俺自身がメスガキになる事だ   作:三白めめ

6 / 6
色々と立て込んでいて遅れました。


When is Your Generation

 僕、石田雨竜は困惑していた。さっき倒した死神は七番隊の四席と名乗っていて、今戦っている少女が八番隊の七席と言っていた。死神も虚を倒すのが役目な以上、数字が低い彼女の方が弱いはずだ。だが──

 

「なぜ一度も当たらないんだ……」

 

 彼女は矢に掠りもしていない。それどころか返り血すら律義に避けているのだ。

 

「無傷の勝利でも気取っているのかい?随分と余裕があるらしい」

 

滅却師(あなた)が相手だもの。この程度は当然でしょう」

 

 返ってくるのは涼やかな表情。矢を射ると同時にまた反撃が当たる。あちらから先には仕掛けてこない。甘さや隙だと思っていたが、まさか自分からは攻撃しないとでも言いたいのか。

 

「あれ?思ったより弱いのね。これなら数年前に戦った()の方がよっぽど強かった。なんていったかしら、あの滅却師」

 

 数年前。その頃に生きていた滅却師は──

 

「石田宗弦。僕の師であり実の祖父だ」

 

「そう。あれがあなたのお祖父ちゃんなんてね。──少し同情するわ」

 

 ……今、彼女は師匠(せんせい)を侮辱したのか。そして、彼女が師匠を殺したのか。怒りのままに矢を射ろうとしたその時、視界が歪んだ。全身の力が抜けて立っていられない。それに、相手の霊圧が増した?

 

「やっと効果が出たようね。私の斬魄刀『嗜血花』は、その名の通り血を好むの。どういうことかというと、殺意に反応して血や霊力を奪う。効果が出るまでに時間がかかるから、普段は七席相当の実力なんだけどね」

「礼を言うわ、石田君。あなたが周囲の霊子を集めてくれていたおかげで、今の私は隊長格にすら匹敵するわ」

 

 つまり、今までの煽るような戦い方もすべて罠か。僕により多く攻撃させるために避け続け、戦闘を長引かせた。

 

「わざわざ敵に能力を説明する意味って分かる?あなたの負けってことよ」

 

 どうする。井上さんもいるし、乱装天傀を使って無理矢理逃げるか?いや、霊力もだいぶ失っているから、それは厳しい。ここでリスクを覚悟で滅却師最終形態になれば勝てるかもしれないが、それでは後がなくなる。

 だが、あの死神が迫ってきている以上はそれしか道はないと散霊手套を外そうとした、その時。

 

「止まって!」

 

「なに!?」

 

 井上さんの三天結盾による体当たり。普段なら無謀な一手だが、あの犬蒔樫という死神が律義に説明してくれていたおかげで助かった。殺意を持たない攻撃であればあの斬魄刀は反応しないらしい。

 

「乱装天傀!」

 

 霊子の糸で無理矢理身体を動かす。体の負担は後で井上さんに治してもらうからと、井上さんを連れて全力で逃げる。

 

「それでいい。あなたのそれを振るうべき相手は他にいるわ。私は彼、宗弦を殺していないもの」

 

 去り際にかけられた声が気になった。どういうことだ。戦ったとは言っていたが、殺してはいない?だめだ、血が足りないから頭が回らない。井上さんも一緒に飛ばされたようだし、まずは休むべきか。

 

 

 

 

 

 

 

 瀞霊廷に旅禍が侵入したらしい。実に数百年ぶりらしいと言えば、どれだけ珍しいかがわかるだろう。まあ、数百年前は俺も生まれていなかったのだが。

 入隊して二年。俺が八番隊の七席に昇進した直後にそんな話を聞いたものだから、驚きはすごかった。まあ、卒業試験でなぜか総隊長殿が相手だった時に比べればそれほどではなかったが。手加減されていたとはいえ、斬魄刀を抜かれたときは本当に焦った。

 

 空中で四つに分かれた光は旅禍の一行らしいので、途中で会った一貫坂次郎坊という七番隊四席の先輩と旅禍を追っていると屋根の上で旅禍の男女とあった。女の子の方は見たところ普通の洋服だが、男の方、どうも見覚えがある服装だ。

 

 あ、一貫坂先輩が、女の子の方に襲い掛かった。まあ、旅禍だし、か弱そうな方を狙うのは妥当だが、彼女がご主人様みたいなタイプだったらどうする気なのでしょうか。それに、もう片方は滅却師のようですし。なにかあると疑うべきでしょう。それにしても、現世に混血の滅却師が残っていたのですね。てっきり陛下の聖別ですべていなくなったと思っていました。ご主人様に伝える必要はなさそうな情報ですが。

 

 やっぱり滅却師!?ついにあの城から出てきたのか。というか、一貫坂先輩もう負けたんだ。死神として再起不能らしいけど、大丈夫なんだろうか。

 次は俺?退いた方がいいって、旅禍を前にして背中を向けて逃げ出すわけがないだろう。

 

「ならば君も僕の敵だ」

 

 よし、嗜血花の能力に嵌った。あとは相手が動けなくなるまで矢や特殊な攻撃を避けるだけでいい。そして、もう俺はご主人様やあの爺さんで懲りたんだ。対策は立ててある。

 まず、滅却師には謎の防御がある。血装というらしい。あの爺さんが傷を負っていなかったのはこれが原因だな。これは攻撃力を上げたり鎧にできたりするが、どちらか一つの効果しか使えない。つまり滅却師が攻撃した隙を狙う必要があるわけだ。そういえば、あの爺さんはロバート・アキュロンというみたいだ。どこで聞いたかは覚えていないが、最近行く頻度が少なくなった銀架城で聞いたのだろう。

 

 ご主人様は私に色々なことを教えていただきました。滅却師としての十全な力の使い方もまたそうです。

 

 次に相手の矢だが、ジゼルみたいに触ると効果が発揮される能力の可能性がある。絶対に当たらないように気をつけよう。

 警戒のしすぎかもしれないが、滅却師を相手にしているのだからこの程度は当然だろう。それに、今戦っている石田くん、爺さんやトサカ頭に比べて妙に矢の威力が弱いのだ。なんらかの特殊能力を持っているに違いないだろう。あの手袋が特に怪しい。

 というか、いくら死神で敵とはいえ俺は今幼女だぞ。本気で殺気を向けるのもどうかと思うんだが。まあ、そのおかげで嗜血花が能力を発揮できたんだが。

 

 それにしても、えっと、石田君は能力がどうとかじゃなくて純粋に対人戦に弱いだけなのか?てっきりあのトサカ頭と同じくらいの強さだと思ってたんだが。というか、あのトサカの本名ってなんだ?嗜血花も知らないから、最近入った滅却師なんだろう。同じくらい若い滅却師だし、そこの石田君なら知っているだろう。なんていう名前なんだ?

 

「宗弦。僕の師であり祖父の石田宗弦だ」

 

 ……マジで?あれがお祖父ちゃん?あの髪型と口調で?なんというかその……あー、ロックな人なんだな。

 え?なんでそんなに殺気が増しているんだ。というか、え?あのトサカ頭死んだの?

 滅却師の誇りにかけて俺を倒す?やめてよ、そんなあの爺さんみたいなこと言うの。まだあれはトラウマなんだから。

 というかこれ、俺があのトサカ頭を殺したみたいに思われてないか?後で誤解は解いておこう。

 

まずい、なんか手袋を触った!って痛い!なんか板で殴られた感じがする。あの女の子、戦えたのか。乱装天傀?なんだそれ。無理矢理身体を動かせるのか。ちゃんと逃げたみたいだな。隊長格に匹敵するだのなんだのと言っておいてよかった。あ、待って!誤解は解いておかないと。ちゃんと伝えられたようでよかった。

 石田君のあの手袋が外されると絶対にろくなことにならないはず。あそこから弓を出していたんだ。それを外すのだから、相当やっかいな能力だろう。俺がなんとかできるとは思わないから、副隊長や隊長に任せる。一貫坂四席がやられたんだ。七席の俺が負けても仕方ないだろう。すまない、貴族とはいえ無理なものは無理だ。とりあえず、一貫坂先輩を四番隊舎まで運ばなければ。卯ノ花隊長、俺を見る目がなんか怖いんだよなぁ。




これからも不定期更新です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。