心からのお礼を彼に言えば、
「人として当然のことをしたまでだ。…それよりも本当に大丈夫なのか? 顔色がまだ悪い気がする。とりあえずは暖炉の前へ、そこで少し話をしよう。」
謙遜しつつ私を暖炉の前へ誘う、私のことを本気で心配してくれているみたいだ。正直、まだ何となくだけれど身体が冷えている気がしていた。だから私は彼の勧めるまま暖炉の前へ、彼は女の子にラビを預けてから私に続く。ここでも小さな気遣い、女の子を遊びに行かせてくれた。どう接してあげればいいのか分からなかったから、…私って人付き合いが本当にダメみたい。
暖炉の前で彼と二人きり、炎を見詰めながらの沈黙。それを破ったのは彼で、
「君は何故、零下の雪原で行き倒れていたんだ? 話せるのなら教えて欲しい。勿論話せないのならそれでいい、…無理に聞く程狭量ではないからな。」
私のことについて尋ねてきた。…まぁ気になるわよね? 女が一人零下の雪原で行き倒れていたら。…でも話してしまったら、彼も私のことに巻き込まれてしまうかもしれない。きっと逃げ出した私を探している、そのことに思い至った瞬間気付いてしまった。このままここにいたら、彼も先程までここにいた女の子も狙われてしまうのでは? …と。最悪この場所に住まう人達が、魔法王国アルテナに攻め滅ぼされてしまうのではと。
私は今更ながら恐くなってしまった、…一人じゃ堪えきれない。だから私は彼に話してしまった、私の身に起きた出来事を。私が王女であることを
…話してしまった、…私は何てことを。こんなことを話したのだから軽蔑するよね? もしかしたら巻き込まれて命を狙われることになるかもしれないんだから。恐る恐る彼の顔を見てみた、…軽蔑の色はなくあくまで心配そうにしていた。これからのことを責めることはなく、逆に…、
「軽々しくは言えないが、一人でよくこう…健在で頑張れたな? まぁ少しは安心してくれ、少なくとも俺とラビはキミを害しないと約束しよう。…後は多少の手助けは出来るか?」
と言ってくれた。ただの同情ではないようで、彼が知る限りの情報を教えてくれたのは助かった。
その中でも特に気になったのは聖都ウェンデルのこと。そこにある光の神殿へ行けば、魔法の習得方法を教えてくれる可能性があるらしい。
後はよく分からないことを言ってきた、私が闇寄り…と。だからこそ光の神殿へ行った方がいい、その方がより良い道を見付けられるのでは? …だって。…本当によく分からない、けれど私のことを考えて言ってくれたんだと思う。だからこのことは頭の片隅にでも置いておこう、だって嬉しいんだもの。私の身を案じてくれている、そういうことよね?
そして最後に、情報を信じる前に自分で先のことを考えろと言われた。きちんと自分で考えて道を決める、うん…それは大切なことよね。私自身でも情報を集めないと、言われた通りに動いてちゃあ変われない。変わる為に行動しないと、自分の足で歩かなきゃ。
アルテナから逃げた時にはどうすればいいのか分からなかった、ただ雪の都エルランドへ向かうことだけを考えていた。見返すと言ってもノープラン、…考えてもいなかった。行き倒れてから助かって、彼に情報を貰って道が一つ広がったような気がする。…因みに彼の名前はリアード、火山島ブッカ出身の旅人らしい。彼自身も聖都ウェンデルへ行くみたい、…一緒に行けたら嬉しいんだけれども。まぁ何はともあれ、どうすべきか考えよう。
女の子のご両親のご厚意で食事を頂いた後、外に出て自分なりに情報収集をしてみた。その結果、情報はリアードから聞いたのと同じ。それ以外ではリアードのことが多かった、異国出身の彼は都の人達に好かれているようだ。零下の雪原よりも天候が穏やかなのはリアードが来たかららしい、それに彼はかなりの強者で魔物を定期的に間引いてくれているという。…そういう情報を聞いて思う、ダメ元で共に行っていいか聞いてみようと。魔法の使えない私に旅は厳しい、守ってくれる人がいないと不安だから。
色々と情報を集めて、最後に占い師の人に占って貰った。占いの結果はリアードを頼ること、頼ることが私の幸せに繋がるかもしれない。詳しくは教えてくれなかったけれど、彼と共にいれば間違いないらしい。
…やっぱりリアードに頼もう、何としても一緒に行動して貰わなければ。今の私には頼れる人がいない、助けてくれた縁を頼るしかない。…彼は了承してくれるだろうか?