているんで……」
自分を心配するその男性に無事を伝えるアスベル。 そのときのアスベルの顔を見て、男性はあることに気づく。
「あれ、もしかしてきみはジムチャレンジャーの人ですよねぇ?」
「よくご存じですね」
「開会式でみましたよ。 じゃあこれから、ターフスタジアムにもいくんですねぇ」
「はい」
アスベルがジムチャレンジャーだと知ったその男性…もとい、ジムリーダーのヤローは、にっこりと笑って自己紹介をした。
「改めて。 ぼくはくさポケモン使いのジムリーダーの、ヤローといいます」
「こちらこそ。 ポケモントレーナーの、アスベルともうします」
ヤローがターフスタジアムのジムリーダーであることを知ったアスベルは、彼が次に戦う相手なんだと認識した。 この挨拶だけでも、ヤローの根っからの穏やかさが伝わってくるが、ジムリーダーをつとめているだけあって、ポケモンバトルの実力はかなりのものなのだろうと察する。
「あ、にーちゃん!」
「?」
そんなとき、ヤローに少し似た少年が駆け寄ってきた。 その少年はヤローをにーちゃんと呼んでいることから、ヤローとは兄弟の関係にあるということが推測できる。
「ここにいたんかにーちゃん。 ジムリーダーに挑戦しにきたって人が待っとるよ」
「ああ、わかっとるよ。 今いくからな。 さぁさぁ、ウールー。 一緒に帰ろうなぁ」
「ぐもも~」
そうヤローは優しくウールーに呼びかけると、ヤローはウールーを連れてポケモンスタジアムに帰って行った。 そこでヤローの弟はアスベルに気付くと、彼にも声をかける。
「あんさんもジムチャレンジャーさんかぁ? にーちゃんはのんびりしとるけど、とっても強いど!」
「ふふ、そうだろうね」
「どんなバトルになるか、おらも楽しみにしとるよ! まったなー!」
そう言ってヤローの弟も、立ち去っていった。 アスベルは、ヤローの姿を見て思ったことを呟いた。
「あの人が最初の相手か………すごくいい人そうだけど、ジムリーダーだから油断は大敵だな………」
そんなヤローとの出会いを経験しながらも、アスベルはターフタウンに到着することができた。
「ここが、ターフタウンだな」
ターフタウンは長閑な農園の町であり、ここでは多くの草花や野菜、果物などが豊富に作られている。 その町の名物らしい名物といえば、ジムチャレンジのために設置されているターフスタジアムと、大昔に描かれたとされる、摩訶不思議な地上絵だろう。
「おー、アスベル!」
「ホップ」
その町のポケモンセンターの前で、アスベルはホップと会った。
「もしかして、もうジムチャレンジには勝ったのか?」
「もちろんだろ! ウールーの扱いに関してはおれの得意分野だからな!」
ウールー、というポケモンの名前を聞いて、先ほどヤローがウールーを追いかけていた理由などを察するアスベル。
「………もしかして、さっきの話って………」
「ん?」
「……いや、こっちの話だ」
そう会話をしていると、ホップがあることを思い出しその話題をアスベルにふる。
「そうだ! そういえばソニアが、お前のことを捜してたぞ!」
「え、ソニアさんが? どうして………」
「ターフタウンにある地上絵について、話を聞きたいって言ってたぞ! おれにはサッパリわかんなかったけど、お前なら頭いいし……なにかわかるかもしれないぞ!」
「ふーん?」
ホップの話にアスベルが耳を傾けていたとき、ポケモンの鳴き声が聞こえてきた。
「イヌヌヌワッ!」
それは、でんきタイプのこいぬポケモン、ワンパチだった。 そのワンパチには、アスベルもホップも心当たりがある。
「ワンパチ?」
「こいつ、ソニアのワンパチだな。 道案内が得意だぞ!」
「じゃあ、ジム戦の前にまずはそっちへいくとするか。 オレ、行ってくるよ」
「おう! ソニアによろしくな!」
そうホップと言葉をかわし、アスベルはワンパチについていったのであった。 ワンパチは時々うしろを振り返っては、アスベルがついてきているかを確認しながら先導している。
「ワンッ?」
「ふふ、心配しなくてもちゃんとついてきてるよ」
「イヌヌワン!」
そうワンパチに声をかけながら、アスベルは階段を上っていき、地上絵を眺めることができる広場に到着した。 そしてそこには、そのワンパチの主人たる女性ソニアの姿があった。
「ありがと、ワンパチ!」
「イヌヌヌワン!」
「ソニアさん!」
「アスベル、来てくれたのね……待ってたよ!」
ソニアは、アスベルに笑顔を向けた。
アスベルがワンパチの案内について来てここまできたことを確認したソニアは、彼に用件を伝える。
「実は、今回はあなたの考えを聞きたくて、わざわざきてもらったんだ」
「オレの意見………ですか」
「うん、あなたって故郷にいるときから割と頭がよかったでしょ? もしかしたら、あなたなりに感じるものが、あるかもしれないの」
あれをみて、とソニアは、草原に描かれたものを指さした。 なにか炎のようなものを吐いている異形の巨人のようなものと、それにより苦しむ小人のようなもの。 それが、地上絵としてえがかれていた。
「あれは………」
「あれが、ターフタウンの名物とされる大きな地上絵。 あなたからみて、あれはいったい…なんだと思う?」
「…………」
アスベルはその地上絵をじっくりと見つめる。 そして、この地につたわる巨大なものといえばと、アスベルはポツリと呟いた。
「…………これは…………ダイマックス、なのでしょうか…………?」
「それもあるよね………大きくなったポケモンにも見えるし。 ………ただ、3000年前の人が、想像豊かであったとしても、見たことのないダイマックスを描けるのかな?」
「………そういえば……ダイマックスって、割と最近のことなんですか?」
「うん……まぁ……最近といえば最近かもしれない………きみも知っていると思うけど、あのダイマックスをポケモンバトルに投入したのは、あのローズさんだしね」
そうダイマックスについて語りつつ、ソニアはある伝承を呟いた。
「………大昔……黒い渦がガラル地方を覆い……巨大なポケモンが暴れ回った………」
「それが確か、ガラル神話の一説でしたよね」
「ええ」
ソニアはガラル神話の一説を語ると、あらためて考察をする。
「………じゃあ、あの巨大なものがブラックナイト、なのでしょうか?」
「…………そうともいえるかもしれない………」
ガラル神話の謎を追求すること、その課題を思い出して、つぶやいた。
「ブラックナイトと呼ばれた黒い渦って、なんなの………? ダイマックスとどういう関係があるの………? それを調べるのが、わたしの今の仕事………もとい、おばあさまの宿題……か……」
「なんだか重いですね」
「まぁでも、今まで特になにもしないまま………助手を自称したままでいたツケ、かな……」
アスベルはソニアの話を黙って聞き、目線を地上絵に向けた。 その蒼い瞳は、じっと地上絵をとらえて動かなかった。 まるで、その地上絵に見入っているかのように。
「…………」
「アスベル、食い入るようにみてるわね」
「あ、つい……」
ソニアに声をかけられたことで、アスベルは我に返る。 彼女に指摘されていなかったら、ここにとどまったままずっと、地上絵を見てしまっていたのだろう。 その中で、アスベルは地上絵にたいし思ったことを口にする。
「………なんだか……」
「ん?」
「なんだか……この地上絵を見たことがある……そんな気がして………」
「ガイドブックか何かでみたんじゃない?」
「そうなんでしょうか……」
アスベルは、腕を組んで考え事をした。 何故自分は、ホテルにあった英雄の像といい、この地上絵といい、ガラル神話に関係するものに心惹かれているのだろうか……と、思いながら。
「………もしかしたら………オレは…………………」
「………アスベル?」
「…………………」
ソニアと地上絵についての話をしたアスベルだったが、このままでは自分は地上絵から動かないと悟り、振り切るために話を切り上げ、その場から立ち去ることを選んだ。 本来の目的に戻る、という意味を含めて。
「貴重な意見をありがとう、これも謎解明のヒントの一つになることは間違いないよ!」
アスベルの意見を聞いたソニアは、アスベルに対しそう言い、これからのジムチャレンジにたいして激励を送った。 彼女の激励を受けたアスベルはポケモンセンターに向かいポケモンを回復させた後、ジムリーダーに挑む体制を整えようとしていた。
「多分ホップは……次のジムリーダーに挑むため、先に行ってしまったんだな………」
この町には既に親友の姿がないことで、アスベルは彼が先へ行ってしまったのだと悟る。
「まぁ、そのままこの町でストップしてしまったら、オレの方が申し訳なくなるからいいんだが………な………」
ミルクティーを飲みながらアスベルは、先へ行ってしまったホップのことを考えつつ、これから挑むジム戦について考えていた。
「相手はヤローさん……確か、くさタイプの使い手だったな………」
これでもタイプ相性については、頭にしっかりとたたき込んでいる。 そして幸いにも、ヤローが得意としているくさタイプに有利なポケモンを、アスベルは自分の手持ちに入れている。
「アスベルさん、ポケモンの回復が終わりました」
「ありがとうございます」
ミルクティーを飲み終え、アスベルはジョーイさんから預けていたポケモンを受け取ると、ポケモンセンターを出てターフスタジアムに向かい、自分のポケモンを一度外に出して、使用するポケモンを決める。
「ここは、ココガラとヤクデの出番だな」
そう言って使用するポケモンを決めた次の瞬間、サルノリはキキッと甲高い鳴き声をあげて反発をした。 そんなサルノリをアスベルは必死で押さえつける。
「わ、わわわ! 大丈夫だサルノリ! 君も出番がある!」
「キキキッ!?」
「たぶん!」
「キーッ!?」
そんなやりとりがありつつも、アスベルはターフスタジアムで挑戦の手続きを終えた後でユニフォーム姿になって、最初のジムチャレンジに挑もうとしていたのであった。
「では、いってらっしゃい!」
「はい!」
そう受付に言われ、アスベルはスタジアムの中に足を踏み入れる。
「………必ず、勝ってみせる。 どんな相手であろうと………!」
次回予告。
ターフタウンにたどり着いたアスベルはついに、最初のジムリーダーに挑戦する。
ジムリーダーは、くさタイプポケモンの使い手ヤロー。
相性のいいポケモンが手持とはいえ、相手はジムリーダー……油断は大敵だ。
アスベルは、最初のジムリーダーに勝てるのか。