オーヴ地方のジムリーダー   作:雪見柚餅子

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今回はタキは登場しません。

使うか不明の裏設定
●オーヴ地方にはアクセサリーショップが存在し、キーストーンを所持していると、好きなアクセサリー(バングルやラベルピン等)に加工してもらえる。


14話

 カンザンシティ。オーヴ地方の中部に位置するこの街の目玉は、オーヴ最大の規模を誇るカンザン博物館と、その隣にあるジムだ。

 かつては博物館も来場者が少なく、街も寂れていた。だがポケモンリーグが設立され、この街にもジムが建てられたことにより、状況は一変。多くのトレーナーがこの街を訪れ、ジムチャレンジ中の寄り道として博物館に訪れるようになった。この影響で街は活気を取り戻し、今ではオーヴでも有名な都市となった。

 そして今日も、ジムリーダーとチャレンジャーのバトルが行われている。

 

「プテラ、つばさでうつ!」

「かたくなる!」

 

 広いジムの中を悠々と飛ぶ化石ポケモンの翼が、全身に力を込めて防御する草ポケモンの体を捉える。巨体から放たれる一撃は、いくら表面を硬くしていても、その勢いを封じることは出来ず、風に吹かれた木の実のように軽い体が飛ばされる。

 

「タネボー、戦闘不能!」

 

 たった一撃で戦闘不能となったタネボーをボールへと戻した少年は、次のポケモンを構える。

 

「行け、ラクライ!」

 

 繰り出したのはひこうタイプを兼ね備えるプテラに有効な、でんきタイプのポケモン。

 

「頼んだぞ、ラクライ!」

「ラーイッ!!」

 

 元気の良い鳴き声で少年に応えるラクライ。

 初めてのジムチャレンジでありながら、ポケモンとの確かな絆を感じさせるその姿を見たカンザンシティジムのジムリーダー、ロベッジは優しい表情で微笑んだ。

 

 

 

 

 

 彼がジムリーダーとなった理由、それはこの街の活気を取り戻したかったということ。博物館の職員でもある彼は、毎日のように展示物の確認や掃除、その他様々なことを率先して取り組んでいた。それは偏に、彼自身が博物館のことが好きだったためである。この街で生まれ育った彼は、毎日のようにこの博物館に通い、古代のポケモンの化石や隕石の破片を眺めたりすることが好きだった。大人になった彼は、その思いを他の子供たちにも知ってもらいたいと、この博物館に就職し、毎日のように活動をしていた。

 だが、この街に限らず、オーヴ地方は年々寂れていく。トレーナーを目指す若者達は別の地方へと消えていき、この博物館を訪れるのは近くの学校の生徒や自分のような物好きのみ。若者達と同様に、この博物館はいつか消えてしまうのではないか。言いようのない不安を何年もの間ロベッジは抱いていた。

 

 そんな折、オーヴ地方にポケモンリーグが設立され、ジムリーダーの候補を探しているという話を聞いたとき、彼はチャンスだと考えた。もし自分がジムリーダーとなってこの街にジムを開けば、ジムチャレンジによってこの街は活気を取り戻すのではないか、博物館にも興味を持つトレーナーが増えるのではないか。

 自分の武器は、()()()()()()()の知識、そして愛だ。それなら他の地方のトレーナー、いやチャンピオンにだって負けはしない。

 そして彼は自身のポケモン達と共に、ジムリーダー認定試験の門を叩いた。

 

 

 

 

 

 そんな彼だが、最近はチャレンジャーとのバトルを楽しみにしている。昔から子供は好きだったが、若いトレーナーが、それぞれ手に入れた思い出深い仲間と共に挑む姿は、とても美しい。それこそ希少な宝石にも劣らない輝きを感じさせる。

 

「ラクライっ!?」

 

 だからと言って、簡単に勝たせるわけにはいかないが。ジムリーダーはあくまでチャレンジャーの実力を測る存在。チャレンジの際の手持ちはレベルが低く、技も制限されている。しかし、それでも新米のトレーナーが簡単に勝てる相手ではない。

 既に少年は三体の手持ちを倒されている。確認出来る限り、残った手持ちはあと一体。後が無くなったが、少年はそれでも諦めた様子はない。

 

「頼んだぞ、ヒノアラシっ!!」

 

 繰り出したのは、プテラとは相性が悪いほのおタイプのポケモン。だがその目には確かな闘志が感じ取れる。

 

「でんこうせっか!」

 

 ヒノアラシは猛スピードで走り出す。

 

「プテラ、上昇しろ!」

 

 だが宙を自在に飛ぶプテラには三次元的な動きが可能。飛べないヒノアラシの攻撃はプテラには届かない、はずだった。

 

「壁を走れーっ!!」

「ヒノッ!!」

 

 ヒノアラシはなんとでんこうせっかのスピードを利用して、ジムの壁を登って見せた。一瞬でプテラと同じ高さまで到達すると、壁を蹴り、プテラに飛び掛かる。

 

「ひのこだ!!」

 

 そして口から放たれる小さな火がプテラの顔に見事命中する。

 

(見事だな……)

 

 たとえ最後の一匹になったとしても、どれだけ不利な相手だとしても、迷わずに食らいつく。そんな姿を見てロベッジの脳裏には、かつて自身と激戦を繰り広げたあのトレーナーと同じ雰囲気を感じられる。

 

「プテラ、がんせきふうじ!」

 

 だがヒノアラシの攻撃でプテラに与えられたダメージは僅か。そして空中という身動きの取れないフィールドに居る獲物を逃すほど、ジムリーダーは甘くない。

 プテラが大量の岩を落下するヒノアラシに向かって放つ。自由に動けないヒノアラシはそれを躱すことが出来ず、押しつぶされるかのように岩と共に地面に叩きつけられた。

 

「大丈夫か、ヒノアラシっ!!」

「ヒノ……」

 

 満身創痍といった状態のヒノアラシ。だが、未だにその目はプテラを捉え続ける。

 

「さて、ここからどうするつもりだ?」

 

 発破代わりに少年に問いかける。ここまでのバトルを見れば、この程度で諦めるわけが無い。

 

「……よし、えんまくだ!」

 

 少年の指示に従い、ヒノアラシは口から煙を吐き出す。それは地面を覆う隠すように広がり、プテラの視点からではヒノアラシの姿は見えなくなる。

 

「なるほど!」

 

 これでは上手く攻撃を与えられない。見事に自身の不利を打ち消す戦術を取って見せた少年に感心する。

 

「だが、それなら直接煙を吹き飛ばすまでだ。つばさでうつ!」

「プテッ!」

 

 プテラは地面すれすれまで降下すると、翼を広げて滑空する。そのスピードで発生した風によって煙は吹き飛ばされ、プテラが通った場所だけきれいに煙が晴れた。

 このまま隠れ続けては、いずれ位置を特定されかねない。だが少年はこの状況を待っていた。

 

「今だ、プテラに乗れっ!!」

「ヒノッ!!」

 

 彼が待っていたのは、プテラが地面ギリギリまで降下するこの瞬間。これならヒノアラシのジャンプでも届く。

 煙の中から飛び上がったヒノアラシは身軽にプテラの背に上る。

 

「プテラ、振り払えっ!!」

 

 プテラは上昇や下降を繰り返し、ヒノアラシを振り落とそうとする。だがヒノアラシは意地でも離さないと言わんばかりに、しっかりとしがみついている。

 

「ヒノアラシ、ひのこだっ!!」

 

 その指示を受け、ヒノアラシは背中から火柱を上げる。先程までとは段違いのパワーを感じさせるが、その理由は特性にある。ヒノアラシの特性『もうか』は体力が一定以下になるとほのおタイプの技の威力が大きく上昇するというものだ。今、ヒノアラシはそれによって強力なエネルギーを獲得していた。

 

「ヒノ―ッ!!」

 

 もうかによって威力を挙げたひのこがプテラの背中へと当たり、その勢いで揚力を失ったプテラは地面に墜落していく。

 

「プテッ!?」

「ヒノッ!?」

 

 プテラと背中に乗っていたヒノアラシは共に落下し、土煙を巻き上げる。

 

「ヒノアラシっ!?」

「プテラっ!?」

 

 二人が心配していると、土煙の中から大きな火柱が上がる。そこに居たのは、倒れこむプテラの上に乗る見覚えのないポケモン。しかし、その姿はどこかヒノアラシにも似ている。

 

「これって……」

「なるほど、進化か」

 

 ヒノアラシは運よくプテラがクッションとなったことで、落下のダメージを最小限に抑えることが出来た。それと同時にバトルによって高まったエネルギーの影響でマグマラシへの進化を遂げたのだ。

 

「プテラ戦闘不能。よってチャレンジャーの勝利となります!!」

「……よっしゃあーっ!!」

 

 初めてのジムバトルを勝利で彩った少年の歓喜の叫びに、思わずロベッジの嬉しさを感じる。たとえ負けたとしても、トレーナーの成長をこの目で見るのは、何物にも替えがたい喜びがある。

 

「お疲れ様プテラ。ゆっくり休んでくれ」

 

 倒れたプテラをボールに戻したロベッジは、ゆっくりと少年に近づく。

 

「よくやったぞヒノ……じゃなかった。マグマラシ!」

「マグッ!」

 

 マグマラシの自信満々で胸を張るかのような動きを見て笑う少年は、目の前に来ていたロベッジを見て背を正す。

 

「あ、ありがとうございました!」

「ああ、別に緊張しなくても良い。君は私に勝った。よって君にはこのジェムバッジを渡そう」

 

 そう言ってロベッジは認定の証であるジムバッジを渡す。

 

「知っているだろうが、このジムバッジを八つ集めればポケモンリーグへの挑戦権を得ることが出来る」

「はい!」

「もし君がポケモンリーグを攻略して見せたのなら、今度は本気の私と勝負することが出来る。その日を楽しみに待っているよ」

 

 そしてロベッジは少年にバッジと技マシンを渡すと、倒れたポケモン達を回復させるために治療室へと行く。

 

「待ち遠しいな……」

 

 きっとあの少年とは()のように、また相対することとなるだろう。その時にはどれほど成長しているだろうか。

 挑戦者たちの冒険を見れないことを少しだけ悔しく思いながら、ロベッジは次のチャレンジャーの相手をする準備を整えるのだった。




【キャラ紹介】
ロベッジ
●男性/40代前半/カンザンシティジムリーダー
●「古代を解き明かす者」
●カンザンシティのジムリーダーを務めている男性。カンザン博物館の職員でもある。いわタイプの使い手。
●いつもスーツを着込んでいる。
●一人称は「私」
●化石採掘を趣味としており、手持ちにも化石ポケモンが多い。
●パートナーはプテラ。
●名前の由来はセリ科の植物「ロベッジ」。



【メガシンカ紹介】
ヨルノズク
●ノーマル・ひこう ●かげふみ
●種族値:100(0)-50(0)-60(10)-126(40)-126(30)-90(20)-552(100)
●特攻と特防が大きく上昇し、特殊アタッカー及び特殊受け性能が上昇した。メガピジョットに比べると火力が劣る反面、豊富な技範囲が武器。
●素早さも若干上昇した。ただし特別素早いわけでは無い。
●特性がかげふみとなり、他のひこうタイプには無い特色を獲得した。
●見た目のイメージとしては、頭部の冠羽が下にも伸び、髭のように変化。また腹部や足が黒くなる。
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