私は見知らぬ場所にいた、周囲を見回せば…氷の迷宮? …そして目の前には不思議な巨大石。マナに満ち溢れた巨大石を見て心が暖まるのと同時に、…得体の知れない悪寒を感じた。何故暖かいのに寒く感じるの? そう思った瞬間に人の気配、振り向いて悪寒の正体を知った。
私の背後にいたのは理の女王、そして紅蓮の魔導師以下アルテナ兵達。皆…私を無機質な顔で見詰めている、…私は恐怖のあまり後退る。…何をする気なの? …私をどうする気なの? 問い掛けたいけれど動けない、動けない私に理の女王は、
「…さぁ、私達の為にその命を散らしなさい。」
と言ってその手を頭上に掲げ、強大な魔力を練り上げて………。
私は恐怖で動けない、一歩も動けないでいた。目前に迫る脅威、私は…、
「………いやぁぁぁぁぁっ!?」
絶叫をあげてその意識を闇に落とした。
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「………っ!!?」
一気に意識を覚醒させた私、最低な夢…でいいんだよね? アレは夢、辿ったかもしれないただの夢。…夢であることな安心して気付く、…何で私はベッドの中にいるの? 確か零下の雪原をさ迷ったあげく、女神像の前で力尽きた筈。自身の状況に混乱するも、少し落ち着いてみれば誰かに助けて貰ったのだと想像がつく。…あんな猛吹雪の中を誰が?
誰が私を助けてくれたのか? ベッドの中でそのことを考えながら、視線を天井から横へと移した時に、
「………!?」
ベッドの縁からジッと私を見ている視線に気付いた。視線の主は小さな女の子、互いの視線が交差して暫く、
「…おねえちゃん、おめめぱっちりした? もうげんき?」
と尋ねてきたから私は、
「ええ、元気になった…と思うわ。」
と答えたら女の子は目を輝かせて、
「…おぉ~♪ おねえちゃんがげんきになった、おにいちゃんにおしえてあげないと♪ …おかあさぁ~ん!」
全身で喜びを表現したかと思ったら、そのまま何処かへ行ってしまった。…女の子の言葉から察するに、私を助けてくれたのは女の子のお兄さん?
目覚めたのにいつまでもベッドの中にいるのはまずいわよね? そう思い、ベッドから出て大きく伸びをする。…それだけなのに凄く疲れるし、バキバキと何か音がする。それにお肌の色艶、張りが悪いような…。もしかしてだけど、私ってば長い間寝ていた…意識がなかったりした? それならこの状態に納得が出来るんだけれど。
身体の調子を気にしていると、先程の女の子が戻ってきた。立っている私に気付いて飛び付いてきたのだ、…ちょっと調子が悪い私にそれは厳しい。その衝撃にかなりフラついたけれど何とか堪え、飛び付いてきた女の子に助けてくれたお礼を言った。女の子はニコニコと笑って、
「わたしはねているおねえちゃんをみていただけだよ。おにいちゃんがね、おねえちゃんをつれてきたの♪」
嬉しそうに私を助けてくれた人のことを教えてくれた。予想通り、女の子のお兄さんが私を助けてくれたようだ。ならそのお兄さんにきちんとお礼を言わないと、そう思っているんだけれど、
「おにいちゃんはおそとだよ? だからわたしとあそぼあそぼぉ~♪」
と言ってじゃれついてくる。正直調子が万全じゃないから辛い、辛いけれど助けてくれた手前…断れない。倒れない程度に相手をしよう、…邪険にするのは可哀想だし。
気合いを入れた私は女の子の相手をしようとしたその時、
「…お、本当に目を覚ましているようだ。…ってチチ、お姉さんに絡むのはダメだぞ。」
という声を聞いた。同じくその声を聞いた女の子は、私から視線を外したかと思ったらその声の主の方へと駆け出していった。目線を声の主へと向ければ、そこにいたのは女の子を抱き抱える長身の男性。この人が私を助けてくれたお兄さん? …にしては似ていない気がするけれど。
白髪に小麦色の肌、この地にて異色の薄着。顔付きは精悍な…、所謂イケメン。最も目を惹くのが頭上にいる魔物のラビ、それと男性の顔から身体に描かれている紋様かしら? 明らかに異国の戦士風、女の子のお兄さんではないと思う。なのにとても仲良くしているようで、少しだけ…というかかなり羨ましい。…私は家族とそんな風に接したことがないから、…だから妬ける。
少し醜い私の感情、それを隠して彼の下へ。彼も私に気付き、
「…調子はどうだ? 数日間眠っていたのだから、無理はしてくれるなよ?」
本気で私を心配してくれているような声色、…心配されたのって久しぶりのような気がする。感極まった私は彼の手を取り、これもまた久しぶりに心からお礼を言った。