オーヴ地方のジムリーダー   作:雪見柚餅子

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本編とはあまり関係のない話です。


幕間1

 海を進む一隻の貨物船。大量のコンテナを運ぶその船の中央部で、サングラスを掛けた白いスーツの集団が、1つのアタッシュケースを囲んでいた。

 

「これが例の物か……」

「ああ。これが有ればきっと……」

 

 彼らが話し込んでいると、背後で何者かが走る足音が聞こえだした。

 

「お前たち、そこまでだっ!!」

 

 姿を現したのはトレンチコートを着た男性。彼はアタッシュケースを見つめながら叫ぶ。

 

「お前たちが奪ったそれを返してもらうぞっ!!」

「くっ!」

 

 サングラスの集団は急いでその場から逃げようとするが、既に周囲には男性と似た服装の面々が囲んでいる。

 

「大人しく捕まってもらうぞっ!」

「そうはいくか! お前らっ!」

「おうっ!」

 

 リーダー格の男が号令を掛けると、一人の男がボールを取り出し投げる。そこから姿を現すのは、ポケモンの中でも危険度ならトップクラスと呼ばれる、ギャラドスだ。いくら大きな貨物船とはいえ、船内が特別広いわけでは無い。6.5mもの体長を誇るギャラドスにとってはかなり狭く感じるだろう。実際、ギャラドスもどことなく苛立った様子を見せる。

 だがサングラスの集団はさらに予想外の行動を取る。

 

「ギャラドス、あばれろ!」

 

 その言葉に従ったのか、はたまた怒りのままに動いた結果か、ギャラドスはその巨大な体躯を船内のあちらこちらに体をぶつけながら、狂ったように暴れだす。

 巨大なポケモンのパワーの前では、人間は時として無力である。彼らを囲んでいた者の大半はポケモンを出す暇も無く、ギャラドスの尾によって吹き飛ばされる。

 その間に船内から脱出しようとするサングラスの集団。トレンチコートの男性達も、ギャラドスを抑え込むためにポケモンを繰り出したメンバーを残し、彼らを追って船内から出る。

 甲板に出ると、アタッシュケースを持ったサングラスの集団が、いつの間にか準備したボートに乗り込もうとする。

 

「待てっ!」

 

 トレンチコートの男性が追おうとするが、サングラスの集団はボールからポケモンを放ち、妨害をする。

 あのアタッシュケースの中身を奪われるわけにはいかない。男性もグレッグルを繰り出し対抗するが、中々相手のポケモンの数が減らない。

 

「はははっ。じゃあな、国際警察さんよ!」

 

 そう言ってリーダー格の男はボートを括り付けた縄を切ろうとする。

 

「ノクタス、ミサイルばりだっ!」

 

 だがそこで突如として、数㎝の長さの針が複雑な軌道を描いてボートに乗った男達を狙う。

 

「うわっ!?」

 

 それは、トレンチコートを着た男性の部下が手持ちであるノクタスに指示したものだ。逃げられないように牽制の目的で放たれたそれは、何の因果かアタッシュケースを持った男の手を掠る。そしてその衝撃に驚き、思わず男が手を放してしまった。

 

「なっ!?」

 

 思わずそこに居た全員が見つめる。

 男の手から離れたアタッシュケースは、重力に従って海面へと落ちる。

 

「おい、お前らすぐに回収するぞ!!」

「そうはさせませんよ!」

 

 リーダー格の男が命令するが、いつの間にかボートが粘着質の糸に絡め捕られている。

 

「よくやったよ、アメモース」

 

 トレンチコートの男性の背後に居た女性が声を掛けると、ボートの下からアメモースが姿を見せる。これでもう、逃げることは出来ないだろう。

 

「さあ、大人しくしてもらおうか……」

 

 ポケモン達を倒しながら、ボートに近づく。

 

「ちっ、お前ら緊急退避だ!」

 

 このままでは捕まる。そう判断したリーダー格の男が指示を下しながら、腰に装着していたボールを取り、起動させる。

 

「シィ?」

 

 中から出てきたのは、細い目をした黄色いポケモン―ケーシィだ。

 それに気づいたトレンチコートの男性が慌てて叫ぶ。

 

「待てっ!!」

 

 だが伸ばした手が彼らを捉えることは無い。

 

「テレポートっ!」

 

 その言葉と共にケーシィの技によって、彼らはボートごと一瞬にしてどこかへ消えてしまった。

 

「……」

 

 男性は彼らが消え去った後の空間をただ見つめる。ここで彼らを取り逃がしたのは大きな痛手だ。それにアタッシュケースも海に落ちてしまった。この辺りの海流はとても速い。ポケモンに捜索させるのも難しいだろう。

 

「申し訳ありません!!」

 

 ノクタスを連れたトレーナーが頭を下げる。あのアタッシュケースの中身は重要な代物だ。もし自分が技を指示しなければ……。

 

「いや良い」

 

 だが男性は首を横に振って、その謝罪を止める。

 

「むしろ奴らに奪われなかっただけ良かった。今は我々のやるべきことを遂行するんだ」

 

 その言葉に、部下の二人の顔を引き締める。

 そしてギャラドスを抑え込んでいるだろう仲間の元にへと駆け出しながら、男性は思案する。

 

 あのアタッシュケースの中に入っていたのは、とある地方で捕獲された七種類のポケモン。それらはいずれも強大かつ未知の能力を兼ね備えている。もし、何かの拍子で解き放たれでもしたら……。

 

「早く回収しなければ……」

 

 この先、起こりえるだろう事件に、男性は焦りを募らせた。

 

 

 

 

 

 それから数週間後。とある浜辺にある物が流れ着いた。それは一見モンスターボールのようにも見える、紺色の球体。

 そのボールが突如として震え始めると、中から何かが飛び出してきた。

 

「デンショック!!」

 

 飛び出したそれはどこかへと走り出す。その姿を見ていたのは、浜辺に居た僅かなポケモン達のみであった。




今更ながら、本作の時系列としてはアローラリーグにチャンピオンが就任して数か月後のイメージです。
世界線としては、USUMに近い世界です。ただしレインボーロケット団の事件は起きていません。
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