最初のジムリーダーが待つ町・ターフタウンにやってきたアスベルは、そこでジムリーダーのヤローと出会う。
スタジアムで試合を行う約束をした彼は、街の名物である地上絵を見に行った。
そこでソニアと会話を交わしつつアスベルは、地上絵に不思議とひかれていたのであった。
各地にあるスタジアムでは、ジムリーダーに挑む資格の有無を確かめるために、ジムミッションというのが行われる。
「よし、そっちだ!」
「めぇ~」
「いい子だ、あっちにいくぞ!」
このターフタウンスタジアムのジムミッションは、ウールーを指定の場所まで導き道をふさぐ牧草ロールの壁を破壊して進むというものだ。 元々ハロンタウンで牧場の仕事を義兄弟とともに手伝っていたこともあり、アスベルは難なくそのミッションをクリアすることができた。 途中でジムトレーナーが勝負を仕掛けてきたものの、アスベルはそれにも難なく勝利していった。
「ふぅ……あのウールー達がいい子ばっかりでよかった。 さて、いよいよ最初のジムバトルか……」
ジムミッションをクリアしたらその先に待っているのは、ジムリーダーとの勝負だ。 アスベルは眼帯や手袋を直すと顔を引き締める。
「よし! みんな、いくぞ!」
アスベルの声に、ボールの中のポケモン達もガタガタと揺れて答える。 アスベルはそれを感じながら、スタジアムのバトルフィールドへ足を踏み入れた。 同時に、ジムリーダーのヤローもそこに足を踏み入れる。
「きましたね」
「はい」
向かい合いながら、ヤローはアスベルに話しかけてくる。
「ぼくのポケモンスタジアムは、ジムチャレンジの始めの場所なので、次々にジムチャレンジャーがくるのです」
「そうなんですか」
「ですから、ジムミッションも割と厳しめにしとるのですが………アスベルさんはちゃんと、ジムミッションをクリア! さすがの一言だわ!」
ヤローはにっこりと笑い、ジムミッションをクリアしたアスベルを評価する。
「君はポケモンへの理解がとっても深いんだな」
「そう……でしょうか?」
「そうですよ。 だからウールー達はきみの指示や追い込みにも、素直に言うことを聞いていた。 こりゃあ手強い勝負になる………ぼくもダイマックスを使わねば!」
「よろしくお願いします…!」
「こちらこそ!」
そう挨拶を交わした二人はそれぞれで所定の位置に着き、同時に歓声が沸き上がり実況も始まる。
「さぁ始まったぞ! ジムリーダー・ヤローと! ジムチャレンジャー・アスベルのジムバトルだーっ!」
「うぉぉぉぉっ!!」
「このジムのルールは、2対2……どちらかのポケモンが2体とも戦闘不能になった時点で試合終了となります! なお、ポケモンの交代はチャレンジャーのみに認められます! それでは………バトル・スタート!」
試合開始の号令がかかり、2人はそれぞれ、最初のポケモンを繰り出した。
「まずは、ヒメンカ! いっておいで!」
「頼む、ヤクデ!」
#
ヤローの一番手はヒメンカ、アスベルの一番手はヤクデだった。 相手がむしとほのおという、くさに有利なタイプを持つヤクデだったことにヤローは強気に笑う。
「セオリー通り、くさタイプに有利なポケモンできたなぁ!」
「ひのこ!」
「はっぱカッター!」
先に動き出したのはヤクデであり、ほのおタイプの技でヒメンカを攻める。 そこでヒメンカははっぱカッターを繰り出し、その技でひのこを防ぐ。
「からの、こうそくスピン!」
さらにヤローはこうそくスピンをヒメンカに繰り出させ、ヒメンカはこうそくスピンでヤクデを攻撃した。 その一撃を受けたヤクデは吹っ飛ぶが、すぐに反撃にでる。
「ヤクデ、こんどはかみつく攻撃!」
「まもる!」
咄嗟の判断でかみつく攻撃を繰り出すが、ヒメンカはそれをまもるで防ぎ、そこからグラスミキサーを放ってヤクデを攻撃する。 手早くほのお技を妨げ、そこから攻撃にでたことといい、まもるで防ぎつつ攻撃をしたりしてくるヤローの戦い方をみて、アスベルは彼は戦うことにたいし慣れているのだと感じ取る。
「………相性の有利不利にたいする対策は万全、か………」
「せいちょう!」
そこでヤローはせいちょうを使い、ヒメンカを強化しようとしていた。 その隙にとアスベルはヤクデにむしくいを指示し、ヒメンカを攻撃する。
「ヒメンカ!」
「そこから、ひのこ攻撃!」
さらにヤクデは至近距離でひのこを放ち、ヒメンカはそのダメージを大きく受ける。
「ギガドレイン!」
ヤローはすかさずギガドレインを指示して、体力を回復させる。 だが相性的な問題によりヒメンカはそれほど大きく回復することができなかった。
「グラスミキサー!」
「ひのこ!」
グラスミキサーで攻撃を仕掛けたヒメンカだったが、そのグラスミキサーをヤクデはひのこで焼き払い、ヒメンカにもう一度接近する。
「さらにひのこを放て!」
そこでアスベルはたたき込むかのようにひのこを放ち、ヒメンカを打ち倒した。
「ヒメンカ!」
ヒメンカが倒され、ヤローは驚き戸惑う。 そこに、実況の声が響きわたった。
「ああっと! ここでヤロー選手のヒメンカ戦闘不能となった! 最初に勝利を手にしたのは、アスベル選手のヤクデだぁぁぁ!」
「オーッ!」
「相性の有利を強気に表現して見せ、さらにその勢いを利用したアスベル選手! さぁヤロー選手、ここからどうする!」
実況の声を聞き、ヤローはヒメンカをボールに戻し、そのボールをなでて労いの言葉をかける。
「お疲れさまだなぁ、ヒメンカ。 がんばったがんばった……あとはゆっくりとおやすみ」
「よし、いいぞヤクデ」
「クデクデェ!」
アスベルの方も、勝負に勝ったヤクデに声をかける。 ヤクデはその声に答えて大きく鳴き声をあげる。
「………やっぱり手強い勝負になったなぁ………」
「?」
このバトルでなにかを感じ取ったのか、ヤローはそうつぶやいた。
「うぉぉぉ……まだまだぼく達は粘る! 農業は粘り腰なんじゃ! いくよ、ワタシラガ!」
そう声を上げると同時に、ヤローは2番手としてワタシラガを出した。 そしてヤローは、アスベルに交代をするのかを確認する。
「さぁ、きみはポケモンを交代させるかな!?」
「……いえ、ヤクデのままでいきます!」
「わかったよ!」
そう言うとヤローは、ワタシラガにかふんだんごを指示してヤクデを攻撃する。 ヤクデはそれを正面から受けても耐え、ひのこを放ち攻撃をする。 だがそれは、ワタシラガのかげぶんしんで妨げられる。
「く、かげぶんしんか…!」
「そこで、もう一度かふんだんご!」
そこでヤクデはふたたびかふんだんごをくらい、大ダメージを受けてしまう。
「おおっと、アスベル選手のヤクデ! ここで手強い一撃を受けてしまい、戦闘不能寸前に追いつめられた!」
「クッ………!」
おそらくヒメンカとの勝負のダメージが影響しているのだろう、このまま続けたら危険だと判断したアスベルは、ヤクデを下げるという選択をとった。
「戻れヤクデ、ここから頼む……ココガラ!」
アスベルは次に、ココガラを出す。 そこで、2人はダイマックスバンドを見つめ、頷く。
「さぁダイマックスだ! 根こそぎ刈り取ってやる!」
「一気に決めるぞ……オレ達も、ダイマックスだ!」
ヤローとアスベルはそれぞれのポケモンを一度さげ、ダイマックスバンドの力でボールを巨大化させる。 そして、そのボールを投げて改めてポケモンをその場に出す。
「ワタシラガ!」
「ココガラ!」
ボールからでたとき、双方のポケモンはスタジアムを突き破らんとするほどに巨大化していた。
「さぁここで双方ともにポケモンをダイマックスさせた! 大型ポケモン同士のぶつかりあいだぁーっ!」
「オォォォォォーオーォォォォオオオー!」
実況も、観客達も、一気に盛り上がりを見せる。 アスベルとヤローはそれぞれで技を指示する。
「ダイジェット!」
「ダイアタック!」
ダイマックスになったときに繰り出すことのできる技は、すでに勉強済みだ。 アスベルは迷わずひこうの技を指示する。 ワタシラガはそれに耐えるとダイアタックを繰り出してココガラを攻撃した。 そしてダイソウゲンを繰り出してココガラを追いつめていく。
「押し切れ、ダイジェット!」
アスベルはそのダイソウゲンに対し、ダイジェットで押し切るよう指示を出す。 ココガラはダイジェットを放ち、ワタシラガに大ダメージを与えた。
「ワタシラガ!」
そのダメージにより、ワタシラガは倒れた。 倒れると同時にダイマックスも解除される。
「おぉーっと、ここでワタシラガは戦闘不能! アスベル選手のココガラが押し切りました! これによりヤロー選手の手元には戦えるポケモンはおらず、アスベル選手の勝利が確定したぁーっ!!」
「おぉぉーっ!!」
勝敗がはっきりと決まり、ヤローは負けたか…と呟くとワタシラガの元へ向かい、抱き上げる。
「…………よくがんばったなぁ……ありがとう、ワタシラガ。 戻ってゆっくりとおやすみ………」
そうねぎらいの言葉をかけながらワタシラガをボールに戻したヤローは、苦笑しながら額の汗を首に巻いていたタオルで拭く。
「草の力みんなしおれた……なんというジムチャレンジャーじゃ!」
「よし、よく頑張ってくれたな…ココガラ!」
アスベルは、勝負がついたことで元の大きさに戻ったココガラを抱き留め、撫でる。 するとそのとき、ココガラの体が光を放った。
「………!!」
「おぉ!?」
アスベルの目の前でココガラの体は徐々に大きくなっていき、突風が巻き起こる。 そして、光と風が止んだらそこには、黒と青の羽を持つ赤い瞳の、新しいポケモンがいた。
「………これは………進化、したのか……!?」
「素晴らしいことですね! きみの強さが、その子を進化させたんですわ! おめでとう!」
アスベルの幼き頃からの相棒であるココガラが、今、アオガラスに進化したのであった。
「うぉおぉーーーっ!!」
その進化の瞬間を見た観客は、また声を上げたのであった。
アスベルはヤローと向かい合い、彼に試合にたいする礼の言葉をつげる。
「試合、ありがとうございました。 ヤローさん」
「いやいや、こちらこそですよっ! きみとの勝負は楽しかった! これはきみにとって…きっと、実りの多いポケモン勝負だったんだな!」
ヤローはアスベルに笑顔でそう言うと、あるものを差し出した。
「ジムチャレンジにおいて、ジムリーダーに勝った証として………くさバッジをお渡しするんだわ!」
「ありがとうございます!」
あらかじめ渡された輪の中にはめていくかのように、くさバッジをはめたアスベルは、ヤローの手を受け取りしっかりと握手をした。 これにより、アスベルは最初のジムを突破したことを表したのである。
「ジムバッジを8個集めるのが、ジムチャレンジ突破の条件。 ほかのジムリーダーにも挑み、見事勝利を手にするんじゃ!」
「はい!」
ヤローの言葉に対し、アスベルはしっかりと返事をした。
「そうそう、アドバイス! ジムチャレンジは順番が決まってるんだわ、次はみず使いのルリナさん。 5番道路を越えてバウタウンにいくことを勧めますよ」
「わかりました! オレは……このまま次の場所へ進みます!」
「その調子!」
そうヤローと言葉を交わし、アスベルとヤローはそれぞれの控え室に帰っていった。 アスベルは控え室でユニフォームから普段の姿に着替え、スタジアムを出て行った。
「おつかれにーちゃん! かいふくの薬とげんきのかけらを持ってきたよー! はやくポケモンに使ってあげぇ!」
「ああ、ありがとなぁ」
一方のヤローは控え室で弟と会った後、ポケモン達に回復の薬やげんきのかけらを与えて回復させつつ、今回のジムチャレンジにたいし思ってたことを口にする。
「今年は、優秀なトレーナーが、今までよりも多い予感がするねぇ………」
「んぇ、そうなんか?」
「うん。 ホップくんにアスベルくん、そしてマリオンさんにマリィさんが今のところ特別に秀でてる気がするなぁ………。 彼らはこれから、どんどん、種からつぼみ……そして大きな花が咲いていくだろうなぁ! その花が咲いたときが、楽しみだなぁ!」
ヤローはこれまで、多くのトレーナーがジムチャレンジのためにここに挑んでくるので、多くのトレーナーを見てきている。 その中でもヤローは今年、特に優秀なトレーナーを見つけたらしい…その顔には、笑顔が浮かんでいる。
「なんだか今のにーちゃん、今までのジムチャレンジのときより……すっごい楽しそうだなぁ!」
「そっかぁ?」
「そーだよ」
ヤローの語りを聞いた弟は、そのときのヤローの様子からそう感想を口にした。
「……きっと、さっきのにーちゃんの話が、本当のことだからだな!」
「………かも、しれんなぁ…………」
そんな弟の話を聞き、ヤローは静かにほほえんだ。
「よし、勝てたぞ……!」
スタジアムを出たアスベルは、先程自分が手にしたくさバッジを見つめ、小さく笑みを浮かべた。 そうして、勝利の喜びを実感して、かみしめているのだ。
「ここからまた、気を引き締めて進もうな………みんなで!」
しかし、ジムに勝利したからといってまだ始まったばかりだ。 だからこそアスベルは決して慢心することはせぬようにと己を戒め、ポケモン達にそう呼びかけ、彼らとともに突き進もうとしていた。
次回予告。
最初のジムリーダーに勝利を決めたアスベルは、つぎのジムリーダーのいる街を目指して出発する。
そのとちゅうで彼はマリオンと出会い、ポケモンバトルをすることに。