墓標あるいは墓場   作:痛み分け

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ISのパクりネタがあります。思いつかなかったんです。すいません。



第三話

 ライダーと名乗る謎の女性に、学校で襲われたあの日から数日後、学校は何の問題もなく再開した。

 

 いや、問題は無くは無いのだが、あの時のことは理科準備室内で起こった化学薬品事故として処理された。明らかに事故では済まない規模であったにも関わらず、誰もそのことを気にしなかった。この事に対してアサシンは、魔術を使って認識を阻害しているか、知覚できないようにしているかのどちらかだろうと推測を立てていた。

 

 実際にあの光景を見たあたしとしては、都合が良すぎることの不気味さと魔術の恐ろしさを人知れず味わった。

 

 

 

 

 学校が始まってから、更に数日が経過したが何も無かった。誰かに襲撃を掛けられることもなく、気味の悪い奴に絡まれることもなく、まるで以前の学校に戻ったようだった。

 

 一方で、これが嵐の前の静けさのようで一抹の不安はあった。現に遠坂と衛宮は二人仲良く無断欠席中だ。きっと何かに巻き込まれているに違いない。

 

 あたしは束の間の休息でも楽しむかな、―――そう思っていた時期があたしにもあった。

 

「ねぇねぇ、綾子!例の外人さん誰なのよ。いい加減教えなさいよー」

 

 やはり失策だった。

 

 一応ファランの宝具のお陰で、あたしはライダーの二度目の襲撃から生き延びることが出来た。ただそれは運が良かっただけだ。あの時は遠坂が機転を利かせてくれたから何とかなっただけで、仮にあたし一人だったら死んでいる可能性が高かった。

 

 だから宝具に頼らずに自分の身を守るのに、一番適したやり方と言えばファランを近くに侍らせることだった。そのため霊体化させて、あたしの近くに居てもらおうとは思った。思ったのだが、体育と言う学校の授業と部活により断ることにした。

 

 如何に命が掛かって居ようと、誰が好き好んで自身の体操服姿や道着姿を見せなければならないのか。そんな姿を見せるくらいなら、あたしは素直に死を選ぶ。むしろ、恥ずか死する。

 

 あのファランであれば、何があってもあたしを助けてくれる、そう言った根拠のない自信があるのも理由かもしれない。いや、あたしはファランのマスターで、彼の生活面での手助けをしているのだから、それくらいの見返りがないとやっていられないだけだ。

 

 諸々の問題から、彼には実体化してもらい、学校までの送迎をしてもらうことにした。霊体化での案もあったのはあったが、既に彼の存在が割れていることと、実体化している方が何かと都合が良いことが理由だった。何の都合が良いのか、全くわからない。こうしてあたしが学校に行っている間に、どこかほっつき歩いてでもいるのだろう。その通りなら狼と言うより、リードが外された飼い犬だ。

 

「ずっと黙っているのは、照れているから…?つまり、そういう事なのね!」

 

 それ以上、先は言われなくとも予想がついてしまった。

 

「もしかして綾子の彼氏!?私たちの同盟を破る気なの!」

 

「一体いつ、あたしが同盟を結んだのさ」

 

 愉快な同級生たちからの質問攻めは、当分終わりそうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今もまだ綾子は学校で授業を受けているのだろうか。

 

 それに引き換え僕と言えば厄介な人に捕まっていた。

 

「それでねファラン!宗一郎さまったら―――」

 

 平然と買い出しに精を出していた主、メディアは僕に話し続けていた。確かに幸せなのは良い事だ。それも待ち焦がれていた幸福である。舞い上がるのも仕方ないと言える。

 

 ベンチに座らせられるなり、僕はタダの案山子に徹していた。

 

 が、そこまで露出していいのか我が主。

 

「いいのよ、正直聖杯戦争よりもこっちの方が大事だから」

 

 幸せの過剰摂取で脳味噌がマヒしているようだ。幸せは麻薬に例えられるが、それは事実だった。

 

「まぁ宗一郎さまの話はこれ位にしてあげるわ」

 

 そう言った後の彼女の表情は険しかった。

 

「気をつけなさい、ファラン。この聖杯戦争はどうにもきな臭い」

 

「根拠でもあるのですか?」

 

「ただの魔女の勘よ。

いや正確には気になる点があって、それをまだ確認できていないという所かしらね」

 

「気になる、と言いますと?」

 

「一つはサーヴァント、英霊の存在。

元々は英霊とは人に使役されるような存在ではないわ。仮に使役できるのだとしたら、私は何度イアソンを呼び出して八つ裂きにしているか、わからない。

英霊とはあくまで人類の守護者だから、何か危機でも起こらない限り召喚されない。それこそ、人類史が全て掻き消えるようなレベルの事でも起こらない限りね。

その英霊を召喚、使役しているという結果を見るに、この戦争の産物である聖杯は贋作などではなく本物であると考えられるわ。本物の聖杯であればその程度は容易いもの。

そんな物を容認している、という事実が不思議で仕方ないわ。それこそ何らかのカウンターが居ないのがおかしいのよ。

まぁこれに関しては現在召喚されているサーヴァントの素性さえわかれば、簡単に解決するわ」

 

 どうにも簡単な話ではいかないようだ。

 

「もう一つは、その聖杯自体よ。

英霊の魂をくべて聖杯の中身を作る。それは不思議なことではないわ。事象を書き換えるレベルの魔術、一般的に知られる固有結界は非常に膨大な魔力を使用する。ソレこそ、この星の寿命と同じ期間、固有結界を維持しようとするなら、少なくとも英霊七基捧げなければならないでしょう。

でも、そのくべられた英霊の魔力に聖杯が影響を受けないと誰が言えるのかしら?

聖杯に英霊の魂をただの魔力に変換する機構でも付いているのならともかく、英霊の側面の一部がサーヴァントとして召喚されている以上それぞれの魂に指向性というのはあるわ。それこそ、善良なものがある一方で悪意に満ちたものもあるはずよ。そして、それは魔力に影響を与える。

魔術の適性なんかは良い例ね。あれは魂から漏れ出た魔力から判断しているのよ」

 

「つまり、聖杯自体が汚染される可能性もある、ということですか?」

 

「汚染…汚染ね。

ソレだと少し意味が変わってくるわね。

以前の聖杯戦争の影響、それも悪意の塊が未だに残っているのならそれでいいけどね。

そこまでは断言できないの。

何かしらの処理がされた痕跡が出るだけでおしまい。

それ以上は分からないから、正直お手上げよ」

 

「…痕跡とか言っている時点で真っ黒じゃないですか」

 

 本当に呼ばれない方が良かったのかもしれない。こう、しれっと退場しようかな。

 

「できないことを考えるべきじゃないわ」

 

「ですよねー」

 

「それに、あの娘のこと気に入っているのでしょう?」

 

 図星だった。それでも素直に認めるのが嫌だった。

 

「行きずり、なだけですよ」

 

「なんでもいいわ」

 

 そう言って、主は立ち上がった。

 

 去り際の言葉は、僕の耳によく響いた。

 

「―――泣かすな、とは言わないわ。

貴方は女の子を散々泣かすのが得意なようだから、それを止めてしまったら取り柄が無くなってしまうから。

でも、後悔はさせないようにね。

私たちは既に死んだ身。どうしてもサーヴァントと言う不安定な存在では、その死に方に引っ張られる。

そのことを忘れちゃだめよ」

 

「心に刻んでおきます、我が主」

 

 時たま思うのは、主は実際に未来が見えているのではないだろうか、ということ。それ程までに彼女のいう事は当たる、当たってしまう。ソレこそ、良いも悪いも関係なく。

 

 いま、彼女がこんなことを言うということはきっと僕の最後が近いのだろう。

 

 それは認めがたい出来事だ。ありえない、と一笑にふすべきかもしれない。

 

 でも、既に覚悟はできていて、あとは未練を終わらせるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校が終わって、あたしは部活をサボった。終わらない質問に、いい加減うんざりしたのが理由だった。今までのあたしを考えれば、信じられない行動だ。全部、あの人狼騎士とか名乗るアイツのせいだ。なんだか無性に腹が立ってきた。校門を出て、迎えに来ていなかったら文句でも言ってやろう。多分、部活だと思って未だ来ていないだろうけど。

 

 けれど、そういうときに限って、ファランは既に校門に立っていた。騎士なんて程遠い、パーカーなんてラフな格好をして。生意気な奴だ。

 

「おっ、綾子、お帰り」

 

 能天気な声にあたしの毒気は抜かれてしまった。あたしって本当、単純。

 

「なんだよ、何か用でもあるの?」

 

「用、用ねぇ……あるよ」

 

 どうせ、どこかに案内しろとかだろう。

 

「デートしようよ、綾子」

 

「は?」

 

 周りの奴らに乗せられすぎて、あたしの頭は真っピンクになっていたらしい。コイツの口からそんな言葉が出るはずがないのだ。思わず出た素っ頓狂な声も、演出の一環だ。

 

「ほら、思い出作りって大事だろう?」

 

 いつもと同じ調子で言っているようで、少し震えが混じっていた。どうやら緊張しているらしい。それを見ると、段々と夢に思えなくて。

 

「うん」

 

 あたしにまで緊張が移ってしまった。

 

 

 

 

 

 僕には緊張はあるが、照れは無かった。何だかんだ言っても、そこそこの寿命を生きたわけで、女性をエスコートする経験がないわけでは無かった。が、気になる女性と言う言葉が付くと話は別で。

 

 自分のあまりの情けなさに笑いしか出そうにない。綾子は借りてきた猫に大人しく、未だに会話の一つすらできていないが。

 

「なぁ、いきなりどうしたんだ?」

 

 疑問に思って当然か。何の説明もなく連れ出したのだから。

 

「いやぁ偶々遊園地のペアチケットを貰ってさ。捨てるのも勿体ないし、かと言って譲ろうにも相手がいないからね。

で、色々考えた結果、綾子と行こうかなって。

迷惑だった?」

 

「迷惑じゃないけど…」

 

 そう言って彼女は口ごもった。迷惑なら、迷惑だといっその事バッサリといって欲しかった。これじゃ新手の生殺しだ。

 

 それ以降、彼女は口を噤んだまま、遊園地に着いた。

 

「…ぅ…ぅぅぅ」

 

「綾子、どうしたの?」

 

 急に唸りだした綾子に、内心僕は大慌て。やっぱり駄目だったか、そんな思いがちらついた。

 

「うがぁー、うじうじしてあたしらしくない!

とことん楽しむつもりだから、面白くなかったらただじゃおかないからね!」

 

 彼女らしい吹っ切り方、と言えばいいのだろか。僕は一応のオーケーがもらえて嬉しかった。僕はその思いを表そうと鷹揚に手を差し出した。

 

「エスコートはお任せあれ、マイフェアレディー」

 

 彼女は僕の手を取った。

 

 

 

 

 遊園地に入って、最初に乗ったのはジェットコースターだった。これに乗らないと遊園地に来た気があたしはしない。とは言え、ジェットコースターに乗れない人、というのは増えている。それとなく、ファランの顔を見ると彼の目は輝いていた。耳としっぽを幻視した。

 

「あれだ、ハイスピードで上下に移動して浮遊感で鳥なった気分になるやつでしょ。

いやぁ、一度は鳥になってみたかったんだよねぇ」

 

 流石、狼になっても平然としていただけのことはある。鳥そのものになってみたいとか言うのはファランぐらいだ。

 

 二人してわーわー絶叫しながら浮遊感を楽しんだ。

 

 

 

 

「えっ?ほんとに入るの?いや、あたしは少し遠慮したいというか…」

 

 おどろおどろしい看板が恐怖を引き立てる。建物の入る場所はさながら化け物の口。遊園地の定番、お化け屋敷だった。

 

「えー、何、綾子怖いの?いやー怖いなら無理してはいけないなー。仕方ないなー」

 

 満面の笑みを浮かべるファランの顔をぶん殴りたくなった。でも、あたしは淑女だ。そんな野蛮な行動はしない。安い挑発に乗る、なんてこともない。

 

「あ、中入っても大丈夫ですか?」

 

「二名様、ごあんなーい」

 

 強制的に突っ込まれる、とか聞いてない。

 

『ギャー!』

 

『へぇ、最近のホラーってよくできているんだねぇ。

僕も便乗しようか…ガオォ!』

 

『あぁぁぁあああ!』

 

 だからって突然、顔だけ狼に変えないでください。お願いします。

 

 

 

 

 もうお化け屋敷なんて入らない。少なくとも、このおバカオオカミとは絶対に入らない。

 

「ごめんよ、綾子。

これあげるから、機嫌を直してよ」

 

 いつの間にか戻ってきていた、おバカ騎士の手には二種類のクレープがあった。片方をあたしは素直に受け取り、齧った。甘みと僅かな酸味が口に広がった。

 

 あーん、とか酷く恥ずかしさを感じる出来事はあった物の、クレープは美味しかった。

 

「あれ、お金なんて持っていたの?」

 

「おいおい、僕を見くびってくれるなよ。

魔術を使えば、簡単な大道芸くらい出来るんだぜ?」

 

「ずるっ!」

 

「ジョークだよ」

 

 そう言って、笑いながら彼は屋台のオジサンに手を振っていた。

 

「彼女の機嫌を直すのに、クレープがナンバーワン。

ちょうど良いのが出来上がったから持ってけ色男、ってくれたのさ」

 

「ふーん、で味は何だったの?」

 

「ミックスベリーってやつだね」

 

 そう言われ、屋台の看板を見るに、ミックスベリーなんて物はなかった。あるとしたら、ストロベリーとブルーベリーで…。

 

 何となく察して、あたしの顔は赤くなった。

 

 

 

 

 楽しい時間、というのは早く過ぎ去ってしまう。そのことを、あたしは改めて痛感した。

 

 色々あった。コーヒーカップにも乗ったし、ウォータースライダーも滑った。他にもフリーフォールやフライングパイレーツと言う船型のブランコにも揺られた。中でも、一番記憶に残っているのはコスプレしてメリーゴーランドに乗らされたことだ。当たり前というか、当然というか、妙に騎士の恰好が似合う奴がいて、ソイツにお姫様抱っこで馬に乗るのは新手の羞恥プレイだ。まぁあたしの顔も真っ赤だったと思うが、アイツの顔もうっすらと赤かったから許すことにした。

 

 そして、最後は観覧車に乗ることにした。

 

 恥ずかしい事を一通りしてきたのにも関わらず、お互いに向かい合って座る、というのは慣れていなかった。

 

 互いに一言も出さない。でも、それは気まずい沈黙ではなく、声を出さずとも心でつながっているような、不思議な感覚だった。ただ、言わなくとも通じるから、分かってしまう。

 

「ファラン、黙って消えたりなんてしないよね」

 

「僕がかい?おいおい、綾子。

僕は無敵で不敵な人狼騎士様だよ」

 

 そう言って、彼はおどけて見せた。それは虚勢だった。

 

「と強がっても、無駄みたいだね。

降参、降参だよ、綾子」

 

 彼は両手を上げた。

 

「何というか、英雄、英霊なんてやっていると自然と感覚が研ぎ澄まされていく。

それは五感だけでとどまらない。ソレこそ、直感的な、第六感と言えばいいのかな。同じように磨かれていく」

 

 彼はそこで言葉を濁した。それ以上は聞かなくとも分かることだった。

 

「…本当に自分勝手だよ」

 

 彼は何も言わなかった。

 

「人を散々焦らして、自分は飄々としている」

 

 今は未だ、彼への思いがどんな物か分からない。これが恋慕であるのか、それとも今までの感謝なのか。はっきりと結論が出せていない。そもそも、早急に出すものではないはずだ。たくさん悩んで、悩んで、悩み抜いて。その結果、答えを出すもののだ。それを、それすらも待ってくれないなんて。

 

 それはあまりにも―――

 

「―――自分勝手すぎるよ、ファラン」

 

 ファランは何も言わず、ただあたしに申し訳なさそうな顔をしていただけだった。

 

 

 観覧車は静かに終わりを告げた。それは同時に、運命の到達を表していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん。王たる我を待たせるとは、頭の高い犬畜生だ」

 

 その存在感は圧倒的。

 

 その在り様は普遍的。

 

 その姿と形は芸術的。

 

 そして、僕が激しく嫌悪する奴らと同じ匂いを放っていた。

 

「空気くらい、読んでみてはどうかな?」

 

「ハッ、雑種以下の畜生の分際で、我に意見するか!

本来であれば、万死に値するが、良い、良いぞ。特別に許そうではないか。」

 

 黄金の鎧を身にまとう、金髪に赤い瞳の男はそう言った。

 

 傲岸不遜な態度。だが、誰も文句は言えなかった。

 

「それで、何か用かな?」

 

「言われずとも分かるであろう。

―――小賢しい畜生を屠殺しに来た。

とは言え、そこの女が巻き込まれるのは本意ではないのであろう。

が、そのまま帰すのも、王たる我に失礼であろう?

故に褒美をとらせるとしよう」

 

 僕は間に合わないことを悟った。

 

 僕らは所詮、死には抗えないのだから。

 

 男は無造作に指を弾くと、隣にいた綾子は気を失ったかのように倒れた。

 

「少し意識を沈めただけの事よ。

何、簡単な話だ。治したくば、我から薬を奪えばいいだけの事。

冬木の大橋にて貴様を待とう。無論、来なくとも良いぞ。犬らしく尻尾を巻いて逃げればいい。

だが、その女の命は無いだろうがな」

 

 男は哄笑をあげながら、去った。

 

 僕は綾子を背負った。その体は軽かった。命のやり取りが出来るほど、重たくは無かった。

 

 

 

 

 

 

 行く場所は決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




中途半端ですが、ここらへんで一旦ぶつ切りです。

後、二話で終了なのできっちり書き切るぞい。

後、元々予定していたマルチエンドはありません。

そこまで書く元気がなくなったので、どちらかのエンドになります。


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