タキが関係者以外立ち入り禁止の通路を歩いていると、マキノが急いだ様子でこちらに向かって急いだ様子で向かってくる。
「タキちゃん、どこに行ってたんですか?」
「ごめん、ちょっと色々有って……マキノ、試合お疲れ様」
謝罪をしつつ労いの言葉を掛けると、マキノは複雑そうな笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。負けてしまいましたけどね……」
その表情からは悔しさがありありと感じ取れる。そんなマキノに対し、タキは何も言わない。励ましの言葉なんて必要ないと理解している。この敗北を通して、マキノはまた強くなるだろう。
「そうだ、ヨルガ君の試合がもう始まってますよ。急がないと!」
本来の目的を思い出し、マキノは早口になる。ヨルガの試合が終われば、今度はタキの試合なのだ。準備も整えなければならない。
「そうだね、急ごう」
タキはマキノのペースに合わせながら、長い通路を進んでいった。
「ビビヨン、いとをはく!」
スタジアムの中央ではヨルガと虫タイプを得意とするカロス地方のジムリーダー、ビオラによる熱戦が繰り広げられていた。
ビオラのビビヨンが口から糸を吐き出し、敵を捕らえようとする。だが、
「キリキザン、つるぎのまいで糸を切れ!」
キリキザンが踊りながら、全身に備わった刃で周囲の糸を切り裂いていく。さらに踊るにつれて、その全身から力が漲っていく様子が見て取れる。
『いとをはくを無効化しながら攻撃力を上げる。見事な対応ですね』
技が通じず歯噛みするビオラ。
「メタルクロ―!」
キリキザンが両腕を光らせながら、ビビヨンに肉薄する。
「ぼうふう!」
迎撃の指示を受け、ビビヨンの羽から強力な風が放たれる。キリキザンはそれをまともに受け、大きく後退する。
『ビビヨンの強力な一撃がヒット! キリキザンは大きなダメージを受けたようだぞ!』
司会の言葉通り、キリキザンは膝をつき、息も上がっているように見える。
「今よ、ソーラービーム!」
この隙を逃すまいと、大技を放とうとする。だが、その瞬間キリキザンとヨルガの目が光る。
「今だ、だましうち!」
大ダメージを受けたとは思えない速度でビビヨンの下へ走り出すキリキザン。
ビオラも自身の失策に気付くが、時すでに遅し。ソーラービームは高い威力を持つ反面、発射の前にエネルギーを溜めなくてはならない。身動きが取れないビビヨンに対して、キリキザンの手刀が容赦なく放たれる。
「ビビッ!?」
ダメージを受けた反動で、溜め込んだエネルギーは明後日の方向へと放たれる。
「まだまだ行くぜ! メタルクロ―!」
さらにキリキザンは追撃で連続で手刀を放つ。これにはビビヨンもたまらず、目に見えてダメージが蓄積していく。
「ビビヨン、一度距離を取って!」
「ビビッ!」
何とか上空へと逃れ、互いの動きが一旦停止する。だが、どちらが有利かは一目瞭然だ。
『見事にキリキザンがペースを握っていますね』
『通常であればあくタイプはむしタイプを弱点とする。だがキリキザンは同時にはがねタイプを持っている。ビビヨンにとっては厄介な相手だ』
だがこの状況でもビオラは諦めていない。
「ビビヨン、ぼうふう!
少しでもダメージを与えるべく、まずはキリキザンの動きを封じる。強力な突風に呑まれないように、その場に踏ん張るキリキザンだが、動きが止まるということは格好の的になるということでもある。
「シグナルビーム!」
続けて放たれるのは七色の光線。キリキザンは避けることが出来ずに、まともに攻撃を受けてしまう。さらに今の一撃はビオラにとって幸運をもたらす。
「キリ……キリザッ?」
『これはキリキザン、なんと混乱してしまったーっ!! まさかの状況。一転してピンチだーっ!!』
シグナルビームの眩い光を受けてしまい、混乱してしまったキリキザン。このチャンスを逃すまいとビビヨンはさらに上昇する。
「ビビヨン、ソーラービーム!」
再度エネルギーを溜め込む。先程と違うのは、キリキザンが止める術を持たないということだろう。
「しっかりしろキリキザン! 攻撃が来るぞ!」
ヨルガが叫ぶものの、キリキザンは状況を理解できず、避けるべく動くことも出来ない。
その間にビビヨンがエネルギーの充填を完了する。
「ビビーッ!!」
そして放出される強大な光の奔流。キリキザンはそれに飲み込まれた。
「キリザーッ!!」
吹き飛ばされ、何度も地面に叩きつけられながら転がっていく。しかしその衝撃で我に返ったようで、ビビヨンをじっと睨む。
「ビビヨン、ぼうふう!」
三度強力な風がキリキザンを襲う。しかしそれまでと異なり、既にキリキザンは満身創痍だ。耐えきることが出来ず、その体は旋風に巻き込まれ宙へと投げ出される。
「止めよ、シグナルビーム!」
空中では自由に動くことが出来ないキリキザン。そこへ無慈悲に放たれる光線がキリキザンを捉えた、はずだった。
「意地を見せろキリキザン!」
ヨルガからの掛け声を聞いたキリキザンは目を見開くと、両腕でシグナルビームをガードする。そのままでは僅かな体力を削りきられるだろう。だが、それでは終わらない。
「メタルバースト!」
キリキザンの両腕が光に包まれ、巨大な刃が形成される。両腕を振りぬくと、シグナルビームを容易く切り裂く。そして伸びた刃はビビヨンを貫いた。
「ビビーッ!?」
それまで受けたダメージを増幅し、取り込んだキリキザンの一撃がビビヨンの意識を刈り取る。
残ったのは満身創痍ながら立つキリキザンと、気絶したビビヨン。
「ビビヨン戦闘不能。よってキリキザンの勝ち!」
「……っよっしゃあぁっ!!」
勝利を手にし、喜びのあまり叫ぶヨルガ。ビオラも悔しさを滲ませながらも、倒れたパートナーに労りの言葉を掛けながらボールに戻す。
二人の手に汗握る勝負に会場全体から惜しみない拍手が送られるのだった。
「ヨルガ君、お疲れ様です」
「おうっ! っておい、タキ。お前どこに行ってたんだよ!」
やっと姿を見せたタキにヨルガが怒鳴る。試合前にあちこち探すはめになった彼からすれば、その怒りはもっともなものだろう。
「ごめん」
「ったく……ほら、お前の出番なんだから、さっさと行けよ」
そう言ってヨルガは親指で扉を指し示す。
「忘れ物とかしてないですよね?」
「大丈夫だよ」
後ろから声を掛けるマキノに対しては、ポケットから取り出した懐中時計を見せることで応えた。
「それじゃ、楽しんでくる」
静かに笑みを浮かべながら、タキは控室から出ていった。
『さあ、いよいよラストです。エキシビジョンマッチの最後を飾るのは、ミッドナイトリサーチャーの異名を持つタキ! 対するはカロス地方最強のジムリーダー。熱く厚い堅氷ことウルップ! 一体どのようなバトルとなるでしょうか!?』
司会の捲し立てる説明を聞きながら、タキはゆっくりと歩く。これほどの大人数の前でバトルすることは、今までにない。だが、緊張は全くしていなかった。それ以上に、目の前の相手が一体どのようなポケモンを使うのか、どのような戦術を見せるのか、それが楽しみだった。
ウルップもタキを睨みながら笑みを浮かべる。
「お前さん、あれだな。良い目をしてる」
「それはどうも」
ぶっきらぼうに返事をするタキ。しかしその目に油断などは無い。
「ねえ、お父さん!」
「ああ」
そんな彼女を笑顔で見る観客が居るが、その声は周囲の歓声で掻き消される。
「まあ、あれだ。前置きはいらないよな。早速バトルを始めようや!」
その言葉に対して、タキもボールを構えることで応える。このままではすぐにバトルを始めかねないと判断した審判は、慌てて手を挙げる。
「それでは試合開始!」
「ムウマージ、出番だよ」
「行ってこいや、クレベース!」
互いに信頼するポケモンが繰り出され、決戦の火ぶたが切られた。
【メガシンカ紹介】
レントラー
●でんき ●エレキメイカ―
●種族値:80(0)-150(30)-89(10)-95(0)-89(10)-120(50)-623(100)
●こうげきとすばやさが大きく上昇。こうげきの数値はエレキブルを超え、でんきタイプ最高となった。
●特性はエレキメイカ―となった。これによって火力がさらに上昇する。
●見た目のイメージは鬣がより大きくなり、また頭部に鬼のような小さな二本角が生える。
●当初はエレキブルをメガシンカさせようと思ったが、それだとブーバーンもメガシンカさせないとバランスが悪いと考え、変更した。