オーヴ地方のジムリーダー   作:雪見柚餅子

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予定されているオリジナルメガシンカポケモンは設定上17種類です。
しかし、それらを全て出すのに時間が掛かりそうなので、今回から一部のポケモンを後書きに記すことにしました。


3話

「早まらないでくださいっ!!」

 

 その日は快晴だった。

 ジムの近くに建てられた、真っ白な外壁を持つ研究所。その一室でタキは数名の研究員に取り押さえられていた。

 

「ちょっと離してっ! これは大事な実験だから!」

「貴女は何を言ってるんですかっ!?」

 

 とあるポケモンに手を延ばそうとするタキを、研究員達は必死に止めようとする。

 

「サマヨールの体の中を覗き込もうなんて、正気じゃないですよっ!?」

 

 てまねきポケモンの別名を持つサマヨール。全身を包帯で包まれているが中身は空っぽで、それを見たものは吸い込まれて戻ってくることは無いと言われている。しかしタキはそれが本当かどうか確かめるべく、自らサマヨールの包帯を外し、覗こうとしたのが事の発端である。

 

「こういうのは実際に試さないと分からないものだからっ!!」

「だからといってもし本当に吸い込まれたらどうするつもりなんですか!」

「それはその時でしょっ!!」

 

 あまりの剣幕に、サマヨール自身も心なしか緊張しているように見える。

 このままでは止まりそうに無い。若い女性とは思えないほどの力でサマヨールに近寄る。じりじりとその手がサマヨールへ触れようとした。

 

 だがその時、

 

「タキさん、アカマツ博士から電話です」

「え、ってうわっ」

 

 電話を持って部屋に入ってきた職員の姿を見て、タキは落ち着きを取り戻す。その瞬間に力が弱まり、押さえていた職員と共に思わず体制を崩し、背中から床に倒れてしまった。

 

「痛た……、アカマツ博士から?」

 

 背中を左手で摩りながら立ち上がると、この惨状にも慣れている職員から手渡された電話に出る。

 

「もしもし、タキです」

「おお、久しぶりだな。元気だったか?」

 

 アカマツ博士はこのオーヴ地方にポケモンリーグを誘致し、タキにとっては同じ研究者として尊敬の対象でもある人物である。普段は自然溢れる田舎に研究所を設け、野生のポケモンの調査などを行っている。

 

「はい。それで何の用ですか?」

 

 そのアカマツ博士がタキに連絡するとするなら、ある程度用件は絞られる。一つはポケモンリーグの業務について。そしてもう一つは……、

 

「実は君に見てもらいたい物があってな。こちらの研究所に来てもらえんか?」

「良いですけど、見てもらいたい物って何ですか?」

「ははっ、それは来てからのお楽しみだ」

 

 では明日よろしくな、とだけ伝えるとそのまま電話が切られてしまった。

 

「……明日って、いきなりすぎるでしょ」

 

 タキの研究所と博士のいる町まではそれなりの距離が有る。空を飛べるポケモンを使っても、数時間は掛かるだろう。

 今から準備しないといけないということを理解し、大きく溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーヴ地方の中央部から少し離れた町。あまり住民は多くは無いが、それ故に時間がゆっくりと進むような雰囲気が感じられるこの町の一角にある建物に、3人の少年少女が集まっていた。

 

「なあ、まだかなあ?」

「おい、まだ5分も経ってないぞ。少しは落ち着けよ」

「でもさ、やっと私たちもポケモンが貰えるんだよ? どんな子がいるんだろう……」

 

 彼らはこの町で生まれ育った幼馴染である。今年彼らは12歳の誕生日を迎え、ポケモントレーナーとして旅立つ許可が出たのだ。その最初の一歩として、初めてのポケモンを貰うべく、このアカマツポケモン研究所に集まっていた。

 そわそわとした様子で全員が期待に胸を膨らませていると、研究所の扉が開き、中から白髪交じりの髪を持つ男性が姿を見せる。

 

「おっと、もう集まっていたか」

「アカマツ博士!」

「ふふっ。もう待ちきれないという表情だな。それじゃあ早速だが中に入ってくれ」

 

 そう言って彼らを研究所の中へと誘う。

 中には様々な機材が所狭しと置かれている。その全てに好奇心が刺激され、博士の後に付いて行きながらあちらこちらへと視線が動く。そんな彼らを微笑ましく思いながら、博士は奥に設置されたテーブルへと向かう。その上にあるのはシンプルな形状の3つのモンスターボール。

 

「博士、あれって!」

「そうだ。今日君たちにプレゼントするポケモン達だ」

 

 その言葉に思わず歓喜の声を上げる。何せ初めてのポケモンだ。感動も一入だろう。これからの冒険でどのような絆を紡いでいくのか、博士も楽しみである。

 

「それじゃあ、順番に紹介しよう。まずはこの子だ」

 

 ボールの一つを手に取ってスイッチを入れると、中から出てきたのは緑色の小さなポケモン。頭についた植物の葉が特徴的である。

 

「チコッ」

「うわー、可愛いっ!!」

「ははは。お気に召して何よりだ。この子ははっぱポケモンのチコリータだ」

 

 少女が手を差し伸べると、チコリータは人懐っこそうに体を擦り付ける。

 

「ねえ、私この子がいい!!」

「おい、それはずるいだろっ」

「まだ2匹いるんだぞ。決めるのは全部見てからでも良いだろ」

 

 ポケモンと触れ合うことはこれが初めてではない。しかし最初の自分だけのポケモンということもあり興奮しているようだ。

 

「では次はこいつだ」

 

 博士はその光景に笑みを浮かべながらさらにもう1匹のポケモンを出す。それは細長い顔に黒い背中が特徴のポケモンだ。この見た目だけでは、タイプすら分からない。

 

「ひねずみポケモンのヒノアラシ。タイプはほのおだ」

 

 眠っているのかどうかも分かりづらい目をしているが、ヒノアラシは少年達をじっと見つめる。

 

「なあ、本当にほのおタイプなのか?」

 

 一人が疑問を浮かべながら指で不用意につつく。それを何度も繰り返していると、我慢の限界に達したのか、背中から炎を吹き出す。

 

「ヒノーッ!!」

「うわっ!?」

 

 突然のことに驚いている暇もなく、ヒノアラシは全身に力を込める。そして口から強力な炎を吐き出そうとした…………、

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

 吐き出そうとしたのだろうが、出てくるのは小さな火種程度にしかならない火の玉。口から少しだけ出てはすぐに消える。

 

「これって……」

「まだレベルが低いからなあ。まともに使えるのは『たいあたり』と『にらみつける』くらいだ」

「えーっ!?」

 

 その事実に悲鳴が出る。確かにポケモンはレベルが上がることによってより強くなるが、今はまだ2つの技しか使えないということに項垂れる。

 

「まあ、どう育てるかもトレーナーの力量だ。それが出来ないのならいつまで経ってもチャンピオンはおろかジムリーダーにも認めてもらえんぞ?」

「うっ、確かに……」

 

 ポケモンの力はトレーナーの実力によって変動する。良いトレーナーが扱うポケモンは、時にレベルやタイプの相性を超えた実力を見せることも有る。逆に悪いトレーナーが扱うポケモンはいつまでも勝つことは出来ず、時にはトレーナーの指示を無視したり、愛想をつかして逃げてしまうことすら有り得るのだ。

 

「……よし、絶対に強くならないと」

 

 自分のためにも、ポケモンのためにも、改めて強くなる覚悟を決める。

 

「では最後の1匹だ」

 

 博士は残ったボールを開く。そこから姿を見せたのは、水色の体に大きな口と鋭い牙を持つポケモン。

 

「みずタイプのおおあごポケモン、ワニノコだ」

「これは、中々強そうだな」

「ワニッ?」

 

 出てきたワニノコは少年達に視線を向けるが、何を思ったかその爪で引っ掻こうとする。

 

「うわっ!?」

「危ないっ!」

 

 距離が有ったため躱すことは出来たが、その荒っぽさに驚く。

 

「こいつはちょっと血の気が強くてな。研究所の備品も少し壊されたことが有る……」

 

 博士の表情は少し気疲れしていた。

 少年達もその姿に少し臆するが、ただ一人そのワニノコに対し興味を持つ少年が居た。

 

「よし、オレはこいつにする」

「え、いやちょっと待てよ」

 

 突然の宣言にもう一人の少年が止めようとする。しかし

 

「俺は絶対にチャンピオンになるんだ。それならこれくらい闘争心が強いポケモンの方が良い」

 

 ワニノコもその強い意志を感じたのか、じっと少年を見つめる。

 

「ふむ、ワニノコも気に入ったようだな」

「よし、それならこいつはオレのポケモンってことで良いよな」

 

 もう一人の少年も文句が無いわけでは無いが、しかしワニノコの姿を見ると自分が強引に扱うというのも間違っていることは感じる。

 

「……よし、それなら俺はヒノアラシを選ぶ。こいつが全力で戦えるように育てるんだっ!」

 

 先程の炎を上手く吐けない姿に対して思うところがあったのか、彼はヒノアラシを選ぶ。

 

「それじゃあ、私はこの子だね。よろしくチコリータ!」

 

 そして必然的に少女のパートナーはチコリータとなる。奇しくも彼女の最初の希望通りとなった。

 

「なあ、折角だしバトルしないか?」

「良いぞ。こいつの実力を見せてやる!」

「まだパートナーになったばかりでしょ」

 

 早速バトルをしようとする少年達。そんな中、研究所の扉が開いた。

 

「失礼します。アカマツ博士は居ますか?」

 

 入ってきたのは白衣を身に纏った女性。少年達より頭一つ分背が高い。

 

「おお、タキ。待っていたぞ」

 

 いきなり入ってきた女性に、少年達は小声で話し出す。

 

(なあ、あの人誰だ?)

(さあ? 見たことないけど)

(多分、研究者だろうが……)

 

 3人がタキのことを知らないのも無理は無い。彼女のジムはここから離れた距離にある事や、彼女自身があまりメディアに映らないため、ジムリーダーの中でも知名度は低い方であるためだ。

 

「それで見てもらいたい物って何ですか?」

「ふふふっ、きっと驚くぞ!」

 

 アカマツ博士はそう言うと、近くに置いていた箱を手に取る。そしてその箱を開くと、中から出てきたのは丸い形をした3つの結晶体。

 

「これは……」

 

 その名はメガストーン。一部のポケモンにメガシンカと呼ばれる現象を引き起こす物質だ。現在も何故メガシンカが発生するのか、メガシンカが可能なポケモンと不可能なポケモンの違いは何なのか研究が進んでいる。

 

「つい先日、私の友人が見つけたものでな。既存のものとは全く異なる新種であることが分かった。君にはこれがどのポケモンと適合するのか調べてもらいたい」

 

 本来ならアカマツ博士自身が調べたい物ではあるが、元々多忙の身であり、来週には他の地方へ行かなくてはならない。そこで信頼できる研究者でもあるタキに託すこととしたのだ。

 

「君も忙しいだろうが、頼まれてくれるか?」

 

 タキは一瞬考えるが、すぐに頷く。元々メガシンカも彼女にとって解明すべき現象の一つである。

 

「期待に応えられるようにします」

「そうか、感謝する!」

 

 そしてタキは研究所から出ようとすると、自身を見つめる少年達に気付く。

 

「ああ、彼らは今日トレーナーになったばかりの子なんだ」

「へえ……」

 

 トレーナーになったということは、いずれ自分に挑みに来るかもしれない。

 

「もしかしたら、未来のチャンピオンになるかもしれんぞ?」

「……それは面白いですね」

 

 彼らがどこまで進むのか、少しだけ気になりながら彼女は研究所を後にする。

 

 後にこの3人の少年達が8つのバッジを集め、ポケモンリーグへと挑むことになるのはまだ先の話である。




【キャラ紹介】
アカマツ博士
●男性/50代前半/ポケモン研究者
●オーヴ地方でポケモンの研究を行っている人物。新人トレーナーに初めてのポケモンを渡す役割も担っている。
●一人称は「私」。



【メガシンカ紹介】
エテボース
●ノーマル ●いたずらごころ
●種族値:75(0)-145(+45)-91(+25)-60(0)-91(+25)-120(5)-582(+100)
●特性がいたずらごころとなり、種族値上はエルフーンより速い。そのため他のいたずらごころ持ちに対して上から「ちょうはつ」を撃つことが可能。無論あくタイプには無効だが。
●こうげきも145とメガミミロップを超えている。
●見た目のイメージとしては、尻尾がさらに二つ増え、その内半分が足替わりとなって体を支えており、残りが腕替わり。本体は浮いている状態。
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