「水鳥萩。菫ちゃんとネソのクラスの隣のクラスの生徒。頭が良く、運動神経も抜群。そして、アングリフの青の戦士として水の技を使う中学2年生。」
「あの子をここに連れてくるのは元々、私の中のプログラムにありました。」
実亜はパソコンを見ながらネソと話をしていた。
「萩はアングリフにとってとっても重要な1人なのよね。可哀想なことに。」
「戦士は全員で6人。現在は井村さん、水鳥さん、私の3人だけ。紫の水晶が奪われることによって世界が滅びる。でもその前に残りの3人を見つけなければ世界は滅びてしまう。」
「そうね。でも、世界が滅びるまで貴方達が生きているのか心配ね。」
「少なくとも、私は目的を果たすまでは死にません。きっと井村さんも、水鳥さんも世界を救うまでは生きていたいと思います。」
ネソは真剣な表情で自分の気持ちを伝えた。実亜は真剣な表情のネソを見て、少し安心した。
実亜を始め、アングリフの大人達にとって今できることは水晶から力を与えられた戦士達に未来を託すしかないのだ。
「よかった。そう言ってくれて。じゃあ、私買い物行ってくるからまた後で。」
「はい。また後で。」
実亜は笑顔でネソに手を振り、ネソの部屋から出て行った。実亜が部屋から出ていく姿を、何も考えずただぼーっとネソは見つめていた。
「(正直、あんなこと言ったけどアングリフの戦士は私1人でいいのに。)」
***
「もしかしたら、菫はもう一生もどってこないのかもしれない。」
「大丈夫よ。いつかきっと、あの子なら戻ってくれるはずよ。」
自宅のキッチンの机の上で頭を抱える颯の頭の上に、貴美子が優しく手をぽんとおき撫でた。
2人は、自分たちのせいで菫がアングリフに行ってしまったことを反省していて、自業自得ということもわかっている。
「そんなわけ」
「私、菫の事信じてますから。後、あの子の事だって。」
貴美子は落ち込む颯の頭を撫でるのを辞め、机の上に飾ってある、木の写真たてを手に取った。
そこには、颯と貴美子とまだ歩き始めて間もない菫ともう1人の菫と同じくらいの娘の家族写真が入っていた。
「あの子はもう、どこを捜してもいないんだ。きっと、殺されたんだ。」
「...きっと、生きてるはずです。私はあの子が生きていて、いつか私達の所に戻ってくることを願っていますから。」
井村夫婦にとって、2人の娘はかけがえのない宝物だった。
その2人が居なくなってしまい、井村夫婦の心に穴が空いてしまった。その空いた部分を埋めるものなんてこの世には存在しない。