オーヴ地方のジムリーダー   作:雪見柚餅子

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今更ですが、本作のポケモンの技は第七世代を参考にしています。
そのため、剣盾の技は登場しません。ご了承ください。


15話

 ヨウザンシティ。オーヴ地方の中央に位置するこの街のとある建物にタキの姿は有った。

 

「ふむ……」

「何やってんのよ、あんた」

 

 ソファに寝ころびながらテレビを見ていた彼女の背後から声がする。振り向くとそこには、タキと同世代の女性が居た。

 

「どうしたのアルス?」

「それはこっちの台詞よ。久しぶりに戻ってきたと思ったら、寝転がってるんだもの」

 

 彼女の名はアルス。かつてタキとジムリーダーの座を賭けて争ったトレーナーであり、現在は四天王となったタキの代理としてチャレンジャーの相手を行っている。

 

「ちょっと研究が行き詰ってて……、それで気分転換がてら、面白いニュース探してた」

「ふーん」

 

 タキが行き詰っているのは、アカマツ博士から渡された三つのメガストーンについてだ。

 カロス地方でプラターヌ博士に相談をしてみたが、進捗は芳しくない。メガストーンにはそれぞれ特定のポケモンが発するエネルギーの波長を増幅させるという特徴がある。そこでミアレシティにある研究所内で記録されていた、カロス地方に生息するポケモンの持つ波長のデータを確認してもらったのだが、三つのメガストーンはどのポケモンとも適合しなかった。これが示すことは、カロス地方に生息していないポケモンのためのメガストーンということだ。そしてこのメガストーンは、オーヴ地方で発掘されたもの。それならオーヴに生息しているポケモンが適合すると予測出来る。だが、そこまでだ。オーヴ地方に生息するポケモンは、確認されているだけでも300種類近い。それら全てのデータもまだ集まりきっていないというのが現状だ。ある程度は絞り込めているが、結局は未だに適合するポケモンを見つけるまでに至っていないのだ。

 

「まあ、大きな事件とか起きてないのは良いことじゃない?」

「そうだね」

 

 タキは上半身を起こしてソファに座りなおし、アルスもその隣に腰を掛けてテレビに視線を向ける。

 流れるのはいつも通りのニュース。天気、ポケモンの大量発生、イベントの告知……。ちょっとした事件なども有るが、既に解決済みであり、目立って大きな騒ぎは無い。そんなありふれたニュースがずっと続くと思っていたが、その予想は裏切られた。

 

『続いてのニュースです。ミヤザワシティとコジカタシティを結ぶ道路で、謎のポケモンによる襲撃事件が発生しました』

 

「ん?」

 

 それまでのつまらなそうな表情から一変し、目を輝かせる。

 

『そのポケモンとはどのような姿でしたか?』

『確か、俺より一回り大きいくらいの背丈だったな……。ヒトみたいな姿なんだけど、頭が丸くて、派手な色をしてた』

『そこの草むらに入ったら急に現れたんだ。初めて見るポケモンだったから捕まえようと思ったんだけど、あっという間に手持ちが全部倒されちゃって……』

『私が見たのは、沢山のレンガが積み重なったような姿をしてた。他のトレーナーとのバトルの最中に乱入してきて……私も戦ってたトレーナーも協力して倒そうとしたけど、全然敵わなかった』

 

『現在もこの正体不明のポケモンは捜索中とのことです。皆さんも草むらに入る際には気をつけてください。以上、リアスシティよりユウカがお届けしました』

 

 レポーターの言葉で締めくくられ、CMが流れ始める。すると、一部始終を見終えたタキはソファから立ち上がった。

 

「それじゃ、行ってくる」

「は?」

 

 突然の宣言にアルスは思わず固まる。

 

「いや、行ってくるってどういうことよ?」

「ニュースに有ったでしょ? 正体不明のポケモンが現れたって」

「……まさか」

「うん。探してくる」

 

 タキは目を輝かせて言う。これがあるから手に負えないのだ。無暗に周囲へ迷惑を掛けないだけまだましではあるが……。

 

「それじゃ」

 

 思い立ったが即行動。颯爽とジムから出ていくタキの後ろ姿を見送り、アルスは溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、この先は現在、正体不明のポケモンが出現する可能性が有ります。ジムバッジを三つ以上持っていないトレーナーは、勝手に入らないようにー」

「何でだよ! 別に少しくらい……」

「そう言って怪我する奴が出てるんだから、こうして立ち入りを制限しているんですよ」

 

 ミヤザワシティの北側。コジカタシティへと繋がる道路は警官によって検問が敷かれていた。

 ポケモントレーナーの旅は自己責任が基本。ポケモンをゲットするために危険な目に遭うことも少なくないが、それでどのような傷を負ってもそれは自分が悪いとされる。だからと言って、実力が無いトレーナーが勝手に危険地帯へ向かうことは良しとされない。こうして警官によって通行できる道が制限されるのも、珍しい光景では無かった。

 だが今回は、テレビの影響もあってか、多くのトレーナーが検問を通ろうと試みていた。突如として現れた謎のポケモン。それを手に入れるためだ。

 

「通して貰える?」

 

 そこに新たな一人とトレーナーが姿を見せる。

 

「いや、ここを通りたい方は、ジムバッジの提示を……」

「これでいい?」

 

 上空からフワライドに掴まって降りたそのトレーナーは、自身のトレーナーカードを見せる。

 

「貴方は……っ!?」

「悪いけど、ここの調査させてもらうよ」

 

 年上の警官に対して、一切の敬いを見せない口調のタキは、自らの興味の赴くまま警官の横を通り過ぎる。

 

「あ、ちょっと待ってください!」

「悪いけど、私は忙しいから」

 

 警官の制止の声も聞かず、エリアへと入り込む。

 その先に有るのは、オーヴ特有の自然溢れる道。しかし、何度かこの道を訪れたことがあるタキは異変を感じ取っていた。

 

「静かだね……」

 

 普段なら、どこからともなくポケモンの鳴き声が聞こえるはず。しかし今日は気配が全く感じられない。

 

「サマヨール、出てきて」

 

 タキが繰り出したのは、ずんぐりとした体で全身が訪台に包まれた姿が特徴のポケモン。いつも使っているバトル用の個体では無く、捕獲に特化した個体であり、フィールドワークのお供でもある。

 

「みやぶるで野生のポケモンを探して」

「ヨールッ!!」

 

 サマヨールがその単眼で周囲を見回すと、ある一点に注目した。

 

「マヨールッ!!」

「そっちだね」

 

 指し示した方向へと走る。木々が入り組み、日の光が遮られた薄暗い獣道を突き進むと、タキの目にも見えてくる。背の高い草の陰に隠れるナゾノクサやパチリスの姿。けがをしている様子は無いが、何かに強く怯えているように見える。

 

「ムウマージ、お願い」

「マージィ」

「この子達のイメージを私に伝えて」

 

 タキは相棒を呼び出して、指示を下す。そしてムウマージの持つ能力によってビジョンが脳裏に映る。

 

 

 

 そこに見えるのは、見たことも無い二体のポケモン。片やダンスを踊るかのような動きをしながら、不思議な色をした火炎を放つ。片や鈍重な動きながらも、向かって来たポケモン達の技を重厚な体で弾き返す。

 

―ッ!!―

 

 相反する性質を見せる二体のポケモンは、我が物顔で野生のポケモン達が暮らしていたこの森を踏み荒らしていった。

 

 

 

「ふむ……」

 

 この出来事は野生のポケモン達にとっても恐怖の対象のためか、明確なイメージは少なく、ほとんどがノイズによって掻き消された。だがそれでも、見知らぬ二体のポケモンの姿などははっきりと分かった。

 

「早く捕まえないと……」

 

 ビジョンから察するに、元々この森には居なかったポケモン。もしかしたら他の地方の外来種かもしれない。即急な対処をしなければ、この環境に悪影響が出る可能性が有る。

 

「ーッ!!」

 

 そこに突然、叫び声が響きだす。音の大きさから、そこまで離れていないはず。タキは急いで声がした方向へと走り出す。

 

「ーッ!!」

―ガキィンッ!!―

 

 徐々に近づくと、叫び声だけでなく何かがぶつかる音も聞こえてくる。

 

「今だ、かみなりパンチ!!」

 

 そしてその音の全貌が見えて来た。

 森から少し出て、木々が開けた場所。そこで一人のトレーナーがあの謎のポケモンの一匹と戦っていたのだ。

 

「レブッ!」

 

 トレーナーが繰り出したエレブーが、レンガが積まれたような姿のポケモンに対して、電気を纏った拳で殴り掛かる。

 

「ーッ!!」

 

 だがその攻撃は、全くと言って良いほどダメージを与えた様子は無い。

 

「くっ、それならスピードで撹乱するぞ。でんこうせっか!」

 

 今度は猛スピードでそのポケモンの周囲を走る。どこから来るか分からない攻撃。これなら少しはダメージになるだろう。そうトレーナーは考えていた。

 だが、謎のポケモンは慌てる様子が全く無い。ただ全身から青い光の点を見せるだけである。しかしタキはそのポケモンの変化を観察して、あることに気付く。

 

(もしかして……)

 

 そしてついにエレブーが、そのポケモンの右前足と考えられる場所に対して右拳でパンチする。見た目から体重はかなり重いと見えるなら、バランスを崩してしまえばいい。トレーナーのその考えは間違いではない。だが、相手が悪かった。

 

「何っ!?」

 

 そのポケモンは、エレブーの攻撃に合わせて体を構成する欠片を動かすことによって、右前足に強固な装甲を構築する。その適切な防御の前にエレブーの攻撃は一切通らない。

 

「ーッ!!」

 

 さらに全身をまるで鋼のように輝かせると、エレブーに向かってヘッドバットをする。

 

「レブッ!?」

 

 脳天に直撃したエレブーは、そのまま意識を失い倒れる。

 

「おい、エレブー! しっかりしろ!?」

 

 トレーナーの声にすら反応しない。完全に戦闘不能となったエレブーに対し興味を失ったかのようにそのポケモンは視線を別の方向へと向ける。その先に居たのは、エレブーの持ち主であるトレーナー。

 

「おい、嘘だよな!?」

 

 そしてそのポケモンが足を動かしてトレーナーへと近づく。

 これは不味い。タキは急いでトレーナーとそのポケモンの間へと躍り出た。

 

「サマヨール、まとわりつく!!」

 

 サマヨールが全身の包帯を伸ばして、そのポケモンの体を絡め捕る。

 

「貴方は早く逃げて」

「え?」

「逃げて!」

「あ、はい!」

 

 有無を言わさないタキの言葉に、トレーナーの男はエレブーをボールに戻すと慌ててその場から走り出す。近くで警官が見回りをしているはず。きっとポケモンセンターまで安全に送り届けてくれることだろう。

 問題は、目の前のこいつである。

 

「ーッ」

 

 そのポケモンはまるでパズルのように全身を組み替えることで、サマヨールの包帯から逃れる。

 

「やっぱり……」

 

 タキは先程のエレブーとのバトルから、目の前のポケモンの特徴をある程度理解した。第一に、このポケモンの外殻はかなり硬い。物理的なダメージはほとんど通らないだろう。そして何よりも、このポケモンはタマタマのような群体であるという最大の特徴を持っている。体を構築する欠片の一つ一つに意思が有り、大量に集まったそれらが重なり合うことによって、一個体のポケモンとして形成されているのだ。先程のエレブーのでんこうせっかに対して、あのポケモンは全身から目のようなものを出すことでエレブーのスピードを見切り、さらに攻撃に対して体を組み替えることで防ぐという芸当を見せているのが何よりの証拠だ。

 

「こんなポケモンがいるなんてね……」

 

 タキは知らない。このポケモンは別の地方どころか、別の世界からやって来たポケモン、ウルトラビーストと呼ばれる存在であることを。そして今、対峙しているそのポケモンの名は、UB:LAY。またの名をツンデツンデ。

 本来であればオーヴ地方に存在するはずの無いそのポケモンは、その無数の目でタキを見つめる。

 

「さあ、行くよ」

 

 タキは自分のポケモン達に声を掛け、戦闘態勢を取る。

 ここにオーヴ地方初の、ジムリーダーとウルトラビーストによるバトルが始まろうとしていた。




幕間が本編に関係ないと言ったな。あれは嘘だ。

当初は本編とは同時進行の別のストーリーにするつもりでしたが、こっちの方がキャラ的にしっくり来たのでこうなりました。



【キャラ紹介】
アルス
●ヨウザンシティジムリーダー代理
●女性/20代前半
●「暗闇の語り部」
●ヨウザンシティジムのジムリーダー代理を行っている女性。ゴーストタイプを扱う。
●タキとはジムリーダーの座を賭けて争った関係。しかし現在は良き友人の関係である。
●地元では時折怪談話を行っている。
●一人称は「あたし」
●パートナーはジュペッタ。
●名前の由来は単子葉植物の「アルストロメリア」。



【メガシンカ紹介】
マニューラ
●あく・こおり ●フリーズスキン
●種族値:70(0)-160(40)-75(10)-55(10)-100(15)-150(25)-610(100)
●攻撃はメガバシャーモと同数値。素早さはメガプテラと同等と高速物理アタッカーとして最高のステータス。ただし耐久も上がっているとはいえ、格闘技を受ければあっという間に倒れる。
●特性はフリーズスキン。ねこだましがタイプで無効化されなくなるというメリットを獲得。
●先手で相手を倒す。攻撃を耐えられたら負ける。そんな潔い物理アタッカー。
●見た目のイメージとして、頭部の赤い飾りに氷の結晶が張り付き、爪も氷によって硬化され刀のような形状と化している。
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