「ママ〜!だっこ!」
「ふふ、杏樹ちゃんは甘えん坊ね〜。いいわよ、抱っこしてあげる。」
母が娘に手を差し伸べた瞬間だった、何か黒いものがすっと体の中に入り、その場に倒れた。
「ママ〜?」
すると、体の中に入った黒いものが浮かび、黒いものは、徐々に人間の形に変わっていき倒れた母親と同じ姿をしていた。
「...。」
「ママ!」
本体の母親は倒れたままで、偽物の方はまだ幼い杏樹を睨んだ。杏樹は睨まれた事により涙目になっていた。
杏樹を置き去りにしたまま偽物の母親は、どこかに去っていってしまった。
「ママーーーー!!」
「ふふふん、やっぱりクレープは美味しいわね〜!ん?..小さい子供が泣いてる。しかも、母親らしき人が倒れてる...」
歩道で泣きくじゃるこどもを見つけて、横断歩道を渡ろうとしていた陽毬は放っておけないと思い、その子供に声をかけた。
「どうしたの?」
「ママ!ママ!うわーーーん!!」
「..ママがどうしたの?」
「倒れてっ..ママ..が」
「取り敢えず病院に連れて行きましょ。」
そう言い陽毬は携帯で、アングリフに連絡しアングリフから病院に連絡してもらい、母親は何とか病院へ運ばれた。
***
「うーん、またもやこないだの青い髪のお嬢さんとの時と同じような悪がこの女性から魂だけを抜き取ってる気がするんですよ。」
「ま、またですか?」
更に医師は続けて言った。
「息を吹き返したら奇跡です。」
「じ、じゃあ、この子はどうなるんですか?!この女性の娘さんは?!」
「この子の父親であり、この女性の夫である方に事情をお話ししましょう。そして、女性が意識を取り戻すまではその男性に任せると。」
陽毬は屈み、杏樹に目線を合わせた。
「ママは、夢の中へ行ってるみたいなの。暫く我慢できる?」
「ママー!!」
「...。」
どうしてもママがいい杏樹に陽毬は、困った。どうやって説得しようかと。その時、病室のドアが開いた。知らない男が立っていた。
「その子は、父親がいないんだ。母親しかいないんだ。だから、どう説得しても駄目だよ。」
紺色の髪の男が杏樹を抱っこした。
「...誰なんですか貴方は。」
「純希おにいたん。」
「ははは、僕の名前覚えてくれたなんて嬉しいな。僕の名前は、伊織純希さ。杏樹ちゃんは、僕の姉の子供さ。」
「へーそう。つまり、貴方からしたらこの子は姪ってことね。って、家族の方に何も知らせてないのになんでここにこの子がいるってわかったの?!」
「そんなの簡単だよ。医師から連絡先きてさあ。あ、医師とは家族ぐるみで仲良いからさ」
「はいはい納得しました。はいはい」
自慢げに言う純希に陽毬はどう反応すればいいかわからなかった。
「あ、そういえば君の名前まだ聞いてないよ?」
陽毬はこの言葉に早く名前を言えと言うように聞き取った。
「降霊陽毬。宜しくとは言わないわよ。どうせ今回の件で関係なんて終わるから。」
「へえ、ツンツンしてるね〜陽毬。」
「初対面なのに呼び捨てって何なのよ!」
「別にいいじゃん。そっちの方が仲良くなった感じがしないかい?」
「しないわよ。誰があんたみたいなやつと!こんなことしてる場合じゃなかった...原因調べに行かないと。」
そう言い陽毬は、急いで病室から出て行った。
「純希さんよぉ」
「何?」
「もしかしたら、今のが運命の出会いってやつかもしれませんぞ。」
「そうかな。それだったら嬉しいな。」