「ただいま。」
「お、おかえりってあぁ。緋桐だったのね。花炎だと思った。緋桐、さっさと食事の支度して、洗濯物干して、風呂沸かして頂戴?今日、私仕事だったんだから〜。」
「はいはい。」
昔から親も花炎も家事は押し付けてくる。これが家に帰りたくない一つの理由なのだ。そのせいで家では勉強したくてもできない。だから、放課後図書館へ行き、ちょっとでも遅い時間に帰れるように勉強している。
家族からして私は、家族っていうより家政婦という存在の方が近いのかもしれない。
「ただいまー!」
「花炎!おかえりー!」
私には厳しい代わりに、花炎にはとても甘い。こんな姉妹差別があっていいものだろうか。
「そういえば今日ね」
花炎が私の方を見て、何かを母親に話し始めた。
「何?」
「お姉ちゃんが友達いないから、またひとりぼっちで図書室で勉強してたよー。」
「あらあら、そうなの?ちっとも頭良くないくせに。花炎ちゃんは、お姉ちゃんみたいにならないようにしっかり友達と遊んで彼氏作って青春するのよ!」
「うん!勿論!」
は?という言葉が頭に浮かんだが、もう気にしてない。気にしたら負けなんだから。
友達がいなくて何が悪いの?
私に友達がいないことで貴方達に何か迷惑かけた?
それくらい私の勝手にさせてよ。
***
「わあ、またこの夏我さんが1位なんだ!2位は、水鳥さん?!水鳥さんって頭良かったの?!3位が木通さんって...ネソさんも頭いいんだ...。」
「そんなに凄いこと?まあ、でもいくら勉強しても夏我さんだけは追い抜けないのよね〜。でも、あの茶髪って頭良かったのは意外ね。普段、ぼーっとしてるイメージあるのに。」
廊下の壁に貼り出された1学期の中間テストの結果を見て、2人はお喋りをしていた。
「私なんて、学年全体で10位以内にすら入れないよ...。」
「まあまあ、また次回のテストの前に誰かに勉強教えて貰えばいいのよ。私が教えてあげてもいいけど?」
「本当?!」
菫は目を輝かせた。
「私の教え方が井村さんに合うかどうかはわかんないけど。」
「ありがとう!!」
「ところで、この夏我さんって誰か知ってる?」
「知らない...わかんない...。直接会ったこともないし、話した事もないし。」
2人は首を傾げた。
「どこのクラスにいるの?」
「さあ?」
その時、誰かが菫と萩の間に割り込んできた。
「いた!」
「誰?」
割り込んできたのは、茶髪の女子だった。菫は、無表情で萩はその女子に冷たい視線を送った。その子は中間テストの結果を見るとそこから去っていった。
「なんなの!あの子!すみませんとか言って間に入ってくればいいのに!もう!!」
「お、落ち着いて...水鳥さん...。」
「私、あーいう子嫌い!」
その女子をきっぱりと萩は嫌いと宣言した。