ミアレシティ中心部にあるスタジアム。普段はスポーツなどで賑わっている場所だが、今日はいつにもまして人が集まっていた。道には屋台も並び、まるでお祭りの様相を見せている。
『さあ、予選を勝ち抜くトレーナーは一体誰になるのか! どの試合も目が離せない熱戦となっています!』
スピーカーから響く熱い司会の声。その言葉通り、スタジアム内では若いトレーナーたちがポケモンバトルを繰り広げていた。
カロス・オーヴ交流大会。カロス地方とオーヴ地方の若いトレーナーを対象とした大会である。別の地方同士の交流ともあり、ポケモンリーグ本部も協力しているこの大会は予想以上の観客が集まり、熱狂に包まれている。
だが、この場に集まった観客の目的は、ただ大会を見に来ただけではない。エキシビジョンマッチとして行われる、オーヴ地方とカロス地方のジムリーダー同士のバトル。その貴重なバトルを全ての観客が待ち望んでいた。
そしてその主役でもあるオーヴ地方のジムリーダーたちの控室。そこでは場に似つかわしくない怒号が響いた。
「あいつ、この期に及んでどこ行きやがったっ!?」
ヨルガが叫んでいる原因は単純。タキが再び姿を晦ましたのだ。
飲み物を買ってくると言って部屋を出てから、かれこれ一時間。電話も繋がらず、どこにいるのか見当もつかない。
恐らく、気になったポケモンでも居て、それに目を奪われているのだろうが……。
「もうそろそろ出番だぞ……」
「確か、試合の順番は私、ヨルガ君、タキちゃんの順番でしたよね?」
「ああ……仕方ねえ。そっちが試合している間に俺があいつを探しに行く」
試合の準備もある以上、出来るだけ早く捕まえないといけない。ヨルガの言葉にマキノはゆっくりと頷く。
「分かりました。もし見つけられなかったら、試合後に私が行きますね」
「ああ、頼んだ」
その言葉と共にヨルガは控室を出ていく。
予定通りならマキノの試合までもう10分も無い。緊張で唾を飲むが、やるべきことはもう分かっている。
「頑張りましょうね」
その言葉に応えたかのように、手に握ったモンスターボールが少しだけ揺れた。
『さあ、予選も終了したところで、皆さまお待ちかねのイベントです!! これから始まるのはなんと、カロスとオーヴ、各地方のジムリーダー同士によるエキシビジョンマッチ!! 手に汗を握る素晴らしい勝負が行われることでしょう!!』
会場全体に響き渡る司会者の声に気を取られる。
「もうそんな時間……」
スタジアム内のとある部屋で呟くタキの足元には、目に涙を浮かべるハネッコが居た。どうやらトレーナーからはぐれてしまったらしく、道の端で泣いていたところを見つけて保護をした。ムウマージに協力してもらって意思疎通を行い、落ち着かせた上で迷子センターへと連れてきたは良かったが、このハネッコはどうやら怖がりなようで、タキの足にしがみついて離してくれそうにない。
「……もう少し待ってみようか」
自分の試合まではまだ時間が有るし、それまでにトレーナーが来るかもしれない。そう考えると、彼女は部屋に備え付いているテレビの画面に視線を向ける。これからちょうどマキノの試合が始まる。折角だし、この場で応援させてもらうことにしよう。そう考えると、足元のハネッコを抱え上げ、膝に乗せる。
『最初のバトルは、カロスが誇るフェアリータイプのエキスパート。歴史の国から来た乙女ことマーシュ! 相対するは、大空に夢見る鳥使い。ひこうタイプのジムリーダー、マキノ! 一体どのようなバトルとなるのでしょうか!!』
画面ではどこか緊張した様子の表情を浮かべるマキノと、着物のような服を着た女性が相対している。
「頑張りなよ、マキノ」
その応援の言葉は、膝に乗るハネッコだけに聞こえていた。
大勢の観客に囲まれる中、マキノは正面に居る女性を直視する。一昨日訪れたクノエシティでジムリーダーをしている女性、マーシュ。雑誌やテレビなどで度々見かけることが多い、知名度に関してはトップクラスのジムリーダーだ。
そんなマーシュはマキノに微笑みかけて口を開く。
「なあ、あんさんの事を聞いたんやけど、うちの街で起きてた事件を解決してくれたらしいなあ?」
「え……あ、はい。そうですね」
突然声を掛けられ、一瞬思考が止まるものの、すぐに我に返り答える。その様子を面白そうに見ながらもマーシュは静かに頭を下げる。
「ここでお礼を言わせてもらうわ。おおきにな」
「……いえ、別に大したことはしてませんよ。それに私一人だけじゃなく、ヨルガ君とタキちゃん、二人が居なかったら解決できなかったことです」
それは本心からの言葉だった。ヨルガが居なければ、グラエナ達の救出にはもっと時間が掛かっただろうし、タキが居なければそもそもグラエナ達の気持ちを理解できたかも怪しい。全員揃っていたからこそ、グラエナ達を助けることが出来たのだ。
「だから感謝を言うなら、二人にも言ってあげてください」
「ふふふっ。そうやね。じゃあまた後で、改めて挨拶しにいくわ」
話していく内に、徐々にマキノの緊張も解けていく。もしかしたら、それを目論んでマーシュは話しかけてきたのかもしれない。
「さすがにお客はんを待たせ続けるのもあれやしな。そろそろバトルしましょか」
「そうですね。それでは行きましょう」
二人はそれぞれボールを手に取り構える。
『それではバトルを開始します! 使用ポケモンは1体。どちらかのポケモンが戦闘不能になった時点で決着です!』
審判がゆっくりと手を挙げる様子を、誰もが静かに見守る。
『それでは開始!』
そして勢いよく審判が手を振り下ろした瞬間に、マキノとマーシュはボールを投げる。
「お願いします、ヨルノズク!」
「きなはれ、ニンフィア!」
マキノが出すのはヨルノズク。彼女が最も信頼する鳥ポケモンだ。対するマーシュが繰り出してきたのは、長いリボンのような触角を持つ、犬のような姿のポケモンのニンフィア。
『さあ、ついに試合開始です。解説のお二方、この試合は一体どうなるでしょうか?』
司会が視線を向ける先にいるのは、二人の人物。オーヴ地方でポケモン博士と呼ばれるアカマツ博士と、カロス地方チャンピオンのカルネだ。
『ふむ、タイプの相性で言うなら互角。そしてどちらも遠距離からの攻撃を得意としているポケモン同士だ。似たような技も覚える分、それぞれのポケモンの地力が求められるだろう。天秤が傾いたら、そのまま決着も有り得る組み合わせだ』
『はい。それに戦術も大きく影響しますね。いかに自分達に有利な状況を作るかがこの勝負の大きな見どころになるでしょう』
二人がそれぞれ見解を述べている間に、フィールドでは既に2体のポケモンが技を放つ態勢が出来ていた。
「エアスラッシュ!」
「ムーンフォース!」
そして放たれる風の刃と光の波動がぶつかり合い、バトルの幕が開けたのだった。
【メガシンカ紹介】
ドクロッグ
●どく・かくとう ●ちからずく
●種族値:83(0)-141(35)-90(25)-86(0)-90(25)-100(15)-590(100)
●攻撃面が大きく上昇。特性もちからずくになったことで、物理アタッカーとして高い打点を持つ。反面、かんそうはだでは無くなったため、雨パでの運用は難しい。
●見た目の変化としては、頭部の突起が長くなり、リーゼントのようになっている。