ポケモンリーグチャンピオン。それは全てのトレーナー達の頂点。誰もが憧れる存在である。
多くの場合、チャンピオンとなるためには、ポケモンリーグで全ての四天王を倒し、その上で現チャンピオンとバトルで勝利する必要がある。そしてポケモンリーグに挑むため、トレーナー達は各地のジムに赴き、8つのジムバッジを集めるのだ。
しかしオーヴ地方では、少しばかりルールが異なる。
オーヴ地方ではジムバッジには二つの種類が存在する。一つは縁が銀色の通称ルーキーバッジ。もう一つは縁が金色の通称マスターバッジだ。トレーナー達はまず、8つのルーキーバッジを集めることで、四天王への挑戦権を獲得する。そして四天王全員を倒すと、次の段階として、チャンピオン認定戦へ挑む権利を獲得する。
チャンピオン認定戦では、まずオーヴ地方の各ジムリーダーと本気のバトルを行う。その際に勝利の証として渡されるのが、マスターバッジである。このマスターバッジを18種類集めた人物、つまり全てのジムリーダーと本気のバトルをして勝利した者のみが、再度ポケモンリーグに赴き、四天王に再度挑戦することが出来る。そして見事勝利すれば、その者がチャンピオンと認定されるのだ。
このような回りくどいシステムにしているのは、オーヴ地方のポケモンリーグの目的の一つがトレーナーの育成にあるためである。ジムチャレンジ及び四天王とのバトルは、指導の一環という側面があるため、どうしても本来の実力とはなりがたい。それで四天王を全員倒したところで、真の意味でオーヴ地方の頂点とは言い難いだろう。しかし、四天王が最初から本来の実力でバトルをすると、ジム攻略者とは大きな差が出来てしまう。
これらの問題を解決すべく、オーヴ地方ではポケモンリーグ攻略とチャンピオンの選定にこのような仕組みを設定することとなった。
無論、それでもポケモンリーグ攻略は狭き門である。通常の攻略ですら、数か月に1人出るか出ないか。その攻略者達も、待ち構える本気のジムリーダー達とのバトルに苦戦している。
だが、これらの長き道を唯一完全に制覇した人物がいる。その者の名は『レイジ』。現オーヴ地方のチャンピオンとして君臨する人物である。
「シンボラー、エアスラッシュ!」
「ムクホーク、はがねのつばさで迎え撃て!」
ポケモンリーグ内にあるバトルフィールド。通常時はチャンピオンがチャレンジャーとのエキシビジョンマッチを行う際に使われる場所だ。しかし、今チャンピオンに挑んでいるのはチャレンジャーではない。四天王の一角であるバニラだ。
レイジも参加することとなり、総勢5名によるバトルを行うこととなり、厳正なるジャンケンの結果、最初にこの二人が勝負することとなった。
ルールは3対3のシングルバトル。先に手持ち全員が戦闘不能になった方の負けというシンプルなものである。
「やっぱり強いね! でも負ける気なんて無いよ! サイコショック!」
シンボラーが翼を広げ、強力な念動力を弾丸に変化させ放つ。
「でんこうせっかで躱せ!」
ムクホークは瞬間的に加速し、放たれた念動力を紙一重で避ける。そしてシンボラーを肉薄すると、鋭い嘴がその胴体を貫く。
「続けてブレイブバード!」
レイジの指示の下、ムクホークは急激に高度を上昇させる。そしてでんこうせっかの一撃で体勢が崩れたシンボラー目掛け急降下をする。
「ラスターカノンで迎え撃って!」
それに対してシンボラーは強力なエネルギーを放つことで迎撃しようとする。ムクホークの突撃とシンボラーの光線。互いがぶつかり合い、一時的な拮抗状態となるものの、僅かにムクホークのパワーが上回る。
「ホォークッ!!」
その一撃は光線を貫き、シンボラーにクリティカルヒットする。
「ボ……ラァ」
強烈な攻撃を受けたシンボラーは地面に叩きつけられ意識を失う。
「まずはこれで一体だな」
「そうだね。でもまだまだここからだよ!」
バニラはシンボラーをボールに戻し、新たなボールを構える。
「次のパートはカラマネロっ!」
ボールから出て来たのは、逆立ちをしたイカのような紫色のポケモン。鋭い眼光でムクホークを睨む。
「それを見るのは初めてだな。だが、相手にとって不足無しだ!」
レイジと同様にムクホークも油断せずにカラマネロを見つめる。
「先手必勝! ブレイブバード!」
ムクホークはシンボラーと同様に急降下からの突撃でカラマネロを貫こうとする。だが、
「ばかぢから!」
「何っ!?」
カラマネロが二本の触腕でムクホークの体を受け止めた。
「カラマネロのパワーは伊達じゃないよ!」
さらにカラマネロは触腕を使ってムクホークを振り回す。その遠心力にムクホークは為す術がない。
「マァーネッ!!」
勢いよく地面へと叩きつけられる。二度のブレイブバードによる反動を受けていたムクホークはそのまま戦闘不能となる。
「よくやったムクホーク。ゆっくり休んでてくれ」
自らのポケモンに労りの言葉を掛けながらボールに戻すと、レイジは次のポケモンの準備をする。
「パワーにはパワーだ! 行けっ、カイロス!」
姿を現したのは、二本の太い角が特徴的な虫ポケモン。
「まずはビルドアップ!」
「カイッ!」
カイロスが全身に力を込めると、細かった腕が一回り大きく膨張する。
「それならこっちはばかぢから!」
カラマネロは力強く触腕を振り上げる。
「カイロス、こっちもばかぢからだっ!」
しかし、その触腕はカイロスの腕によって掴まれる。全力のパワーで押し切ろうとするが、互いの力はほぼ互角。鍔迫り合いの様相を呈する。
「前はそのカイロスにやられたけど、今度はそうはいかないよっ!」
「それは楽しみだな! シザークロス!」
カイロスは頭部の角で挟もうとする。だが僅かの差でカラマネロが後ろに飛び去り、距離を取ったためその一撃は空を切った。
「カラマネロ、もう一度ばかぢからだよ!」
今度はその触腕を足元に叩きつけ、地面を隆起させた。足場が崩れ、若干動きが鈍ったカイロスにカラマネロが接近する。
「つばめがえしっ!」
素早い一撃がカイロスに直撃し、大きなダメージを与えることに成功する。
「カイロス、大丈夫か!?」
カイロスはまだ戦えると、腕を挙げる。だがカラマネロのパワーには押され気味であり、余裕があるとは言い難い。
「まだまだここからだよ。やっと仕上がってきたんだから」
このカラマネロの特性はあまのじゃく。本来ばかぢからは使えば使うほど力が下がっていく技だが、この特性を持つポケモンは逆にどんどんパワーを増していくという性質がある。カラマネロは何度もばかぢからを使ったため、今のカイロスのパワーを超えた力を有している。
「つじぎり!」
カラマネロが力を込めて放った触腕の一撃がカイロスを捉える。
「カイロス、シザークロスだ!」
だが接近した一瞬の隙を突いて、カイロスが角でカラマネロを切り裂いた。
「マァーネッ!?」
むしタイプの技はカラマネロにとって最大の弱点。一撃で大きく体力を削られる。
「つばめがえし!」
「シザークロス!」
互いに技を連発し、一進一退の攻防が続く。高いパワーを持つカラマネロの触腕がカイロスを薙ぎ払い、相性が良いカイロスの角がカラマネロを切り裂く。
「「ばかぢから!」」
その果てに互いに全力を込めたパンチを放つと、精根尽き果てたのか両者は少しよろめいた後、同時に倒れた。
「これは引き分けだな。それにしても、中々見ごたえのあるバトルだった」
ユコウの言葉通り、全力の二体のバトルは見ていた全員を引き込むほどのものだ。
だがまだバトルの決着は付いていない。互いに最後の一体が残っている。
「ふふふっ」
「はははっ」
二人は揃って笑いだす。それだけこのバトルが楽しいということでもある。
「それじゃ、行こうか」
「ああ。全力で相手してやる!」
そして互いに最後のボールを投げる。
「最高のステージにするよ、ネンドール!」
「行くぞ、フライゴン!」
奇しくも互いが出したのはじめんタイプ。それぞれが最も信頼するパートナーを繰り出すが、それだけには留まらない。
バニラは首に掛けたネックレスに、レイジは左手首に着けた腕輪に触れる。するとネンドールとフライゴンの全身が光に包まれていくでは無いか。
「煌け、私達のステージ!」
「究極の頂を駆け上がれ!」
光の中で二体のポケモンは徐々に姿を変えながら、その力を増していく。
「「メガシンカっ!!」」
そして光が晴れると、そこには新たな力を得た二体のメガシンカポケモンが姿を見せ、互いに睨み合った。
前半で長々と書きましたが、要はチャンピオンになるにはポケモンリーグを二回攻略する必要があるということです。
【メガシンカ紹介】
クリムガン
●ドラゴン ●かたいツメ
●種族値:77(0)-160(40)-125(35)-60(0)-115(25)-48(0)-585(100)
●こうげきが大きく上昇し、さらに特性がかたいツメとなったため、物理打点が大きく上昇した。その数値はメガメタグロスを超えており、同特性持ちのポケモンの中ではトップとなった。
●反面すばやさは全く上昇していないため、何かしらのサポートが求められる。
●見た目のイメージは、両腕が肥大化し、全身にトゲが生えた。また眼の上に二本の角が伸びている。