俺自身がメスガキになる事だ   作:三白めめ

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勘違い要素です。


Dive in Shadow

 訳が分からなかった。流石に何千年という歴史を持つ尸魂界(ソウル・ソサエティ)といえど、斬魄刀と一体化する始解など聞いたことがないらしく、この現状がどうにかなるには当分時間がかかりそうだ。

 

「おい、あれ……」

「どういうことだよ……」

 

 周りの視線が煩わしい。そんなにも俺が物珍しいのかと思ったが、霊圧と同時に霊力の感知能力も格段に上昇しているようだ。そのせいで視線に敏感になっているんだろう。というかよく考えなくても、俺は十分に物珍しかった。

 

 少し厄介なこともあったが、始解を使えるようになったのは当然いいことで。これがこの始解の能力だと思うのだが、なんと害意を向けてきた相手の霊力を奪えるのだ。ただ、今の俺は不本意ながら筋力の弱い幼女だ。幼女相手に牙を剥くような死神がいるはずもないことから考えて、鬼道でならともかく斬術の試合では俺が最も弱い。おまけに口調まで見た目相応になってしまっている。のだが。

 

「なんで負けてるの?」

 

 (幼女)に負ける相手が多すぎる。いや、まあ実戦ならば使える霊力の差があるので俺が勝ってもおかしくはないが、そういうものを使っていないただの試合で何故幼女一人に勝てないんだ。

 

「は?負けてないんだが?お前の斬魄刀の能力にかかっただけだが?」

 

 そう言われれば納得せざるを得ないが、そんな些細な害意でもこの能力は発動するのか。味方にも使ってしまう可能性を考えると、普段の態度も意識しなければならないな。あまり強い言葉を使わないようにしよう。挑発のように捉えられるかもしれない。

 霊術院の卒業まであとわずかだ。

 

 

 そして一番の悩みの種として。

 

「またここか」

 

 夜寝ると、いつの間にか見知らぬ場所に飛ばされている。

 景色自体はいいんだ。一面氷で覆われている街の中に、真っ白な西洋風の城が立っているというのは神秘的で好みだし。

 ただ一点、寝間着一つで放り出されたことを除けば。

 

 最初にいる場所はまちまちだ。城の外にいることもあれば、どこか使っていない部屋の中にいることもある。

 今回は空き部屋のようだったので、部屋に置いてあった服を着ることにした。嗜血花のスカートほどではないが、いつも着ている死覇装よりもよっぽど短いスカートを穿くのにはどうにも慣れない。下半身に風が入ってきて心許ない。というか、今でも心は男だ。慣れてはいけないだろう。

 

 ある程度時間が経てば瀞霊廷に戻っている。それまではやることもないのでこの場所を見て回るようにしていた。もしかしたらここがどこなのかわかるかもしれない。

 

 部屋から出て現在の位置に見当を付ける。ここからなら、以前見つけた酒置き場が近い。こっそりとただで高そうな酒を飲めるということだけは気に入っていた。

 周りに誰もいないことを確認してから部屋に入り、酒瓶を何本か手に取ったらすぐさま外に出る。あんまり欲張りすぎるのは禁物だ。

 

「あ?誰かいるのか?」

 

 やばっ。ばれたか。

 

「なんだ、ガキじゃねえか。なんでこんなところにいやがる」

 

 いいからどこかに行ってくれないか。鶏のトサカみたいな頭しやがって。罰ゲームかなにかか?

 それより今はこの状況をどう切り抜けるかが大事だ。認めがたいが、今の俺は迷い込んだとはいえ勝手に他人の城の中に入り込んで酒を盗った盗人だ。どうにかして誤魔化さなくては。天気の話……だめだ。天候が全然変わらない。容姿を褒める……トサカしか目につかない。これだ。なんかカッコいい髪型だみたいなことを言っておけば大丈夫だろう。

 

「随分と素敵な髪型をしているのね。お友達にでも勧められたの?」

 

 だめだ。余計なことまで付け足してしまったかもしれない。誰だよお友達って。あんな髪型虐められでもしない限りしないに決まってるだろうが。

 

「ッてめえ」

 

 ほら怒った。霊術院でも虐めは繊細な問題だったし、そういうのは慎重に扱うべきだった。えっと、なんとかして慰めなければ……

 

「気にすることはないわ。お友達は貴方のことを気にかけているはずよ」

 

 流石にそんな髪型になっちゃったら罪悪感も感じるだろう。やりすぎたって反省してると思うよ。多分。

 

「あなたが思っているほど重大なことじゃないわ」

 

 だからそんな髪型一つで落ち込まない方がいい。そのうち新しい髪も生えてくるさ。

 

「……」

 

 ん?俯いてどうしたんだろうか。

 

「バーナーフィンガー……」

 

 トサカ頭の霊圧が上昇した。拙い!なにかやらかしたのか!?

 

(ワン)

 

 危ない!熱線を撃ってきた。咄嗟に避けていなかったら死んでいたかもしれない。今だけはこの体が小さいことに感謝できそうだ。そもそもこんな体にならなければ今死にそうにはなっていないんだけども。

 

「ち、外したか。指一本で無理なら仕方ねえ」

 

 待って、これ以上は拙いって。ほら、酒とか全部おじゃんになるし。引火したらきっと二人とも死ぬだろ。

 

「そんなこと、やめた方がいいのに」

「ほざけよッ!バーナーフィンガー2!!」

 

 よし、不発。技を出すための霊力を奪い切ればなんとかなると思ったが、間に合ってよかった。

 

「どういう……ことだ……」

「だから言ったでしょ。やめた方がいいって」

 

 今はか弱い俺がこんな野蛮な猿と関わっていられるか。ではな。酒はもらっていく。

 

「さようなら。ニワトリさん」

 

 

 そうして空き部屋に戻って酒を呷ろうとしたが、飲む前に尸魂界に戻ってきてしまった。着ていた服は持って帰れたのに、酒はだめなようだ。

 

 それにしても、あいつは何者なんだ?死神じゃないし、滅却師(クインシー)ってのは弓しか使わないらしいから違うだろう。(ホロウ)っぽくはなかったな。

 

「何者なんだろう。あの人」

 

 

 

 

 

 

 どういうことだ。バズビーは地に膝をつき考える。体に力が入らない。何故あの場でバーナーフィンガーが使えなくなったのか。あり得るとすれば、聖隷(スクラヴェライ)で霊力を奪われた可能性だ。だが、もしそうならば自分は気づいただろうし、念のために使っておいた静血装(ブルート・ヴェーネ)がそれを阻んだはずだ。

 そうだ。血装だ。それが極端に弱まっている。いや、血の量自体が減っていたのだ。

 

「吸血鬼かなにかかよ」

 

 霊子と共に血液を奪う。つまり、ともすれば閣下から与えられた聖文字(シュリフト)すら奪われるかもしれないわけで。

 

「これは、思ったよりヤバいかもな」

 

 遭遇した時の格好からすれば滅却師(クインシー)だろう。こんな芸当ができるのも滅却師だけだ。ただ、そんなやつがいるのならとっくに星十字騎士団(シュテルンリッター)に入っているはずだ。だが、そんなことはなかった。死神は見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)を知る由もない。ましてや(ホロウ)がここに入ってこれるはずがない。特異な人間(バウント)とかいうのは違うだろうし、混血は最もあり得ない。

 

 それに、ユーゴーのことも知ったように語ってやがった。

 

 灰白の髪に金色の目が、未だに頭に残っている。何者でもない新しい吸血鬼。

 

「クソッ。何者なんだよ、てめえは」

 

 




需要があれば続きます。
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