墓標あるいは墓場   作:痛み分け

1 / 19
こういうポケモンの二次創作もありではないですか?

※なお既に使い古された毛布みたいなネタの模様





ポケモン
ミシロにて


 

 

 年はとりたくないものだ。最近、しみじみと思うようになった。

 

 

 人は老けた証などと言うが、儂からすれば順当な結果だ。この儂、という一人称にしてもそうだ。若い頃は僕や俺を使い、少し年を食ってから私を使い始め、より年を食って儂を使う。その上、段々と懐古することが多くなる。

 

 

 止めよう、辛気臭くなる。折角お気に入りのロッキングチェアに座り、パイプをふかしているのだ。もっと愉快なことを考えるとしよう。

 

 

 愉快なこと、愉快なこと…そう言えば、儂の孫がポケモントレーナーになるという知らせがあった。喜ばしい事だ。旅は人を成長させる。ソレだけでなく、得難い友や好敵手など一生モノの宝を見つける良い機会にもなる。願わくば孫に素敵な出会いがあることを祈るばかりだ。が、旅の末に恋人を連れてきたらどうしてくれようか。一に面接、二に面接、三と四が無く、五に鉄拳制裁か。儂の可愛い孫を奪おうという輩が出ないことも祈るとするか。

とにかく、飛び切り、地方どころか星で一番かわいい儂の孫であるが、旅の間は毎日トレーナー日誌をつけて儂に見せてくれるらしい。いや、確かに儂も孫離れは出来ていないが、孫も爺離れが出来ていない気がしないではない。深く考えても仕方ない、そう思ってそっと置いておくしかない。

 

 

 と、孫のトレーナーノート云々で思い出したのは、儂のトレーナー日誌はどうだったかという事。書くだけは書いていたが、儂は孫の様に誰かに見せたことが無かった。孫が自分の日誌を儂に見せてくれる、そう言うのなら、儂も自分の日誌を見せるのが筋な気がしたから。ただ儂だってプライドがある。酷い出来だったら、永久にお蔵入りにするだけだ。

 

 

 儂は記憶の中を探り、色々な所をひっくり返した末に、ボロボロでばばっちいノートを見つけた。表紙の文字はかすれて見えなくなっているが、中身は普通に文字が読めるほどには奇麗なままだった。

 

 

 儂は机の上に置かれた、ボロボロのトレーナー日誌を手に取って、静かにページを捲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 儂はホウエン地方にあるミシロタウンの生まれだった。ミシロの町は良い町だ。今では近代化の波にのまれ、発展したホウエン地方ではあるが、あの町だけは今も変わらない。自然に囲まれた非常に穏和なままだ。

そんな町で儂は生まれ、順当に育ち、旅に出た。変哲もない、何処にでもいるような普通のトレーナー。そのはずだった。

 

 

―――最初に貰ったポケモンが普通とは遥かにズレた所にいたことを除けば。

 

 

 初めて旅立つトレーナーはポケモン博士から一匹のポケモンを譲ってもらえる。今も変わら無いその原則は儂の頃にも勿論あり、儂はヒウジ博士から譲ってもらうことになった。儂は博士からひよこポケモン、アチャモを渡された。儂は心底喜んだ。別にアチャモが特別欲しかったわけではない。初めての儂のポケモン、それが非常に嬉しかったのだ。

 

 

 これから勝ったり、負けたりの、山あり谷ありの冒険をするのだと思っていた。色々なポケモンを捕まえたりする、極彩色の日々が始まるのだと、儂は無邪気にも信じていたのだ。

 

 

 博士からもらったアチャモは非常に好戦的だった。いや百歩譲って意地っ張り、若者風に言うのならツンデレだと言えるだろう。儂のいう事を聞かないことはない、むしろ儂の指示以上の働きをしてくれた。何がずれているかと言うと、単に強かった。強すぎた。自身の性格と自身のポテンシャルが抜群に噛み合った結果がそこにあった。その上、妙にストイックであり慢心が無かった。それだけでは無く、一撃で野生だろうがトレーナー付きだろうが倒すため、儂はアチャモ以外のポケモンを捕まえることが出来なかった。おかげで初戦の岩タイプジムに挑むころには一段階進化し、ワカシャモになり新しく覚えた二度蹴りでジムを蹂躙した。

 

 

 つまり、あの時は貰える喜びで頭が一杯だったが、今思えばあの博士は儂に押し付けたのだ。博士がアチャモの気性を知らない筈が無かったのだから。きっと上手くいけば御の字程度だったに違いない。

結局、儂はアチャモ以外のポケモンを持たぬまま、ムロタウンにあるジムへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 ムロタウンは、ホウエン地方の中でも外れた場所にある孤島だった。今の様に何かしらの連絡船が出ていることもなく、当時はムロのジムは技マシンによる飛行許可が出てからか、ポケモンに泳いで渡ってもらうかのどちらかしかなかった。そもそも、儂は相棒を見てどちらの選択肢も取れないことを理解していた。確かに、必死に水の克服や空中での姿勢制御を練習していたのは認めるが、無理な物は無理である。そもそも、完全に戦闘で不利にならないための特訓にしか儂には見えなかった。

 

 

 途方に暮れる儂に、一人の漁師が話しかけてきたのだった。ハギと名乗る、ソイツは当時の儂と同い年だったことも手伝い、親しくなるのにそこまで時間が掛からなかった。

 

 

 そこで儂は無理を承知でムロまで運んでもらうよう掛け合った。ダメ元だった。そいつは儂の言葉に驚いたものの、そろそろムロ近郊で釣りにでも行こうと考えていた、など嘯いた。不器用な優しさに感謝しながら、儂と一匹はムロタウンへとたどり着いた。

 

 

 ムロタウンに着いた儂たちが、先ずしたことと言えば洞窟の探検だった。ムロタウンには昔、炭鉱として利用されていた歴史があった。その名残で今も炭鉱は残っており、トレーナーであれば立ち入りは許可されていた。そこで、儂は少しでも旅の醍醐味とも言える探検を楽しむため、ワカシャモは更なるトレーニングのため、各々の理由から洞窟へと足を踏み入れた。

 

 

 洞窟の中は非常に視界が悪かった。反対に洞窟に潜む野生のポケモンたちは、暗がりに慣れているばかりか、その状況さえも自身の手足の様に扱っていた。本来であれば、非常に苦しい戦いが展開するのだろう。最初の頃は彼らの動きに翻弄されていたワカシャモだったがすぐに適応してしまい、流れ作業の様に襲い掛かる野生のポケモンを一撃で倒していった。ああ、ここに来ても儂の手持ちは不動のままなのか、そう思っていたがどうやらそうでもなかったらしい。

 

 

 てつヨロイポケモン、ココドラ。ここの洞窟ではそう対して珍しいポケモンでは無かった。洞窟を歩いていれば必ずと言っていい程、出会うポケモンの一体だった。だから、ソイツが儂らに立ち向かうように挑んできた時も、懲りない奴らだと思っていた。その認識は、ワカシャモの二度蹴りを悠々と耐えて見せた瞬間に変わった。そもそも、そのココドラ自体がどこか可笑しかった。姿、形は他の個体とほとんど変わらないはずなのに、ただ立っているだけで自身の足場が僅かに陥没していたのだ。今ではヘヴィーメタルと言う特性に分類されるようだが、儂の時代は特性と言う概念が曖昧で同じ種族の個体でも何かしらの違いがある、その程度の認識でしかなかった。

 

 

 儂は是が非でも、このポケモンを捕まえることを決めた。それはこのポケモンが非常に貴重だとか、そんな理屈ではない。相棒の一撃を食らっても瀕死になっていない、つまり捕獲できるチャンスなのだ。このチャンスを逃せば儂は旅に出たにもかかわらず、ワカシャモ一匹しか捕まえられませんでした、とかになりかねない。そう思った儂は迅速だった。ワカシャモとココドラが闘っている間にボールを用意して、両者の隙が出来た瞬間にボールを投擲したのだ。幾度ワカシャモに睨まれ、幾度ボールをワカシャモに蹴り返されたか。さながら、儂はプロのポケモンゲッターの気分だった。ああ、確かにここまで成果が出なければ腹くらい立つな、そう悟った。昔は近所のポケモンゲッターのオジサンをおちょくっていたが、いざ自分がそう言う目に遭って初めて分かるのだ。その上、ポケモンゲッターはハンターとは違い、ポケモンの愛護を目的とした仕事だ。不適切な手順で逃がされたポケモンを捕獲して、正規の手順をもって野に帰す。…いや、ほんとに儂、完全にポケモンハンターと化してない?

 

 

 そうして戦いに飽きたのか、儂の執念に呆れたのか、ワカシャモは邪魔をするのを止めた。すると不思議なことに、ココドラは特に抵抗をするわけでもなく自らボールの中と入っていった。

 

 

 儂はあのココドラの目を忘れたことは無い。しょうがないから捕まえられてやるよ、みたいな非常に反抗的な目をしていた。トレーナー様に逆らったらどんな目に遭うのか、それを思い知らせてやらねばならんと決意した。無論、徒手空拳など儂が逆立ちしても敵わないのは百も承知である。飯時に思い知らせてやった。ココドラの分だけポケモンフードではなく、洞窟で拾った色味かかった鉱石を与えてやったのだ。鉱石はココドラたちの主食であることに変わりはないが、ポケモンフーズよりは美味しくない筈である。どうだ思い知ったか、これがトレーナー様の力だと威張って目を向けると、一瞬のうちに平らげていた。それどころか余程気に入ったのか、もっと寄越せと言わんばかりに催促してきた。儂は思い知らせるどころか、ココドラの催促の頭突きがケツに直撃し、ココドラの凶暴性を思い知った。

 

 

 その後は語ることなど特にない。ムロのジムリーダーと戦い、ワカシャモが一匹で打倒しただけだ。

 

 

 

 

 ちょっとカイナのサイコソーダが飲みたくなった。ムロのジムから帰ってきた儂らにハギはそう言った。儂はまたもハギの好意に更に甘えることにした。カイナまで送ってもらい、儂は次のジムがある、キンセツシティへと足を向けた。

 

 

 

 





この物語の主人公『儂』は、

私が初めてルビーをプレイしたときの内容をモチーフにしています。

無論、脚色をふんだんに盛り込んでいますが。

いや、だって盛り込まないと、

Lv.80を超えるバシャーモが一匹でチャンピオンをボコす、

みたいな話になるので…。(実話)

あの頃は若かった…。
なお、金銀クリスタルではオーダイル一匹で全て乗り切った模様。

それはそれであるあるネタとしてありかとは思ったんですけどね。

※なお続きを書くかは決めてない

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。